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バーリング加工とは?メリット・デメリット、タップ加工に関しても解説!

板金加工 | 2022年11月04日

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バーリング加工は、薄い板金に穴を開けた際、周囲に立ち上がりをつける加工です。板厚が薄い板金に穴を開けて、ネジなどを通す場合の補強方法として用いられています。身の回りの家電製品から産業機器まで、幅広い場所で使用される板金にとって重要な加工のひとつと言えます。

本記事では、バーリング加工のメリットとデメリットからタップ加工との兼ね合い、実際の用途や加工の指示方法などについて詳しく解説していきます。

バーリング加工の知識を深めたい人や、板金のバーリング加工を業者に依頼しようと検討している人は、ぜひ最後まで読んでみてください。

バーリング加工とは

バーリング加工とは、板金に開けた穴の周囲に立ち上がり(フランジ)をつける加工のことで、フランジ加工とも呼ばれます。

板厚の薄い板金に穴を開けてネジをはめ込む場合、穴の開口部に立ち上がりを作ることで、ネジが掛かるネジ山を確保し、はめ込みを強化できます。通常は、板金に下穴を開け、下穴よりごくわずかにサイズが大きいパンチを押し込みながら、縁の一部を伸ばして立ち上がりを作ります。


バーリング加工は「ふつうバーリング」と「しごきバーリング」という2つの方法に分類されます。

ふつうバーリングは、加工する材料の板厚と同じ寸法でクリアランス(下図でdm-dのこと)を取って加工するやり方です((dm-d)/2の数値がtになるようにする)。通常の製品図に表記されているバーリング寸法の穴径(dm)と高さ(h)を元に、下穴径(d)を求めます。

しごきバーリングでは、板厚よりも約60〜70%ほど小さいクリアランス(d径を小さくする)を取ります。その結果、材料が圧縮されて立ち上がりの厚みを均一化することができます。


多くの場合、ネジ山を増やすこと、ピンやパイプをはめ込めるようにすることなどの目的でバーリング加工が採用されます。設計業界では、ネジ山は最低でも3山かかるようにするのが一般的ですが、板厚が薄い場合など3山確保できない場合、バーリング加工の指示が出されネジの3山分が確保されます。

バーリング加工で対応できない際はタップ加工へ

板金の板厚や素材の種類によっては、バーリング加工ではネジを通して固定するのに不十分な場合があります。その場合、バーリング加工した穴にタップ加工を追加する方法が有効です。タップ加工を施すことを「タップを切る」と呼び、ネジをはめ込むためにタップと呼ばれる工具を使って穴の内側にネジが掛かる凸凹(ネジ山)をつけます。

●タップ加工の手順

  1. ①タップハンドルにネジ穴と同じサイズのタップを取り付ける

  2. ②タップを穴に垂直に立てる

  3. ③潤滑油を穴にかけながら丁寧に左右半周ずつねじを切っていく


参考記事

タップ加工については下記記事で詳しくまとめていますので、あわせてご参照ください。

→穴開け加工とは【専門家が解説】タップ加工、リーマー加工との違いを説明!


バーリング加工の用途

バーリング加工の用途の一例は、下記のとおりです。

  • バーリング加工の用途

    • ネジ穴としてのバーリング加工:電子機器、家電など

    • パイプ結合のためのバーリング加工:ビルなどの建築配管・サニタリー配管、大型真空容器、エネルギー供給パイプライン、構造物ポール、食品業界など

食品業界では、バーリング加工のなめらかな形状によって、配管が詰まりにくく汚れにくいという点から、調味料の製造などの場面で加工製品が多く取り入れられています。

他にも幅広い分野や場所で使用されており、今後も高い需要が見込めます。

永久結合

バーリング加工を応用する方法として永久結合があります。永久結合は、2枚の板金を一度にバーリング加工することで結合する方法です。

具体的には、穴の縁を円錐状に面取りする皿モミ加工と組み合わせ、溶接のように永久的に結合させます。材料の一部に金型を押し当て突起を成形するまでの作業を、タレットパンチプレス加工(NCT)一台で行うことができ、効率が上がります。

パイプの結合

バーリング加工を用いたパイプ結合は、丸パイプなどに使用されます。従来の溶接よりも欠陥が出にくく、分岐部を母管から直接塑性加工ができる点が特徴です。

バーリングの高さを利用し、丸パイプの方を穴に通す方法が一般的で、パイプに傷がつかないようにバーリングの角を取って丸くすることも有効です。


参考記事

パイプの加工方法などについては下記記事でも解説しています。

→パイプの穴あけ加工を製品事例と共に徹底解説!


