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【へら絞り】へら絞りの加工方法やメリット・デメリットをわかりやすく解説!!

2025-01-15

更新

この記事を監修した人

金属加工業界最大級のマッチングプラットフォーム「Mitsuri」を手掛ける企業。
「未来の製造業をつくる」をモットーに、製造業DXを推進している。

へら絞りとは

タオルを絞ったりホースの先を絞ったり。

『しぼる』という言葉には衣類をねじったり締め付けたり、カメラのレンズの範囲を小さくするといった意味がありますね。

今回のテーマであるへら絞りにも、絞るという言葉が使われているだけあって、金属を縮めたり圧縮していく加工を施していくのですが、その様子を実際に見てみると言葉とは真逆の広げたり伸ばしたりといった感じの加工をしているように見えます。

ですが、その加工の様子を言葉だけで説明しようとするといまいち伝わりにくいかもしれませんので、まずは実際に加工している様子が分かる動画を見ていきましょう。

へら絞りには職人が手作業で加工する『手絞り』と機械が自動で加工する『自動絞り』の2種類があるので、それぞれご覧いただけるとより分かりやすいかと思います。


手絞り加工 

自動絞り 


滑らかに金属が伸びていくさまが何となく陶芸のろくろを回している所を連想させますね。

動画の通り、へら絞りとは素材となる金属を高速で回転させて、へらと呼ばれる棒を押し当てることで形を作っていく加工のことです。

元は薄っぺらい円盤状の金属を、へら棒と呼ばれる金属の棒を当てることで徐々に引き伸ばすようにして成形していきます。

へら絞りはその金属を回転させながら加工する方法からスピニングとも呼ばれます。

ただ、動画を見た限りでは、やはりへら絞りは金属を伸ばして加工しており、とても絞っているようには見えませんよね。

実はこの絞っているという表現は、伸びていっている先端の方ではなく、根元の方を指しているのです。

加工しているところを見ると、どうしても伸びている方に目が行くため印象が薄くなりますが、物質の量は変わらない以上、根元の方は小さく薄くなっていることになりますね。

金属なので縮んでいる感じがなくイメージしづらいですが、身近な物に例えて、サランラップをコップに押し当てるところを想像すると分かりやすいでしょうか。

あるいは靴下を履くところでもいいでしょう。

ラップや布地が伸びている部分に対して、反対側は薄く締め付けられていますね。

これを絞るというふうに表現して、これらの加工のことを『絞り加工』、へら棒を使う場合は『へら絞り』と言うようになったのです。

率直に「伸ばし加工」と名付けてもよさそうなところですが、あえて目立たない方に目を付けて「絞り加工」と命名するあたりが、粋に職人気質な感じが出ていて面白いですね。

へら絞りによって作られる製品や主な材料

へら絞りは加工の仕方から、大量生産よりも多品種少量生産に適しています。

作られる製品には身近なところでやかんや鍋、大型の製品ではパラボラアンテナなどがあります。

他にも通信機器や医療機器、照明器具などの部品としても使われ、他にも様々な機械に組み込まれています。

主な材料はよく使われる鉄やアルミ、素材が硬く加工が難しいステンレスやチタン、高級ではありますが美しい見た目に彩れる銅や真鍮(しんちゅう)などがあります。

加工できる素材の中ではアルミが一番深く絞りやすく、次いで値段が安価である鉄が深く絞れます。

加工が難しいステンレスやチタンはあまり深く絞れませんが、強度が高く錆びにくいので、鉄より高い強度が必要な部品や野外など錆びてしまう場所で重宝されています。

へら絞りは作業者の熟練度によってはプレス加工よりも高い精度の製品に仕上げることができますが、実際にやると加工中に曲がったり破断が起きたりしやすく、品質の良い製品を作るには熟練の技術がいる難易度の高い加工方法です。

動画を見た感じでは棒を押し当てているだけで簡単そうに見えるんですけどね。

ただその辺は、ろくろを回す作業をやってみると案外難しいのと同じように、しっかりとした製品を作るには高い技術が必要なのです。

しかしながら熟練度や得意分野によって大きく差が出るへら絞りでは、その難しさがゆえに、むしろ多くの職人がやりがいや誇り持っています。


へら絞りのメリット・デメリット

絞り加工にはへら絞りの他に、よく使われる手法としてプレス機を使ったプレス絞り加工という方法があります。

へら絞りを使わず絞り加工をする際はだいたいそのプレス加工絞りが用いられます。

この項目では状況に応じて使い分けられるへら絞りとプレス加工絞りを比較しながらメリットとデメリットの説明をしていきます。

メリット

・初期費用が安くすむ

へら絞りは試作品や少量生産で製品を作る場合、プレス機を使うよりもコストが安くすみます。

プレス機を使った加工なら金型が二ついるところが、へら絞りなら一つでいいためです。

金型とは製品を作るための元となる型のことです。

例えて言えば、ハンコを押す際の印鑑のようなものですね。

印鑑さえあれば次々と判を押せるように、金型さえあれば次々と製品を作ることができるのです。

プレス機の場合その印鑑が二つ分、へら絞りであれば一つでいいということですね。

簡単なものですと、プレス機であれば10万円もコストが掛かるところが、へら絞りならわずか数千円ですむこともあるのでとても安価です。

プレス機自体の値段も高いですし、材料費も薄い皿のような金属板1枚から製品が作れるのでそれほど掛かりませんので、試作品の製作や多品種少量生産の場合はへら絞りの方が適していると言えます。


