今回はアンカーボルトの使い方・施工方法・下穴径・ドリル径について解説します。
アンカーボルトとは、基礎コンクリートに埋め込むボルトのことで、鋼材や設備機器などを固定するのに使用します。
アンカーボルトには基礎コンクリートの打設前に配置する、直線状のボルトがありますが、基礎コンクリートの打設後に施工できる「あと施工アンカー」と呼ばれるものもあります。今回は、あと施工アンカーのなかでもオーソドックスなタイプである、金属系アンカーと接着系アンカーに焦点をあてて解説します。
アンカーボルトの使い方と施工方法
施工アンカーは、日本建築あと施工アンカー協会より、大きく分けて【金属系アンカー・接着系アンカー・その他のアンカー】の3つに分類されています。
金属拡張アンカーは、母材に開けた穴の中で拡張部が開き、固定するもののことを指します。
接着系アンカーは、母材に開けた穴に接着剤(カプセル方式又は注入方式)を充填し、化学反応により硬化させて、固定するもののことです。
その他のアンカーは、金属系アンカーと接着系アンカー以外のアンカーのことを指します。その他のアンカーは、材質は金属以外にプラスチックなどがあり、固定方式も打込み式やねじ込み式など色々な種類があります。ここでは、金属系アンカーと接着系アンカーの施工方法について見てみましょう。
アンカーボルトの下穴の開け方
金属系アンカーと接着系アンカーの下穴の開け方はどちらも同じです。
●下穴の開け方
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1.アンカーボルトを施工する位置を決め、所定の下穴径と深さで穿孔する。ドリルはあらかじめどこまで穿孔するかを判別できるようにマーキングしておく。
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2.集じん機、ブロワーなどを用いて孔内の切粉を除去する。
●注意点
・下穴は、施工面に直角になるように開けます。
・下穴は適切な大きさで穿孔する必要があります。下穴を大きく開けてしまうと、あと施工アンカーが施工後に抜けてしまいます。下穴の径と深さは製品ごとに指定されているので、施工の際は製品仕様をチェックしておきましょう。
アンカーボルトの打ち方・打ち手順・固定方法
ここでは代表的な金属系アンカーと接着系アンカーの施工方法を解説します。
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●金属系アンカー(芯棒打込み式)
<施工方法>
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1.アンカーにナットと座金を取り付けて母材へ挿入する。
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2.芯棒の頭部が本体の頭部に接するまでハンマーで打ち込む。
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3.スパナ等でナットを締め付ける。
<注意点>
・取付物の上から挿入する場合、埋込み長さおよび取付物の面から出るねじ部の長さを確認しておきましょう。
・アンカーの座金は、施工面または取付物の面まで挿入します。
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●金属系アンカー(内部コーン打込み式)
<施工方法>
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1.ハンマーでアンカー本体を叩いて母材へ挿入する。
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2.メーカー指定の専用打込み棒をアンカー本体に挿入し、打込み棒の段部がアンカーの端部に到達するまでハンマーで打ち込む。
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3.ボルト類を用いて部材等を取り付ける。
<注意点>
・取付ボルトとアンカーのねじ部のはめあい長さは充分にとるようにしましょう。
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●金属系アンカー(本体打込み式)
<施工方法>
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1.アンカー本体をハンマーで叩いて、所定の位置まで母材に挿入する。
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2.メーカー指定の専用打込み棒をアンカー本体に挿入し、打ち込みの手応えが変わる、もしくは音が変わるまで打ち込む。
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3.ボルト類を用いて部材等を取り付ける。
<注意点>
・取付ボルトとアンカーのねじ部のはめあい長さは充分にとるようにしましょう。
