2024-09-18
更新
染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
きつい・汚い・危険の3Kと言われ、その厳しい労働環境から製造業離れが問題となっている今の世の中。
危険と言われつつも、仕事だから仕方なし。
そんな思いと後悔先に立たずの言葉を胸に、技術者たちは日夜ものづくりに明け暮れています。
板金加工はまさに、そのいつ訪れるか分からない後悔と隣接した作業が多くなる仕事です。
技術者たちの身体を守るために、安全対策は今や必須の責務となっています。
工場勤務では作業中の事故により、五体満足でなくなってしまった人が大勢います。
仕事の性質上、どうしても危険と隣り合わせになってしまうことが多く、機械の誤作動や不注意による事故が今の世でも後をたたないのが現状です。
板金加工もそんな危険が伴う仕事の一つで、身の安全をおろそかにすると一瞬で大事故に繋がってしまうことがしばしばあります。
板金加工とはプレス加工・曲げ加工・切削加工などの、平らな金属板を加工する総称のことです。
これらの加工をする機械は硬い金属板を加工するために相当の圧力や切れ味を持っているので、間違って体の一部が触れてしまうだけで取り返しのつかない事態になってしまうのです。
板金加工の一つ、プレス加工は金属を上の金具と下の金具でプレスして、一定の角度で曲げることができます。この機械で起こりやすいのが、金属を挟み込むところに誤って指先を挟んでしまう事故です。
安全意識の改革により近年ではずいぶん事故が少なくったものの、一昔前までは、体の一部が欠損したり失明したりといった事故が全国でたびたび起きていました。
違う種類の大きなプレス機では、指先どころか体ごと潰されてしまったケースもあり、命すら危ぶまれる大事故も昔は珍しくありませんでした。
今の時代は安全マニュアルの確立や安全装置の備え付けが義務付けられたことにより、だいぶ事故が減ってきています。
それでも急いで作業していて気が回っていない時や、掃除や点検など動作チェックの際の不注意で、不幸な事故がまだまだなくならない日々が続いています。
作業現場にいる時はなるべく安全意識を維持し、悲しい事故を少しでも減らしていきたいですね。
「事故は起きるもの」
そうは言っても、その事故を減らすための改善は怠るわけにはいきません。
板金加工の事故は主に人為的なミスと機械の故障・誤作動が原因で起きます。
そのため、上記二点を考慮したフールプルーフとフェイルセーフという見方から安全対策が考えられています。
作業員が操作ミスをすることを考慮した上で機械のシステムを設計すること。
例えばプレス機では、間違って指が挟まれそうになっても、機械が察知して自動で止まるようになっています。
一般的な製品を例に出すと、シュレッターに手を入れてしまい大ケガをしてしまった事故がニュースになっていた時期がありましたね。
あの事故で安全対策の改善が指摘され、今のシュレッターは投入口から刃までの距離を離していたり、溜まった紙を捨てる時は機械が作動しないようになっていたりします。
それらのシュレッターの機能はフールプルーフの考え方に則っています。
機械の故障や誤作動などにより起こる事故を未然に防ぐよう備えること。
板金加工では、切削機で消耗した刃を限度を超えても使用していた場合、自動的に機械が停止するという機能がこれに当たりますね。
身近な製品では、ストーブが何かの拍子で倒れた時や揺れを感じた時、自動で消化する機能がそうでしょうか。
地震が起きても火事の原因にならないように過去の経験が活かされているんですね。
作業している人のミスをフォローする機能と機械が故障した時に事故を起こさない機能。
どちらも優秀な機能と言えますが、過信はしてはいけません。
いくら自動で機械が止まるようにできていても、直前のことで停止が間に合わなかったり、センサーが発動しなかったりするケースも十分ありえます。
安全対策が見直され、昔に比べれば遥かに事故は少なくなりましたが、それでもまだまだ事故は起きています。
機械だけに頼らず、自らの安全意識を高めて事故の発生をできる限り抑えていきたいものですね。
様々な加工の中でも特に注意しなければならないのがプレス機を使った加工ですが、切削加工や溶接加工など、その他の加工も十分注意が必要です。
ここでは実際によくある事故や起きやすい状況などを加工方法ごとに取り上げていきたいと思います。
プレス加工でよくあるのが、材料や金型を取り換えている時に上のプレス機が落ちてくることです。
上から数百kgという重さの機械が落ちてくるのですから、そこに体の一部があれば大ケガは必至、最悪死に至ります。
安全装置はあるにはありますが、故障や手違いにより作動しないことや外れていることもあるため、機械の下に手を入れたり、メンテナンスのために体ごと入り込む必要がある時は必ず確認が必要です。
切削加工とは、金属やプラスチックなどの素材を切ったり削ったりすることです。
指が切断されたり、削りくずが飛んできたり、時には体が切断されてしまうこともあるため、安全意識をしっかり持って作業に臨まないと一瞬で大変な事態になってしまうことがあります。
切削加工でよく聞かされる禁止事項の一つに、布が機械に引っ掛かって巻き込まれてしまうため、軍手を着用してはいけないという決まりがあります。
軍手が使えないため手を切ってしまうことが多く、小さなケガが絶えない難儀な仕事です。
金属を溶かすために高熱を扱う溶接加工。
通常ではもちろん火傷をするような事態にはなりませんが、ひとたび事故が起きれば大火傷は免れません。
溶けた金属が飛び散って火事になったり火傷を負ってしまうこともありえるため、加工する際には服装の規定を必ず守り、周りをよく確認してから作業をするよう心掛ける必要があります。
上記の加工方法以外にも事故は多く発生しています。
メンテナンスや清掃中など予期せぬ事故に見舞われることもあり、マニュアルにない判断が求められることもあります。
予想外のことで、どうしても回避できないことはありますが、できるだけ事故が起きないよう辺りに危険がないかよく見ながら作業に務めたいところです。
生活するために仕事をしている以上、職場の安全は何よりも重視したいですよね。
危ない仕事ではありますが、板金加工はやりがいのある仕事でもあります。
一人一人が安心安全の作業をするために職場全体で意識を高めていきたいところです。
ここまで危険危険と過剰に言ってきましたが、いくら危なくても人間が働く場なので安全マニュアルや規則をしっかり守っていれば、大ケガを招く事態になることはほとんどありません。
危なくなることの大半は、面倒に思ったり油断したりする人の心が原因の場合です。
安全装置が不十分に思える機械もありますが、作業する上で一番大切なのは、やはり自分たちの意思で事故を未然に防ぐことなのです。
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