第7回 板金加工、曲げ加工の基礎(1)

ゼロからわかる!板金加工!

第7回 板金加工、曲げ加工の基礎(1)




本シリーズは、板金に関する知識がゼロでも、読み進めていくことで、板金加工の理解が身につくことを目標にしています。


対象とする読者は、知識ゼロのあなたです。 


板金加工には、大きく分けて切る、曲げる、作るという加工方法があります。

その中で、今回取り上げるのは、板金加工の主役といっても過言ではない曲げ加工です。

板材は、切断(せん断)された後、曲げ加工を経て、溶接・接合されることで、製品となります。

この点、切断(せん断)は早くから自動化が進んできました。

しかしながら、曲げ加工は今日においてもなお自動化が進んでいるとはいえません。

曲げ加工は、主としてプレスブレーキが使用されますが、作業者の技量に大きく依存します。

プレスブレーキによる曲げ加工は、V曲げと呼ばれる加工で、被加工材はパンチとダイの間で複雑な変形過程を経ます。


そのため、作業者の技量が求められます。


他方で、L曲げという加工方法も存在します。

これは作業者の技量に依存する部分が少ないため、比較的自動化されやすい加工方法です。

しかしながら、汎用性という面においてV曲げに負ける面があります。

以下では、曲げ加工の基本的な原理とV曲げについて確認してみます。

曲げ加工の原理

板を曲げる原理は、以下の図のように2点で支えた中央を直角方向に押すことでと、外側が伸ばされ内側が逆に縮んで反ります

このときの曲げる力のことを曲げモーメント(M)と呼びます。

その大きさは、押す力(荷重)×距離となります。

したがって、距離に比例して曲げモーメントが大きくなります。


引用元:株式会社セキコーポレーション

曲げ加工では、距離が大きすぎると幅の狭い製品はV溝の中に落ちてしまいます

他方で、小さすぎると反りが発生するなど不具合が生じます。

一般的に、V曲げ加工の場合、ダイの肩幅(各部の距離)は、板厚の8倍を標準としています。

加圧力の計算もこれを基本としています。

曲げ加工の種類

曲げ加工には、V曲げ加工のほか、断面形状で、L曲げU曲げZ曲げ丸めなどがあります。

また、パンチとダイで材料を密着させて押し付ける衝突曲げ(ボトミングコイニング)と、パンチの位置を途中で止めた状態で曲げるエアベンディングがあります。

エアベンディングは、同じ金型を使っても、パンチを止める位置を変えることで、さまざまな角度に曲げることができます。

この他にも、金型の種類と構造などの違いでさまざまな方法があります。


引用元:株式会社土井金属製作所

曲げ加工に使われる材料

曲げ加工に使われる板材は、鉄鋼材料(軟鋼、ステンレス鋼などの特殊鋼など)と非鉄金属材料(アルミニウムとその合金、鋼とその合金)に分かることができます。

これらの材料にはそれぞれ特性があるため、それらの特性を理解する必要があります。

材料の特性は、一般的に材料試験と呼ばれる一様な断面に均等な力が働いている状態で調べる試験があります。

その材料の特性を表す指標を理解するには、いわゆる塑性力学の基礎知識が要求されます。

ここでは、そのような塑性力学の議論には踏み込みません。

ただ、特に必要な用語のみ以下に列挙しておきます。


公称応力:外力/素材断面積。引張り試験における最大値を「引張り強さ」といいます。

公称ひずみ:標点間の伸び/標点間距離のことをいいます。

降伏点:塑性変形が始まる応力のことをいいます。

真応力:負荷時の外力/負荷時の素材断面積をいいます。


板金加工で用いられる板材は、定尺材あるいはスケッチ材で板厚は規格化されています。

ただし、実厚板は同一ロット内、あるいは同一の板でも場所によって微妙に異なることがあります。

同じく、材料の特性値もロット内でも異なっていることがあります。

板の方向によっても異なることがあり、これを異方性といいます。

特に圧延方向(ロール目と呼ぶことがある)と直角方向、45度方向で異なっています。

曲げ加工は、材料の寸法特性や材料特性を考慮しながら行う必要があります。

V曲げ加工

V曲げは、板材の曲げ加工の中で最も基本的で、最も多く使用されています。

加工形状は、アングル形状の単純な1工程曲げから、建材、サッシなどに用いられる複雑な多工程曲げまであります。

その用途は広く、日常生活の場を見回しすこと、その具体的な製品を数多く目にすることができます。

V曲げで折り曲げができる材料の板厚は、0.3mmの極薄板から30mmぐらいまでの厚板までといわれています。

もっとも、この範囲は先に述べたように、作業者の技量に依存するところが大きいです。


引用元:株式会社ヒラミヤ

V曲げ加工方法

V曲げには、3種類の形態があります。

加圧力のかけ方によって、被加工材(ワーク)は、それぞれ特徴のある3つの曲げを経過します。

曲げ加工の代表的方法であるV曲げには、以下の図に示すようにエアベンディングボトミングコイニングという3種類の形態があります。

