2023-12-27
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溶融亜鉛めっきは、高温で溶かした亜鉛に製品を浸漬させてめっきを施す手法で、錆びや腐食を防止するために行われます。
溶融亜鉛めっきは、標識やガードレールなど、私たちの生活の身近な製品に採用されているめっき方法ですが、どのような仕組みで防錆効果を得ているのか分からない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、溶融亜鉛めっきの特徴や加工工程、規格などについて解説します。
溶融亜鉛めっきとは、高温で溶かした亜鉛の槽に鋼材を浸し、表面に亜鉛皮膜を形成することです。別名「どぶ付けめっき」とも呼ばれています。
鋼材は溶融亜鉛めっきを施すことで、「保護皮膜作用」と「犠牲防食作用」の2つの効果が得られ、錆びや腐食を防止できるようになります。
保護皮膜作用は、鋼材の表面に空気や水を通しにくい亜鉛の酸化皮膜を形成することを指します。
犠牲防食作用は、亜鉛めっきにキズが付いた場合、素地の鉄が露出してもキズの周囲に亜鉛が溶けだして保護し、鉄が腐食するのを防ぎます。
また、溶融亜鉛めっきは、亜鉛と素地の鉄から形成される合金層により、互いの金属が強く結合しているため、めっきが剥がれにくい特徴もあります。
溶融亜鉛めっきは、長期間に渡り錆びや腐食を防ぐ効果があるため、ガードレール・標識や照明などの柱・橋梁・各種金物など、さまざまな場所で活用されています。
腐食環境の厳しいところでは、亜鉛めっきの上に塗装を施すこともあります。適切な塗装系を用いて亜鉛めっき上に塗装を施した場合、以下表のように耐用年数が通常の亜鉛めっきの2倍程度の効果が得られるとされています。
<亜鉛めっき上に塗装した時の耐用年数(単位:年)>
ただし亜鉛は活性の高い金属で、鉄素地と同じ要領で塗装をすると塗膜が剥離しやすくなるため、エポキシ系などの密着性のよい塗装系を選択しなければなりません。参考として、日本溶融亜鉛鍍金協会で記述されている、亜鉛めっき面への塗装の実例を以下に示します。
<亜鉛めっき面への塗装仕様>
溶融亜鉛めっきは以下のようなメリットがあります。
溶融亜鉛めっきのデメリットは以下の通りです。
溶融亜鉛めっきは、密閉構造の製品や内部に空気がたまる箇所があると、浮力が働いてめっき槽への浸漬が難しくなるほか、内部の空気が膨張することで水蒸気爆発を起こしてしまいます。これらを避けるためにも、構造物には切り欠きや空気抜き孔が必要です。
複雑な形状の製品に亜鉛めっきを施したい場合は、電気亜鉛めっきを検討しましょう。
関連記事:電気亜鉛めっきとは?溶融亜鉛めっきとの違いも解説
溶融亜鉛めっきの規格は、JIS規格の【JIS H 8641 溶融亜鉛めっき】があります。
JIS H 8641:2007では、溶融亜鉛めっきの種類及び記号を以下のように記述しています。
<溶融亜鉛めっきの種類及び記号>
備考
1,HDZ 55のめっきを要求するものは、素材の厚さ6mm以上であることが望ましい。素材の厚さが6mm未満のものに適用する場合は、事前に受渡当事者間の協定による。
2,表中、適用例の欄で示す厚さ及び直径は、呼称寸法による。
3,過酷な腐食環境は、海塩粒子濃度の高い海岸、凍結防止剤の散布される地域などをいう。
また、溶融亜鉛めっきの種類及び記号ごとのめっき付着量は、JIS規格に規定された試験を行ったとき、以下の表に適合しなければなりません。
<溶融亜鉛めっきの付着量及び硫酸銅試験回数>
備考
1,めっき膜厚とは、めっき表面から素材表面までの距離をいう。
2,1種A及び1種Bの平均めっき膜厚欄の数値は、硫酸銅試験回数から推定した最小めっき皮膜厚さの範囲を示す。
3,平均めっき膜厚は、めっき皮膜の密度を7.2g/cm3として、付着量を除した値を示す。
溶融亜鉛めっきの基本的な加工工程は、以下のようにして行われています。
1.脱脂処理:鉄鋼製品の表面に付着した油脂や塗料を除去するため、苛性ソーダ水溶液に浸します。
2.水洗:鉄鋼製品の表面に付着している脱脂液を洗い流します。
3.酸洗処理:鉄鋼素材に付着した錆びやスケールを除去するため、塩酸または硫酸水溶液に浸します。
4.水洗:鉄鋼製品の表面に付着している酸洗液を洗い流します。
5.フラックス処理:酸洗後の錆びの発生防止と、鉄と亜鉛の合金反応を促進させるため、加熱した塩化亜鉛アンモニウム水溶液(フラックス)に漬けて、素地表面にフラックス皮膜を形成させます。
6.乾燥:亜鉛の飛散(スプラッシュ)を抑えるために乾燥させます。
7.めっき:鉄鋼素材を溶融した亜鉛浴のなかに浸して皮膜を形成させます。鋼材の材質や形状によって最も適合するめっき条件を選択します。
8.冷却:めっきを施した鉄鋼製品を温水で冷却します。冷却の工程により、鉄と亜鉛の合金層の成長を抑えます。
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