2024-09-18
更新
染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
【6分でわかる】タレパン加工とレーザー加工の違い
レーザー加工とタレパン加工の違いについて動画でも解説しています!噛み砕いて解説しているので、ぜひ参考にしてください!
YouTubeにて、金属加工Mitsuriチャンネル運営中!こちらからご覧ください!
レーザーカットによるレーザー加工、タレパンによるパンチプレス加工。どちらが良いか迷っている方はいませんか?
自分が思い描いた形状に金属を成形するため、レーザーカット加工にすべきか、タレパンで加工すべきか、加工法を選択するのは難しいものです。
「試作品のために1コだけ作りたい」
「注文数が少ないから受注してくれないかも・・・」
この記事では、レーザーカット加工の特徴やタレパン加工との違い、レーザーカットの金属別事例を示しながら、レーザーカット加工を選択すべきケースを理由と共に解説します。
レーザーカット加工の特徴をご紹介します。
レーザーカットの強みの1つは、素材に接触せずに加工できるため、美しい仕上がりになることです。
レーザーカットで加工すれば、金属の切断面に「ダレ」「カエリ」「バリ」や熱による歪み、破損など、変形が発生しない成形が可能です。そのため、加工後に研磨処理などの手間がかかりません。
レーザーカットで加工すれば、キレイな制作物を早い納期で納められます。
CorelDRAWやイラストレーターなど、グラフィックソフトで作った自分が思い描く形を、金属で自由に実現できるのも、レーザーカット加工の強みです。
直径の小さなレーザーで加工すれば、複雑で細かな形状の板金製品でさえ、高精度で良い品質に作ることができます。レーザーカット加工は、3Dなどの複雑な形状の金属成形加工にも力を発揮します。
単品でも作れるのは、初期コストが安いから。これも、レーザーカット加工ならではの強みです。
レーザーカット加工では、金型が不要なため、金型を作る費用がかかりません。また、工具も必要ないため、工具を用意するコストも消耗の心配もありません。
レーザーカット加工は、初期投資を抑えながら制作できるため、1コからの試作品や少なめのロット注文にもおすすめです。
金型や工具を必要としないため、準備や用意する時間や段取りが必要ありません。工具のメンテナンスや交換する時間も必要ないので、制作スピードも高まります。
早めに仕上げたい制作物の金属加工に、ピッタリです。
金属成形をしている途中で、制作物のイメージと出来上がりのイメージが違ったり、規格が変更になったりするなど、形状を変更したいケースも起きるでしょう。
そんな場合でも、レーザー加工は容易に対応できます。パソコンのソフトで作図を変更するだけで、金属成形の形状を変えることができるからです。
金型や工具を必要とする金属加工などでは、費用や時間もかかるため、簡単に形状を変更することは難しいでしょう。
タレパンとは、タレットパンチプレスの略称でプレス機の1種です。タレパンは、金型で材料(ワーク)を打ち抜いて加工します。
レーザー加工とタレパン加工を比べると、初期にかかる段取りなどのコストや時間、ランニングコストなどに相違があります。また、金属加工の得手不得手、仕上がり具合の違いもあります。
タレパン加工の場合、金型や工具の段取りなどが必要なため、初期にコストが高めで時間もかかります。しかし、ランニングコストは比較的安くなります。準備が整えば、熟練した職人がいなくても安定性のある加工精度と速い速度を保ちながら、24時間稼働などで大量生産することが可能だからです。
標準の金型を組み合わせて追い抜き加工(ニブリング加工)をすれば、ある程度複雑な加工もできますが、レーザーカット加工ほどではありません。
0.5~3mmほどの板金加工はタレパンも得意ですが、3㎜を超えると難しくなります。また、カエリやダレなどができるため、研磨などの後処理も必要です。
レーザカット加工では、素材の金属にもよりますが、プレス加工より厚板の対応範囲が広く、仕上がり具合もタレパンより概ねキレイです。
レーザーカット加工とタレパン加工の違いがわかったところで、レーザー加工をおすすめするケースを挙げてみましょう。
レーザー加工が適するケース・注文数が1コ~少なめ・初期コストなど初期投資を控えたい・大量生産する必要がない・制作物の形状が複雑・形状を途中で変更する可能性がある・小ロットを早く納期したい
他の板金工作機械と比べると、レーザーカットは加工のランニングコストが高めになります。ランニングコストとして、レーザー発振器に必要なレーザーガス代、金属切断に使う酸素や窒素などのアシストガス代、発振器、チラー、コンプレッサーの電気代などがかるためです。
24時間連続稼働などの大量生産の場合、ランニングコストを考慮すれば、レーザーカット以外の板金加工も、検討する必要があると言えるでしょう。
初期投資を控えたい試作品や1コ~小ロットの部品など注文数が少ない金属製品を、早めに納期したい場合などは、レーザーカット加工がおすすめです。
参考記事タレパン(タレットパンチプレス)についてご興味のある方は、こちらの記事をご一読下さい。⇒【タレパン】タレットパンチプレスの仕組みや特徴について詳しくご紹介!!
