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金属加工技術をブランディングする 株式会社セイコー

インタビュー | 2022年11月25日

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株式会社セイコーは、愛知県小牧市にある板金加工メーカーです。精密板金、建築金物の製作、施工から、パイプ曲げ、機械加工まで、あらゆる加工を自社で手がけています。その幅広い技術力を活かし、2020年に自社製品「鍛冶屋の頓珍漢」シリーズが誕生しました。今回は、代表取締役の村下正樹氏にお話を伺いました。村下氏には2018年に一度、常務取締役としてインタビューしています。コロナ禍を経て、いま思うこととは。「鍛冶屋の頓珍漢」シリーズ誕生の裏話にも迫ります。


取材日: 2022年11月10日


2018年度のインタビュー記事はこちら:https://mitsu-ri.net/factories/seiko-ltd


株式会社セイコーについて


所在地:〒485-0076 愛知県小牧市三ツ渕原新田433番地

TEL:(0568)-73-2939

FAX:(0568)-73-5789

設立年:昭和58年9月6日

代表取締役:村下 正樹

事業内容:車輌、航空機、建築、遊戯機器用金属製品の加工及び施工(ステンレス、スチール、アルミ、銅、真鍮、 チタン)

ホームページ:https://www.seiko-ltd.com/


逆境に立ち向かう中で生まれた自社製品「鍛冶屋の頓珍漢」シリーズ

今回も取材を快く受けていただきまして、ありがとうございます。村下さんにお話を伺うのは、2018年のインタビュー以来ですね。2020年以降、コロナという一大事がありましたが、影響はありましたか?

村下氏

全く先が見えなかったので、心配でした。
コロナが流行してからの一年間はあまり変わりませんでしたが、二年目から徐々に影響が出始めました。
具体的には、他社に安い価格で仕事を持っていかれる、ということを経験しています。
仕事が無くて暇になり、単価を下げて対応する会社が増えました。
単価は下がり、原材料費や経費は高騰し、どんどん町工場は疲弊していく。
結果的に誰も得しない状況になっていくのが、目に見えてわかりました。

日本には、いい技術、そして知的財産を持った職人たちがたくさんいます。
しかし、このままでは日本のものづくり、製造業はなくなってしまう。
この国の未来が危ない、と感じました。

ですが、黙ってこの状況を見ているだけでは何も変わりません。
だからこそ、常に時代の変化を見据え、新しいことに挑戦していきたいという思いで、自社製品の開発や、webサイトのリニューアル、新規顧客の開拓に励みました。

メディアでも多く取り上げられている通り、御社ではBtoC商品を生産していますよね。これもその問題に向けた取り組みなのでしょうか。

村下氏

はい。2020年から「鍛冶屋の頓珍漢」シリーズを生産しています。
おかげさまで、今でも多くのお客様にお買い上げいただいております。


[鍛冶屋の頓珍漢]ミガキ鉄板Z152T9
「鍛冶屋の頓珍漢」シリーズの人気商品。厚さ9mmの本格鉄板となっており、低温でじっくりと肉に熱が伝わることで美味しく焼ける。メスティンに収納できるコンパクトなサイズ。

村下氏

価格を下げて受注すると、我々の加工技術を自ら安くすることになってしまいます。自分たちで自分たちの商品の価値を下げる行為はやめなければいけません。
また、それを継続していくと最終的に利益が無くなり、持続可能な取引ではなくなってしまいます。この問題は、我々だけではなく製造業全体で真剣に考えなくてはいけません。

これからは、自分達の加工技術を自らブランディングしていかなくてはいけないと思います。

コロナ禍によるコスト重視が加速しているという問題もあり、自社で積極的にブランディング、新しいものを作るという方向に至ったのですね。

村下氏

そうですね。
何か違うことをやっていかなくてはいけない、という想いがありました。
工場を所有していてモノを作れる環境があることは、最大の武器だと思います。
私は商社にいたことがあるので、商品化にとても時間がかかることを経験しています。
工場を所有していない会社ですと、試作開発を他社に依頼する段階から始め、売れなかった場合のリスクについて検討する必要があります。
結果、挑戦したくても実現出来ないことが多く、夢や希望を叶えられないことが多々ありました。
それに比べ、自社で作れば在庫を持つリスクもなく、売れなければすぐに辞められます。
その上、すぐに試作できるのでスピーディな開発ができます。
このスピード感と色々なことに挑戦できる環境を生かさない手は無いと思い、始めました。

このスピード感とブランディング力、大変勉強になります。

村下氏

おもしろいですよ。
普段、私たちの仕事は消費者の声が届いてきません。
声が届いたとしても、不具合が発生した時ぐらいで「あの製品良かったよ」と褒められることは滅多にありません。
しかし、「鍛冶屋の頓珍漢」シリーズの製品に関しては、SNSでお客様が喜んでくれて褒めてくれます。
それを見ると現場の職人も、私も、とても嬉しいし幸せな気持ちになります。
私たちの技術やノウハウを使って製作したものを、お客様が直接買ってくださる。
私たちの技術を正当に評価してもらえる。
「売ってよし、買ってよし、使ってよし。」
これが本来、ものづくりのあるべき姿だと思います。

このような風潮をどんどん広めていきたいです。
また、こうした取り組みはこれからの人材採用に向けて、アピールにもなります。
「この会社は思ったことを形にできる」「おもしろいものを作ったら商品化できる」というように。
仕事中に、業務としてお肉を焼いて食べられる金属加工工場は滅多に無いと思います(笑)

