2025-01-10
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リン酸塩処理は、リン酸塩の処理液を用いて素材の表面を化学反応させることで皮膜を形成させる化成処理です。金属の錆を防止したり素材を強化したりできるため、金属加工の種類のひとつとして用いられてきました。
リン酸塩処理は別名「リン酸塩皮膜処理」、処理の種類ごとに「リン酸マンガン皮膜」「リン酸亜鉛皮膜」「リューブライト」とも呼ばれます。また、リン酸塩処理を工業用途で本格的に発展させたパーカー兄弟の姓を取った「パーカーライジング」「パーカー処理」という名前も浸透しています。
リン酸塩処理は用いるリン酸塩の種類によっても強度や効果が異なるため、目的や用途に応じた処理が必要です。今回は、リン酸塩処理の種類や工程、用途などについて解説していきます。
リン酸塩処理は、鉄をはじめとする金属系の加工物に施す化成処理の一種です。表面を化学反応させることで皮膜を生成し、元の素材とは異なる性質を付与できるため、古くは武器や道具の錆・塗料の剥離防止などの目的で用いられてきました。現在でもその目的は変わらず、自動車部品をはじめとする工業製品に対して広く採用されています。
リン酸塩処理は錆を含めた腐食の進行を抑える表面保護効果として塗装の下地に用いられることが多いですが、それ以外にも金属加工時に潤滑剤と併用することで塑性加工を容易にする目的でも用いられます。
リン酸塩処理には、リン酸亜鉛処理が最も多く用いられますが、その他にも全部で4種類の処理があります。それぞれ異なる特徴があるため、処理の成分や利点などをご紹介します。
リン酸亜鉛処理は、リン酸塩処理の中で最も多く用いられている処理方法で、主成分はリン酸イオンと亜鉛イオンで構成されます。結晶性の皮膜を形成することで耐食性、密着性を大きく向上させる効果があり、鉄鋼や亜鉛製品の塗装下地や冷間鍛造の潤滑皮膜として使用されます。また、熔解亜鉛めっきを施したスチール製品は、美観をより重厚感や高級感のあるものに変化できるため、仕上がりに自然な質感が求められる製品にも採用されます。
リン酸亜鉛処理は経年変化で少しずつ変色が見られ、濃淡が落ち着いて周囲の景観と調和してくる傾向があります。処理温度60度以下のものが多く、常温で処理ができるものもあり、使いやすいことも採用されやすい理由のひとつとなっています。
リン酸カルシウム処理は、リン酸イオン、亜鉛イオンとカルシウムイオンから構成されており、結晶性の皮膜を形成します。同じ結晶性皮膜を構成するリン酸亜鉛処理に比べて耐熱温度が高く、高温で焼き付ける塗装下地に適しています。
リン酸カルシウム処理は冷間鍛造による潤滑皮膜として用いられることもありますが、鉄鋼製品に対して用いられることが多く、処理温度は80度~90度と高いのが難点とされています。
リン酸鉄処理の主成分はリン酸イオンで、他のリン酸塩処理と違い、非晶質の皮膜が形成される特徴があります。形成される皮膜は1μm以下と非常に薄く、干渉色によって青や黄色などの皮膜外観になります。皮膜成分はリン酸鉄で、皮膜の成分に鉄を必要とするため、適応素材は鉄鋼製品に限定されます。
リン酸鉄処理はリン酸亜鉛処理に比べて耐食性に劣りますが、何も処理しない場合に比べると耐食性は高いです。加えて塗装密着性も得られ、他のリン酸塩処理に比べて安価で溶液管理がしやすいため、塗装下地として好んで選ばれる傾向があります。
リン酸マンガン処理の主成分はリン酸イオンとマンガンイオンから構成されており、結晶性の皮膜が形成されます。皮膜の主成分はヒューリオライトで、リン酸亜鉛処理に比べて皮膜が厚く、表面の粒子が粗い特徴があります。
リン酸マンガン処理は耐摩耗性に優れ潤滑作用が大きいことから、ギアやピストン、ベアリングをはじめとする摺動部品に多く採用されます。リン酸鉄処理と同様、加工は鉄製品に限定されるほか、処理温度も80度~90度と高く、処理時間も5~30分程度かかってしまう欠点があります。
リン酸塩処理の工程は主に以下の5つに分けられます。
1と3の工程で薬剤が使用され、各処理に合わせて1分から長い場合は10分以上かけるものもあります。また、防錆、塗装、塑性加工などの目的に応じて処理が異なります。
リン酸塩処理の目的が防錆である場合は、表面に防錆油を塗布します。塗装が目的の場合は電着塗装や溶剤塗装と同一ライン内で施され、必要に応じて上塗り塗装まで続けてなされます。塑性加工が目的の場合、乾燥前に追加工程としてステアリン酸ナトリウムを主成分とする石鹸処理が施されます。
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