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銅の溶接が難しい理由と銅の溶接事例

2023-11-07

銅は溶接が可能な材質なのか?このような疑問を持たれる方もいるかと思います。銅という材質の特徴から溶接は難しいとされている事が一般的ですが、可能ではあります。

この記事は銅の溶接はなぜ難しいとされているのか、銅の溶接にはどのような方法があるのか、また、銅の溶接事例を画像と共に解説していきます。

銅溶接が難しい理由

銅の溶接は一般的に難しいとされています。理由は銅という材質の特徴にあります。銅は熱伝導率が385W/m・Kと、非常に高い特徴があります。この数値は鉄(63W/m・K)の約6倍、ステンレス(16W/m・K)の約24倍、アルミニウム(121W/m・K)の3倍になります。そのため、溶接部に加えられた熱が母材側へと拡散してしまいます。

銅と他金属との熱伝導率の比較

銅…385W/m・K鉄…63W/m・K(銅の1/6)ステンレス…16W/m・K(銅の1/24)アルミニウム…121W/m・K(銅の1/3)

溶接を行うため局部に加えていたはずの熱が母材側へと逃げてしまうため、銅は溶接部に十分な溶け込みが得られず、溶接が困難となってしまいます。

そのまま溶接部に熱を加え続けてしまうと、銅は熱による膨張、収縮がしやすいという特性があり、溶接時の熱による変形が生じる可能性があります。それに伴い、冷却時の収縮歪が溶接部に集中し溶接部の割れが生じてしまう可能性もあります。

また、銅は光を反射しやすい特性を持っているので、レーザー光を用いた溶接を行うには高出力で行う必要があります。

銅の熱による影響を抑えるには、①予熱、②ピーニングが効果的だと考えられます。

①予熱

溶接前の母材に予熱を与えておくことにより、急激な加熱が避けられます。急激な加熱を避けることによって熱膨張が緩やかになり、歪や割れを抑えることが出来ます。

②ピーニング

ピーニングとは溶接する金属をハンマーなどで打ち延ばす事です。ピーニングは溶接による収縮歪の軽減、溶接残留応力の緩和、溶接部の割れを防止する効果があるため、溶接直後に行う(熱間ピーニング)が非常に有効です。

このように銅の溶接は困難で、且つ熱による影響を抑えるための追加処理が必要となります。

銅溶接の方法

熱伝導率が高い銅は、熱が拡散しにくい溶接方法が効果的です。熱が拡散しにくい方法といっても、熱の拡散自体は時間がかかれば起こるものです。

拡散しにくい溶接方法とはすなわち、局所的に短時間、且つ高速に加熱できる溶接方法と考えられます。以下の溶接方法はそれらを考慮した溶接方法です。

TIG溶接

TIG溶接は、融点の高いタングステン電極と母材の間にアークを発生させて行う溶接方法です。アーク熱により不活性ガスと酸素を燃焼させ、母材の溶接しようとする部分の一点にアークを集中させる事ができ、短時間で高速に加熱する事が可能です。よって、銅を溶接するには有効な工法と言えます。

但し、銅の板厚が2~3mm程度なら予熱は必要ありませんが、3mmを超える場合、純銅を溶接する場合は溶接部の割れを防止するため予熱する事を推奨します。予熱の方法として電気抵抗加熱、赤外線電気ヒータ、固定・手動バーナーなどがあります。

参考:TIG(ティグ)溶接とは【専門家が解説】特徴や加工方法について詳細をお伝えします!

スポット溶接

スポット溶接とは、溶接したい2片の金属を電極で上下から挟み込み、接触部を加圧しながら大電流を流す溶接方法です。電気抵抗によって局部的に発熱させる事で母材同士を接合することが出来ます。加圧した点で接合するため、熱が拡散せず接合付近に限られます。よって、銅の熱伝導率を考慮した溶接方法のひとつと言えるでしょう。

但し、スポット溶接では母材を加圧する電極チップに銅合金を使う場合が多いため、溶接しようとする母材が銅の中でも純銅に近い材質では電気抵抗値が近似になります。そのため、母材と電極が密着してしまうなどの溶接不良が起き、溶接が困難となります。

このような溶接不良を回避するためには、銅をスポット溶接する場合、電極及び母材の材質に留意する事がポイントとなります。

参考:【スポット溶接】メリット・デメリットや他の溶接との違いを専門家が解説!

