2024-09-18
更新
染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
15-5PHとは、析出硬化系ステンレス鋼の一種で、強度と耐食性に非常に優れているステンレス鋼です。その優れた特性を活かして、航空機や自動車、化学プラントなどの部品として広く利用されています。
15-5PHは、析出硬化系ステンレス鋼に分類され、高強度、高硬度で、さらに優れた耐食性を持つステンレス鋼です。析出硬化系ステンレス鋼とは、金属間化合物の析出により、高い強度を得ることを目的としたステンレス鋼で、代表的な鋼種にSUS630があります。15-5PHは、SUS630のδ-フェライトをなくして、機械的特性を改善した鋼種です。
また、15-5PHはSUS630同様、磁性を持つステンレス鋼です。そのため、磁性を嫌う環境においては、トラブルの原因につながる可能性もあるため、注意が必要です。
15-5PHはJIS規格外の析出硬化系ステンレス鋼ですが、航空宇宙材料規格:AMS5659として管理され、ASTMA564 XM-12という呼称も使用されています。
参考:SUS630(ステンレス鋼)磁性、成分、切削性、機械的性質
15-5PHは、その優れた強度及び耐食性を活かして、シャフト類、タービン類、自動車部品、航空機部品、ポンプおよびバルブ部品、圧力容器用部材など、さまざまな用途で使用されています。
<15-5PHの成分、組成(単位:%)>
15-5PHの化学成分を上表に示しました。比較のため、SUS630の化学成分も記載しています。
15-5PHという名前は、クロム(Cr)含有量が約15%、ニッケル(Ni)含有量が約5%という成分含有量に由来しています。また、SUS630は、クロム含有量が約17%、ニッケル含有量が約4%であることから、17-4PHとも呼ばれています。なお、PHとは、precipitation hardening(析出硬化)の頭文字を示しています。
析出硬化系ステンレスでは、冷間圧延後析出硬化熱処理を行うことで、マルテンサイト地に微細な金属間化合物を析出させます。15-5PH及びSUS630では、銅(Cu)、ニオブ(Nb)が含まれており、析出硬化処理によりCu-rich 相及び NbC を析出させ、材料を硬化させています。
<15-5PHの機械的性質>
15-5PHの機械的性質を上表に示しました。比較のため、SUS630の機械的性質も記載しています。15-5PH及びSUS630には、析出硬化熱処理条件の違いによって、H900・H1025・H1075・H1150などのグレードが存在します。
15-5PHは、耐力、引張強さ、伸び、硬さにおいてSUS630とほぼ同等の性質を持つことがわかります。また、オーステナイト系ステンレス鋼の代表的な鋼種であるSUS304と比べると、2倍以上の引張強さを示します。
15-5PHは、SUS630と比較して、横方向の延性に強いという性質も有しています。そのため、部品などに横方向の応力が見込まれる場合には、15-5PHの使用を検討することが勧められます。その他にも、15-5PHは、熱による変形が少ないという特徴も持ちます。
15-5PHは、析出硬化熱処理をする前のS材と処理後のH材があり、切削性は異なります。粗削りなど、加工量が多い場合には、S材から加工することがお勧めされます。15-5PHは、SUS304と比べて、切削抵抗が低く、粘りも少ないため、SUS304と同じ条件ならば、工具寿命はより長くなります。
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