大石 裕明
製造業DX推進担当
プログラマー。スタートアップから大企業までDXの相談に乗り続けて早10年。好きなものは「日々哲学してそうな人」。苦手なものは「それっぽいことを言うだけで何もしないコンサルタント」。株式会社Catallaxy代表取締役。
取組事例から必要性・メリット・すべきことも詳しく紹介
製造業 DX とは何をすべきなのだろう、他社の取り組み事例を知りたい、と調べている担当者も少なくないかと思います。
製造業では目まぐるしく変化する市場への対応や、人材不足などへの対策を打つため DX へ継続的に取り組み成果を出していく必要があります。
本記事では、製造業における DX とは何かと必要性・メリット・すべきことについて詳しく解説していきます。
製造業における DX とは、システムや AI などの自動化技術を活用して工場などの生産プロセスや製品の開発をより効率的かつ革新的にする取り組みのことを指します。
製造業での DX の取り組みとして、たとえばAIを用いて機械の故障を予防することや、生産ラインの効率化を図るなどが挙げられます。また、センサーを使って製品や機械の状態をリアルタイムで把握し、故障の危険性など必要な情報を素早く得られることで、早期対応やスムーズな生産管理が可能です。
DX に取り組む製造業はビジネスモデルそのものを変革できる可能性があります。たとえば、新たなデータを元に新規事業を創出し顧客に新しい価値を提供することが可能です。製造業における DX は AI などの技術を駆使して、企業全体をより良くするためにも重要な戦略です。
製造業 DX の必要性について以下2点を解説します。
それでは、1つずつ見ていきましょう。
1つ目は脱酸素です。
製造業における DX はこの脱炭素に取り組むためにも重要といえます。たとえば、AIを使えば機械が必要以上にエネルギーを消費していないかをチェックできます。機械の稼働方法を調整して省エネに取り組むことも可能でしょう。製造エネルギーが減り温室効果ガスの排出を抑えられます。
また、IoT 技術によって工場全体のエネルギーの使い方をリアルタイムで見ることで、必要なときだけエネルギーを使うように調整することも可能です。
製造業が DX に取り組むことで持続可能な未来に向けて一歩進むことができるのです。
2つ目はサプライチェーンの強靭化の取り組みです。
サプライチェーンとは、製品が作られる一連の流れであり原材料の調達から製品の製造、そして消費者に届けるまでの一連の過程のことです。製造業がDXに取り組むことでサプライチェーンを強くできると言えます。
たとえば、システムを活用し各工程での排出量と全体の量を把握することで、サプライチェーン全体でどれだけの温室効果ガスが排出されているかを把握できます。
もし原材料が調達できなくなったとき部品が足りなくなったときの対策も立てやすくなります。システムでどの部品が足りなくなる可能性があるかを予測したり、必要な部品をどこで手に入れることができるかを調べることも可能です。
これらの取り組みにより製造業DXはサプライチェーンを強くし、さまざまな問題に対処できます。順調に製品を作り消費者へと届けるためにも DX へとしっかりと取り組むことが大切です。
製造業 DX が企業にもたらすメリットについて以下3点を解説します。
それでは、1つずつ見ていきましょう。
1つ目のメリットは業務効率化です。
たとえば、今まで従業員が行っていた製品の検査をAIが行えば、24時間連続で正確な検査が可能になります。また、生産スケジュールの計算や在庫管理などの事務作業もシステムで短時間でより正確に行えるでしょう。
製造業がDXに取り組むことで、人が行っている作業の時間を短縮やミスを削減でき全体の生産効率が上がるため会社の利益にもつながるでしょう。
2つ目のメリットはデータの一元管理です。
顧客からの注文情報や製品の製造に関するデータ・出荷データ・アフターサービスなどの一連の過程の情報を一箇所にまとめて管理できます。各工程の情報を一覧で見れることで進捗状況の特定がすぐにできるでしょう。
工場内の機械の状況や生産の進行状況などのデータの一元化は、問題の発生時に通常よりも早期に原因特定ができることで、改善サイクルを早めることに繋がりメリットばかりです。
このように、製造業が DX に取り組むことは従来に比べて効率的に業務を進めることが可能になります。
3つ目のメリットは従業員のスキルアップです。
技術・市場は進化を続けており、企業が生き残っていくためにはその変化に素早く対応できる能力が必要です。製造業が DX に取り組むことで、従業員は新しい技術を学びながら業務でき変化に強い人材が育成されるでしょう。
さらに、 DX によって従業員はデータ活用しより迅速に意思決定を行うなどのスキルを身につけることも可能です。市場の変化に対して柔軟に対応できるでしょう。
