志民 直人
技術営業、カスタマーサクセス
切削加工歴29年の1級機械加工技能士(精密器具製作/フライス盤/数値制御フライス盤)。金型・部品加工経験を持ち、CAD・CAMや各種工作機械に精通。設計からカスタマーサービスまで幅広く対応。製造現場改善や治具設計も得意。趣味は日曜大工、ゲーム。
今回は中ぐり盤の基礎知識について解説します。
中ぐり盤とは、ドリルなどで開けた下穴をより大きくくり広げる加工の「中ぐり」に特化した工作機械のことです。なかには工具を変えればフライス加工や穴あけ加工を行えるものもあります。
中ぐり盤は精度の高い穴加工が可能なほか、テーブルにセットできるワークサイズの制限が少ないメリットがあります。
引用元:旋盤市場 中ぐり
中ぐり加工とは、ドリルなどで開けた下穴に対して、さらに穴を広げるように加工を行うことを指します。
中ぐり加工は、ドリルでは加工できないほどの大きい穴や、高い寸法精度、キレイな加工面を要する場合に採用される加工方法です。中ぐり加工は「中ぐりバイト」と呼ばれる刃物を使って、ワークの内径を加工します。中ぐりバイトを主軸とともに回転させながら、ワークまたはバイトに送り運動を与えて、穴をくり広げます。
ただし中ぐり加工は、穴の内部に切り屑が溜まりやすいほか、深穴を加工する際や薄肉の中ぐりの場合は刃物がびびりやすいので注意が必要です。
中ぐり盤とは、中ぐり加工に特化した工作機械のことを指します。
中ぐり盤は、主軸の向きや機能によって、横中ぐり盤・立中ぐり盤・ジグ中ぐり盤・NC中ぐり盤といった、さまざまな種類があります。機器によってはフライス削りの機構を備えたものもあります。
中ぐり盤の歴史は古く、1722年には大砲の砲身を削るためのものが利用されていました。1760年には、イギリスの技術者であるジョン・スミートンが大気圧機関のシリンダーを削るための中ぐり盤を発明していますが、高い精度が出せないお粗末なものだったとされています。それから1774年に、イギリスの工場主であり発明家であったジョン・ウィルキンソンにより精度の高い中ぐり盤が発明されました。「もし、ウィルキンソンが現れなかったら、ワットは蒸気機関を完成できなかっただろう。」と言われるほど、ウィルキンソンの発明した中ぐり盤は歴史に貢献したそうです。
参考:機械の発明発見物語 十章 機械をつくる機械の発明 《工作機械》
ここでは、横中ぐり盤・立中ぐり盤・ジグ中ぐり盤・NC中ぐり盤の特徴を見てみましょう。
引用元:ウエノテックス株式会社 保有設備
横中ぐり盤は、切削工具の回転軸である主軸が、水平方向に配置された中ぐり盤のことを指します。中ぐり盤のなかでも最もポピュラーなタイプです。
後述する立中ぐり盤に比べて切り屑の排出性に優れており、深穴や大きな穴を加工するのに適しています。なかにはフライス盤と兼用で使える「横中ぐりフライス盤」もあります。
引用元:芦部産業株式会社 設備紹介
立中ぐり盤は、主軸が地面から垂直方向に配置されている中ぐり盤です。
主軸の重量によるたわみが少なく、安定した精度で加工を行えるのがメリットです。門型かつ大型の工作機械が多いタイプのため、ワークのサイズが大きい加工に適しています。ただし貫通穴の加工でない場合、切り屑の排出性に乏しい点はデメリットです。
ジグ中ぐり盤は、精密な位置決めを実現した装置を搭載しており、横中ぐり盤や立中ぐり盤に比べて、より高い精度で穴の位置と寸法を出せるタイプです。
もとはジグ(治具)の穴あけ用途で採用されていた中ぐり盤であることから、ジグ中ぐり盤やジグボーラーと呼ばれています。主軸の向きによって、横型と立型の2種類に分かれています。
NC中ぐり盤は、中ぐり盤にNC(数値制御)機能を搭載したものです。あらかじめ加工内容をプログラミングしておくと自動で加工を行えるため、作業の効率化や省人化が期待できます。
中ぐり盤は、中ぐり加工に特化した加工を行えるのに対して、マシニングセンタは自動工具交換装置を搭載しているので、フライス加工・穴あけ・ねじ立てなど、さまざまな加工を連続して行えます。中ぐり盤は工具を変えることで、フライス加工や穴あけにも対応できるものもありますが、マシニングセンタのような多様な加工には適していません。
しかし中ぐり盤は、マシニングセンタに比べてテーブルにセットできるワークの制限が少ないことから、サイズの大きなワークの加工がしやすいメリットがあります。
フライス盤は名前の通り、フライス加工に適した工作機械です。NCフライスでは3軸の加工制御が可能で、曲面などの切削にも対応できます。
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