染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
「バネに使われる素材の特徴を知りたい」
「バネ用のステンレス鋼は、どれを選べばいいのかわからない」
「バネ制作ができるいい工場が見つからない」
バネ製作を依頼したい場合、上記のような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
バネに使用される素材のひとつである「バネ用ステンレス鋼」には、SUS301やSUS304などさまざまな種類があり、それぞれで特徴が異なります。そのため、バネ製作を依頼する際にどの素材を選べばいいのかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、バネ製作を依頼したい方へ向けて、バネ用ステンレス鋼の種類や特徴について解説します。メリットやデメリットも紹介するので、バネに使用される素材について知りたい方は、ぜひご一読ください。
バネに使用される素材には、リン青銅やピアノ線などさまざまものがあります。その中でもバネ用ステンレス鋼とは、バネに使用されるステンレス素材を総称した呼び名です。
バネ用ステンレス鋼全体の特徴として、メッキ処理や防錆処理を行うことなく、さまざまな使用環境で利用可能です。
また圧延加工によって高い硬度を得ることができるため、比較的製品強度が必要な環境でも問題なく使用できます。
バネ用ステンレス鋼で作られたバネの用途はさまざまです。自動車部品やスマートフォンのドームスイッチ、文房具などの幅広い分野で使用されています。
この項目では、バネに使用されるステンレス鋼全体の種類について解説していきます。
それぞれの素材でJIS規格や特徴が異なるので、しっかりと把握しておきましょう。
SUS301は、SUS304からニッケルとクロムを低減させ、炭素の含有量を多くした素材です。JIS規格でいえば「JIS G 4313 ばね用ステンレス鋼帯」に分類される素材です。
特徴として、冷間加工によって素材強度を向上させられるため、ほかのステンレス素材と比べて強度が高くなります。そのため、耐久性が要求されるドームスイッチなどに使用するバネを作りたい場合はSUS301がおすすめです。
SUS316-WPAは、SUS304に耐食性のいいモリブデンを添加したSUS316系の素材です。
SUS◯◯◯の後に続く「WP」は鋼線を表す記号です。そのためSUS316-WPAは「JIS G 4314 ばね用ステンレス鋼線」に分類されます。WPの後に続く「A」という記号は、たとえばφ1mmの場合に引張強度が1530pa~1780Mpaあるという意味です。
特徴として、ニッケルの含有量を増やしているため、耐食性が非常に高くなっています。腐食が起きやすい環境でバネを使用する場合は、SUS316系の素材を用いるのがおすすめです。
SUS304は、バネに使用されるステンレス鋼の中でも代表的な素材です。「JIS G 4313 ばね用ステンレス鋼帯」「JIS G 4314 ばね用ステンレス鋼線」の両方に分類があります。
SUS304は、そのほかのバネ用ステンレス鋼(オーステナイト系)のベースになっており、ニッケルや炭素などの配合を変えることで、SUS301やSUS316などに種類が変わります。
他のステンレス鋼と比べて、冷間加工性や溶接性に優れており、曲げ加工や溶接加工なども行いやすい素材になります。
オーステナイト系の素材の中でもベーシックな素材ですので、一般的な加工性や耐食性を求めるのであれば、SUS304を選ぶのがおすすめです。
SUS304から炭素の含有量を少なくした素材がSUS304Lになります。「JIS G 4313 ばね用ステンレス鋼帯」に分類されます。
特徴として、ニッケルの含有量が多くなっているため粒界腐食耐性に優れています。粒界腐食耐性とは、素材の結晶粒界に沿って腐食が進行する局部腐食への耐性が強いということです。
粒界腐食は、溶接などで素材自体が高温になった場合に起こりやすい腐食になります。つまり、SUS304Lは溶接加工性が優れているということです。そのため、溶接加工を行う場合におすすめの素材となっています。
また、SUS304やSUS301と比べて硬度が低いので、曲げ加工や切削加工などが行いやすいメリットもあります。
SUS631J1-WPCは、析出硬化型のばね用ステンレス鋼です。「JIS G 4314 ばね用ステンレス鋼線」に分類され、たとえばφ1mmの場合の引張力が1800Mpa~2050Mpaの素材になります。
加工や用途に合わせて熱処理を行うことで、SUS301などよりも硬い強度を得られる特徴があります。溶接性や耐食性が高いため、精密機械部品に使用するバネ製作を依頼したい場合におすすめの素材です。
バネ用ステンレス鋼は、基本的に耐食性や耐久性が高いのがメリットです。そもそもステンレスとは、主成分になる鉄にクロムやニッケルなどを加えることで作られた合金素材です。
鉄にクロムを混ぜると、ステンレス鋼の表面には、薄い酸化皮膜(不動態皮膜)と呼ばれるものが発生します。この皮膜があらゆる媒体を遮断するため、素材が腐食することなく長持ちするため耐食性が高い素材となっています。
さらにこの不動態皮膜は自動的に形成されるため、サビの発生を防ぎ続けることができます。また、不動態皮膜があるためメッキ処理や塗料などによる防腐処理工程を省けるメリットもあります。
バネ用ステンレス鋼のデメリットとして、鉄やその他の金属と比較して溶接が難しい素材が多い点が挙げられます。
基本的に、オーステナイト系や析出硬化系のステンレス鋼は、炭素鋼などと比べて線膨張係数が1.5倍ほど高く、熱伝導率も低いです。そのため、溶接入熱によってバネ自体が変形しやすいので、溶接加工を行いにくいデメリットがあります。
また、バネ用ステンレス鋼は引張力が強いため曲げ加工が行いにくいです。引張力が強いということは、加工に要する加圧力が多く必要です。炭素鋼などを加工する設備と比べて、約1.5倍の力を要するため、専用の設備がなければ加工が難しい可能性があります。
今回は、バネ用ステンレス鋼の種類やメリット・デメリットについて解説しました。バネに使用されるステンレス鋼はさまざまな種類があり、特徴も異なります。そのため、作りたい製品や使用環境に合わせてバネ用ステンレス鋼の素材を選びましょう。
また、工場によっても素材価格や加工費用が異なるため、複数の企業の企業から見積りを取って比較検討を行うのがおすすめです。ただ、そのための工場選定には時間と労力がかかり非常に大変なのではないでしょうか。
そこでおすすめしているのが、金属加工のWeb見積りを簡単に行えるMitsuriのサービスです。
Mitsuriは日本全国250社以上のメーカー様とお取引を行っています。取引メーカーの中にバネ用ステンレス鋼の見積りをお願いできる会社は多数あります。バネ用ステンレス鋼の加工依頼について悩んでいる方は、複数社から同時見積りが取れるMitsuriに、お気軽にご相談ください。
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