2025-01-15
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超音波とは、一般的に人が聞き取れる周波数の範囲外の音波のことを指します。音は音源が振動することで、耳の鼓膜に伝わり聞き取ることができます。しかし超音波では、人間に聞こえる範囲より高い周波数の振動が発生しているため、聞き取ることができません。
超音波は高い周波数であることを利用して、洗浄・計測・加工などのさまざまな用途に採用されています。今回は、超音波により刃物や砥石を振動させて、精密加工や微細加工を実現する加工方式「超音波加工」について解説していきます。
超音波加工とは、刃物や砥石を搭載した工具を超音波で振動させ、ワークに押し付けて加工することを指します。
刃物や砥石を超音波振動させることで、硬くて脆い材料や難加工材料であるセラミックやガラスなどでも高い精度で加工できます。また、超音波加工は加工速度に優れているほか、加工抵抗の低減により刃物の寿命が延び、作業効率の向上が期待できます。
超音波加工機は、超音波振動できる振動子と、ワークを加工するための刃物や砥石、振動子を動かすための発振器などで構成されています。上図は超音波加工の切断・切削に使われる機器の例ですが、種類によっては振動子や刃物・砥石の部分が他の部品に置き換わります。
切断・切削に使われる振動子は、超音波振動を発生させるBL振動子、BL振動子の振幅を拡大する固定ホーン、ワークを切断したり削ったりするための刃物や砥石で構成されています。
発振器は、電力を超音波に変換するための機器です。作動周波数は15kHz~40kHzほどで、効果や用途によって値が変わります。超音波切削で使う発振器は「定振幅回路」を搭載しており、刃物などの先端振幅を一定にしています。これにより、被加工物の有無や加圧力に関わらず設定した振幅になり、一定の切れ味を保てるようになります。
超音波加工は、1秒間につき1万5千~4万回の超音波振動を砥石や刃物に加えることで、切削・研削抵抗が低減し、加工速度や精度の向上を実現しています。従来の加工機では切りくずが刃先や砥石に付着してしまい、本来の加工性能が損なわれてしまう傾向にありました。しかし超音波を利用すれば、被加工材が微細に破壊されるので、切りくずの排出性が向上し、優れた加工性能を維持したまま切削や研削が行えます。
・加工速度と精度の向上
・切削・研削加工における被加工材のカケ・バリ・クラック発生の低減
・加工抵抗の低減による刃物や砥石の長寿命化およびコストの削減
・細穴や深穴、硬脆性材料の加工に対応
・圧接時の不純物除去が可能
以上のように超音波加工はメリットが豊富で、生産性の向上が期待できます。
・大きい部品、立体的な形状や不規則な形の加工が困難
超音波加工は、大きなワークに対して振動を大きくする必要がありますが、振動が大きすぎるとワークに与える衝撃も大きくなり、キズがつく恐れがあります。また、ワークが複雑な形をしていると、一定の圧力を与えられない箇所が出てくる場合もあります。
超音波加工は、ワークを切断・切削する以外にも、利用されています。ここでは超音波加工の一種である、超音波砥粒加工・超音波切削加工・超音波接合についてご紹介します。
超音波砥粒加工は、超音波振動させた工具とワークとの間に砥粒を流し込み、微量に粉砕していく加工方式です。
ワークは工具で削られるというよりも、超音波振動の力を得た砥粒で微細に削り取られます。超音波砥粒加工では、極細穴や多数同時穴加工が可能です。
超音波切削加工は、従来の切削加工に超音波振動を組み合わせた加工方式です。
超音波切削加工では、基本的に切削方向と同じ方向に工具へ振動が与えられます。工具が振動の周期に合わせてワークに接触と非接触を繰り返すことで加工を行います。工具がワークから離れるタイミングがあることで、加工時の工具の負担を軽減できます。
また、発熱も抑えられるので、熱によるワークの変形も少なく済みます。
超音波接合は、圧接に超音波振動を組み合わせた加工方式です。
圧接とは、加圧溶接の略で、機械的圧力を加えて接合することを指します。圧接では母材表面を清浄な状態にする必要がありますが、超音波振動により不純物を取り除くことが可能です。
また、超音波接合では熱があまり発生しないため、融点の異なる金属やプラスチックなども接合できるメリットがあります。
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