金メッキは、装飾品を綺麗に見せるためだけのものではありません。強度を増すと共に、サビに強くし、さらに組成を変えることで、光沢の具合や色味さえもコントロールすることができます。
また近年では、金メッキの優れた導電性や耐食性、そして金合金メッキの高い強度から、電子部品などに欠かせないものとなっています。
今回の記事では、金メッキの詳細や種類、加工工程、また工業用の用途を飛躍的に広げた硬質金メッキについて解説していきます。併せて、加工事例についてもご紹介していますので、金メッキを依頼したいという方は、ぜひ参考にしてください。
金メッキは、金属などの素材表面に金を付着させたものです。古来から装飾品や仏具などの表面に用いられてきました。加えて近年では、金の優れた性質から電子部品などの用途に用いられています。
金は、光沢のある黄色の金属で、金色や黄金色と言うように、色の名前に使われるほど、美しく審美性が高い金属です。
性質としては、重い、柔らかい、展延性や導電性、耐食性に優れるなどが挙げられます。
展延性に関しては金属中で一番とされ、1gの金は、平面状には数平方メートル、糸状には数千メートルにも延ばすことが可能です。導電性や熱伝導性にも優れ、純金属の中では銀と銅に続く低い電気抵抗率、高い熱伝導率を示す金属として知られています。
また、金は耐食性にも優れた金属です。空気や湿気はもちろん、酸やアルカリといったほとんどの化学的腐食に対しても優れた耐性を示します。
ただし、一般的に用いられる金属材料の中で最も重く、その比重は19.32と銀の約2倍、鉄や銅の約3倍にもなります。また、その柔らかさから、微細加工に不向きで形が崩れやすいです。そのため、金は、重さを無視できるメッキとして使用したり、強度が出る金合金にしたりして用いることが多い素材です。
金メッキの種類には、①軟質金メッキ②硬質金メッキがあります。
①軟質金メッキは、いわゆる純金メッキと言われるものです。金そのものの性質を持つほか、他の素材との密着性や濡れ性(馴染みやすさ)に優れ、接触抵抗が小さいことから、半導体部品の接合用などに用いられています。
②硬質金メッキは、コバルトやニッケル、銀、銅、インジウムなどを添加し、硬度や耐摩耗性を向上させたものです。硬質金メッキについては、後述します。
金メッキは、これら軟質と硬質という分類のほか、JIS規格による分類方法があります。以下では、JIS規格の分類法と分類された金メッキの表示方法について説明します。
金メッキは、JIS規格により、様々な観点から以下のように分類されます。
(金含有率の異なる金メッキを重ねることがあり、重ねる回数によって以下のように定義。)
また、金メッキの厚さも分類対象となっています。ここで厚さとは、金メッキされている面の全てにおける、最小の金メッキの厚さのことです。
メッキは、JIS規格により、その表示方法が決まっています。その中で、金メッキを示す記号は、装飾用が「D-Au」、工業用が「E-Au」です。
例をいくつか見てみましょう。
Ep-Zn/Cu 10、Ni 5 b、D-Au 0.5/PA
例1は、亜鉛素地に、厚さ10μmの銅下地メッキ、厚さ5μmの光沢(b)ニッケル下地メッキを重ね、その上に厚さ0.5μm以上の装飾用金メッキを電気メッキ(Ep)で施し、塗装(PA)で仕上げたことを意味します。
Ep-Fe*/Ni, E-Au** (99.7) 2
例2は、ステンレス鋼素地(注*)に、ニッケル下地メッキを施し、その上に厚さ2μm以上、金含有率99.7%の工業用金・コバルト合金(注**)メッキを電気メッキ(Ep)で行ったことを示します。なお、注は、より詳細な内容を記述したい場合に使用します。
このように、どのようなメッキを行ったかは、以下のように表示することが決まっており、金メッキもその表示方法に準じています。
[メッキ法の種類]-[素地の種類]/[下地メッキの種類], [メッキの種類]/[後処理の種類]
ここで、「メッキ法の種類」は、最終的に行ったメッキの方法だけを示します。電気メッキは「Ep」、無電解(化学)メッキは「ELp」で表します。
次の「素地の種類」は、素地が金属の場合はその元素記号で、合金の場合には主成分金属の元素記号で表します。
「下地メッキの種類」と「メッキの種類」では、メッキの材質・厚さ・タイプを順に表示します。メッキの材質は、メッキする金属の元素記号で表します。また、組成を示す場合は、質量パーセントの数値を括弧内に表示可能です。メッキの厚さは、μmで表示し、メッキのタイプは、例えば、光沢めっきならば「b」、半光沢めっきならば「s」などと表示します。
「後処理の種類」は、最終メッキの後に施した後処理の種類を表示します。
金メッキの加工は通常、①前処理、②下地メッキ、③金ストライクメッキ、④本処理の順に行っていきます。ここでは、これら金メッキの各工程について説明します。
なお、金メッキは、電気メッキでも無電解メッキでも施すことができます。無電解メッキは、非導電性の素材や複雑なパターンのメッキに用いられますが、メッキの厚さを確保しにくいなどのデメリットがあります。
参考記事電気メッキ、及び無電解メッキについては、以下のサイトで解説していますので、気になる方はご覧ください。⇒専門家が電解メッキを徹底解説!無電解メッキとの違いについてもご紹介
前処理では、素材の汚れや酸化皮膜などを除去します。汚れや加工に用いた油などを取り除く場合は、アルカリ性の溶剤で洗浄。サビなどは、酸性の溶剤に漬け込んで除去します。