ろう付け

ろう付けは一般的な溶接とは違い、母材を溶かす必要のない接合法です。一般的に接合しようとする部品同士をまずガスバーナーなどで加熱します。加熱された母材の間にろう材を近づけ溶かし、流し込んでから冷却させ接合する工法です。ろう材にもいくつか種類があり、接合したい金属によって使い分けられます。その中でも銅の溶接に使用されるろう材としては下記3つが挙げられます。

ろう材の種類

①銀ろう②銅・黄銅ろう③リン銅ろう

①銀ろう

鉄と亜鉛、銅が混ざったろう材です。ろう付けを行う上で使用頻度が高く、そして広く使われているものです。母材がアルミ、マグネシウム以外であれば銀ろうで接合が可能です。

②銅・黄銅ろう

銅と亜鉛が混ざったろう材です。真鍮の色とよく似ているため、銅や真鍮の母材によく使われます。また鉄と銅といった異種金属間のろう付けにも使われます。

③リン銅ろう

リンと銅が混ざったろう材で、リンの含有率は5~8%です。リン銅ろうには還元作用があり、フラックスを使わずに単独で使用することが出来るという特徴があります。

参考:ろう付けとは?代表的な種類や特徴、メリット・デメリットを解説

レーザー溶接

レーザー溶接とは、光源を集光レンズで収束させ、ビーム径は0.1mm~数mmの強力なレーザー光を使用し金属に照射して、局部的に母材を溶かし冷却させ接合する溶接です。レーザー溶接もTIG溶接同様、シールドガスを使用して溶接部の酸化などを防ぎます。

レーザー溶接を行うにあたって、機械的な駆動系が移動すると溶接が進行されるため、溶接する母材は治具によって固定させる必要があります。機種によっては手溶接も可能で肉盛り溶接が可能です。

レーザー溶接は、高出力のファイバーレーザー溶接になるとビーム径がさらに絞られ、溶接時における熱の拡散を抑えることが出来るので銅を溶接するには有効だと言えます。しかし、他の溶接よりもコストがかかるというデメリットもあります。

参考:【レーザー溶接】仕組み(原理)やメリット・デメリットなどの特徴をご紹介!!

銅溶接事例

TIG溶接では、銅と銅以外の母材(写真はSUS)を接合する事(異種金属溶接)も可能です。

引用元:こだま製作所

銅と鉄のスポット溶接による異種金属溶接事例です。スポット溶接は上下から圧力をかけるため、写真のようなくぼみが出来ます。

引用元:イプロス製造業

ろう付けは写真のようにガスバーナーなどで接合したい部分を加熱し、ろう材を溶かし流し込みます。

引用元:菊川工業

TIG溶接で仮止めした3次元形状の製品をレーザー溶接している様子です。

銅の溶接まとめ

銅は熱伝導率が非常に高いため、溶接を行うには他の金属と比べて難しくなります。

TIG溶接では板厚が3mm程度までの銅合金なら問題なく溶接可能ですが、3mmを超える場合や純銅を溶接する際には溶接部の割れを防ぐため予熱が必要です。

スポット溶接ではピンポイントで電気抵抗による発熱を利用し溶接が可能ですが、電極と材料の電気抵抗値が近似となる純銅においては溶接が難しいです。

ろう付けは母材を溶かすことなく接合が出来るので銅の接合に向いている工法です。

レーザー溶接では高出力のレーザー溶接で熱の影響を抑えられますが、コストがかかってしまいます。

最後までお読みいただきありがとうございます。
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