2025-01-15
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板金加工には、大きく分けて切る、曲げる、作るという加工方法があります。
レーザーによる切断加工は、切断幅やその周囲に生じる熱影響の範囲が狭いため、高精度な切断を実現することができます。他方で、切断幅が狭いために生じる問題もあります。
レーザー加工について、基礎的な知識・原理から、加工に関する専門的な知識まで徹底的に解説致します!
レーザー加工とは、その名のとおりレーザによって加工する方法のこといいます。
レーザーは、もともと複合造語で「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation」の略です。
直訳すると「光線の励起誘導放出による光増幅」です。
レーザー発振の基本は、原子(分子)による光子(電子)の吸収と放出です。
光源となる原子(分子)が、励起状態(エネルギーの高い不安定状態)から基底状態(エネルギーの低い安定状態)へ移行する際に、光子が放出する過程を自然放出といいます。
一方、励起状態の「原子(分子)が外部から与えられた光子(電子)の衝突によって誘導され、さらに光子を放出することを誘導放出といいます。
自然放出された光子は全方向に不規則に起きますが、誘導放出された新しい光子は最初の光子と全く同じ周波数、位相を有し、同じ方向へ移動します。
このように、光子が励起された原子に当たると原子はさらに光子を生み出し、その生み出された光子が更に光子を生み出します。
これを光増幅といいます。
この誘導放出と光増幅を利用して、加工を行うのがレーザ加工になるわけです。
レーザー加工は、被加工物に照射するレーザ光のエネルギー密度や照射時間とアシストガスの作用によって、異なる加工がおこなわれます。
具体的には、
・切断
・溶接
・焼入れ
の3点です。
金属材料は温度が低い状態では、固体の形をとっていますが、融点に達すると液化し、さらに沸点に達すると気化します。
レーザ加工は、これら金属材料の変化を目的に応じて最適に制御することで、加工を実現します。
引用元:モノタロウ
レーザー加工は、
①ガスレーザー
②固体レーザー
の2つ分けることができます。
板金加工において、従来ガスレーザーとして、CO2レーザが使用されてきました。
これに対して、固体レーザーとして、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)と呼ばれるガラス状の結晶(固体)を半導体レーザで励起するレーザが使用されてきました。
ただし、YAGレーザは高出力で連続して使用するとYAGロッド中に熱レンズ効果と呼ばれる熱ひずみが発生することがありました。
この課題を解決するために開発されたのが、ファイバーレーザとディスクレーザです。
ファイバーレーザは、励起媒質にファイバが、ディスクレーザには、励起媒質にディスク状(板状)の結晶が用いられています。
これらのレーザ光は、光ファイバーによって伝播され、被加工物を加工します。
レーザの特徴は、レーザ光のエネルギー密度や照射時間の制御が容易に行えることにあります。
そのため、以下のような加工が可能になります。
①セラミックス、ガラス、タイル、人工大理石など硬脆性材料の加工が容易に行えること。
②非接触加工のため加工中の反力がなく、プラスチック、布地、ゴム、紙などの材質や、極薄板厚の対象を変形させずに高精度に加工できること。
③非接触加工のため加工中の騒音発生が極めて少なく、加工機の設置環境によらず夜間連続運転も可能です。
④NC機との組み合わせにより円弧や直線、または自由曲線で作成したプログラムにより加工することで、切削や研削では加工できない複雑形状や微細形状を加工できること。
⑤ビームの集光スポット径が小さく局部的な加工が行えるため、加工ひずみや熱変形の少ない加工ができること。
⑥半透過ミラーやフォログラムなどの光学部品により、レーザ光の分光技術を利用した高能率な加工ができること。
⑦電子ビーム加工と比較して真空を必要とせず、X線の発生がなく、磁場の影響を受けないなどにより、加工システムが比較的容易に構築できること。
⑧ファイバーレーザは、レーザ光をファイバー伝送できるため、ロボットなどと組み合わせた複雑なビーム伝播経路の加工システムが容易に構築できます。
引用元:AmadaCompany
レーザ光の照射と同時に、被加工物に噴射するアシストガスは、加工品質や加工性能を高める重要な役割を果たします。
レーザ光と同軸状にノズルから被加工物に噴射されるアシストガスは、以下の図に示すように加工の内容と加工材料によって、ガスの種類および制御方法が異なります。
切断では、酸素ガスを用いた金属加工には酸化燃焼反応を誘発させて、加工速度の向上や加工対象の板厚を拡大させる効果があります。
