配管は、上下水道やビルの空調設備のダクトなど、人の生活を支える必要不可欠な設備です。化学プラントやボイラなど、工業分野にも用いられる設備であり、高圧の液体を充填することもあれば、海水に触れるなどの腐食しやすい環境下で使用することもあります。
それゆえに配管は、用途や材質、その加工方法などによって異なる様々な種類が存在します。
今回の記事では、配管とは何かというところからその種類、配管製作時に用いられる溶接加工の詳細などについて解説していきます。配管製作をご依頼する際の流れや、配管製作に関するおすすめの業者についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
配管とは、流体(気体・液体・粉体・粒体)の輸送や配線の保護などを目的に配置する管のネットワークによって構成される設備のことです。その構成要素の一つである管そのものも配管と呼びます。管に流体を流すことで流体を輸送し、管に電線等を通すことで配線を保護します。
また、管を配する、つまり配管の配置を設計して施工することを「配管する」と言います。
配管は、インフラや建築、工業など、様々な分野を支える設備で、用途別に分類すると、以下のような種類があります。
配管の主な用途別種類
流体を配管に流して輸送するために用いられる配管です。
例としては、上下水道や都市ガスなどが代表的で、住宅や工場等の中に配置される給排水管や空調設備のダクトなども含まれます。化学プラントなどで用いられる、プラントの運転に必要な水や空気、燃料などを供給するユーティリティ配管や、プラントの機器を相互接続するプロセス配管なども輸送用配管です。
高温の流体から低温の流体へ熱を移動させるために用いられる配管です。
ボイラや熱交換器などに用いられます。一般的には、管をループ状に配置し、同じ箇所を繰り返し通すことで配管内部の物質と配管外部との間で熱交換を行います。
配管内に充填した流体を通して圧力を機器や測定器などへ誘導するために用いられる配管です。充填した流体の違いにより、油圧配管・空気圧配管・水圧配管に分けられます。
プラントにおけるタンクやプロセス配管内の流体の圧力測定などに用いられます。
電線やケーブルを衝撃や張力などから保護するために用いられる配管です。
電気配管は、屋外に設置する電気機器や地中に埋設する電線ケーブルなどに用いられます。
配管は、多様な環境で使用されると共に、ほとんどのケースで管の内に物質を保持したり通したりする役割を担います。そのため、配管の製作時には、その管内の物質の違いや物質の状態(性質・流量・温度・圧力等)に応じて、配管の材質を適切に選択することが必要です。
配管には、主に以下のような材質が選ばれます。
配管の主な材質
炭素鋼は、コストが低いことから最も多く用いられる配管材料です。様々な種類があり、用途に応じて使い分けられます。
例えば、配管用炭素鋼管(SGP)は、低圧の水や油、ガス、空気等の輸送用などに用いられ、工業用水や空調設備などの配管に使用されています。特に腐食の抑制効果がある亜鉛メッキを施したものは、上水道用に用いられています。
そのほか、10MPaまでの圧力に対する耐性がある圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG)、−100℃〜−50℃程度までの低温でも使用できる低温配管用鋼管(STPL)などがあります。
炭素鋼に合金元素を少量添加した低合金鋼と呼ばれる材料も配管によく用いられます。低合金鋼によく添加される元素は、耐食性と耐酸化性を向上させるクロムや高温強度が増すモリブデンなどです。高い耐食性や高温環境下で用いられる配管で採用されます。
錆びにくいステンレス鋼も、その耐食性の高さから、配管によく使われます。
ステンレス鋼の中では、フェライト系よりも耐食性に優れたオーステナイト系のステンレス鋼の方が多く用いられます。しかし、代表的なオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304やSUS316は、応力腐食割れや海水による孔食を起こすことがあります。そのため、海水に触れたり海風に当たったりする環境下では、耐孔食性を向上させたSUS317などが用いられます。
