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プリハードン鋼の解説!デメリット・用途など

2024-09-18

更新

この記事を監修した人

志民 直人

技術営業、カスタマーサクセス

切削加工歴29年の1級機械加工技能士(精密器具製作/フライス盤/数値制御フライス盤)。金型・部品加工経験を持ち、CAD・CAMや各種工作機械に精通。設計からカスタマーサービスまで幅広く対応。製造現場改善や治具設計も得意。趣味は日曜大工、ゲーム。

「プリハードン鋼とはなにか?」

「プリハードン鋼のメリット・デメリットが知りたい」

「プリハードン鋼の用途は?」

このような疑問をお持ちの方は必見です。

プリハードン鋼は被削性に優れており、主にプラスチック金型や研削加工用として使われている素材です。鋼材メーカーにより硬度や特性は異なり、種類も豊富。製品によっては、自動車部品などにも用いられる鋼材です。

しかし、現場によってはプリハードン鋼を扱う機会がなく、知らない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、プリハードン鋼の種類や特性、メリット・デメリットなどについて解説します。プリハードン鋼について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

プリハードン鋼の種類と特性

プリハードン鋼とは、あらかじめ中程度の硬度に熱処理をした鋼材のことを言います。

JIS規格にはない鋼材で、名称はHPM**・NAK**などと、鋼材メーカーによりさまざま。細かな特性などもメーカーによって違いがあります。

プリハードン鋼の多くは、機械加工がしやすいよう、HRC(ロックウェル硬さ)が45以下程度の硬度に調整されているのが特徴です。材料として用いる段階から硬度があるため、そのまま製品として用いたり、加工したりする場合もあります。

以下は大まかなプリハードン鋼の種類や特徴を示した表になりますので、選定の参考にしてみてください。

材質名称 硬度 特徴
HPM1 HRC37~41 被削性
HPM7 HRC29~33 被削性・溶接性・靭性・鏡面仕上性
HPM-MAGIC HRC37~41 切削加工性・溶接性・靭性
NAK55 HRC37~43 被削性・溶接性・鏡面仕上性・シボ加工性
NAK80 HRC37~43 被削性・溶接性・耐摩耗性・靭性・鏡面仕上性・シボ加工性
G-STAR HRC31~34 被削性・鏡面仕上性・シボ加工性・耐食性・熱処理可
S-STAR HRC31~34 鏡面仕上性・耐食性・シボ加工性・熱処理可
DH2F HRC37~41 被削性・耐溶損性
GO40F HRC36~40 被削性・加工歪の低減

プリハードン鋼のメリット・デメリット

プリハードン鋼のメリット

プリハードン鋼の多くは、HRC45以下程度の硬度がありながらも、被削性に優れています。また、機械加工後に焼き入れ・焼き戻しといった熱処理を行う必要がなく、作業工程およびコストの削減に繫がる点もメリットです。通常、SC材などの鋼材を使うと、焼き入れや焼き戻しが必要な場合でも、プリハードン鋼であれば熱処理の必要がなくなり、納期の短縮が期待できます。焼き入れ・焼き戻しをせずに使用できるため、熱による歪みを考慮する必要もありません。

また、製品によっては、鋼材の芯部分にまで焼きが入っているものもあります。通常の熱処理であれば、表面は硬くても、芯までは焼きが入りにくいもの。しかし、プリハードン鋼であれば、硬度の差が少なく、切削しても硬度のムラが少ないのが特徴です。

 

プリハードン鋼のデメリット

デメリットは、機械加工が難しくなるHRC50を超えるような製品はほとんど販売されていないこと。そのほかに、熱処理をしても硬度が上がらない製品が存在します。

硬度が上がらない製品の例として挙げられるのが、NAK**の鋼材です。これは、NAK**の鋼材が、「時効硬化」または「析出硬化」と呼ばれる方法で硬度を上げているため。時効硬化・析出硬化とは、急冷した合金の時間経過による常温化により、合金元素がところどころに析出し、材料が硬くなる現象のこと。

このように、NAK**の鋼材は通常の熱処理とは異なる方法で硬度を上げていることから、焼き入れ・焼き戻しをしても硬度が上がりません。

プリハードン鋼の用途

プリハードン鋼は、主にプラスチック金型用、もしくは研削加工用として使用されています。鋼材の種類によっては、ゴム金型や自動車部品、家電製品などに使われることも。また、以下のような場合では、SC材の代わりに用いることもあります。

SC材の代わりに用いるケース

  • 熱処理による材料の変形や、寸法の変化を避けたい場合
  • 焼き入れ・焼き戻しの作業工程を減らし、コストの削減と納期の短縮を求める場合
  • 要求される硬度が、そこまで高いものを必要としない場合

上記のような場合にプリハードン鋼を代用すれば、SC材使うよりも使い勝手が良く、コスト面などでも恩恵を受けられるかもしれません。

SC材の硬度調整でお悩みの方は、一度プリハードン鋼の検討をおすすめします。

【S45C】プリハードン鋼材での代用おすすめ例

例えば、S45CのHRC30指定のように、硬度が通常の熱処理硬度よりも低く、かつ調質硬度より高い場合、プリハードン鋼を代用してみるのもひとつの方法です。

S45Cの調質硬度は一般的にHRC20~25程度。そのため、焼き入れ・焼き戻しをして硬度を合わせる必要があります。しかし、プリハードン鋼を利用すれば熱処理をする必要がなく、コストと時間の削減が可能です。プラスチック金型や研削加工用としてだけでなく、上記のような状況でもプリハードン鋼は活用できます。

プリハードン鋼についてのまとめ

今回の記事では、プリハードン鋼のメリット・デメリット、用途について解説をしましたがいかがでしたでしょうか。プリハードン鋼は、あらかじめ熱処理が施された鋼材のことをいい、多くの材料が中程度の硬度を持ちながらも被削性に優れています。主にプラスチック金型や切削加工用として使用されているほか、SC材の代用品としても活用が可能です。

もし、鋼材の選定や加工でお困りの場合は、ぜひMitsuriまでご相談ください。日本全国で250社以上の協力企業と提携しているので、お客様の要望に合わせて、材料の選択や業者のご紹介ができます。金属加工のお見積りについても、複数社から可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

 

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