板金加工における【曲げ加工】の基礎や種類ついて徹底解説!!

2023-11-07

曲げ加工は、主としてプレスブレーキが使用されますが、作業者の技量に大きく依存します。プレスブレーキによる曲げ加工は、V曲げと呼ばれる加工で、被加工材はパンチとダイの間で複雑な変形過程を経ます。他方で、L曲げという加工方法も存在します。これは作業者の技量に依存する部分が少ないため、比較的自動化されやすい加工方法です。しかしながら、汎用性という面においてV曲げに負ける面があります。

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曲げ加工の原理

板を曲げる原理は、以下の図のように2点で支えた中央を直角方向に押すことでと、外側が伸ばされ内側が逆に縮んで反ります。このときの曲げる力のことを曲げモーメント(M)と呼び、その大きさは、押す力(荷重)×距離となります。したがって、距離に比例して曲げモーメントが大きくなります。

図:引張応力と圧縮応力

曲げ加工では、距離が大きすぎると幅の狭い製品はV溝の中に落ちてしまいます。他方で、小さすぎると反りが発生するなど不具合が生じます。一般的に、V曲げ加工の場合、ダイの肩幅(各部の距離)は、板厚の8倍を標準としています。加圧力の計算もこれを基本としています。

曲げ加工に使われる材料

曲げ加工に使われる板材は、鉄鋼材料(軟鋼、ステンレス鋼などの特殊鋼など)と非鉄金属材料(アルミニウムとその合金、鋼とその合金)に分けることができます。これらの材料にはそれぞれ特性があります。材料の特性として、一般的に材料試験と呼ばれる一様な断面に均等な力が働いている状態で調べる試験があります。その材料の特性を表す指標を理解するには、いわゆる塑性力学の基礎知識が要求されますが、ここではそのような塑性力学の議論には踏み込みません。特に必要な用語のみ以下に列挙しておきます。

特に必要な用語

公称応力:外力/素材断面積。引張り試験における最大値を「引張り強さ」といいます。・公称ひずみ:標点間の伸び/標点間距離のことをいいます。・降伏点:塑性変形が始まる応力のことをいいます。・真応力:負荷時の外力/負荷時の素材断面積をいいます。

板金加工で用いられる板材は、定尺材あるいはスケッチ材で板厚は規格化されています。ただし、実厚板は同一ロット内、あるいは同一の板でも場所によって微妙に異なることがあります。同じく、材料の特性値もロット内でも異なっていることがあります。板の方向によっても異なることがあり、これを異方性といいます。特に圧延方向(ロール目と呼ぶことがある)と直角方向、45度方向で異なっています。曲げ加工は、材料の寸法特性や材料特性を考慮しながら行う必要があります。

曲げ加工図面の展開寸法の計算方法

引用元:アイティメディア株式会社

寸法精度が高い曲げ加工を施すには、展開寸法をシュミレートしなければなりません。曲げ加工製品の寸法を安定させるためには、曲げ加工図面の展開寸法を計算する必要があるのです。

展開寸法は、伸び縮みのない板厚方向における中立軸の長さ(上画像L)になります。

中立軸の長さを求めるためには、中立軸が板金の曲げ部のどの位置にあるかも知らなければなりません。

そのためには、金属素材の特性などを考慮に入れる必要があり、材料試験などを実施して、素材を加工した時の伸びしろなどから経験値を導き出します。

材料試験などで得られた経験値により、曲げRから中立軸までの距離の移動率(%)が変わり、それを展開寸法を求める計算式に当てはめることで、中立軸の長さが得られます。

板厚や曲げの角度にもよりますが、曲げ部の中立軸は板厚の20~45%の間の位置になります。

引用元:株式会社春日井金型

上画像右の表は、板金加工で最も良く行われるV曲げ加工を例にとり、板厚と曲げR、曲げRからの中立軸までの距離の割合(λ)を表にしたものです。曲げRが板厚(T)の5倍以上など、大きくなればなるほど、中立軸は板厚の中央に近づいていきます。

金属特性の経験値を踏まえ、展開寸法(Lの値)を求める計算式は以下の通りです。

展開寸法の計算式

L=展開寸法

・A,B=曲げ応力のない部分の長さ

・R=曲げ 内R

・t=板厚(mm)

