「わかりやすい図面」と「わかりにくい図面」の違いを学ぼう

本記事では「わかりやすい図面・わかりにくい図面」について書いていきます。

図面というのは「設計者の要求が製造者に完全に伝わるものであり、尚且つ製造可能なもの」でなければなりません。

図面の書き方は、会社が違えば表現が違うなど様々です。例えば製図をする際に参考とする規格はJISにあり、JIS規格は時代とともに改定を繰り返しており、旧規格のJISに則った製図をしている会社もあれば、新JISに移行している会社もあるという事です。

また通常、図面は他人が容易に見ることが出来ないように厳重に管理されているため、他の会社の図面を見る機会は多くありません。

JISですら新旧で表現が違う為、同じ図面だとしても、製造場所が違えば要求が思った通りに伝わらない事もあります。

わかりやすい図面を言い換えると「誰にでも伝わる図面」です。旧・新JISによって解りやすさが変わるのではなく、設計者の書き方によってわかりやすい図面とわかりにくい図面が分かれます。

わかりやすい図面は何が違うのか、何をすればわかりやすい図面になるのかをまとめていきます。

わかりやすい図面とわかりにくい図面の違い

それでは、わかりやすい図面とわかりにくい図面の違いを説明していきます。わかりやすい図面を書くには、JIS(JIS B 0001:機械製図)による表現と、図面作成に当たっての前提条件を把握する必要があります。

JIS B 0001の規格に関しては多くの製図者が把握している内容なので、ここでは規格にはない重要な製図ポイントを解説します。

図面作成に当たっての前提条件

まず、図面作成に当たっての前提条件を知る必要があるので、ここでは部品図を例にして説明していきたいと思います。

部品図は一般的に別会社の製造部門に送られ、図面から実物に再現されます。

製造側から見て、見慣れた部品や量産部品は過去の履歴があるので把握しやすいですが、一方、新規の図面が送られてきた場合、

・その部品がどんな機械にどんな取り付け方法をするか解らない

・その部品の用途が解らない

という状況になります。

設計者の要求は「作った部品を正しく組む事ができ、その組立品が機能を満たすこと」ですが、製造側は用途や各寸法・公差が目的としている意味を部品図を見ただけでは理解出来ません。

その為、図面が正となり、少し変な表現や難しい形状であったとしてもそのまま作られることになります。

設計者の書いた図面において、過剰な精度要求や記載ミスによりコスト増、組立品の品質低下はよくある話です。

したがって、設計者のお想いが伝わる図面、ちょっとしたミスを是正できる表現のある図面を書けないと欲しい部品は仕上がってこないのです。

わかりやすい図面を書くために意識する事の基本4項目

わかりやすい図面とは「誰にでも伝わる図面」です。

以下にわかりやすい図面を書くために意識する項目をまとめます。

①部品の向きは極力平面加工方向にし、誤認しにくい図面にする

設計者は組立方向で図面を書きがちですが、作図の時に「加工しやすい図面」を意識し、加工しやすい向きで書くのが理想です。

例えばザグリ穴など、補足で(裏面ヨリ)と入れるよりも加工方向から見える(ザグリが表面にくる)向きで書くことで勘違いを避けることができます。

設計者はCADやPDFで図面をみますので、細部まで見易く、形状を把握しやすいのですが、製造現場では「加工→処理→仕上げ→検査→梱包出荷」を紙で回る事が多くあるため、印刷した図面がこすれたり、油がついてしまったりなど、電子データで見るよりも把握が難しくなる場合があります。

このような製造環境を考慮し、点線が実線に見えないような見易い図面が必要です。また、これは加工ミスを減らす為にも効果を発揮します。

②寸法の入れる基準を左上からにして統一感を出し計算ミスを防ぐ

これは多くの会社で気にしている部分かと思いますが、寸法の起点(基準点)が統一されている図面は良いです。

機械製図において基準面・基準穴などはとても重要で、図面データでは「位置ずれゼロ」でも、実際のものは積み重ねなので寸法が1/100や1/1000単位で前後します。

基準を揃えることで製作側は確認計算などがしやすくなりますが、ある図面は左上、次の図面は右上からなど、基準が統一されていないことで確認計算の手間が増えます。

一番怖いのは実際に加工してもらう向きと図面の向きが違う事による製作ミスが起こる可能性です。

統一感を持つことは図面にとってとても大切です。

③部分別に寸法をまとめ、形状を把握しやすくする

機械製図において、図面内の寸法は重複しないように記載するというのが基本です。

その為、その部品の一部を表す寸法を入れても、他に同じ寸法があれば重複してしまうのでどちらかを優先して残します。

しかし、重複する理由で消した寸法があったほうがわかりやすい場合があります。

その場合は( )を使用するなどしてメイン寸法じゃないという想いを伝えることができます。製造者がパッと目にした範囲に関連寸法があることで製造者は把握しやすく、関連寸法を改めて探す手間がなくなります。

これもわかりやすい図面のポイントとなります。

④求める品質をコメントで記載して製造者が悩まないようにする

機械部品は合致、はめあい、締結など他の部品との関わりが強いので、JIS規格だけに頼った製図では伝えるのが難しい時があります。

その為、多くの図面には補足として注記を利用し、例えばよく見る「バリ無き事」などを記載します。

「バリ無き事」の一言は製図者としては包括的で楽な指示であり、製造側としては基本的に全てのバリを処理してくれますが、「指定の場所バリ無き事」の方が、バリとりの程度を悩まない表現になります。

また、H7穴などの精度穴はどうでしょうか。 穴をあける刃物は磨耗しますから、基本的に先細りの穴になります。 その場合は穴寸法の隣に「有効深さ10」など、有効深さを指定するだけでも製造側は把握しやすく、無駄な事をしなくて済みます。

その補足がなかった場合「どこまでH7があれば良いのだろう?」と、聞かなければわからない図面になります。(貫通穴には必要ありません)

また、嵌めあう部品2個を、個別部品図で各公差与えると同時に、コメントで「部品◯◯と円滑に嵌めあうこと」などと追加記載するだけで仕上がりの品質が良くなります。

先に述べた「ちょっとしたミスを是正できる表現のある図面を書けないと、欲しい部品は仕上がってこない」はまさにこれを指しています。

2部品別図に各はめあい公差を与えても、実物の2部品を組み合わせた場合、はめあいがキツくイメージと違うものが出来上がってしまう場合があるので、こういったコメント一つの記載で製造側が対応してくれます。

コメントの記載は手間ですが、それにより後工程がスムーズに流れる事を考えると、コメント一つの重要さが理解できます。

わかりやすい図面まとめ

このように、誰にでも伝わるわかりやすい図面は、規格に則った内容にプラスして、製造側にお願いしたい内容が丁寧に記載されている図面だと思います。

図面は基本的に一方通行なので、製図者が「誰にでも伝わる図面がかけた」と思っていても、製造側には伝わっていない事もあるかもしれません。

現場とのコミュニケーションを大切にし、現場の声を図面に反映させるという事、それを繰り返し、相手に伝わる表現を学ぶ事が大切です。

 

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