2024-09-18
更新
染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
金型の存在は知っていても、どれほど生活に貢献しているかよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな金型の種類や代表的な製品といった基礎知識から、実際に金型製作する際の流れを解説します。金型による製品の大量生産を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
金型とは、金属で製作した型枠のこと。上下で一対の構造になっていて、中に溶かしたアルミや樹脂を流し込んだり、固い金属材を直接挟み込んだりして、「同じ形の製品を大量に作る」目的で使用されます。金型は、安価かつ安定した大量生産を可能にすることから、モノづくりの母と呼ばれることもあります。
呼び名の通り、日常で目にするあらゆるものが金型を利用して作られています。例えば自動車は、板金(金属の板)を金型でプレス加工して製作しますし、金属や樹脂を組み合わせたパソコンや家電、タイヤなどのゴム製品、ビール瓶などのガラス製品も、すべて金型があるおかげで大量生産することができます。
金型の種類は、主に用いる素材によって分類されています。代表的なものは以下の通りです。
・プレス型(板金)
・プラスチック型
・鍛造型
・鋳造型
・ダイカスト型
・ガラス型
・ゴム型
それぞれ具体的な型や製造法と合わせて、代表的な製品などをご紹介します。
板金素材を用いるプレス型は、抜き型・曲げ型・絞り型・圧縮型などが主な型として挙げられ、製品は自動車の外装・家電・雑貨など非常に多岐に渡ります。
プラスチック材料を加工するプラスチック型は、射出成形・圧縮成形・真空成形・移送成形・吹込成形などの金型に分けられます。代表的な製品は、自動車・家電・雑貨など、プレス型と同じく幅広いです。
鋼材を圧縮して加工する鍛造型は、熱間鍛造と冷間鍛造に分類されます。粘り強さを生み出す鍛造ならではの特徴から、自動車の重要部品・オートバイ部品・ジェット機のファン・建設機械の部品など強度を求められる製品において活躍します。
溶かして液状にした金属を流し込んで加工する鋳造型は、シェルフモールド・ロストワックス・重力鋳造・圧力鋳造などに分けられます。成型にかかる時間とコストが比較的かからない点が魅力で、代表的な製品としては工業用部品・建設機械部品などの大量生産が挙げられます。
ダイカスト金型は鋳造型の一種で、アルミ合金や亜鉛合金などを流し込んで加工を行います。加工の際に高圧力をかけることによって、圧力をかけない重力鋳造などに比べてより細部まで素材を行き渡らせることができ、複雑な成型が可能です。主な製品は、精密機械部品・自動車のエンジン周辺パーツ・カメラのボディーなど。
ガラス素材を成型するガラス型には、一般的な金型と近い加工法の押型(プレス型)と、ガラスの特性を活かした吹型(廻吹型・吹込型 )があります。押型は肉厚の皿や鉢などの成形に向いていて、吹き型は空気を吹き込むことにより生まれる気泡などが特徴です。主な製品は、ガラスのボトルや瓶、食器、照明器具などが挙げられます。
天然ゴムや合成ゴムを成形するゴム型は、直圧成形・直圧注入成形などに分けられます。一口にゴム製品と言ってもさまざまありますが、タイヤ・履き物・工業用部品などが代表的。なおゴムの性質を持つ「熱可塑性エラストマー」も一般的にはゴムと呼ばれますが、こちらはゴム型ではなく樹脂(プラスチック)型の射出成形によって成形します。
型の種類とそれぞれの代表的な製品をご覧いただくと分かる通り、金型はさまざまな製品の製造に用いられています。その理由は、金型が現代の製造業において欠かせない存在だからです。仮に金型がなかった場合、ひとつの製品を製造するためにかかるコストは非常に高くなってしまいます。
自動車の外装フレームを例に考えてみましょう。金型以外の加工法で現在の品質を実現しようとした場合、切削加工によって金属の塊から削り出す、というのがひとつの方法です。しかしそれでは時間がかかりすぎますし、品質も安定しません。さらに削った部分は廃棄するしかなく、時間・品質・原価、あらゆる面で無駄が生まれます。