その後、前工程で取り切れなかった、微細な凹凸中に着いたゴミやサビなどを電解洗浄によって除去。続いて、素材のメッキに対する反応性を向上させる活性化を行い、下地メッキの工程に進みます。
なお、各工程で使用する溶剤や洗浄剤を次工程に持ち越さないよう、水洗や湯洗も各工程の間に行われます。
下地メッキは、素材表面の凹凸を埋めて平滑化すると共に、素材とメッキの密着性を向上させるために行われます。
金メッキでは、ニッケルを下地とすることが多く、耐食性の向上が期待できます。特に、金は銅と接すると銅に拡散する性質があるため、この拡散を防ぐ目的でニッケルを下地とします。
また、メッキが薄い場合、下地メッキは光沢や艶消しなどの外観に対する効果を与えてくれます。金メッキの場合は、銀メッキや光沢ニッケルメッキなどを下地とすることで、外観にバリエーションを生み出すことができます。
金ストライクメッキは、金が金属中で最も貴な金属、つまりイオン化傾向が最も小さい金属であることから必要となる工程です。
金は、電気メッキによってメッキ皮膜を形成するより前に、下地メッキと置換して析出してしまいます。そのため、下地メッキの意味がなくなってしまうばかりか、良好な密着性も得られません。
そこで、この置換反応が起こらないように調整したメッキ浴を用いて予備的に薄いメッキを施し、メッキの本処理を正常に行えるようにします。
実際にメッキを施す工程です。ただし、金ストライクメッキと本処理の双方を行うのは電気メッキのみです。
無電解メッキでは、電気メッキの金ストライクメッキと全く同じではないですが、同様に置換反応を抑制するメッキ浴を用意して金メッキを施します。また、逆に、この置換反応を利用して金メッキを施す場合もあります。この方法では、あらかじめ置換対象となるメッキを施し、これを金と置き換えることで金メッキを行います。
引用元:株式会社テトラ
より高い耐食性が必要になる場合、封孔処理と呼ばれる後処理を行うことがあります。金メッキが薄い場合、上図に見られるように、メッキにピンホールが発生します。空気や湿気により、素材や下地メッキが腐食することがあります。そこで、薬剤などを表面に塗布する封孔処理を行うことで腐食を防ぎます。
硬質金メッキは、ニッケルやコバルト、銀、銅、インジウムなどを0.1〜8.0%程度含有した高強度の金合金メッキです。
特に、硬質金メッキの定義や規格はなく、何を硬質金メッキとしているかはメーカー毎に異なります。ただし、軟質金メッキのビッカース硬さがHv50~100であるのに対し、硬質金メッキの硬さがHv150以上であることは共通しています。
特徴としては、軟質金メッキに比べ、硬度が高く耐摩耗性に優れています。また、厚いメッキを形成しやすく、軟質金メッキよりも均一にメッキできるという利点があります。
しかし、導電性や他の素材に対する濡れ性などはわずかに劣り、接触抵抗も少し大きいです。
硬質金メッキは、導電性と硬度の両立が必要な摺動部品や、抜き挿しを繰り返す電子部品などによく用いられます。
摺動部品の例としては、他の部品と擦れ合ったりするものの、電気も通す必要があるスリップリング(電気信号を伝達できる回転コネクタ)などが挙げられます。
一方、電子部品の例としては、基盤に使用する各種電気接点や端子、コネクタ、ピンなどがあります。
なお、これらの電子部品に金メッキを用いる理由は、銅や銀では表面に酸化膜が生じて導電性が低下してしまうからです。
金メッキは、装飾用途のほか、リードフレームや電子部品など、工業用途にも多く用いられます。
ここでは、これら用途毎の加工事例をご紹介します。
装飾用途で用いられる金メッキは、ネックレスやイヤリングなどのアクセサリのほか、自動車のエンブレムや内装部品、さらには仏具や時計部品など、多岐にわたります。
下の写真は、純金メッキの加工事例です。
引用元:株式会社スズキ
次の写真は、ピンクゴールドと呼ばれる金75%と銅25%の金合金をメッキした洋食器です。ピンクゴールドは、純金メッキや銀メッキに比べ、耐食性と耐摩耗性に優れています。
引用元:スワオメッキ有限会社
続く写真のように、社寺用品や仏具にも金メッキはよく用いられています。
引用元:中嶋金属株式会社
上述したように、硬質金メッキと呼ばれる金合金メッキは、導電性と硬度の両立が必要な接点や端子、コネクタなどの電子部品や摺動部品に用いられます。
下の写真は、金含有率99.7%の硬質金メッキの加工事例です。硬度は、Hk150~170Hvとのこと。
引用元:株式会社コダマ
次の写真も硬質金メッキの加工事例です。テストプローブと呼ばれる半導体部品や基盤の検査器具で、質量パーセントにして0.1~1.5%のコバルトを含有しており、硬度はHk200~250程度です。
引用元:株式会社三ツ矢
こちらは、厚さ30μmの硬質金メッキの加工事例です。
引用元:中嶋金属株式会社
半導体の回路基板に使われるリードフレーム(基板上の半導体部品や外部配線との接続に使用する部品)にも金メッキはよく用いられます。以下の2つの写真に見られるように、微細なメッキ加工を必要とするため、無電解金メッキが用いられます。
引用元:ローム・メカテック株式会社
引用元:清川メッキ工業株式会社
金メッキは、昔から装飾品に使われていますが、今では様々な金合金メッキが現れたことで、光沢や色味、強度などが多様になりました。また現在では、金メッキ加工は、コンピュータや電子機器にも多用されることとなり、ますます重要なメッキ技術となっています。
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