染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
板金を手掛ける作業者にとって、「溶接」なしでは板金を語る事はできません。
とはいえ、溶接と聞いてどんな景色を想像しますか?防護メガネをかけ、飛び散る火花がまぶしい溶接現場、というところでしょうか。実は溶接も、知れば知るほど奥深いものがあるのです。
なかでもレーザー溶接は一般的に私たちが目にする溶接作業とはまったく異質です。
そんなレーザー溶接に関して、このようなお悩みをお持ちではないでしょうか?
「レーザー溶接加工を依頼したいけれど、初めてでどこに頼めばいいかわからない……」「他の工場で断られてしまって、依頼先に困っている……」探す中で、こんなお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。その他にも、「小ロットでの発注を断られてしまった……」といったお悩みや、あるいは「いつも依頼している工場に小ロットで発注するのが申し訳ない……」とお悩みの方もいるでしょう。
そもそものお話。レーザーとは何でしょう?
実は、次の英語、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字をつなぎ合わせたものがLASER、レーザーなのです。
どういう意味なのでしょう?「誘導放出による光の増幅」という意味です。わかりやすく言うと、レーザー素子に光を当てることによって(光励起)誘導放出現象を起こし光を放出させます。
励起とは、外からエネルギーを与えられ、もとのエネルギーの低い安定した状態からエネルギーの高い状態へと移ることを言います。
レーザー光は純粋で強力な光のうえ、人工的にコントロールできるので、加工や計測、通信、記録、医療など幅広い分野で利用されています。
そのレーザー光を熱源として溶接を行うのがレーザー溶接なのです。
引用元:加工技術データベース
レーザー溶接の仕組みは、ごく簡単に言ってしまえばこんな感じ。
溶接したい金属にレーザー光を集光して照射すると、被照射金属は局部的に溶融します。それを凝固させることで接合します。
けれども、レーザー溶接機はそんな簡単な仕組みではありません。まず、レーザー発振器があり、その光が進む光路があります。レーザー光を集光するための集光光学系、集光したレーザー光を思いのまま動かす駆動系、さらに被金属部の酸化を防ぐシールドガス系で構成されています。
レーザー光は先ほど述べた通り、波長が揃っていて指向性が強い光なので、レンズなどで光を集めると焦点がとても小さく絞れます。小さく絞ったところにエネルギーを集中させるので、熱をかける面積が非常に小さくて済み、溶接速度も速いのが特徴です。
レーザー溶接にはいくつか種類があります。代表的なものをピックアップしてみましょう。
ごく一般的に見ることのできるのがこのCO2レーザーです。「炭酸ガスレーザー」または「シーオーツーレーザー」と読みます。その歴史は古く、1964年にアメリカで発明されました。
二酸化炭素を放電等で励起して誘導放出させる発振器です。CO2レーザーの波長は10.64μmで赤外光のレーザーですので、肉眼では見えません。波長が長いため、光ファイバーを使ったレーザーの伝送は行えず、主にミラーや特殊なレンズによってレーザーを伝送し集光します。
CO2溶接についてはこちら
参考記事:炭酸ガスアーク溶接とは?【3分でわかる】向いている金属もご紹介!
YAGレーザー(ヤグレーザー:Yttrium Aluminum Garnet laser)は、CO2レーザーと同様、アメリカのベル研究所で発明されたレーザーです。CO2レーザーがガスレーザーの代表格であれば、YAGは固体レーザーの代表的なレーザーと言えるでしょう。
イットリウム、アルミニウム、ガーネットで構成する結晶に微量のレアアースを添加した結晶体を媒体に用いたレーザーのことです。
これによって得られるレーザーの波長は基本波で1.06μmで近赤外光。そのためこのレーザー光も肉限では確認できません。
ただCO2レーザーと異なる点があります。それはYAGレーザーは光ファイバーを通すことができるという点。また、CO2レーザーのようにミラーによる伝送も可能なので、必要に応じてファイバー伝送とミラー伝送の使い分けができるのです。
また、CO2レーザーよりも波長が10倍短いので、材料のエネルギー吸収率がCO2に比べて高くなるのも特徴です。つまり、YAGレーザーはCO2レーザーほど高い出力で連続波を出すことはできないものの、レーザー発振機の中では連続波で高い出力が出せるように工夫できるのです。
ファイバーレーザーは、光ファイバーの中に希土類元素を添加することで、ファイバー自身がレーザーを発振する媒体となる構造を持つことになります。
ファイバーレーザーで得られる出力も20kW程度まで幅が広く、YAGレーザーのように光ファイバーによる伝送も可能な上、発振器の構造も簡便で省スペースが実現されているので、装置がコンパクトにまとまります。
ディスクレーザーはレーザーを発振する媒体は固体ですが、その形状が大きく違います。固体レーザーであるYAGレーザーは、励起するYAGの結晶が円柱状であるのに対し、ディスクレーザーはその名前の通りディスク、薄い円盤状です。
薄い円盤状になっているレーザーを発振する結晶にポンプ光を照射し、レーザーを発振させます。発振器の出力は数W~数kWまで幅広くあるので、波長によって用途が使い分けられるのもメリットのひとつ。レーザー溶接やレーザー切断以外にもさまざまな用途に使えます。
レーザー光を溶接に使う場合、強力でかつ人為的にコントロールしやすいという点から、他の工法と比較して局部加熱が可能であり短時間で接合可能になります。そのため、溶接歪が少なくなるメリットがあります。また、溶接に必要な熱源が光なので、電流や電圧、磁力などの影響が少ないというのも特徴です。また、レーザー光は集約することができるので、微細加工も可能です。融点の異なる異種材料の溶接が他の工法と比較して容易であることもメリットに挙げられるでしょう。このほかファクトリーオートメーション化が容易であること、非接触加工ができるので、電極メンテナンスなどが不要であることもメリットに挙げられます。
もちろん、メリットだけではありません。レーザー溶接は抵抗溶接等の工法と異なり、加圧工程が無く集光径が小さいことから、溶接個所の密着精度や溶接面の管理が必要となってきます。レーザー溶接の場合の密着精度は、一般的には板厚の1/10程度の隙間以内に収める事が必要です。これを怠ると、接合部の合金層にブローフォール(ポロシティー:ガスによる鋳造欠陥)やクラック(ひびわれ)等の溶接欠陥が発生する原因になるおそれがあります。このため、密着させるためのジグを作成したりする必要があります。また、高熱で強力なレーザー光に対する安全対策が必要です。そのために必要な設備を特別に選定する必要があります。レーザー光は目に見えないので、反射光により火傷する恐れがある上、レーザー光を見つめると網膜損傷などの危険性があるのです。これらの安全対策として、専用のメガネを着用するか、反射作用のあるカバーで溶接工程を覆うなど、レーザー光から身を守る対策が必要となります。
レーザー溶接についてざっくりと説明してきましたが、お分かりいただけたでしょうか?
レーザー光は強力で純粋な光であることから人為的にコントロールしやすいことがわかりました。それゆえに精度の高い溶接も可能ですが、そのためには密着精度が高くなくてはならないこともわかりましたね。ここでお話したのはレーザー溶接のほんの序の口。もっと詳しく、知れば知るほど、レーザー溶接のおもしろさがわかってきます。これからもっと深く学んでレーザー溶接を学んで行きましょう!
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