配管材料に用いられる非鉄金属としては、銅や黄銅などの銅合金、アルミやアルミ合金などが挙げられます。
銅や銅合金は、温水や水に対する耐食性が高く抗菌作用もあるため、住宅の上下水道などに用途があります。また、熱伝導性が高いことから、熱交換器などの冷媒配管にも用いられます。
アルミやアルミ合金は、銅と同様に熱伝導性が高いため、冷媒配管の用途があります。エアコン配管に採用されることが多い材質です。
プラスチックは、金属管と比較すると、軽量かつ低コストで施工がしやすいことから、建築設備や上水道、都市ガスなどの配管用に使用されています。
代表的なものとして、ポリ塩化ビニル管(PVC)やポリエチレン管などが挙げられます。
金属管と比べると強度や耐熱性が低く、温度の違いによって強度が変動するといった欠点もあるため、金属管とは使いどころが異なります。
配管は、継手などの配管部品とパイプから構成されます。ここでは、配管の構成部材であるパイプと継手の種類について説明します。
配管の構成部材に用いられるパイプは、その製作方法の違いから、溶接管とシームレス管に大別することが可能です。さらに、溶接管は、アーク溶接管と電縫管、鍛接管に分けることができます。
パイプの種類
アーク溶接管は、素材を管状に成形した後に、継目(シーム)部分をアーク溶接によって接合したパイプです。
パイプのアーク溶接では、その継目の形状により、ストレートシーム溶接とスパイラルシーム溶接に分けることができます。
ストレートシーム溶接は、金属板をプレス機械を用いて円筒形状に成形し、丸めた金属板の両端を内外両面から溶接接合してパイプを製造する方法です。パイプのサイズが金属板のサイズに依存するというデメリットがあります。
一方、スパイラルシーム溶接では、素材としてコイル材を用います。コイル材から帯板を連続的に引き出しながら、ロールでスパイラル状(らせん状)に曲げて円筒形状に成形し、継目を内外両面から溶接接合してパイプを製造します。理論的には、製造するパイプのサイズに制限がありません。また、生産性が良く、大量生産に向いた方法です。しかし、溶接線が下図右のようにらせん状に発生してしまう上、溶接量が多くなるという欠点があります。
電縫管は、金属板を管状に丸め、管の長手方向の継目部分を抵抗溶接によって接合して成形したパイプです。
生産性は良好で、炭素鋼のほか、ステンレス鋼や低合金鋼のパイプ製造にも適用可能です。
また、強度の高い接合部を形成することが可能で、表面性状にも優れます。
鍛接管は、金属板を幅方向に円形に変形し、その両端を加熱しながら密着させて圧力を加えること(鍛接)で接合したパイプです。
生産性に優れますが、基本的に炭素鋼のみにしか適用できません。
接合部の強度はあまり高くなく、強度を求められる用途には不向きです。また、加熱するため、スケールが発生しやすく、管内外の表面がやや粗くなります。
引用元:ダイナオックス株式会社
シームレス管は、円筒形状の金属塊(ビレット)を高温に加熱し、中心にプラグという金具を押し付けることで穴を空けてパイプ状に成形します(上図参照)。このシームレス管の製造方法をマンネスマン法と呼びますが、プレス機械で押出してパイプを成形する方法もあります。
小ロット品の製造に適した製造方法で、材質に関しては、炭素鋼からステンレス鋼まで幅広い材質のパイプを製造することが可能です。
文字の通り、継目がないパイプとなるので、パイプの全周にわたって均質性があり、内圧やねじれに強くなります。また、溶接管では製造が難しい厚肉のパイプの製造が容易です。しかし、寸法精度がそれほど高くなく、表面性状もあまり良くありません。
配管の継手は、2つ以上のバルブなどの配管部品やパイプを接合する構成部材です。パイプ同士を接続して延長したり、配管ルートを曲げたり、分岐させたり、内径を拡大・縮小させたり、塞いだりするなどの役割があります。バルブや計測器などとの接続や脱着を容易にするという役割も持っています。(下図参照)