・θ=角度

・λ=中立軸移動率(%) *経験値(0.2~0.45)を採用

L=A+B+(R+T×λ)×2π×θ/360

参考:曲げRの計算方法【基礎知識】図面指示と板厚・強度

曲げ加工の限界について

曲げ加工をする場合、ダイの溝幅や金型が干渉することで加工ができなくなるという2通りの限界があります。

ダイの溝幅についての限界は、加工する板厚によって決まる加工に適切な溝幅の限界です。この横幅より狭すぎると、金属素材が反ってしまったり、曲げ傷が深くなったりするため、限界内の適切なダイの溝幅を選択しなければなりません。

もう一つの限界は、曲げ加工が金型の干渉によりできなくなる加工可能範囲の限界です。曲げ加工をするには、曲げ加工が可能な範囲(限界値)があります。

例えば、最小曲げ高さ・あざおり幅・穴から端までの長さ・穴から折り曲げ線までの長さの限界値などです。

この加工可能な限界値は、設計内容や加工メーカーにより異なるため、ヤゲンの断面形状シートやリターンベンドの限界グラフなどを使うことで、加工可能かを確認することができます。

曲げ加工の種類

曲げ加工の種類には、大きく分けて型曲げ・フランジ成形・送り曲げの3つがあります。

それぞれについて、解説していきます。

型曲げ

型曲げは、金属素材を型に固定し、加圧して曲げる加工法です。型曲げの代表的な方法には、ワークをダイに固定して上からパンチで押し込んで曲げる「突き曲げ」や、フォールディングマシンでパンチを側面から起こすようにワークを曲げる「迎え巻き曲げ」などがあります。

型曲げが向いているのは、板状や棒状のワークをV字・L字・U字・Z字など、単純な断面の形状に曲げる加工です。型曲げの種類は、断面形状によりV曲げ・L曲げ・U曲げ・Z曲げなどに分けられます。

V曲げ加工には、突き曲げと自由曲げがあり、突き曲げにはボトミング・コイニングがあります。自由曲げは、エアベンディングやパーシャルベンディングとも呼ばれています。

それでは、型曲げの中から多用されている①V曲げと②L曲げについて、詳しく解説していきましょう。

①V曲げ加工方法

引用元:株式会社ヒラミヤ

V曲げは板金加工の中で、最も基本的な曲げ加工であり、最も多く使用される加工法です。

加工形状は、アングル形状の単純な1工程曲げから、建材、サッシなどに用いられる複雑な多工程曲げまであります。V曲げ加工の製品は、用途が幅広く汎用性も高いため、日常生活の場面で目にすることも数多いです。

V曲げで加工可能な材料の板厚は、0.3mmの極薄板から30mmぐらいまでの厚板といわれています。しかし、この加工可能な板厚は、先に述べたように加工メーカーや作業者の技量、設計内容などに関わるところが大きくなります。

引用元:金型ワールド

V曲げには、上画像のようになエアベンディング(パーシャルベンディング)・ボトミング・コイニングの3種類の形態があります。これは、金属素材(ワーク)にかける圧力の違いによります。

どのようなV曲げ加工が適切な加工方法かは、対象となる製品の精度や工場設備の能力により選択することになるでしょう。

エアベンディング

引用元:株式会社コニック

上画像で示すようにエアベンディングは、ワークが赤い3点のみ金型に接触します。ダイやパンチとワークが面で接触しない自由曲げであるところが特徴で、突き曲げ(ボトミング・コイニング)とは大きく異なるところです。

この3点を加圧する曲げ加工であるため、折り曲げる角度を鋭角から鈍角まで自由に決めることができるのが利点です。

パンチの位置を途中で止めて曲げ加工できるため、同じ金型を使いながらもパンチを止める位置を変えることで、さまざまな角度に曲げることが可能です。金型の種類と構造などを変えれば、様々な断面形状の加工が施せます。多品種少量生産や試作品など、幅広くかつようできる加工法です。

しかし、ワークや加工機械の性能に角度の精度が左右され、安定して精度を高めることが難しく、高い技術力が要求されます。

エアベンディングのダイの溝幅(V幅)は、板厚の12~15倍を目安に選定するのが良いされています。ただし、曲げ部の内側の半径が製品の仕様を満たしているか、フランジ長さが最小フランジの長さより大きいかも確認する必要があります。