試作段階でもきちんとお肉が美味しく焼けるか、実際に焼いて食べないとわからないからですね!楽しそうですね。

村下氏

はい。工場で焚き火をして、お肉を焼いてみんなで食べています。
最初は、平たい鉄板を縞板で作ってお肉を焼いてみました。
それが意外に美味しくて。

しかし「平たい鉄板では油が垂れてしまうね」となり、「マシニングで削ってみよう」となりました。
こうして縁を作りました。
しかし、これだけではおもしろくない。
「鉄板焼き屋さんのようにピカピカに鉄板を磨こう」というように、こだわりが出てきました。


[鍛冶屋の頓珍漢]ミガキ鉄板S180
ラージメスティンサイズの鉄板。購入者がSNSで実際に使っている様子を写真で投稿。宣伝効果に繋がっている。

村下氏

商売的な視点から見ると、磨いた鉄板は他社の表面を剥いでいない鉄板に比べ、利益が減ってしまいます。
ですが、「どうせやるなら他所がやっていないおもしろいことをやりたい」となりました。
目指したのは、キャンプ場や自宅で「鉄板焼き屋さんの鉄板」で焼いたお肉を楽しめること。
セイコーでは鉄板焼き屋さんの鉄板を作った経験があるので、そのノウハウを活かしています。
その結果、お客様にも大好評で「黒皮鉄板とは全然味が違うね」とおっしゃってくださいます。

こだわり抜いた結果、美味しいお肉が焼ける鉄板が出来上がったのですね。

村下氏

はい。他にも、板厚を変えて試作を重ねました。
板厚が厚いもので焼いた方が美味しいということは知っていたので、厚めの鉄板に絞って販売しています。
本当はもっと板厚が厚い方がおいしいのですが、持ち運ぶことも考えて現実的な9mmをメインにしています。
このように、楽しみながら製作して、利益も出る、というのは幸せですね。

最初に「鉄板を作ろう」と発案したのは村下さんだとお聞きしました。その時の経緯について詳しくお聞かせいただけますか。

村下氏

お客様の製品を作った際に発生した、t4.5の巻いた端材がありました
見た目が瓦みたいだったので、「瓦鉄板」という名前で売ってみました。
とても小さいものだったのですが、おひとりさま用の鉄板としてメルカリで800〜900円ほどで出品してみたんです。
社内では「こんなもの売れるのか?」と半信半疑でした。
すると、なんと一瞬で売れました。
需要があるので、これを元に作ってみようというところから始まりました。

最初は半分冗談で売り出してみたのですが、予想以上にメルカリでヒットしました。
その後、ヤフーショッピングやAmazonで販売しました。
すると、すぐにYoutuberの方が購入してくださり、動画で紹介していただきました。その効果で、たちまちSNSで話題になりました。

これにより、お客様に我々を見つけていただけることが増えました。
今では特注のキャンプギアを作れないか、という案件もよく頂きます。

素晴らしいですね。「鍛冶屋の頓珍漢」シリーズはキャンパー向けの商品ですが、キャンプに行かない私でも、このシリーズの鉄板が欲しいです。

村下氏

キャンプにいかなくても、私は自宅で「鍛冶屋の頓珍漢」の鉄板を使っています(笑)
お肉を美味しく焼けるのはもちろん、片付けも楽なんですよ。
ホットプレートを用意して焼くと、プレートが大きくて準備も片付けも大変ですよね。
それに比べると「鍛冶屋の頓珍漢」の鉄板は、コンパクトです。
焼きたい時にすぐに取り出して焼くことができます。
片付けも楽で、家族にも好評です。

お客様に喜んでいただきたい! 高い技術力とこだわりの品質

フットワークを軽くして物事に挑戦できるというのは、小回りがきく工場ならではですね。

村下氏

はい。自分たちで色々なことに挑戦し、セイコーを知ってもらう。
そこから、お客様から直接連絡をいただき、特注の依頼もいただける。
お客様が喜んでくださるのであれば、なんでもやります。
元々は、特注の様な仕事がほとんどですからね(笑)

以前のインタビューでも、「基本的にできないことはない」とお話をされていました。今でもそのスタンスは変わっていないのですね。

村下氏

それは変わっていません。
大企業の方だとしても、個人の方だとしても、お客様は平等です。
今も、キャンプ用のテントサウナの引き合いを頂き、お見積もりをしたところです。
現物を送ってこられて、「これと似たものを作ってほしい」という要望です。
技術力には自信がありますから、基本的にどんな仕事も断りません。
不可能を可能にする方法を考えるのも仕事です。



ありがとうございます。最後に、今後の意気込みをお願いします。

村下氏

こういう時代だからこそ楽しく仕事ができるようにしたいですね。
ものづくりをしながら、お客様も喜んでくれて、私たちも幸せな気持ちになる。
そして、ご飯を食べさせてもらえる。
そんな風にできたら最高だなと思います。


まとめ


株式会社セイコーは逆境に、正面から立ち向かう。

その先に見据えるのは、お客様や社員、製造業全体が幸せになる未来だ。

世の中の情勢が厳しくなったとしても、その熱い想いは変わらない。

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この記事を書いた人
株式会社Catallaxy

株式会社Catallaxyは "未来の製造業をつくる" をミッションに掲げ、製造業における従来のサプライチェーン/バリューチェーンの刷新を目指しています。記事内容に関するお問い合わせはこちらへ。

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