バーリング加工の指示方法

図面と3Dデータそれぞれのバーリング加工指示についてご説明します。

バーリング加工の指示方法【図面】

図面におけるバーリング加工指示は、通常はネジ径(呼び寸法)とバーリングの立ち上がり方向を明記します。例えば「M2バーリング(紙面表側方向突き出し)」といった内容です。

もしタップ加工が必要な場合、タップの指示を別途明確に入れる必要があります。その場合、「M2バーリング、タップ加工、並目(紙面表側方向突き出し)」といった書き方がわかりやすいでしょう。

バーリング加工の指示方法【3Dデータ】

近年では、2Dの図面だけでなく3DCADデータで設計する企業や製作所が増えています。

発注時に3Dデータを使用すると、材料全体を図面上で回転でき形状の認識が瞬時に可能です。図面とともに3Dデータを提出するとスムーズです。


バーリング加工のメリット

ここからは、バーリング加工のメリットとデメリットについてご説明していきます。

汚れが溜まりにくい

パイプ結合のバーリング加工における大きなメリットのひとつが、汚れが溜まりにくい点です。一般的な溶接では母材と分岐部の付け根が角となり、汚れが溜まりやすくなります。この部分は水などを当てる洗浄では落としづらく、ブラシなどを使って汚れを取る必要があります。

一方、バーリング加工では付け根部分はR状になるため、汚れが溜まりにくく、洗浄時に汚れを取ることも簡単です。

低コストで強固なネジ穴の作成が可能

バーリング加工では、ひずみなど元の材料への影響が少なく済むため、低コストで強固なネジ穴が作成できます。

ネジ穴を作る方法にはカシメナットや溶接ナットを穴部に取り付ける等方法はありますが、どれも追加部品が必要で、コストがかかってしまいます。

一方バーリング加工では、追加部品は不要で、比較的加工も簡単であるため低コストで済みます。

複雑な設計にも対応できる

ひとつの配管にいくつもの分岐を作る際、バーリング加工によって高い結合状態を保つことができます。そのため、イベントや建築ショーの展示物など、より複雑な設計にも対応が可能です。


バーリング加工のデメリット

続いて、バーリング加工のデメリットを見ていきましょう。

ネジのつけ外しが多い箇所には向かない

バーリング加工は、ネジの締結力を安いコストで上げることができる一方、ねじの付け外しが多い場所には不向きです。

ネジ山はたくさん作ることができず、付け外しを繰り返しているうちにネジ山をつぶしてしまう可能性が出てきます。ネジ山が潰れるとネジとして使えなくなってしまうため、このような箇所への使用は避けるべきでしょう。

材質は硬い物に限られる

バーリング加工は材料の一部を伸ばして使うため、硬い素材が適しており、柔らかいアルミなどの材質は避けた方が無難です。

どうしてもネジ固定が必要な場合は、締結不良にならないようカシメナットなどの使用を検討すると良いでしょう。

バーリング加工ができる業者をお探しならMitsuriにご相談を

バーリング加工についてメリットとデメリット、用途や指示方法まで解説してきました。幅広い分野や用途で取り入れられている効率的な加工方法ですが、使用が難しいケースもありますので、事前に検討が必要でしょう。

板金やパイプのバーリング加工を依頼できる業者をお探しの際には、ぜひMitsuriにご相談ください。日本全国250社以上の企業と提携しており、お客様の要望に合った最適な企業やメーカーを紹介可能です。Mitsuriでのお見積りは、複数の企業から取り寄せることができます。まずは一度お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人
株式会社Catallaxy

株式会社Catallaxyは "未来の製造業をつくる" をミッションに掲げ、製造業における従来のサプライチェーン/バリューチェーンの刷新を目指しています。記事内容に関するお問い合わせはこちらへ。

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