2025-01-11
更新
染谷 ひとみ
Mitsuri Media元管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
株式会社セイコーは、愛知県小牧市にある板金加工メーカーです。
精密板金、建築金物の製作、施工から、パイプ曲げ、機械加工まで、あらゆる加工を自社で手がけています。
その幅広い技術力を活かし、2020年に自社製品「鍛冶屋の頓珍漢」シリーズが誕生しました。
今回は、代表取締役の村下正樹氏にお話を伺いました。
コロナ禍を経て、いま思うこととは。
「鍛冶屋の頓珍漢」シリーズ誕生の裏話にも迫ります。
所在地:〒485-0076 愛知県小牧市三ツ渕原新田433番地
TEL:(0568)-73-2939
FAX:(0568)-73-5789
設立年:昭和58年9月6日
代表取締役:村下 正樹
事業内容:車輌、航空機、建築、遊戯機器用金属製品の加工及び施工(ステンレス、スチール、アルミ、銅、真鍮、 チタン)
取材日: 2022年11月10日
ーー今回も取材を快く受けていただきまして、ありがとうございます。村下さんにお話を伺うのは、2018年のインタビュー以来ですね。2020年以降、コロナという一大事がありましたが、影響はありましたか?
全く先が見えなかったので、心配でした。
コロナが流行してからの一年間はあまり変わりませんでしたが、二年目から徐々に影響が出始めました。
具体的には、他社により安い価格で仕事を持っていかれる、ということを経験しています。
仕事が無くて暇になり、単価を下げて対応する会社が増えました。
結果的に誰も得しない状況になっていくのが、目に見えてわかりました。
しかし、黙ってこの状況を見ているだけでは何も変わらない。
だからこそ、常に時代の変化を見据え、新しいことに挑戦していきたいという思いで、自社製品の開発や、webサイトのリニューアル、新規顧客の開拓に励みました。
ーーメディアでも多く取り上げられている通り、御社ではBtoC商品を生産していますよね。これもその問題に向けた取り組みなのでしょうか。
はい。2020年から「鍛冶屋の頓珍漢」シリーズを生産しています。
おかげさまで、今でも多くのお客様にお買い上げいただいております。
価格を下げて受注すると、我々の加工技術を自ら安くすることになってしまいます。
また、それを継続していくと最終的に利益が無くなり、持続可能な取引ではなくなってしまいます。
この問題は、我々だけではなく製造業全体で真剣に考えなくてはいけません。
これからは、自分達の加工技術を自らブランディングしていかなくてはいけないと思います。
ーーコロナ禍によるコスト重視が加速しているという問題もあり、自社で積極的にブランディング、新しいものを作るという方向に至ったのですね。
そうですね。何か違うことをやっていかなくてはいけない、という想いがありました。
工場を所有していてモノを作れる環境があることは、最大の武器だと思います。
私は商社にいたことがあるので、商品化にとても時間がかかることを経験しています。
工場を所有していない会社ですと、試作開発を他社に依頼する段階から始め、売れなかった場合のリスクについて検討する必要があります。
それに比べ、自社で作れば在庫を持つリスクもなく、売れなければすぐに辞められます。その上、すぐに試作できるのでスピーディな開発ができます。
このスピード感と色々なことに挑戦できる環境を生かさない手は無いと思い、始めました。
ーーこのスピード感とブランディング力、大変勉強になります。
おもしろいですよ。
普段、私たちの仕事は消費者の声が届いてきません。声が届いたとしても、不具合が発生した時ぐらいですね。
しかし、「鍛冶屋の頓珍漢」シリーズの製品に関しては、SNSでお客様が喜んでくれて褒めてくれます。
それを見ると現場の職人も、私も、とても嬉しいし幸せな気持ちになります。
私たちの技術やノウハウを使って製作したものを、お客様が直接買ってくださる。私たちの技術を正当に評価してもらえる。
これが本来、あるべき姿だと思います。
このような風潮をどんどん広めていきたいです。
また、こうした取り組みはこれからの人材採用に向けて、アピールにもなります。
「この会社は思ったことを形にできる」「おもしろいものを作ったら商品化できる」というように。
仕事中にお肉を焼いて食べられる金属加工工場は滅多に無いと思います(笑)
