2025-01-15
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「ソレノイド」とは、電磁力を利用して、電気エネルギーを機械的運動に変換する電気部品を指します。あまり聞き慣れない用語ではありますが、私たちの身近なところで電化製品や、自動車、自動販売機など、さまざまな用途に広く利用されており、私たちの生活に欠かせない電気部品の一つです。
今回は、この「ソレノイド」をテーマに、ソレノイドの用途や使用事例をご紹介した後、ソレノイドの原理や仕組み、その他にも、ソレノイドの種類や、ソレノイドを選ぶ際に注意するべき点など、幅広い内容について詳しく解説していきます。
ソレノイドについてさらに知識を深めたい方や、ソレノイドでお悩みの方は、ぜひご一読ください。
まず初めに、ソレノイドの用途について見ていきましょう。
冒頭でも述べましたが、ソレノイドは私たちの生活において幅広い用途で利用されています。例えば、家電品、OA機器、FA機器、金融端末、電子錠、自動車、自動ドアなどに用いられています。近年では、福祉・医療分野などの機器においても使用されており、その用途がますます拡大しています。
以下、具体的な使用事例についてご紹介していきます。
コインメックとは、自動販売機などの内部に搭載されている「つり銭機能内蔵(硬貨循環式)セレクター」を指します。自販機でお釣りの硬貨を出す際、このコインメック内で、積み重なった硬貨を電気信号によって一枚ずつはじき出す機構に、ソレノイドが利用されています。
自動改札機の切符送り機構や、切符などの紙に穴を空ける目的で、ソレノイドが使用されています。
スロット機とは、コイン作動式のゲーム機です。
このスロット機内において、メダルの搬送、各スロット機へのメダルの振り分け、規定量を超えてのメダル投入の防止の機能をもちます。その他にも、台間機の硬貨投入口には、停電時などに硬貨が投入防止シャッターの役割など、スロット機ではさまざまな役割を持つソレノイドが使用されています。
引用元:天竜丸澤株式会社
ソレノイドは、一般的に、上図に示したように、固定鉄芯に銅線がコイル状に巻かれており、その中を可動鉄芯が上下するような構造を持っています。仕組みについては後述しますが、ソレノイドは電磁力を応用して、可動鉄芯を一方向に運動させることができる電気部品です。モーターと同じような機能を果たしますが、モーターと比較して、ソレノイドはより単純な構造を持つ上、コイルに通電するだけで動作することから、駆動が非常に簡単です。
それでは、次にソレノイドの仕組みについて見ていきましょう。
まず、ソレノイドには、前述した通り、固定鉄芯と可動鉄芯が設けてあり、コイルに電流を流すと磁界が発生し、電磁誘導の法則によって、可動鉄芯が固定鉄芯へ吸い寄せられます(吸引)。通電している間は常に吸い寄せられていますが、電流を遮断すると、この吸引力は消滅し、戻しバネなどの負荷により元の位置へと復帰します。このような仕組みで、ソレノイドは電気エネルギーを機械的運動へと変換させています。
次に、ソレノイドの種類について見ていきましょう。ソレノイドの種類は大きく分けて次の3つが挙げられます。以下、それぞれの仕組みの違いについて解説します。
プルソレノイドは、引っ張る力を作動力として利用するソレノイドです。最もスタンダードなタイプのソレノイドで、広く利用されています。ソレノイドの動作の仕組みについて前述した通り、このプルソレノイドでは、電流を流すことで、可動鉄芯が固定鉄芯の方向へ吸い寄せられられます。
プッシュソレノイドは、突き出た可動鉄芯で押す力を作動力として利用するソレノイドです。その動作の仕組みは、プルソレノイドと同様、電流を流すと、可動鉄芯(プランジャー)が固定鉄芯の方向へ吸い寄せられられるというものです。
しかし、プッシュソレノイドでは、上図のように、可動鉄芯が貫通しているため、可動鉄芯が吸引されると反対方向に突き出るタイプのソレノイドとなります。
前述したプルソレノイド、プッシュソレノイドでは、可動鉄芯を吸引された状態に保つためには、電流を流し続ける必要がありました。しかし、自己保持ソレノイドでは、ソレノイド本体に永久磁石を組み込むことで、電流が流れていない時でも、この永久磁石によって可動鉄芯の吸引状態を保つことができます。電流を流したままにする必要がないため、コイルの発熱を防いだり、電力の消費量を抑えることが可能となります。
また、ソレノイドにはAC電源で駆動するACソレノイドと、DC電源で動作するDCソレノイドが存在します。両方とも基本的な特性は同じですが、一般に以下のような特徴の違いが見られます。
●ACソレノイド:振動騒音が大きく電流値が安定しにくい。また、突入電流(通電する際に、瞬時に定常電流の10~20倍の電流が流れること)が発生しやすく、この瞬間に可動鉄芯を強力に吸引してしまうため、安定性が低い。
● DCソレノイド:電流値が一定で、騒音が小さく安定した動作が可能。交流電源と違い、オンオフ時の突入電流が発生しないという利点がある。このような理由から、市場にはDCソレノイドの方が、ACソレノイドと比較してより多く販売されています。
上述したように、ソレノイドには数種類のタイプがあるほか、使用する電源や、形、サイズ、また可動鉄芯の先端形状が異なるものなど、その種類は多岐に渡り、市場には約250種類以上もの製品があると言われています。
最後に、ソレノイドを選定する際に注意するべき点について見ていきましょう。主に、以下4点が挙げられます。
前述した通り、ソレノイドにはAC電源及び、DC電源によって駆動するタイプがありますので、用途によって適切な電源を選定することが必要となります。また、ソレノイドを使用する電圧も選択する必要があるので、事前に確認しておくことをおすすめいたします。
まず、前述したソレノイドの仕組みから、吸引力、ストロークという用語について、確認しましょう。
●吸引力:電流を流した際に可動鉄芯(プランジャー)を引きつける力
●ストローク:可動鉄芯(プランジャー)が吸引された際に動く距離
それぞれのソレノイドには、吸引力とストロークの特性が決まっており、ソレノイドを選ぶ際には、用途に合わせてこれらを選定する必要があります。
通電率とは、電流を流す時間の割合を指します。通電率は、次の式で求めることができます。
通電率 = 通電時間 / (通電時間 + 通電していない時間)
例えば、通電率が50%のソレノイドにおいては、通電時間が1分の場合、通電していない休憩の時間を1分設ける必要があるということです。通電率を守らず電流を規定以上に流し続けると、過度な熱が発生することでソレノイドが壊れてしまう場合もあるので、注意しましょう。
なお、通電時間などが不明な場合は、連続通電のタイプのソレノイドを選定すると良いでしょう。
ソレノイドには、大小さまざまなサイズがあり、必要な製品のサイズに応じてソレノイドの大きさを選びます。なお、ソレノイドは、水滴の付着や、気温の低下による氷結などによって、その機能が低下してしまう恐れがあるため、ソレノイドの設置の際には、設置場所にも気を付けることをおすすめいたします。
今回は、ソレノイドをテーマに、ソレノイドの用途や使用事例、またソレノイドの原理や仕組み、その他にも、ソレノイドの種類や、ソレノイドを選ぶ際に注意するべき点など、幅広い内容について詳しく解説しましたが、いかがでしたでしょうか。前述した通り、ソレノイドの種類は多岐に渡ります。そのため、用途に合わせて適切なソレノイドを選定するためにも、事前に必要なソレノイドの条件をしっかりと確認しておくことをおすすめいたします。
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