製造業におけるDXは従業員が新しい知識や技術を学び、自分のスキルを高める手助けとなります。
製造業DXの取り組み事例について以下3点を解説します。
それでは、1つずつ見ていきましょう。
IHI株式会社では従来は各部門で最善の方法を追求してきましたが、各部門のデータや業務プロセスを共通化することで、全体として連携が取れるような体制へと改善しました。これにより、全社の情報の一元管理と全体の最適化を図ることが可能になりました。
DXを進めるための人材の育成にも力をいれています。IHIでは社内公募を行うことで意欲の高い従業員を集めています。毎年約100人の社員に対して研修を行い、専門家との意思疎通ができるレベルの人材育成に注力しています。
これらの取り組みにより、IHIではさまざまなスキルや業務知識を持つ人材が集まるようになり、多様な視点やアイデアが生まれやすい環境が作られることで良い風土醸成がなされているのです。
富士通株式会社は「FTCP(設計開発プラットフォーム)」を導入し業務改善を進めています。
取り組んだ背景として、市場の急速な変化に対応するため製品の多様化や納期の短縮、さらには技術の継承や人材不足といった課題に立ち向かう必要がありました。
そこで「富士通生産方式(FJPS)」が立ち上がり、人に依存せずに自社で必要なツールを作り出すことを業務プロセスを並列化して作業の短縮をすることを目指しました。
FJPSの一環として製品開発における設計作業をデジタル化するプラットフォームである、「FTCP」が開発され、製品の評価や検証ルールの整備・製品開発フローの改善・社内プラットフォームの使用状況の監査など、FTCPの持続的な活用を支える取り組みが行われました。
この結果、製品開発プロセスの改善が実現し設計段階での問題発見や製造しやすい設計の追求が可能となりました。また、製造技術部門の業務負担が軽減され、品質の向上や納期の短縮にも成功したのです。
川崎重工株式会社は、会社ごとに個別最適化されたPLM(製品ライフサイクル管理システム)を導入していました。会社単位で異なるシステムを使っていたため、グループ会社の連携施策が困難で、外部業者への支払いコストも多くかかり、意思決定が遅くなる、という課題がありました。
それを解決するためコーポレートIT部門が主体となって、グループ会社全体で使える全社共通のシステムを新しく導入しました。導入要否やカスタマイズは各会社で決めることができ自由度もあったことから、各会社単位の課題に合わせた導入・運用が可能となりました。また、
基盤を共通化したことでシステムの横展開がしやすくなりました。自社でシステム調整が可能となったため、外部のベンダー管理の手間も削減できました。また、設計部門の部品手配などの付帯作業が減ったこと、共通システムで3DのCADデータを管理することで、約80%ものコストを削減できた効果も見られています。
製造業DXで取り組むべきことについて、以下2点を解説します。
それでは、1つずつ見ていきましょう。
1つ目はデータ活用です。
たとえば、機械の状態や製品の生産工程の進捗状況のデータをシステムで管理すれば、その管理データを使って新たな知識や洞察を得ることが可能です。たとえば、どの機械が一番効率良く動いているか、または、どの工程が一番時間がかかっているかなどを特定できるでしょう。問題が発生した場合はその要因を特定し、すぐに改善策を考えることも可能です。データ活用することで製造業における生産性アップにもつながります。
2つ目はAI活用です。
AI は人のように疲れることなく同じ作業を正確に繰り返すことができるため、作業品質が安定します。人が一度に行える作業量には限りがありますが、AIは複数の作業を同時に行うことも可能でしょう。また、AIが作業を担当することで人間の手間が省けるため、人件費の大幅な削減にもつながります。
AI を活用すれば製造業にさまざまなよい効果をもたらすでしょう。
本記事では製造業 DX について、必要性・メリット・事例・取り組むべきことを解説しました。
製造業 DX は「生産効率の向上」
「コスト削減」「品質向上」といったビジネスの競争力を高めるために非常に重要といえます。 DX に取り組むメリットとして、データを一元管理することで、分析環境が整備され、生産の最適化や問題解決の迅速化へと繋がります。取り組むべきことは、データ活用の推進、 AI 技術の導入が挙げられます。 DX に取り組むことで製造業はより迅速な対応ができることやコスト削減により、効率的なビジネス運営を実現することはもちろん、データ活用による新たなビジネス創出にもつながるでしょう。
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