大川 嘉雄
有限会社大川板金 取締役
創業50年、板金加工・機械加工等の金属加工を手掛ける有限会社大川板金で取締役を務める。町工場の3K(きつい、汚い、危険)イメージを変え、カッコいい人達で溢れる職場を目指している。
金属加工の中にはさまざまな種類があります。ドリルを使った加工ひとつ取っても成形を目的としたものもあればネジ穴を通すためのものもあり、使用する金属や目的・用途に合わせてドリルの種類も変わります。
今回は、切削加工の中でも数ある種類のひとつ、タップ加工について、特徴や種類、注意点などを解説していきます。タップ加工の精度をアップさせるための注意点や作業手順を知りたい方などもぜひ参考にしてください。
タップ加工とは、金属にあらかじめ開けられている穴に対し、ネジが通るような螺旋状の溝を彫っていく加工のことを言います。そのため、外側に螺旋状の切れ刃が付いている、タップと呼ばれる工具を使って加工をしていきます。
一般的には、ボール盤をはじめとする切削用の機械に取り付けて加工することが多いですが、タップハンドルを使い、手作業で加工している工場もまだまだ少なくありません。
タップ加工はネジ山を作ることが目的であり、ドリルのように穴を掘っていくことを目的としていません。そのため、必ずネジのサイズに合わせた下穴が必要となります。
切削式タップ加工は、最も一般的なタップ加工で、あらかじめ開けておいた下穴に切削式のタップを差し込んで溝を彫っていくことでねじ山を成形していく方法です。
ネジ穴を彫る場合、あらかじめ使用されるネジに合わせた径の下穴が掘られます。そして、その穴に合わせ、使用されるネジがきちんと閉まるようにサイズの合った溝をタップを使って彫っていきます。タップの種類を間違ってしまうとネジのサイズが合わなくなってしまうので、工具選びには十分注意する必要があります。
転造式タップ加工は、強い力を加えることで金属を塑性変形させ、金属を押し広げてネジの溝を成形していく加工方法です。加工時に切削の切り屑が出ないメリットがある反面、ねじ山とねじ谷が成形される時の適正な材料を計算しておかないと量が余ったり不足したりしてしまい、うまくネジ穴が完成しなくなってしまうので注意が必要です。
タップ加工は、加工方法によって種類が分かれています。
スパイラルタップは、螺旋状に刃が切られたタップのこと。切削時、切粉が詰まってしまわないよう刃の間に溝が切られていて、彫り進めて行くと切粉が上に上がってくる構造になっています。これは、切粉が下に落ちて切削の妨げになってしまうのを防ぐためです。
ポイントタップは、ポイント溝を持つタップです。スパイラルタップと違い、切り屑を下側に排出する特徴があります。止まり穴に用いると切粉が下に溜まってしまうため、通り穴ねじ加工にのみ用いられます。使用する場面は限られますが、切削トルクが低く、タップ加工が安定する特徴があります。
転造式のタップ加工に用いられるのがロールタップです。スパイラルタップやポイントタップと違い、溝がないのが特徴です。切削タップに比べて耐久性が高く、塑性加工によってねじ山を盛り上げて成形していくため、アルミニウムの圧延をはじめ、柔らかい素材のねじ穴加工に向いています。
タップ加工の工程は基本的に以下のふたつに分けられます。
1.下穴を開ける
タップ加工は、切削式、転造式共に下穴が必要です。開ける穴のサイズは使用するネジのサイズによって変わります。大きな穴を開ける場合、最初から太いドリルを使うより2回、3回に分けて少しずつ大きくしていった方がキレイな下穴を開けることができます。
下穴を開ける際の注意点は、穴がきちんと垂直になっているかを確認しておくこと。もし、斜め方向に穴を開けてしまった場合、ネジ穴も斜めになってしまったり、場合によってはタップが折れてしまったりする可能性があるので注意が必要です。
2.下穴にタップを入れる
下穴が空いたらいよいよタップでネジ山を生成していきます。一般的にはボール盤が使用されることが多いです。切削時には切削油が必要です。用途に合った切削油を使用しなければ切粉が詰まってしまう、またタップの刃が痛み、加工不良につながるので要注意。タップはきちんと垂直に設置し、タップ穴に合わせて真っすぐに押し当て回転させましょう。
タップ加工に似た加工として、ドリル加工やリーマ加工があります。リーマ加工は、あらかじめ開けられた下穴を使ってより広い穴に拡張する加工のこと。ドリル・リーマ共に穴を開けるための工具であり、ねじ山を生成することはできません。
タップ加工は、ねじ山を生成することを目的としており、タップを使って穴を掘ることはありません。そのため、似たような工程をたどるものの、目的・用途は大きく異なります。
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