2024-09-18
更新
染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
製造業でよく用いられる言葉に「ポカミス」があります。ポカミスとは人の不注意による失敗のことを指しますが、些細なことから製品を不良にしてしまったり、業務のロスを出してしまったりする要因となります。
製造業におけるポカミスは、「受けた指示内容を忘れていた」「納品個数に誤りがあった」など、さまざまなパターンが考えられます。製造業は機械の操作や目視での検査など、人の手を使った業務が多い分、ポカミスが発生しうる状況も多くあるでしょう。製品不良やクレームを避けるためにも、ポカミスの対策はしっかりとしておきたいところです。
本記事では、このようなポカミスを避けたい企業向けに、原因と対策について解説します。
ポカミスの「ポカ」は、もともと囲碁や将棋で使われている言葉で、通常では考えられない悪い手を打つことの意味を語源としています。
うっかりミスのシーンで使われることが多いポカミスですが、製造業においては人が起因したミスに留まらず、作業環境や設備がポカミスを誘発する場合もあります。
ポカミスで多いパターンは人的要因(ヒューマンエラー)によるものです。
ヒューマンエラーによるポカミスは、認識の欠如によるもの・ルールの欠如によるもの・教育や訓練の不足によるもの・心身の状態によるものがあります。
認識の欠如は、「ポカミスを起こした本人が認識していない」もしくは「ポカミスを起こしても本人が対処しており、周囲が認識していない」などです。
ルールの欠如によるポカミスは、トラブル対応に起こりがちな、ルールを決めていないイレギュラーな作業に起こり得ます。
教育や訓練の不足によるポカミスは、作業に慣れていない作業者がマニュアルの手順を飛ばしたり、業務を任せ切りにしている現場で、作業者が自己流の作業を行ったりするケースが例として挙げられます。
心身の状態によるポカミスは、疲労や緊張から作業の質が左右されて発生するものです。
ヒューマンエラーによるポカミスは、周囲の知らない場所で発生していることも多く、潜在化しがちです。再発するようなポカミスは顕在化して、対策を講じる必要があります。
ポカミスには、作業環境や設備から誘発されるものもあります。
作業環境が適切でない場合の例は、「作業現場の明るさや室温に異常がある」「設備や道具の配置が不適切」などです。これは、作業者の集中力や体力の低下を招き、ポカミスの原因となります。
設備によるポカミスの例は、「機械のスイッチがそれぞれ判別しにくく、押し間違える」などです。また、扱いが難しく、複雑な操作を求められる設備なども、ポカミスの原因となります。
ポカミス対策は、一般的に「ポカヨケ」と呼ばれています。ポカヨケはトヨタ生産方式の基本概念の1つで、現在では日本国外でも「Poka-yoke」として使われている言葉です。
ここでは、ポカヨケの方法について、いくつかご紹介します。
ポカヨケを行うには、まず原因を解明し、顕在化することから始めましょう。原因が明らかになることで、適切な対策を実行でき、再発防止が期待できます。
ポカミスの大元の原因はヒューマンエラーによるものですが、それを故意に起こす人はいません。そのため、人だけに視点を向けるのではなく、作業環境や設備の改善についても考えることが必要です。
指差呼称はポカヨケに役立ちます。指差呼称は、対象を指で差し、声に出して確認する行動によって意識レベルが上がり、緊張感と集中力を高める効果が期待できます。
指差呼称の詳細な手順は下記の通りです。
(1)対象をしっかり見る
(2)対象を指で差す
呼称する項目を声に出しながら、右腕を真っ直ぐ伸ばし、対象から目を離さず、人差し指で対象を指差します。
なお、指を差す際、右手の親指を中指にかけた「縦拳」の形から、人差し指を真っ直ぐに突き出すと、指差しが引き締まります。
(3)差した指を耳元へ
差した右手を右の耳元まで戻しながら、「本当に良いか(正しいか、合っているか)」反すうし、確かめます。
(4)右手を振り下ろします
確認できたら、「ヨシっ!」と発声しながら、対象に向かって右手を振り下ろします。
また、(1)~(4)の一連の動作は、左手を腰に当て、背筋をピンと伸ばし、キビキビと した動作で行うことが奨励されています。
引用元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト
厚生労働省によれば、1994年の財団法人(現、公益財団法人)鉄道総合技術研究所の効果検定実験にて、指差呼称を行った場合は、操作ミスの発生率が低下したとの結果が出ています。
人を変えて再度チェックをしてもらう「ダブルチェック」や、確認内容が見える化されるチェックリストも、ポカミスの防止効果が期待できます。
ダブルチェックでは、職場の上司や部下の上下関係に囚われずに行うこと。また、片方のチェックに依存した、ずさんなチェックにならないように気をつけてください。よりダブルチェックの効果を高めたい場合は、1人が確認内容を読み上げ、もう1人が復唱するなどの、どちらも同等の責任を持つやり方が有効です。
チェックリストはポカミスの防止だけでなく、やるべきことが明確になり、仕事の効率化に繫がる場合もあります。
例えば、チェックリストを作成したときに、加えたほうが良い作業や、不要な作業が見つかる場合もあるでしょう。
また、人間は急ぎの業務や情報が多く入って混乱したとき、慣れている作業でもポカミスをしてしまうことがあります。このような場合でも、チェックリストがあれば、確認内容が見える化されているので、ポカヨケ効果が期待できます。
疲労が溜まっている状態や焦っているときなどは、チェック内容の見落としや、正しい判断ができていない場合があります。このような場合は、休憩後や昼食後など、間を置いてからチェックするようにしましょう。
製造業での業務には、作業マニュアル・安全確認・品質検査基準などのルールが定められています。しかし、作業に慣れていくうちに、作業者のやりやすい方法に流れてしまい、決められたルールと作業方法が乖離してしまうケースもあるでしょう。
このような違反をしてしまうと、ポカミスの原因となりかねません。現場でこのような行為があった場合は、ただちに指導をしてください。このとき、規則を守るよう注意するよりも、作業者に責任とプライドを持たせるように指導することが大切です。
もし、定められたルールに問題がある、もしくは分かりにくいようなら、作業員と話し合って改善することも検討しましょう。
ルール化されていないイレギュラーな作業においても、ルールを設けて新しく仕組みを作るようにします。
適切なモノの配置・室温・明るさなど、現場がマニュアル通り作業しやすい環境になっているかを見直してみましょう。作業員がどれだけスキルを持っていても、作業環境が悪ければ、ポカミスを誘発するほか、作業効率に悪影響を及ぼす恐れがあります。
作業環境の見直す際は、作業者と同じ目線になることが大切です。そうすることで、ポカミスの要因が把握でき、作業者の負担も理解しやすくなります。
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