染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
金属加工部品を依頼する時に、皆様はどれくらい時間をかけていますか?
図面を見た瞬間、「この部品はA社で調達しよう」と決めることができるでしょうか?
「金属部品を依頼する際、どの工場を選ぶべきか迷ったことがある」
「形状は板であるにも関わらず、板金加工工場ではなく切削加工工場で加工をすることになったことがある」
このような調達経験をお持ちの方へのアドバイスをいたします。
「板金加工と切削加工、どちらが適切か」
「なぜ切削加工で加工をすることになったのか」
この2つがわかるように解説します。
板金加工と切削加工で比較した時に、それぞれの加工にメリットとデメリットがあります。
メリットとデメリットを最初に理解することで、これ以降の説明も理解がしやすくなります。
精度、価格、板厚、および曲げ加工の観点から2つの加工を比較してみましょう。
切削加工は、板金加工よりも高い精度が得られます。
板金加工では、一般的なレーザー加工機の精度が±0.2程度なので、それが限界になります。ただ、切削加工でも公差の入れ方によっては加工が厳しくなってしまう場合があることを留意してください。
こちらの参考動画で具体的にどのような公差が加工が厳しくなってしまうか解説しています。
同じ製品の加工において、板金加工は切削加工よりも低価格で行うことができます。
板金加工では、t0.3~t20程度の板厚での加工が可能です。しかし、板厚の上限は材質や工場の設備により変動することがあります。
切削加工の場合、板が薄すぎると綺麗に削ることが困難になるため、板厚は通常t3からとなります。その一方で、板厚の上限は特になく、t30やt50の板厚でも加工可能です。
板金加工工場では曲げ加工が行えますが、切削加工工場では必ずしも曲げ加工が可能とは言えません。板金加工と切削加工の両方の設備を持つ工場であれば、切削と曲げの加工を同一の工場で対応可能です。
曲げ加工が必要な場合は、基本的に板金加工工場に依頼することをおすすめします。
求める精度、板厚、及び曲げ加工の有無を考慮し、これらの要件が板金加工の範囲内に収まる場合は、板金加工工場に依頼することでコスト効率的に部品を調達することができます。
もし板金加工の範囲を超える部分がある場合、切削加工工場や、板金と切削の両方の設備を持つ工場への依頼しましょう。
この考え方で他の加工についても比較していきましょう。
これ以降に紹介する加工は、基本的に"切削加工が大は小を兼ねる"と考えて大丈夫です。
板金加工の範囲を超える加工は切削加工で対応できますが、加工費が上がってしまいます。そのため、調達コストを最小限に抑えたい場合は、設計の見直しも検討しましょう。
一方、設計変更が難しい、または望ましくない、そして予算に余裕がある状況では、切削加工での依頼を検討しましょう。
厚さが10mmの板にM4,M5,M6のタップがあります。
切削加工であれば、これらのタップの加工は問題なく実施できますが、板金加工の場合、M4のタップは加工難易度が高くなります。M5のタップはグレーゾーンで、工場によってはNGの場合もあります。
その理由として、板金加工工場では主にボール盤か、レーザー加工とタレパン加工の複合機を使用してタップ加工を行っています。板厚の半分未満の径のタップを加工する際には、工具に大きな負担がかかってしまうため、加工をNGとしている場合が多いです。
ただ、鉄やステンレスと違い、アルミは材質がやわらかいので、加工を承ってもらえる場合もあります。
タップの径が大きくなると、ボール盤では対応しきれなくなります。
(レーザー加工とタレパン加工の複合機では、M6程度が限界です。)
ボール盤の設備能力にもよりますが、M12以上のタップの対応ができる機種が限定され、板金加工工場で加工ができない場合が出てきます。
ボール盤を使用した板厚面のタップや非貫通のタップの加工は難易度が高いです。
板金加工においては、レーザー加工やタレパン加工が主流であり、板の面に対する貫通加工は可能です。しかし、板厚面への加工や非貫通の加工を同時にすることはできません。
よって、板厚面や非貫通の加工をする際には、機械で高精度な加工が難しくなります。板厚面の加工は位置精度が出にくく、非貫通の加工はベテランの手腕でしか対応ができなくなります。高精度でキレイな加工を望むのであれば、5軸のマシニング加工を切削加工工場へ依頼するのがオススメです。
参考記事:5軸加工機についてご紹介!3軸加工機との違いについても解説
ナナメカットとは、レーザーのノズルを斜めにして切断する加工方法を指します。製造業界においては、同じ加工に対して異なる会社や担当者がそれぞれ異なる呼び名を使用することがあるため、「開先を取る」や「ベベルカット(ベベル切断)」とも呼ぶ場合もあります。
C0.3やC0.5の糸面取りであれば板金加工でも対応できます。しかし、特定の角度指定や、C3、C5など大きな面取りを求められる場合、板金加工工場では対応しきれなくなってしまう場合があります。
これも切削加工工場であれば対応できます。
最後にクイズです!
3つの部品を板金工場か切削工場のどちらに依頼するか、実際に判断してみましょう。
板金工場と切削工場、それぞれどちらに依頼するか決まりましたか?
正解は、こちらです!
①切削工場
②切削工場
③板金工場
それぞれ簡単に解説します。
①は板厚8mmに対してタップ径3mmといった「板厚の1/2未満の径のタップ」があるため、切削工場になります。
②は部品の板厚面(コバ面)に非貫通タップがあるため、切削工場になります。
③は板厚、タップの径、面取りすべてが板金加工の範囲内であるため、板金工場になります。
板金加工と切削加工で迷った際には、このページをまた参考にしていただけますと幸いです。
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