2024-09-18
更新
志民 直人
技術営業、カスタマーサクセス
切削加工歴29年の1級機械加工技能士(精密器具製作/フライス盤/数値制御フライス盤)。金型・部品加工経験を持ち、CAD・CAMや各種工作機械に精通。設計からカスタマーサービスまで幅広く対応。製造現場改善や治具設計も得意。趣味は日曜大工、ゲーム。
今回はSKD61の性質や用途などについて解説します。
SKD61とは、【JIS G 4404:2015 合金工具鋼鋼材】に規定されている、熱間金型用の合金鋼のことです。SKDの記号は、S:Steel(銅)、Kougu(工具)、Dies(金型)の意味を持ちます。
SKD61は、耐熱性や耐摩耗性などに優れていますが、加工性には乏しい特徴がある材料です。
SKD61とは、「ダイス鋼」とも呼ばれる熱間金型用の合金鋼のことで、炭素工具鋼にタングステン、モリブデン、クロム、バナジウム等を添加しています。SKD61は、耐熱性・耐ヒートショック性に優れていることから、主にプレス型・ダイカスト型・押出工具・シャーブレードなどの用途で採用されています。
メーカーによっては、相当鋼種としてDHA1やDACなどの名称で扱われているほか、改良鋼種として特性が異なる場合もあります。
SKDの代表成分は以下の通りです。
<SKD61の化学成分>
SKD61は、モリブデンの量が多いことから高温下での引張強さに優れているほか、バナジウムにより靭性も備えています。また、耐熱性も良好なことから、熱による亀裂が発生しにくいのも特徴です。しかし硬度が高く、耐摩耗性に優れている一方で、加工性には乏しいデメリットがあります。
SKD61は、焼入れ焼戻しを行うと高い硬度を示しますが、熱処理における寸法変化や歪みが発生しやすい傾向があります。熱処理後の硬度はHRC53~56程度です。
<熱伝導率 ※硬さ:45HRC>
<ヤング率(縦弾性係数)※硬さ:45HRC>
比重:7.73g/cm3(硬さ48HRC 熱処理品 20℃時)
SKD61は、硬度が高くて耐摩耗性に優れた材質のため、加工性には乏しい特徴があります。このことから、工具選びを誤ると刃が摩耗が激しくなったり、破損したりする恐れがあるので注意してください。加工は主に研削加工が採用されています。
ダイス鋼は、一般的に加工後に熱処理を施して硬度を得ます。熱処理の方法は、真空熱処理が適しています。
真空熱処理は、真空中で製品を加熱したり、ガスもしくは油で冷却したりする熱処理方法のことで、鋼材の表面が酸化しないことや、脱炭層が発生しないメリットがあります。脱炭層とは、空気中の酸素と鋼材表面の炭素が結合して、炭素を失う現象のことを指します。
また、寸法変化や硬度のバラツキが少ないのもポイントです。
一般的にダイス鋼は錆びやすい特徴があるので、防錆力を上げるためにはめっき処理が必要です。しかしダイス鋼は炭素が多く、酸化皮膜を形成するとめっきを施しにくくなるので、前処理には注意が必要です。ダイス鋼は耐摩耗性が求められる用途で使用するため、工業用硬質クロムめっきや無電解ニッケルめっきが多く活用されています。
SKD11は、冷間金型用のダイス鋼で、ゲージ・ねじ転造ダイス・金属刃物・プレス型などの用途で採用されている材質です。
熱処理後の硬度は、SKD61がHRC53~56程度に対し、SKD11はHRC58~62程度と高い数値を示します。
一方で、靭性と熱間引張強度については、300℃の環境下でSKD11は強度が急激に低下するのに対し、SKD61は一定の強度を保ちます。
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