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スクロールチャックの仕組み、構造、使い方、規格

この記事を監修した人

金属加工業界最大級のマッチングプラットフォーム「Mitsuri」を手掛ける企業。
「未来の製造業をつくる」をモットーに、製造業DXを推進している。

スクロールチャックとは、旋盤でワークを保持するのに使うチャックのことを指します。三つ爪、四つ爪のタイプがあり、ハンドルを操作すると、連動している爪が開閉し、簡単にチャッキングを行えます。

スクロールチャックは主に汎用旋盤で使用されているもので、スクロールチャックを使用する際は、ワークのチャッキングを手作業で行う必要があります。そのため作業する上で、スクロールチャックがどのような構成になっているのかなど、基礎知識を知っておくことが重要です。

そこで今回は、スクロールチャックの仕組みや構造、使い方などについて解説します。

参考:旋盤加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります!

スクロールチャックとは?用途と特徴

スクロールチャックとは、旋盤に取り付けてワークを保持するためのチャックのことを指します。

スクロールチャックは三つの爪でワークを保持します。スクロールチャックはチャックハンドルを操作することで、複数搭載した爪が同時に動く仕組みになっており、ワークの芯出し調整が簡単に行えます。しかし、ひとつのハンドル操作で三つの爪を同時に動かすことになるので、0.1mm程度は偏心してしまう点には注意が必要です。また、締付け力も分散してしまうため、荷重のかかる重切削には不向きです。

ひとつの爪が変形したり摩耗したりすることで誤差が出ることから、スクロールチャックは一度のチャッキングで切削しきれる製品や、精度を必要としない製品に対して使われています。

スクロールチャックは、基本的に丸物のチャッキングを行うためのものですが、爪のタイプによっては四角材や六角材もチャッキングできます。

完全に芯出しを行いたい場合は、四つの爪がそれぞれ単独で動くインディペンデントチャックを使います。

スクロールチャックの仕組み、構造、爪の種類

引用元:旋盤市場 三爪スクロールチャック

スクロールチャックは、チャックハンドルを本体に挿入し、回すことで爪が開閉し、チャッキングできる仕組みになっています。

スクロールチャックの内部にはスクロールと呼ばれる溝があります。スクロールとは、渦巻き状のカムのことで、スクロールに爪をはめ込むと、一か所のチャックハンドル操作により爪が連動して動きます。

引用元:MISUMI-VONA チャック・生爪の種類と特長、関連治具

参考に、スクロールチャックの分割爪タイプの構造を上図に記載します。爪は別名で「ジョウ」や「ジョー」と呼ばれる場合があります。

上図で紹介している生爪をスクロールに固定して開閉することで、ワークを脱着できます。生爪(ソフトジョウ)をスクロールチャックに取り付けるには、ジョウナットやマスタージョウを使用します。

ジョウナットの取り付けは、専用のボルトであるジョウ取付ボルトを使って固定することで行います。分割爪タイプは生爪のみの交換が可能で、ワークの形に合わせたチャッキングを行えます。

ただし、ジョウナットは段取り替えの際、他の生爪に取り付ける作業に時間がかかってしまうため、複数個用意しておき、交換爪にあらかじめセットした状態で使用します。

生爪と硬爪

爪の種類は大きく分けて「生爪」と「硬爪」があります。

●生爪

引用元:株式会社来光工業 生爪とは⁉

生爪は、加工によりワークに合わせた調整が可能な爪で、高い精度が求められる加工で採用されています。生爪の材料は、S45Cのような焼入れしていない生材を採用しています。生爪は消耗品であるものの、切削性に優れている材料を使用しているため、ワークの形状に合わせた成型が可能です。

また、生爪には標準爪・小径爪・幅広爪などの幅広い種類があります。

●生爪(標準爪)

引用元:株式会社アーム産業 生爪について

標準爪は先端山取した一般的な生爪です。

●生爪(小径爪)

引用元:株式会社アーム産業 生爪について

小径爪は小さいワークを掴むための生爪です。標準爪よりも全長を長く、先端を小さく設計してあるため、小径のワークを掴むことができます。

●生爪(幅広爪)

引用元:株式会社アーム産業 生爪について

幅広爪は大きいサイズのワークを掴むための生爪です。ワークの全周を把握したい場合などに適しています。

●硬爪

引用元:株式会社来光工業 生爪とは⁉

硬爪は、別名「オニ爪」とも呼ばれているもので、焼入れが施された硬い爪で成型がしにくく、加工物に合わせた調整ができません。一方で、耐久性に優れており、繰り返し使用できる点はメリットです。そのため、硬爪は高精度の加工ではなく、荒加工の用途に使用されます。

内爪と外爪

内爪と外爪は、一体爪の向きを区別するのに使われている用語です。一体爪は段付きの形状になっていて、本体の向きを変えることで把握できるものが変わります。

●内爪

引用元:MISUMI-VONA チャック・生爪の種類と特長、関連治具

内爪は、シャフト材の外径、もしくはパイプなどの内径把握に使用します。

●外爪

引用元:MISUMI-VONA チャック・生爪の種類と特長、関連治具

外爪は、フランジなどの外径把握に使用します。

分割爪と一体爪

分割爪とは、生爪(硬爪)とジョウナット等が別々で交換できるもののことを指します。

一体爪とは、生爪(硬爪)とジョウナット等が一体型になった爪のことです。硬爪では、向きを変更することで、内爪と外爪がそれぞれ使えます。

スクロールチャックの使い方(芯出し、締め方)

スクロールチャックはワークの芯出し精度が高く、芯出し作業が不要ですが、より精度を高めたい場合は以下を参考にしてみてください。

  1. ワークをセットする。
  2. ダイヤルゲージをワークにセットする。
  3. スクロールチャックを手動で回転させながら、ダイヤルゲージの針の振れを確認しつつ、ハンマーでスクロールチャック、もしくはワークを軽く叩いて芯出しを行う。

芯出しの精度を上げるためにも、スクロールチャックに爪を取り付けるときと、ワークを取り付けるときはエア等で切粉を除去しましょう。切粉があると芯が出なくなります。

また、チャックを締める際は、チャックハンドルを回す穴が三箇所あるうちの、矢印がある部分で締めるようにします。矢印がある部分で締めることで、均等に爪が締められるようになり、芯が出やすくなります。

スクロールチャックの規格

スクロールチャックは【JIS B 6151:2015 スクロールチャック】のJIS規格があります。スクロールチャックの種類はJIS規格にて、以下の4種類が定められています。

●チャックの種類

SC:ワンピースジョー付きC形マウンティングチャック

TC:ツーピースジョー付きC形マウンティングチャック

SA:ワンピースジョー付きA形マウンティングチャック

TA:ツーピースジョー付きA形マウンティングチャック

※ワンピースジョー:マスタジョーとトップジョーとを一体成形した爪

※ツーピースジョー:マスタジョーとトップジョーからなる爪

※C形マウンティングチャック:取付部のはめ合い面が円筒になったチャックで、主としてアダプタプレートを中継して工作機械の主軸に取り付ける形式のもの。

※A形マウンティングチャック:取付部のはめ合い面が凹形テーパになったチャックで、この規格では、JIS B 6109-1のA1形及びA2形に適するものをいい、主として直接主軸に取り付ける形式のもの。

参考:JIS B 6151:2015 スクロールチャック

このほかにも、最大静的把握力や、スクロールチャックの形状・寸法などがJIS規格にて定められています。これらの詳細は、【JIS B 6151:2015 スクロールチャック】の規格をチェックしてみてください。

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