引用元:株式会社フジキン
配管を製作する際には、上述したパイプの製作方法のほか、パイプ同士やパイプと継手などを接続するための溶接加工も必要です。そのような溶接加工では、工場で溶接を済ませるプレハブ溶接だけで配管を製作することもあります。しかし、多くのケースにおいて、配管を設置する現場での施工が必要となります。
ここでは、配管製作時における、設置場所での施工に広く用いられている溶接方法について説明します。
被覆アーク溶接は、被覆剤(フラックス)を塗布した溶接棒と母材間にアークを発生させ、溶接棒と母材を溶かして溶接する方法です。
溶接棒のみで溶接ができる被覆アーク溶接は機動性に優れていることから、場所を転々と変えながら施工しなくてはならない配管の溶接に適した方法です。
しかし、配管の溶接では、内側の継目に溝があると液溜まりが発生することがあります。液溜まりは、清浄性や清掃性を低下させるため、溶接部の裏側にまでビードを形成する裏波溶接を必要とすることが多くあります(下図参照)。被覆アーク溶接では裏波溶接が難しいことから、このような場合には、Tig溶接を採用することが多くなっています。
引用元:株式会社レイマック
Tig溶接は、溶接部を不活性ガスでシールドしながら、タングステン電極と母材間にアークを発生させ、溶融した母材に溶加棒を溶かし込んで溶接する方法です。
電極と溶加材を独立に制御できることから、裏波溶接を必要とする配管の溶接では広く採用されています。また、ステンレスやアルミニウムなどを材料とする配管では、ほぼ全ての金属に適用できるTig溶接が採用されます。
しかし、シールドガスや溶加棒を用意する必要があることから、被覆アーク溶接と比べると機動性には劣ります。また、他の溶接法に比べて溶接速度が遅いという欠点があります。
参考記事Tig溶接の特徴や加工方法について、以下の記事に詳細がありますので、参考にしてください。⇒TIG(ティグ)溶接とは【専門家が解説】特徴や加工方法について詳細をお伝えします!
マグ溶接は、溶接部を不活性ガスと炭酸ガスの混合ガスでシールドしながら、溶接棒と母材間にアークを発生させ、溶接棒と母材を溶かして溶接する方法です。混合した炭酸ガスによって、エネルギーが集中した細いアークが発生するため、溶け込みが深くなって強度が上がります。
配管の溶接では、溶接棒にソリッドワイヤやフラックスコアードワイヤ(FCAW)を用いたマグ溶接が採用されています。ただし、自動溶接向きのマグ溶接は、プレハブ溶接で採用されることが多く、現場溶接にはそれほど採用されていません。
配管製作では、構成部材のみを依頼する場合もあれば、ユニット一式全ての製作を頼む場合もあり、現場への設置や現場での加工も依頼する場合もあります。
ここでは、これらのケースも含めた配管製作を依頼する際の流れについて解説します。
工場へ見積りを依頼する際には、電話やFAX、Eメール、お問い合わせフォームなどから見積り依頼を出します。
配管の構成部材のみの製作依頼であれば、ご希望の数量や材質、概略寸法、納期などを伝えると共に、図面を提示します。設計も含めて依頼する場合でも、簡単な図面があれば、間違いを少なくすることができますし、相談もスムーズに進みます。
配管のユニット一式の製作依頼も同様ですが、現場への設置や現場での加工も依頼したい場合、加工法や加工機、作業手順や日程の計画なども必要となります。その場合、打ち合わせや現場の立ち会いなどを必要とすることがあります。
見積りの結果を受け取ったら内容や予算、納期、輸送方法などを確認し、見積りが希望の内容と合っていれば発注します。見積りは、同じ内容で複数社に出すこともできます。他社と比較してより良い工場を選択します。
なお、施工も依頼する場合は、施工図や施工計画書なども併せて確認する必要があります。
発注が確定したら、工場は設計・加工を開始します。設計も依頼している場合は、設計完了後に確認します。
設計・加工の後は納品です。納品までの期間は、依頼内容や輸送日数に依存します。工場によっては、短納期に対応しているところもあるので、事前に相談すると良いでしょう。