ボトミング

引用元:株式会社コニック

ボトミングは、V曲げ加工の中で最も良く使われる加工法です。ボトミングが、「底押し」や「底突き」と製造現場で言われるのは、ボトムが英語で「底につける」という意味があるからでしょう。

ボトミングの特徴であり、エアベンディングとの大きな相違点は、上画像のようにワークがダイに面で接触するところです。ボトミングの利点は、加圧が小さくても、高い精度の曲げ加工が実現できる点です。

しかし、材料が曲げ加工後に反発する「スプリングバック」が発生することがあります。

そのため、ボトミング加工の場合はスプリングバックの分を計算に入れ、パンチ先端V角度とダイのV溝角度を完成形状の角度より鋭角にし、多めに曲げ込んで精度を高めるのが一般的な方法です。

例えば90度曲げのボトミング加工をする時、スプリングバックの小さいケースでは90度の金型を使用しますが、スプリングバックの大きいケースでは88度の金型を使用したりします。ボトミングのダイの溝幅(V幅)は、板厚によって異なってきます。

ダイの溝幅(V幅)は、板厚が0.5~2.6mmの場合は板厚の6倍ほどで、板厚が3.0~8mmの場合は板厚の8倍、板厚が9~10mmでは板厚の10倍が目安になります。ただし、曲げ部の内側の半径、最小フランジの長さ、加圧力も鑑みて決定するようにします。

コイニング

引用元:株式会社コニック

コイニングは、V曲げ加工の中で最もワークにパンチとダイが密着する加工法です。加圧が大きいため機械設備が大きくなり、金型の摩耗が早く耐圧も必要とされます。

近年は、加工機械のスペックが進歩したこともあり、コイニングはあまり汎用されていません。

コイニングは、硬貨を製作するという名前の通り、スプリングバックが極めて小さく、小さな曲げ内Rを可能にするため、正確で高精度な曲げ加工が実現できるのが利点です。

しかし、上画像のようにパンチ先端をワークに食い込ませるようにするため、ボトミングの5~8倍の加圧をしなければなりません。そのため、加工機械のスペックに多少左右されますが、SPCCの板厚で2mmほどが加工限界になります。

コイニングのダイの溝幅(V幅)は、板厚の5倍程度が選定の目安になっています。ダイの溝幅(V幅)がボトミングより小さいのは、V溝の面積を小さくして加圧を効率的にワークにかけるためです。

②L曲げ加工方法

引用元:林洪鑾「薄板のL曲げ加工における高精度化の研究」

L曲げ加工とは、上画像に示すようにV曲げ加工とは異なり、材料の端を滑らないようにパッドなどで押さえ、もう一端をパンチでL字型に折り曲げる「押さえ曲げ」と呼ばれる加工法です。

パッドの押さえる力とパッドとダイに挟まれているワークの面積(ウェッブの面積)が、L曲げ加工の重要な点で、加工精度に大きな影響を与えます。

L曲げ加工は上画像のような工程で曲げ加工するため、V曲げのボトミング加工の時のように、スプリングバックを計算に入れて多めに曲げ込み精度を高めることは難しいです。ですから、スプリングバックの分を多めに曲げこむことが必要な直角曲げも、L曲げ加工ではできません。

L曲げ加工を使用する理由

一般的に曲げフランジが長い大板を加工して製作する配電盤・制御盤の扉・空調機のカバーなどに、L曲げ加工が使用されます。

その理由は、曲げフランジが長い大板の一端をV曲げで曲げると、自重により腰折れなどが発生し、製品の精度や外観を悪くしてしまうからです。

一般的なV曲げ加工でそれを防ぐには、加工中にワークを数人の作業員で保持しなければなりませんし、跳ね上がりによる危険や、曲げ完了後のワークの落下にも注意を払わなければなりません。

このような無駄や危険を排除するためにも、配電盤・制御盤の扉・空調機のカバーなどの大板を加工する製作には、ワークをホルダに乗せたまま加工できるL曲げ加工が使用されるのです。

L曲げ加工の特徴

L曲げ加工には、次のような2つの特徴があります。

①非対称であること

ダイ側とパンチ側で曲率が対称であるV曲げ加工と異なり、L曲げ加工ではパッド側とパンチ側の曲率が非対称になります。

パッドで押さえた側の曲率は小さく、パンチで折り曲げる側の曲率が大きくなるのです。

②スプリングバックとスプリングゴーが発生する

L曲げ加工では、目標角度まで曲げた後、パンチが材料から離れるとスプリングバックが生じ、パッドが材料から離れるとスプリングゴーが生じます。

スプリングバックとスプリングゴーが生じるのがL曲げ加工の特徴です。パンチが材料から離れると、V曲げと同様に曲げ外側に引張り応力、内側に圧縮応力が生じています。

そして、パッドからワークが離れる時、これらの応力による曲げモーメント(曲げる力)がゼロになるようにワークが弾性回復し、スプリングバックが生じます。

参考:【曲げ加工】の基礎やV曲げ/L曲げ加工について徹底解説!!