・短納期で加工ができる

製作期間においても、へら絞りはプレス機を使うよりも圧倒的に早くできます。

プレス機は一つの製品を作るにしても金型の製作からしなければならず、簡単な製品でも10日~20日、難しいものになると1か月~2ヶ月ほど掛かることもあります。

ですが、へら絞りなら金型が不要で段取りも早くすむため、簡単な製品であればなんと1時間以内で、複雑な形状をしていても1週間あればできます。

ただ、大量に作るとなると技術者の負担が大きくなってしまうので、大量生産をする場合はプレス機を使って自動化した方が効率が良くなります。

これらのことから試作品や少量生産の場合はへら絞りで、大量生産する場合はプレス機を使って加工していくのが向いていると言えますね。

さすがに大量生産となるとプレス機を使って加工を自動化した方が効率がいいですが、まだ試作段階だったり多品種少量生産を目的としているならへら絞りの方が向いています。


・幅広い製品に加工できる

へら絞りは数ミリの小さな製品はもちろんのこと、何メートルもするような大きな製品でも問題なく加工できます。

小さな製品で言うと細かい機械の部品、大型の製品には先ほども例に挙げたパラボラアンテナがありますね。

また、鉄やアルミなどの加工しやすい素材であれば深絞り加工も容易です。

深絞り加工とはコップや鍋などの底が深い製品を加工することで、反対にフライパンや金属の皿のような底が浅い製品の場合は浅絞り加工と言います。

ステンレスやチタンのような硬い素材は深く絞ろうとするほど難しくなりますが、それら以外の材料であれば複雑な形をした部品やある程度底が深い製品でも比較的容易に作ることができます。


・品質がよくなる

へら絞りで加工した製品はプレス機で加工するよりも表面が滑らかになります。

バリが出ないので後処理も必要なく、技術のある人であれば製品ごとに厚さがバラバラになることもありません。

バリとは金属を切ったり削ったりした時にできる粗のことで、これがあると表面処理をして綺麗にする必要があります。

他にへら絞りには軽量化ができたり強度が高くなったりする利点もあるため、品質面で非常に優れた製品ができます。

手絞りにおいても自動絞りにおいても、職人の技術や機械の機能はどんどん良くなっているので、品質や厚さなど精度が安定しなかった製品でも、年々へら絞りで加工できるようになってきています。

デメリット

・大量生産に向かない

これまで示してきたようにへら絞りは大量生産には適していません。

デメリットと言えるほど致命的な欠点はあまりないへら絞りですが、1000個を超える依頼を受けた場合は効率的にプレス機にお任せした方がよいかと思われます。


・熟練した職人が必要

これも前述の通り、へら絞りは難しい加工であるだけあって技術の習得は容易ではありません。

手に職をつけるには十分な知識と経験が必要となるでしょう。

その理由から、これは製造業全体に言えることでもありますが、へら絞りにおいても若い世代の職人が不足しています。

町工場や中小企業にとって厳しい状況が続いている世の中ですが、少しでも職場の環境や待遇を改善し、より広く若者を受け入れる体制を作っていきたいところですね。


へら絞りで作ることができる形状

同じ加工の仕方でも製品の形は多彩に作れるのが金属加工の面白いところ。

へら絞りも他の加工と同様、様々な形状に加工することができますが、実はへら絞りのもう一つのデメリットに、丸い形以外の製品は作ることが困難という欠点があります。

動画で回転させながら加工するところを見ると、確かに四角や三角の形は作りにくそうですよね。

ただ、それでもなお、何十何百という種類の形を生み出してしまうのが熟練の職人たちのすごいところでもあります。

引用元:株式会社 北嶋絞製作所

上の画像はへら絞りで作った製品の一例です。

単に丸形と言っても、シンプルなお椀の形をしているものから複雑そうなものまで色々ありますね。

これだけ多くの種類が作れるなら丸形のみというデメリットもあまりないように感じます。

ただ、プレス絞り加工では四角や三角などの形状の製品も問題なくできるので、その辺は適材適所として使い分けるのがよいでしょう。

下の画像はへら絞りで作ることができる形状の断面図です。

引用元:SHINYU METAL FACTORY

立体にするとどんな形をしているか分かりやすい形もあれば、イマイチ想像しにくい形もあって興味深いですね。

画像にはたくさんの形状が載っていますが、これもあくまで一例で、他にも多くの形が作られています。

これからも多くの職人たちの手によって様々な形の製品が日々、生み出されていくことでしょう。


まとめ

時代が進むにつれて技術が発展してきたことにより、多くの製品がより精密に作れるようになってきた今の世の中。

へら絞りもまた技術や自動機の開発が著しく進み、より精度の高い製品が効率よく作れるようになってきました。

製造業の盛り返しはまだ訪れませんが、へら絞りに懸けるものづくりへの情熱が少しでも若者に伝わることを願っています。

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