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●金属系アンカー(締付け式)
<施工方法>
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1.アンカー本体をハンマーで叩いて、所定の位置まで母材に挿入する。
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2.製品ごとに決められた適正締付けトルク値までナットを締め付ける。
<注意点>
・挿入の際、ハンマーでねじ部を破損しないように注意してください。
・アンカーの座金は取付物の面に接するまで入れるようにします。
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●接着系アンカー(回転・打撃方式)
<施工方法>
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1.使用するアンカーボルトを穴底まで挿入し、マーキングを行う。
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2.接着系アンカーを挿入する。
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3,回転と打撃を加えながらアンカーボルトを打ち込む。アンカーボルトが穴底まで到達したら打ち込むのをやめる。
<注意点>
・施工前にカプセルが有効期限内であることを確認しておきましょう。
・カプセルを孔内に挿入する際は、向きに注意してください。
アンカーボルトの外し方
基本的に一度施工したあと施工アンカーは取り外すことができません。
ただし本体打込み式アンカーに関しては、以下のようなアンカー抜き取り専用の工具を使うことで取り外せる場合があります。
・ナニワ建設機材株式会社 アンカー「ヌッキー」
・ナニワ建設機材株式会社 アンカー「ヌッキー」施工手順
躯体に埋込まれたカットアンカー(本体打込み式)のめねじに、「スリーブ本体」をねじ込みます。
その上から、スリーブに挿入する「ロッド」を、アンカー底部のコーンに到達するまで回転させます。次にロッド上部の六角頭をスパナ掛けすることによって、ロッド推進力の反作用でコーンを押さえつけ、カットアンカー本体とコーンを切離します。
カットアンカー本体は、引抜きハンドルを両手で左右に揺さぶりながら躯体から引上げます。
躯体の穴に残されたコーンは「専用抜取りホルダー」ではさみ取り、あとはブラシで穴中を清掃、モルタル、エポキシ樹脂などを埋込み補修して完了です。
アンカーボルトのドリル径(下穴径)と下穴深さ一覧
ここでは代表的な金属系アンカーのドリル径(下穴径)と埋め込み深さを紹介します。
・サンコーテクノ オールアンカー Cタイプ
ねじ径 |
ドリル径(mm) |
埋め込み深さ(mm) |
M6 |
6.4 |
30 |
M8 |
8.5 |
35 |
M10 |
10.5 |
40 |
M12 |
12.7 |
50 |
M16 |
17.0 |
60 |
M20 |
21.5 |
80 |
W5/16 |
8.5 |
35 |
W3/8 |
10.0 |
40 |
W1/2 |
13.5 |
50 |
・サンコーテクノ シーティーアンカー CTタイプ
ねじ径 |
ドリル径(mm) |
埋め込み深さ(mm) |
M6 |
8.5 |
25 |
M8 |
10.5 |
30 |
M10 |
13.0 |
40 |
M12 |
16.5 |
50 |
M16 |
20.5 |
60 |
W5/16 |
10.5 |
30 |
W3/8 |
12.5 |
40 |
W1/2 |
16.5 |
50 |
W5/8 |
20.5 |
60 |
・サンコーテクノ ボルトアンカー BAタイプ
ねじ径 |
ドリル径(mm) |
埋め込み深さ(mm) |
M6 |
9.5mm |
30 |
M8 |
12.5mm |
35 |
M10 |
14.5mm |
40 |
M12 |
18.0mm |
50 |
M16 |
22.5mm |
50~60 |
M20 |
28.0mm |
80 |
・サンコーテクノ グリップアンカーGAタイプ
ねじ径×全長(mm) |
ドリル径(mm) |
埋め込み深さ(mm) |
M6×30 |
11.0 |
30 |
M8×35 |
12.5 |
35 |
M10×30 |
14.5 |
30 |
M10×70 |
14.5 |
70(40+仕上材厚30) |
M12×40 |
18.0 |
40 |
M16×100 |
22.0 |
100(60+仕上材厚40) |
M20×80 |
26.0 |
80 |
M22×90 |
29.0 |
90 |
M24×110 |
33.0 |
110 |
W1/4×30 |
11.0 |
30 |
W3/8×30 |
14.5 |
30 |
W3/8×70 |
14.5 |
70(40+仕上材厚30) |
W3/8×35 |
12.5 |
35 |
W1/2×50 |
18.0 |
50 |
W1/2×40 |
18.0 |
40 |
W5/8×60 |
22.0 |
60 |