フランジ成形

フランジ成形はL曲げ加工が発展したもので、自動車のボディなどの複雑な湾曲を作る製品にも使われる加工法です。

フランジ成形には、内側に湾曲する「伸びフランジ成形」と、外側に湾曲する「縮みフランジ成形」の2種類があります。

フランジ成形は、圧縮や引張のひずみのコントロールが難しく、直線曲げの加工とは違ってシワや割れなどが発生しやすくなるため、機械設計を精密にしなければなりません。

送り曲げ

引用元:株式会社井田商店

送り曲げは、型曲げのように金属素材を型に固定する加工法とは違い、素材を固定せずにラインの中で順次曲げ加工を行っていく方法です。

3本のロールで曲げ加工することを「ロール曲げ」、複数のロールで連続して曲げ加工することを「ロール成形」といいます。

連続して曲げ加工をすることができるため、複雑な断面形状の加工も可能です。作り上げる形状の複雑さに合わせ、半径の大きなロールや小さなロールを組み合わせ、送り曲げ加工をすることができます。

曲げ加工における金型

金型の選択を行う場合は、その金型が適切な金型としての条件を満足しているかどうかを判断しなければなりません。さらには、その条件が曲げ加工作業にどのように関係するかを理解しておかなければなりません。

金型の適切な条件

適切な金型の条件として、以下の点が挙げられます。

適切な金型の条件

  1. 取り付け、取り外しが容易にできる長さであること
  2. 完全な熱処理が施され、十分な強度があり耐摩耗性が高いこと
  3. 寸法精度が高いこと
  4. 機種に関係なく使用する上での互換性が高いこと

金型の種類

一般に曲げ金型は、大きくパンチ(上型・上刃・雄型)とダイ(下型・下刃・雌型)に分類されます。パンチやダイは、各機械メーカー別・用途・特徴により様々な取り付け方式や形状があります。市販されている曲げ金型は、大きく分けて2つあります。

市販の曲げ金型の種類

  1. パンチ・ダイそれぞれの仕様・形状を規定し、在庫品として製造・販売している標準金型
  2. 加工用途などに合わせて専用に設計・製作する特殊金型

標準金型は、コスト的にも安価であり、愛個品であるため納期的にも入手が容易です。他方で、特殊金型は基本的に受注生産品であるため、標準金型に比較して価格が高く納期がかかるのが一般的です。もっとも、加工の合理化や省力化を実現することができます。

パンチとダイ

パンチは、一般的にその断面形状や刃先角度などの特徴によって分類することができます。

パンチの分類

  • V曲げ(90°・鋭角)用パンチ
  • 曲率の大きいR加工を行うR曲げパンチ
  • ヘミング(潰し)加工を行うフラットパンチ

ダイは、一般的にその断面形状・V溝の数・V溝の角度・構造・加工内容などによって分類することができます。1Vダイ・2Vダイや鋭角ダイのほかに、ヘミング加工用のダイなどがあります。

板金の曲げ加工Q&Aまとめ

Q1.板金曲げ加工の種類を教えてください。主に、型曲げ・フランジ成形・送り曲げがあります。型曲げは、金属素材を型に固定し、加圧して曲げる加工法です。フランジ成形は、複雑な湾曲を作る製品にも使われる加工法です。送り曲げは、素材を固定せずにラインの中で順次曲げ加工を行っていく方法です。Q2.曲げ加工の反りの原因は何ですか?ワーク内側に縮み、外側に伸びが発生することで歪みが生じます。その歪みが反りにつながります。長いワークのL曲げなどで発生します。Q3.曲げ加工の反りの対策はありますか?曲げ部分に穴を空けることで、反りが発生しにくくなりますが、強度に問題が無いか確認しておく必要があります。

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