染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
表面処理と聞くとどんなものを思い浮かべますか?本や自動車、スマートフォンなど、手元にある製品の多くが、キレイな見た目で世に出ていて、何かしらの「キレイに見せる加工」が施されています。
金属製品についても例外ではなく、塗料を塗ったり特別な処理をしたり、さまざまな加工が施されています。そして、その目的はただ見た目をキレイにするというだけではありません。
今回は、表面処理について、どんな目的・用途で取り入れられているのか、その効果や処理方法などについて解説していきます。
表面処理とは、表面に対して行われる加工のことです。見た目を整えるという役割もありますが、強度や耐久性を高めるなど、見た目以外の目的があります。
代表的な表面処理には、めっき加工や塗装などがあります。車のコーティングや外壁の塗装などもそのひとつで、光沢があって見た目がキレイになるということよりも、表面処理をすることで、劣化を防ぎ、耐久性を高めることを主な目的としています。
表面処理には、さまざまな手法や素材が用いられます。先ほど少し触れためっきや塗装以外にも、さまざまな方法があり、鉄や鋼、アルミニウムなどの素材によってもチョイスする処理方法が異なります。
では、実際にどのような金属処理があり、それぞれにどんな目的・用途で用いられるのでしょうか。1つひとつ解説していきます。
めっきは固体の表面に金属を成膜させる技術のこと。自動車の外装をはじめ、さまざまな製品がめっきによって表面処理をされていますが、実はめっきは見た目以外の用途にも多く活用されています。
めっきは「メッキ」と書かれることもありますが、外来語ではなく日本語で、もともとはアマルガム法という金を水銀に溶かす手法が元で「滅金(めっきん)」と呼ばれていたことが始まりです。その後「鍍金(めっき)」と呼び方が変わりましたが、常用漢字ではないことからJISや表面技術協会などでは平仮名の表記で統一されています。
塗装は、めっきと同じように装飾や保護、防錆などを目的として用いられる表面処理です。めっきと違い、常温・大気下で塗布できるメリットがあり、鉄製品以外にもさまざまなものに活用されています。また、塗装は、薄い膜を生成するコーティングと、厚い膜を張るライニングに分かれます。
塗布する「塗料」にはさまざまな種類があり、色を塗るペンキや床のコーティングに用いられるワックスなど、普段の生活になじみ深いものも多くあります。その使いやすさから、多くの素材に用いられますが、めっきに比べると強固な被膜になりにくい点は注意が必要です。
塗装はその手軽さから、塗布にさまざまな方法が用いられます。その中でも、よく用いられる塗装方法についていくつかご紹介します。
●ハケ・ローラー
建物の外装や床のワックスがけなどに使われる手法で、最も手軽な塗布方法です。
●吹付塗装
塗料を霧状にして吹き付ける塗布方法です。最も手軽なものとしては缶のスプレーがあります。また、建築現場などの広範囲の塗布ではエアコンプレッサーが用いられます。
●ロールコーター
大型のゴムロールで厚みのある塗膜を作る際に使用されます。合板をはじめとする平板の塗布によく用いられます。
●焼付塗装
高温の環境で30分以上加熱し、塗料を硬化させる表面処理方法です。メラミン焼付、アクリル焼付、ウレタンや着付、フッ素焼付などがあります。
アルマイトは、アルミニウムを電解処理し、酸化被膜を生成させる表面処理のことです。
アルミニウムは酸素と結びつきやすいため、もともと薄い酸化被膜が生成されます。これは、防錆性や耐食性が良く、そのままでもある程度の表面処理がされた状態となっています。しかし、アルミニウムの皮膜は非常に薄いため、環境によってはすぐに機能しなくなってしまいます。そこで、よりきちんとした表面処理の方法として用いられているのがアルマイトです。
アルマイトは、アルミ製品を取り付けた治具を電解液の中に入れ、電流を流すことで表面に酸化被膜を生成します。一般的な塗料などと違ってアルマイト皮膜は表面に無数の孔があきます。そのため、防錆性や耐久性の向上などに加え、耐摩耗性や撥水性に優れている上、電気絶縁性や高い硬度を持つ表面処理となっています。
鋼に対し、表面を硬化させる処理方法のことで、内部は鋼独特の靭性を持たせたまま、表面だけを硬化させます。手法としては、浸炭や窒化処理、高周波焼き入れなどが代表的です。表面硬化をすることで、鋼の耐摩耗性は疲労強度などを向上させることができるため、鉄鋼製品の多くに表面硬化が採用されています。
ただし、浸炭で727℃以上、窒化処理でも500℃程度に加熱するため、めっきに比べて処理温度が高く、製品が変形してしまうことが欠点です。そのため、加工後に修正を必要とすることも少なくありません。
表面熱処理は、熱処理によって硬化した鋼の中でも、靭性を維持しつつ、耐摩耗性や疲労強度、潤滑特性などを要求される鉄鋼製品の表面に対してさらに熱処理を加えることで表面の強度を増す加工技術のことです。
表面熱処理は「表面焼入れ」と「熱拡散処理」の2種類に分類されています。表面焼入れは鋼の中でも必要なカ所に対して急速に加熱させ、硬化処理を施す表面処理方法です。
一方、熱拡散処理は金属・非金属によって処理方法が異なるほか、耐摩耗性や耐食性、摺動性など、処理によって付与される特性も異なります。そのため、加工する素材や目的・用途に応じて適切な表面処理方法を選択する必要があります。
溶射は、溶射剤と呼ばれる材料を吹き付けて皮膜を作り出す表面処理のことです。加工物に、加熱することで溶融、またはそれに近い状態にした金属やセラミックス、プラスチック、サーメットなどを吹き付け、粒子を凝固させ、密着することで皮膜を形成させます。
厚い膜を比較的簡単に作れる点と、現地での施工が可能な点から、橋梁や鉄塔をはじめとする大きな建築物の表面処理にも用いられています。
エッチングは化学薬品などの腐食作用を使った表面加工の方法です。銅や亜鉛だけでなく、腐食性のあるものであれば幅広く対応することができますが、銅板による版画や印刷の技術として発展してきた経緯があるため、銅や亜鉛の金属加工に用いられることが多いです。
液体を使う「ウェットエッチング」と、気体を使う「ドライエッチング」があり、金属加工だけでなく、半導体工学にも応用されています。また、芸術やインテリアから産業用の精密部品や電機部品、医療機器など、幅広い分野の製品に用いられている表面処理の技術です。
化成処理とは、主に金属の表面に処理剤を塗布し、化学反応を起こすことで耐食性を強くしたり、塗料との親和性を向上させたりする表面処理のことです。
金属によって素材の作用が異なるため、皮膜を形成するために用いられる処理剤はそれぞれに異なっていて、亜鉛やめっき、カドミウムめっきに対してはクロメート処理、鉄を対象とする場合はリン酸皮膜処理や黒染めなどが用いられます。
表面処理というと、塗料や素材でコーティングしたり、特別な手法を用いて皮膜を生成することのように思われがちですが、洗浄や研磨、ブラストやショットピーニングによる表面の改質などもその一種です。
表面を覆う訳ではないため強度が上がるわけではありませんが、高い強度を必要としない場合に、錆の除去によって劣化具合を回復させたり、鏡面仕上げによって見た目を改善したりする表面処理が取り入れられています。
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