ーー試作段階でもきちんとお肉が美味しく焼けるか、実際に焼いて食べないとわからないからですね!楽しそうですね。
はい。工場で焚き火をして、お肉を焼いてみんなに配っています。
最初は、平たい鉄板を縞板で作ってお肉を焼いてみました。
それが意外に美味しくて。
しかし「平たい鉄板では油が垂れてしまうね」となり、「マシニングで削ってみよう」となりました。
こうして縁を作りました。
しかし、これだけではおもしろくない。
「鉄板焼き屋さんのようにピカピカに鉄板を磨こう」というように、こだわりが出てきました。
ミガキ鉄板S180 ラージメスティンサイズの鉄板。
購入者の方がSNSで実際に使っている写真を投稿し、宣伝してくれている。
商売的には、磨いていたら利益は減ってしまいます。
ですが、「どうせなら他所がやっていないおもしろいことをやりたい」となりました。
その結果、お客様にも大好評で「黒皮鉄板とは全然味が違うね」とおっしゃってくださいます。
ーーこだわり抜いた結果、美味しいお肉が焼ける鉄板が出来上がったのですね。
はい。他にも、板厚を変えて試作を重ねました。
板厚が厚いもので焼いた方が、美味しいということもわかりました。
このように、楽しみながら製作して、利益も出る、というのは幸せですね。
ーー最初に「鉄板を作ろう」と発案したのは村下さんだとお聞きしました。その時の経緯について詳しくお聞かせいただけますか。
お客様の製品を作った際に発生した、R4.5で巻いた端材がありました。
見た目が瓦みたいだったので、「瓦鉄板」という名前で売ってみました。
とても小さいものだったのですが、おひとりさま用の鉄板としてメルカリで800〜900円ほどで出品してみたんです。
社内では「こんなもの売れるのか?」と半信半疑でした。
すると、なんと一瞬で売れました。
需要があるので、これを元に作ってみようというところから始まりました。
最初は半分冗談で売り出してみたのですが、予想以上にメルカリでヒットしました。
その後、ヤフーショッピングやAmazonで販売しました。
すると、すぐにYoutuberの方が購入してくださり、SNSで話題になりました。
これにより、お客様に我々を見つけていただけることが増えました。
今では特注のキャンプギアを作れないか、という案件もよく頂きます。
ーー素晴らしいですね。「鍛冶屋の頓珍漢」シリーズはキャンパー向けの商品ですが、キャンプに行かない私でも、このシリーズの鉄板が欲しいです。
キャンプにいかなくても、私は自宅で「鍛冶屋の頓珍漢」の鉄板を使っています(笑)
お肉を美味しく焼けるのはもちろん、片付けも楽なんですよ。
ホットプレートを用意して焼くと、プレートが大きくて準備も片付けも大変ですよね。
それに比べると「鍛冶屋の頓珍漢」の鉄板は、コンパクトです。
焼きたい時にすぐに取り出して焼くことができます。
片付けも楽で、家族にも好評です。
ーーフットワークを軽くして物事に挑戦できるというのは、小回りがきく工場ならではですね。
はい。自分たちで色々なことに挑戦し、セイコーを知ってもらう。
そこから、お客様から直接連絡をいただき、特注の依頼もいただける。
お客様が喜んでくださるのであれば、なんでもやります。
ーー以前のインタビューでも、「基本的にできないことはない」とお話をされていました。今でもそのスタンスは変わっていないのですね。
それは変わっていません。
大企業の方だとしても、個人の方だとしても、お客様は平等に扱います。
今も、キャンプ用のテントサウナを作っています。現物を送ってこられて、「これと似たものを作ってほしい」という要望です。
技術力には自信がありますから、基本的にどんな仕事も断りません。
ーーありがとうございます。最後に、今後の意気込みをお願いします。
こういう時代だからこそ楽しく仕事ができるようにしたいですね。
ものづくりをしながら、お客様も喜んでくれて、私たちも幸せな気持ちになる。
そして、ご飯を食べさせてもらえる。
そんな風にできたら最高だなと思います。
株式会社セイコーは逆境に、正面から立ち向かう。
その先に見据えるのは、お客様や社員、製造業全体が幸せになる未来だ。
世の中の情勢が厳しくなったとしても、その熱い想いは変わらない。
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