それぞれにおいて特徴が異なります。

どのような方式を選択するかは、対象となる製品の要求精度や工場設備の能力に依存します。


引用元:金型ワールド

画像中央の「バーシャルベンディング」がエアベンディングのことです。

エアベンディング

以下の図で示すエアベンディングは、A、B、Cの3点でワークが金型に接触します。

それら3点による曲げであり、ダイとの間で加圧を行わない自由曲げである点に特徴がでてきます。

エアベンディングの特は、折り曲げ角度の範囲を自由にとることができる点です。

その際、V幅は板厚の5倍から15倍程度を取るのがよいとされています。

エアベンディングを行った後に更に加圧を続けることで、パンチとダイの面圧によってスプリングバックを減らし、精度を高めることができます。

このような加工方法に、ボトミングとコイニングがあります。


ボトミングは比較的、小さい圧力でワークを曲げることができます。

他方で、コイニングは、高い面圧とパンチ先端部の食い込みによってスプリングバックを極力減らします。

コイニングは、極めてよい精度を実現することができますが、その一方で所用能力トン数が大きくなります。

曲げ加工では、曲げ角度がそれぞれの曲げ方式になるように、金型を選択する必要があります。

V曲げ加工では、変形に対する拘束が少ないため、形状の凍結性があまりよくありません。

そのため、曲げ外力を除くと、曲げ部に発生した内部応力と断裁回復のために、スプリングバックが大きく発生します。

材料の機械的特性と使用するツールの影響が少なくありません。

ボトミング

ボトミングのボトム(bottom)は、動詞形で「底に届く」という意味があります。

現場では、「底押し」とか「底突き」などの用語で呼ばれることもあります。

ボトミングは、エアベンディングと異なり、材料がダイの方から外れダイのV溝斜面に接触します。

さらに曲げを進めると、パンチのストロークとともに、材料内側がパンチの肩部に接触します。

それによって、材料とパンチ、ダイとの接触点数は最小の3点ではなくなります。

材料の内側が、パンチ肩に接触すると、フランジ部はパンチ肩部で曲げ戻されます。

そのため、パンチの先端Rが材料を曲げることによって発生するスプリングバックと方向が反対のスプリングゴー(スプリングインともいう)が、発生します。

したがって、ボトミングでは、スプリングバックとスプリングゴーB(スプリングイン)が共存する状態となります

そのため、スプリングバックのみ存在するエアベンディングと異なって、ボトミングでは全体のスプリングバック量(スプリングバックとスプリングゴーの和)を正確に予想するのが難しくなります

コイニング

コイニングの語源はコイン(coin)からきています。

「硬貨をつくる」とか、「金属を硬貨にする」という意味で、極めて正確な曲げ精度が得られる加工方法です。

コイニングの目的は、板厚、材料の機械的特性などのばらつきを無くすことで、極めて正確な曲げ精度と、極端に小さい内Rを得ることです。

先の図で示したように、パンチの先端部が完全にワーク内に食い込んでいます。

このパンチ先端部の食い込みと、パンチとダイV溝面の加圧による高い面圧によって、スプリングバックがなくなります。

これを実現するためには、ボトミングの所用トン数の約5~8倍の加圧力が必要になります。

コイニングに使うV幅はボトミングよりも小さく、板厚の5倍程度で使用します。

曲げ後のワークの内側Rを小さくして、パンチ先端部の食い込み量を少なくすること。

また、V溝の面積を小さくして面圧を高めること。

以上の2つの理由から使用され、いずれも余分な圧力をかけないことが目的です。

コイニングは、ボトミングのようにスプリングバックを見込む必要がありません。したがって、コイニングの金型角度を求める製品角度に等しくする。

例えば、90度曲げについては、パンチとダイともに90度にすれば足ります。

コイニングは大きなトン数を必要する曲げであるため、コイニングできる加工限界は、機械能力とラム、金型の耐圧などを配慮する必要があります。


以下に、今回取り上げた3つのV曲げについて比較の表を記しておきます。

まとめ

以上、曲げ加工の基本的な原理とV曲げについて確認しました。

曲げ加工の特徴を少しでもつかむことができたら、大丈夫です。

次回は、曲げ加工のさらに詳しい内容に踏み込んでみたいと思います。



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Mitsuri編集部

Mitsuri編集部

Mitsuriは、お客様に寄り添い、製造プロセスに関わる課題をトータルに解決する「お客様の最適な生産活動を達成するコーディネーター」です。

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