引用元:株式会社エステ―リンク
上画像はレーザーカット加工による金属断面図で、上から
・純アルミニウム(A1100)10mm
・ジュラルミン(熱処理型のアルミ合金)10mm
・アルミ合金10mm
・タフピッチ銅3㎜
・一般構造用圧延鋼材16mm
・アルミ合金20mm
になります。このように金属の種類やレーザーの出力により、カットできる板厚も違ってきます。
それでは、レーザーカット加工できる金属素材について、製品事例と共に6種類をご紹介していきます。
加工された鉄の用途には、看板や建築・機械の部品など様々あります。用途の範囲も広く、入手しやすく加工しやすい鉄は、板厚の種類も豊富です。
レーザーカット加工は、鉄の素材を自由で繊細な形状に、美しく仕上げることができます。
8kw出力のファイバーレーザー加工機で、25mmの板厚まで対応可能です。
こちらは、レーザーカットによる鉄板の多孔レーザー切断加工の製品事例です。3.2mm厚さの鉄板にファイバーレーザーを使って、1000個ほどの穴を空けています。
引用元:株式会社かねよし
ステンレスは錆びにくいため、屋外や湿度の高い場所での用途が多い金属です。耐食性・耐熱性に優れ、デザイン加工もしやすく、100%リサイクル可能な特性があります。
そのステンレスの特性を活かし、厨房用品・食器・建材・機械部品・医療用機械器具・航空機部品・化学工業機械設備部品など、様々な分野で使用されているため、ステンレスのレーザー加工の用途も広がっていくでしょう。
しかし、鏡面加工されたアルミは、レーザー加工はリスクがあります。
8kw出力のファイバーレーザー加工機で、25mmの板厚まで対応可能です。こちらは、1.5mmのステンレス板を切り抜いて作った、指先に乗るほど小さく精密なレーザーカット加工の自転車です。自転車のタイヤの部分は、小さな歯車を作る技術を使って作られています。レーザーカッターの性能を表した製品事例になります。
引用元:株式会社ヒラミヤ
アルミニウムは、軽く軟らかく展性も高い性質があり、鉄からの材料変換が進んでいます。耐食性があり、成形や溶接のしやすく、熱伝導にも優れています。
バイク・自動車・鉄道車両・船舶・航空機・コンテナ・建築材から、キッチンの機材・容器などの身近なところまで、色々な用途に使用されています。
アルミのレーザー加工には、工業用並みの高出力が必要です。
8kw出力のファイバーレーザー加工機で、25mmの板厚まで対応可能です。こちらは、アルミニウム製のノートPCシールドケースをレーザーカット加工で 製作した事例です。
引用元:こだま製作所
通電性があるため、電気自動車、新幹線などへの用途が広がっています。銅は、レーザーを反射しやすいため高い技術力を要し、単価が高いため失敗した時の損害が大きくなります。これらの 理由から、銅の加工ができる高出力のファイバーレーザーなどの設備がないと、高品質な加工が難しいでしょう。
8kw出力のファイバーレーザー加工機で、10mmの板厚まで対応可能です。銅をファイバーレーザーでレーザーカットした製品事例です。キレイな仕上げにするためには、出力を少し抑えめにして切断します。それにより銅板の厚み10mmでも、高品質な製品を製作することが可能です。
引用元:株式会社かねよし
アンティークや機械部品に多い真鍮は、意匠性の高さが特性です。デザイン性が活きる加工が上手いレーザーカットなら、自由な形状に加工できます。
8kw出力のファイバーレーザー加工機で、10mmの板厚まで対応可能です。真鍮をレーザーカット加工して製作したインテリア製品の事例です。
引用元:株式会社 ロング
軽量で強度の高い特質を持つチタンは、自転車やバイクなどでよく使われています。鉄やステンレスからの材料転換もあり、これから用途の可能性が見込める素材です。
8kw出力のファイバーレーザー加工機で、6mmの板厚まで対応可能です。ファイバーレーザー加工機でレーザーカットしたチタンの製品事例です。難削材であるチタンでも、ファイバーレーザーなら精度の高いカットで、デザイン性の高い自由な形状を作り上げることができます。
引用元:ヤマウチマテックス株式会社
タレパンとの違いによるレーザーカットの強みは、研磨などを必要としない仕上がりのキレイさ、複雑な形状の金属成形への対応力、形状変更のし易さ、初期コストの安さ、段取りのコストや時間が不要な点などが挙げられます。
レーザーカットで加工できる金属素材は、鉄・ステンレス・アルミニウム・銅・真鍮・チタンなどです。これらの素材なら、強みを活かしたレーザーカット加工に対応できます。
試作品や1コ~小ロットの部品など、注文ロットが少ない金属製品や、早めの納期をご希望の場合は、レーザーカット加工がおすすめです!
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