2024-09-18
更新
染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
SUS305は、クロム18%、ニッケル13%、炭素0.1%程度の含有率を持つステンレス鋼の一種です。耐食性や加工性、強度などに優れ、磁性を持ちにくいことから、非磁性材料として使用されることが多い金属です。
SUS305は、オーステナイト系ステンレス鋼に属し、SUS304にニッケルを加えることで加工性や高温強度などを高めた材料です。
SUS305はオーステナイト系ステンレス鋼です。オーステナイト系ステンレス鋼は、磁性を持たない非磁性材料です(*1)。SUS305は、ニッケル含有量が増加したことでマルテンサイト変態(*2)が起こりにくくなっています。
(*1)一部のオーステナイト系では、冷間加工によってマルテンサイト変態を起こし、マルテンサイト系ステンレス鋼と同じく磁性を持つことがあります(例:SUS304)
(*2)マルテンサイト変態は、炭素(C)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)などの含有量が多いほど起こりにくくなります。
非磁性であることの目安は、磁化のしやすさを表す透磁率が1.02以下であることです。SUS305の透磁率は、冷間加工率が50%程度でも1.00近辺を維持しています(上図参照)。
なお、上図の「XM7」は、SUSXM7と表記されるオーステナイト系ステンレス鋼で、SUS304に銅を添加することで磁性を帯びにくくしたものです。
非磁性の特性から、SUS305は、磁性を嫌う通信機部品や医療器具に使われています。また、磁石と共に使用される機械部品にも用途があります。特に、電気自動車等に用いられるモーター部品には、高強度かつ、モーターの磁石によって磁化せず、モーターの回転性能に影響を与えないSUS305がよく採用されています。
SUS305の化学成分は、JIS規格(JIS G 4305:2012)によって上表のように定められています。上記で触れたSUSXM7、比較のために挙げたSUS304の化学成分も併せて載せています。
SUS305は、SUS304に比べてニッケルの含有率が大きく、それによって上述のように磁性が変化するほか、耐食性や加工性も向上します。
なお、耐食性と加工性についてSUS305、SUS304、SUSXM7の3鋼種を比べると、以下の通りとなっています。
耐食性 SUS304 < SUS305 < SUSXM7加工性SUS304 < SUS305 < SUSXM7
価格についても以下の通り、同様の関係が成り立ちます。銅が高価であるため、銅を含有するSUSXM7は最も高価です。ニッケルも安価とはいえず、ニッケルを多く含有するSUS305は、SUS304よりも高価です。
価格 SUS304 < SUS305 < SUSXM7
SUS305の機械的性質は、JIS規格(JIS G 4305:2012)によって上表の値を満たすものと規定されています。SUSXM7とSUS304の特性についても比較のために記載しています。
SUS304と比べると、SUS305は、耐力が低く、塑性変形しやすい材料です。また、ニッケル含有率が大きいことで加工硬化が起こり難くなっています。それゆえに、SUS305は、加工性が高く、圧造加工や板金加工などに向いています。しかしその一方で、引張強さが小さいために強度が低く、加工硬化が起こりにくいために硬度も低くなります。
なお、SUSXM7は、SUS305よりもさらに加工性が良好ですが、それに応じて強度もSUS305より低くなっています。
SUS305の物理的性質については、上表の通りで、SUS304との違いはありません。
なお、オーステナイト系ステンレス鋼に共通する特徴として、その熱伝導率の低さと電気抵抗の高さが挙げられます。上表の熱伝導率「16.3」は、純鉄の4分の1ほどで炭素鋼の3分の1から2分の1程度、電気抵抗「72」は、純鉄の約7倍で炭素鋼の4〜5倍程度です。
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