しかし、切断面には酸化膜が発生するため、それを防止するためには窒素ガスを使用する無酸化切断が、ステンレスの切断を中心に普及しています。
また、アシストガスのコストの低減を図るためにエアーを使用した薄板切断も行われます。
チタンやチタン合金の切断では酸化や窒化を防止するために、アルゴンガスが使用されます。
溶接と焼入れでは、加工部が大気と触れて、酸化することを防止する目的で、アルゴンガスが使用されます。
クラッディングでは粉末を運ぶキャリアガスとシールドガスの役割を担うガスとしてアルゴンガスが使用されます。
以上の各種アシストガスの制御は、比較的高圧力の使用条件では圧力制御を行い、低圧力の使用条件では減量制御を行います。
レーザ光のエネルギーだけでは、レーザ切断の能力は十分に発揮することができません。
レーザ加工とアシストガスには、切っても切れない密な関係があります。
切断の際に使用されるアシストガスには、酸化ガス、窒素ガスがあります。
・酸素ガスは、酸化反応によって熱を引き起こします。
・窒素ガスは、溶融金属を切断溝から排出します。
これらのアシストガスによって、レーザ切断の能力が大幅に向上します。
切断面の上部にある白い幅は、比較的良好な切断面粗さを示しています。これを第一条痕と定義します。
これに対して、切断面下部にある斜線の幅は、やや粗い切断面粗さを示しています。これを第二条痕と定義します。
第一条痕は、レーザ光のエネルギーを主体として加工されている領域です。
第二条痕は、第一条痕の溶融金属を熱源として、酸素ガスによる酸化反応や、高圧窒素ガスによる溶融金属の流れを主体として加工される領域です。
したがって、切断速度が大きくなればなるほど、また加工板厚が大きくなればなるほど、第二条痕のドラグラインは加工の後方に遅れます。
切断面の第一条痕部分がレーザ光のエネルギーにより切断された箇所であり、第二条痕部分がアシストガスにより加工能力が拡大した箇所になります。
アシストガスは、切断能力の向上を実現するだけではありません。加工レンズを冷却したり、汚染を防止する役目も担っています。以下の図を見てみてください。
加工レンズにスパッタが付着し汚れることがあります。スパッタとは、レーザ溶接及び切断時などに溶融部から飛散する微粒子のことをいいます。
そうすると、その部分を通過するレーザ光が吸収され、加工レンズの温度が上昇してしまいます。
温度が上昇すると、集光特性が悪化します。
この現象を熱レンズ効果と呼びます。
加工不良が発生するばかりではなく、加工レンズを破損する危険まであります。
このレンズ汚染を防止するために、加工レンズの下からレーザ光と同軸上にアシストガスを流すことで、加工部から飛散するスパッタのノズル内への侵入を防ぎます。
レーザ出力は、被加工物を切断(溶融)する能力に直接関係します。
出力を増加することで、以下に示したような加工能力の向上を実現します。
・切断速度を増加する。
・厚い板厚の加工対象を切断する
・アルミニウムや銅など高反射率材料を切断する
使用している加工条件の出力が適正か否かは、加工後の切断面によって判断することができます。
ドロスとは?
ドロスとは、酸化燃焼された材料のこと(酸化物)をいいます。主にレーザ加工の場合、切断の溶融物が素材に付着し、玉状や、つらら状に付着したものを示します。ドロスが付着していない状態のことを、ドロスフリーといいます。
・出力が適正値では、
①切断溝周囲の焼けが少なく綺麗です。
②エッジ部に溶損がほとんど発生しません。
③切断面での条痕のピッチは非常に細かくなります。
・出力が適正値より大きくなると
①切断溝周囲の焼けが多くなります。
②エッジ部に溶損が発生します。
③切断面での条痕のピッチが大きくなります。
・出力が適正値より小さくなると
①切断面の下部が著しく粗くなります。
②切断溝下部がえぐれた状態になります。
③ドロスの付着量が増加して強固に付着します。
上では、切断面をてがかりに、加工条件が適正であるか否かを判断しました。
加工中の火花を観察することで、加工条件の適正判断をすることもできます。
切断中に排出される火花の状態は、切断溝内の溶融金属の湯流れが直接影響します。
・被加工物の下から排出される火花が
①ストレート
②遅れが少ない
③細かい
これらは、適正な加工条件であることを示しています。
・被加工物の下部から排出される火花が
①広がる
②切断進行とは逆方向に遅れる
③火花の幅が太くなる
これらは加工条件が不適正なことを示しています。
また、レーザ切断の速度と出力の関係で実現される良判断領域ついては、以下の図を参考にしてみてください。
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