これらをすべて解決するのが金型です。さらに、スピードアップ・品質の安定化・コストダウン・短納期化といった生産性に直結する面だけでなく、製品の多様化・小ロット化・環境対策・軽量化などの、時代やニーズの変化への対応力も持ち合わせています。
同一形状の製品を安価かつ安定して大量生産できる金型は、私たちの生活に欠かせない存在と言えるでしょう。
最後に、金型製作の流れをご紹介します。大まかな流れは次の通りです。
1.見積り・打ち合わせ
2.設計
3.金型加工
4.金型の仕上げ・組立
5.動作チェック(トライ)
それぞれの工程を掘り下げながら、順に見ていきましょう。
製造したい製品のデータを元に、金型業者と打ち合わせを重ねます。この際用意するデータは、2Dの図面や仕様書の場合もあれば、3Dデータの場合もあります。
重要なのは、この時点で「製品の仕様」「使用目的」などを金型設計者に明確に伝えて要求事項をはっきりとさせ、無駄なコストがかからないようにすることです。
打ち合わせた内容を元に、金型設計者が設計図を作成。
さらに作成された設計図をもとに、その後のNC(数値制御)加工に用いられるプログラムや、切削加工や放電加工に用いられる3DモデルをCADで作成します。
各種プログラムやデータが揃った段階で、いよいよ加工に入ります。加工の工程はいくつかに分かれます。
初めに、部品の穴あけや荒取りなどの「前加工(荒加工)」を施し、その後真空炉に入れて焼入れと焼戻しを行います。
鋼材の下準備が整ったところで、マシニングセンタを用いて削り出しです。マシニングセンタによって金型の重要な部分の大枠を削り出すことができますが、すべてをマシニングセンタで加工できるわけではありません。製作する形状によって、次以降の加工へと進んでいきます。
切削工具を使って材料を除去する切削加工は、その後行う放電加工や磨きにかかる時間を減らし、コストダウンかつ納期短縮のために行います。マシニングセンタによる加工もこの一種で、そのほかに、NCフライス盤・ジグ中ぐり盤・旋盤・汎用フライス盤・ボール盤などが用いられます。
放電加工は、深リブ・ネジ部・エッジ部といった、工具では削れない形状や部位を削るのに適した加工で、電極と鋼材の間を、アーク放電によって溶かして除去します。ワイヤカット放電加工機・放電加工機などが用いられ、加工放電はその加工面の滑らかさから、仕上げの磨き工程の時間短縮にも繋がります。
最後に、削り出した金型を、砥石・セラミック砥石・ダイヤモンドペーストなどを使って磨き上げます。金型の形状は複雑なものも多いため、この磨きの工程はほとんどが手作業で行われ、必要に応じて顕微鏡などによって確認しながら、表面粗さ(面粗度)を高めます。
最後に加工された金型部品を組み立てて、仕上げや測定を行います。仕上がった金型に不備がある場合には、この段階で熟練工などによる調整が入ることも。高精度なものでは、±1μmの精度を出すことが可能です。
実際に成形し、摺動部(対になった金型がこすれ合う部分)などの動作に問題がないかを確認します。
この試運転を「トライ」といい、一度目のトライをファーストトライと呼びます。以降、調整が発生するごとにセカンドトライ、サードトライ、と回数が増え、金型業者は「いかにファーストトライで不具合を起こさないか」という点に細心の注意を払っています。
以上の流れで、金型製作は完了です。
いかがでしたでしょうか。金型は、一般的には普段あまり目にする機会のないものですが、その活躍は多岐にわたり、なければ製造業が立ち行かなくなると言っても過言ではないほど重要な存在です。
実際に製作を依頼するうえでは、まず製品の仕様から金型の具体的なイメージを固めておくことが肝心です。ぜひ、各金型業者が発信している得意な加工法や使用機材なども参考にしてください。
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