施工も併せて行う場合は、完了後に確認が必要となります。
引用元:有限会社福田組
本社:山口県下関市彦島西山町2丁目1番25-10号
TEL:083-227-4374
FAX:083-227-4365
創業:1956年
加工:溶接(Tig溶接等)、製缶、組立 など
素材:鉄、ステンレス など
福田組は、配管製作のほか、製缶加工や機械組立、油圧装置製作などを主要業務としているメーカーです。船舶向けの製品製作を得意としており、船舶用の油圧装置やポンプユニット、ウィンチ、油圧配管などの豊富な製作経験があります。
配管製作については、ユニット一式のご依頼はもちろん、単品の製作にも対応しています。
水圧・油圧配管、高圧配管などの製作経験が多く、特殊環境下の輸送用配管や導圧配管に関する高い技術があります。
船舶用油圧配管や発電所用油圧ユニットなどの製作経験がありますので、大型の配管ユニットでも安心してご依頼できます。
ただし、工業分野の配管製作が中心ですので、インフラ分野や建築分野の配管については、事前にご相談ください。
火力発電所向け油圧ユニット
衝突実験装置用高圧配管
ドライガスシールユニット
引用元:株式会社東北ウエルディング
事務所所在地:山形県酒田市東泉町二丁目7-8
事務所TEL/FAX:0234-26-3335
工場所在地:山形県酒田市飛鳥大道端84-1
工場TEL/FAX:0234-43-8851
設立:平成27年
加工:溶接(TIG溶接、マグ溶接、炭酸ガスアーク溶接、半自動溶接等)、製缶 など
素材:鉄、ステンレス、アルミ など
東北ウエルディングは、溶接加工を中心業務とし、配管工事や鉄筋工事も行っている会社です。配管や製缶の溶接を得意としており、設置や現地溶接にも対応しています。
溶接に関しては、修理や改造、オーダーメイド製作に対応しています。数量についても、小ロット品や量産品などに関わらずご依頼可能です。
溶接工の現地出張が可能で、一般住宅の施工にも対応してくれます。
ただし、熱伝達用配管や導圧配管など、特殊な配管製作には対応できない可能性があります。事前にご連絡ください。
引用元:筑波鉄工株式会社
本社:東京都大田区西六郷3-3-6
TEL:03-3732-7811
FAX:03-3732-7814
設立:昭和35年
加工:溶接(Tig溶接、マグ溶接、自動溶接等)、ろう付、切削、板金、塗装 など
素材:鉄、ステンレス、銅 など
URL:http://www.tsukuba-tube.co.jp/
筑波鉄工は、金属パイプの曲げ加工を専門とするメーカーです。切削加工や板金加工、溶接、塗装などにも対応しており、配管の一貫した製作体制を敷いています。特に建設機械の油圧配管製造を得意としています。
パイプの曲げ加工が可能で、溶接痕を残すことなく湾曲したパイプを製造できます。3次元的に湾曲するパイプや、加工が難しいパイプの1D曲げ(極小R曲げ)にも対応。1D曲げ加工については、φ34の小径からφ114.3の太径までの加工が可能です。
パイプ加工に関しては、曲げ加工だけでなく、切断や穴あけ、溶接、塗装も請け負っています。これらをワンストップに実施できるため、個別にご依頼するよりも高品質かつ低コスト、短納期で製品を提供することが可能です。
ただし、Tig溶接機の保有台数が少ないため、非金属製溶接管の製造など、Tig溶接を必要とするパイプ製造には、時間がかかる可能性があります。
油圧配管パイプ(φ76.3/R80とφ60.5/R65を接続)
油圧配管パイプ(φ60.5/R65)
油圧配管パイプ(φ34/R70)
配管製作の詳細や配管製作を依頼する際の流れ、配管製作のおすすめ業者を説明しましたが、いかがでしたでしょうか。配管製作は、現地への設置や現場での加工も併せて考慮する必要があります。そのため、業者を選ぶ際には、ご依頼する製品の分野に関して業者にその分野のノウハウがあることが重要となります。また、現地での溶接加工を必要とすることも多く、その場合には高い専門性がなくてはなりません。
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