2025-01-15
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製図は設計者から現場加工者まで、商品に携わるほぼ全ての人が確認する大切なものです。
今回は製図を描いてみたいけどどう描けばいいのかわからない人に向けて、図面の描き方やルールを解説します。
製図とは商品を製作するために、形や大きさが描かれた図面を作成することを意味します。出来上がった図面の指示通りに加工すれば、正しい製品ができ上がることを目的としています。
現代では3D CADや3Dプリンターを活用すれば二次元図面を描かずとも、CADから出たデータから直接部品を製造できます。
では、加工をする上でなぜ図面が必要になってくるのでしょうか。それはクオリティの高い部品を作るためには寸法や細かい形状といった様々な情報が欠かせないからです。複雑な形状の加工を行う際に、口頭で寸法や形状を口頭で説明すると、どうしても双方の解釈に誤解が起こりかねません。そこで、加工の指示や形状が描かれた図面が必要となってきます。
また検査や検図を行う際は、データではなく紙の図面を使った方が作業効率が良い場合があるため、多くの企業では紙の図面を必要とするところもあります。
製図を行う際は、第三者に正確に伝わることが最も重要です。詳しいルールや書き方については以下で解説しますが、まず製図を行う際に心がけなくてはならない最低限の注意点を紹介します。
図面は投影対象物の形状、加工精度、仕上げ状態、寸法、測定条件などを記載し、設計した意図が相手に伝わるように加工者や測定者に対して必要な情報を全て記入しましょう。
第三者が理解しやすいよう、補助投影図や断面図などを使いましょう。図や記号だけではわかりにくいと判断できる場合は、注記文にして補足すると伝わりやすくなります。
図面は形状を繰り返す投影図の使用は控え、解釈しやすい文字の大きさや行間に配慮しましょう。場合によっては大きなサイズの紙に変更したり、複数枚に分けたりすることも検討します。
製図をする際には見る人によって異なった解釈をしてしまうリスクがないように、わかりやすく正確に描かなかればいけません。そのため、国内では図面を描く際の共通のルールがいくつか存在します。
製図は「JIS」という国内で決められたルールに従って作成します。
JISとは工業標準化法に基づき、全ての工業製品について定められる日本の国家規格です。日本では1930年にJES(日本標準規格製図)が公布され始め、その後、現在のJIS(日本工業規格製図通則)が制定されました。企業活動のグローバル化に伴なって、これまで国際的な設計や製図分野の標準化が進められ、JISも国際標準に準ずるよう定期的な改定が行われています。
製図を行う際はJIS規格に従って作成しなければいけません。次に具体的な製図のルールを紹介します。
図枠(図面枠)とは製図に使用される枠のことを指します。図枠には規定の用紙サイズがあり、一般的に使われるB5やA4サイズに比べると大きいものも使われます。
図枠にはこのようにいろんな種類がありますが、サイズは描く対象の大きさによって変わってきます。対象物をちゃんと表現するために必要に応じて尺度を変更するケースもありますが、基本的には図枠内におさまるよう、できるだけ小さな図枠を使いましょう。
図面で使われている線にはいろんな種類があります。これは同じ太さや線を使ってしまうとその線が形状の線なのか、寸法を表した線なのかがわかりにくいためです。そのため、図面を描く際には線の種類を用途によって使い分けなければいけません。
製図で使われる線の種類は以下の通りです。
線の太さは極太線、太線、細線の3種類が一般的に使われており、比率は極太線:太線:細線=4:2:1となっています。
下記は製図例です。形状の線とわかりやすくするため、形状を示す線以外は全部細線を使います。
図面で使う文字のルールは以下の通りです。
常用漢字を使い、難しい漢字は使わない。16画以上は仮名で表記する。大きさは3.5mm、5mm、7mm、10mm。
ひらがな、カタカナで表記し一緒に使うのは原則NG。ただし、外来語、動物・植物の学術名および注意を促す表記をする場合、混用は認められる。大きさは2.5mm、3.5mm、5mm、7mm、10mm。仮名に使う小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」「っ」は0.7の比率にする。
大きさはいずれも2.5mm、3.5mm、5mm、7mm、10mmとする。右に約15度傾けて表記する。
文字線の太さの2倍以上とする。
図面は三次元の対象物を二次元に表したものです。そのため、製図を行う場合は立体を平面に投影することになります。投影は光をある方向から当てたときにできる影で、その影が出た面を投影面と言います。
図面はその投影を用いて描かれています。日本ではJIS規格で規定されている第三角法を使って製図を行うのが一般的で、アメリカでも使用されている方法です。ちなみにヨーロッパでは第一角法が広く普及されています。
第三角法は機械製図で代表される最もポピュラーな投影法なので、製図を行う前におさえておきましょう。
一般的に機械製図で使われる第三角法。これは下記の図にあるように、正面図、平面図、側面図で構成されていて、それらを描く位置は決められています。正面図の真上に平面図、正面図の真横に側面図を描きます。ちなみに正面図は商品の代表する面で描くことも決められています。
一般的な図面は3方向からの図面で立体の形を的確に表すことが可能です。このような図面を三面図といいます。
大三角法による三面図
第三角法を使用した図面は、投影法がわかるようにマークを記載しなければいけません。
第三角法、第一角法のマークは以下の通りです。
このマークがあることで、図面を読んだ人は第三角法で描かれていることが一目でわかります。
正面図、側面図、平面図をバラバラな位置に作図したり、横に並べたりするのはNG。正面図の真上に平面図は位置しておき、正面図の横に側面図を描きましょう。
側面図と平面図の奥行きが異なることはありません。
公差は商品を作った時や組み立てた時に生じる、大きさの誤差が許容される範囲を指します。図面上には、実際に作りたい商品の設計寸法の最大値と最小値を表すことが一般的です。
製品を作成する時は、図面やCADで寸法をきちんと定義しておけば狙い通りの形状が出来上がります。しかし実際の現場では、材料や加工作業などの段階から多少の誤差が生まれ、どうしても商品のばらつきが起こりかねません。そのため、最大値から最小値の合格ラインを設ける公差を設定する必要があります。
公差にはいくつか種類がありますが、その中でもJIS規格で定められた公差のことを普通公差といいます。これは図面ごとに寸法が都度記載されるものではなく、JISに記載されている表がベースとなって適用されます。
普通公差は寸法の指定がされない場合に使用される種類です。図面に記載される寸法には公差が指定されていますが、全部の寸法に公差が記載されていると図面が乱雑になってしまいます。そこで、JISが公式で指定している普通公差を使うことで、書き手と読み手が誤った解釈をすることなくキレイな図面で正確に読み取れるようになるのです。さらに普通公差は各寸法を一括して指定できるので、図面に寸法を記載する手間が省けるメリットもあります。
普通公差は公差のレベルごとに「精級」「中級」「粗級」「極粗級」の4つの等級が設けられています。それに設計者が適した等級を選択します。
○普通公差一覧
寸法公差とは、高い精度が特に必要な寸法に対して、書き手が任意に決めることができる公差です。設計者の意図を加工者に明確に伝えられるメリットがあります。
図面は加工開始〜検査までを一貫する、地図のようなものです。ルールや描き方が細かく決められていますが、何より大切なのは正しい情報を明確にわかりやすく伝えられるように製図を行うことです。
製図のルールをある程度覚えたら、少しずつ実際に描きながら図面の描き方をマスターしてみてください。
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