染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
環境と経営が密接な関係にある企業にとって、環境問題に対する取り組みは経営上での重要な課題となります。そのため、企業では環境を配慮し活動していくことが、将来の経営的なリスクの回避につながると考えられます。
日本に置ける多くの企業にグリーン調達が広がることで、社会システムの全体が環境に配慮したものとなり、持続可能な社会を形成していくことが可能です。
今回は、グリーン調達の概要から、グリーン調達が目指す未来、サプライヤー(部品供給側の企業)や納入先企業にとってのグリーン調達とは何かといった所まで、ここで詳しく説明します。
また、大手企業5社のグリーン調達に対する姿勢も紹介します。
グリーン調達とは、環境負荷の少ない商品やサービスの提供、環境配慮等に積極的に取り組んでいる企業から優先的に部品等を調達することを指します。このグリーン調達は、納入先の企業による環境配慮の取組や、事業戦略・方針に沿って実施され、サプライヤーは納入先企業との取引において、グリーン調達の納入基準等をよく理解し、それらの要求を適切に満たす必要があります。
グリーン調達は、原料や原材料を調達する企業、仕入れ業者、その他製品の生産に関わる上流側の企業から下流側の企業、製品の使用者、そして廃棄に至るまでのライフサイクル全体を視野に入れ、環境負荷の低減を図ることを目的としています。
製品を環境という観点から、納入先企業及びサプライヤーの双方が確認することでお互いの情報を共有化し、環境に配慮された製品を世の中に供給することが可能です。
一方で、グリーン調達は以下のような課題もあるのが現状です。
現状、欧州のRoHS指令やREACH規則による使用化学物質の把握・提示、水質汚濁防止法や大気汚染防止法の規制が企業に厳しく要求されています。この要求に対し対応が不適切となる場合、企業は罰金の支払いやレピュテ―ション(評判)低下、 取引先からの取引停止等の事態が発生する可能性があります。サプライヤーがグリーン調達を通じて環境経営を実施することで、これらのリスクを回避することが出来ます。
その他のメリットとしては、取引先の信頼性向上、企業に関連するステークホルダー(利害関係者)の要請や期待に対応することで収益が増加することが挙げられます。
グリーン調達の要求事項等は各企業の特徴や特性によって異なってきますが、納入先企業としても、サプライヤー側の環境経営を理解・考慮しつつグリーン調達の基準を設定していくことが望まれます。
グリーン調達は、サプライヤーによって人材やコスト面からすぐに対応することが困難な場合もあります。その場合、納入先企業として段階的に対応を実施することが必要です。
例えば、コ ンプライアンス関連の要求、EMS(環境マネジメントシステム)の構築要請、環境取組の協働等を段階的に進めていくといった方法があります。
その他の対応として、品質や価格と同じくグリーン調達をサプライヤーの選定要素の1つとして実施する方法もあります。グリーン調達の選定要素として、企業が使用を禁止・制限されているような化学物質を使用していないこと、環境マネジメントシステムを組織・構築していること等があげられます。
グリーン調達に取り組むことは、直接取引のあるサプライヤーだけでなく、その先の二次的なサプライヤーが環境経営に取り組むきっかけにもなります。
これまでグリーン調達の概要、サプライヤー側から見たグリーン調達のメリットや、納入先企業の対応方法等を説明・紹介してきました。
以下では、グリーン調達を実施している大手企業の取組状況や姿勢について紹介します。
東芝グループでは、取引先様との協力関係を築きながら、世界各地でグリーン調達を推進しています。原材料や部品の調達にあたり、生物多様性への保全取り組みに対する理解を取引先様と共有・配慮し、環境に高い負荷を与える恐れのある化学物質や希少資源の含有率などを調べ、環境負荷の少ない部品や原材料を優先的に採用しています。これらの情報をデータベース化し、既存調達品の代替要否や新規調達品の認定といった判断、環境調和型の製品の開発に活用しています。さらに、自社においても化学物質分析も実施しており、精度や効率を高めるための分析手法の開発・改善も継続的に取り組んでいます。
引用元:https://www.toshiba.co.jp/index_j.htm
富士フイルム株式会社とその関係会社は、環境負荷の低減、製品・化学物質の安全確保のため、事業活動実施において、地球温暖化対策、資源循環や製品含有化学物質の管理を推進しています。これらを推進するためには、環境規制の遵守だけでなく、原材料や部品等の調達から製品の製造・販売・使用・排気に至る、製品のライフサイクル全体の視点で管理基準を定め、社会的な要求や要請に答えていくことが重要と考えています。
引用元:https://fujifilm.jp
環境保全という課題は、一人の人間、一つの企業、一つの国だけで解決できるものではありませ ん。それは、一つ一つの国、一つ一つの企業、一人一人の人間が、地球のかかえている問題について認識し、行動に移していかなくては解決できない問題です。 未来の地球のため、株式会社リコーは地球環境保全のため数多くの課題を解決し、成長を続けていかなければなりません。リコーグループでは省資源やリサイクル、省エネルギー、温暖化防止、汚染予防の3つのテーマに取り組むとともに、いちはやくCMS(環境マネジメントシステム)の国際規格 ISO14000シリーズに準拠した体制づくりを進めてきました。 しかし、リコーグループの製品は多くの仕入先様との中で生産されています。原材料の資源採取、製造、加工、流通、販売、消費、使用、廃棄、リサイクルにいたる製品ライフサイクルにおける環境負荷の少ない製品の開発に取り組むためには、自社だけの環境保全活動では充分とは言えません。そのため、 仕入先様とは新たなパートナーシップを結び、環境リスク回避・環境負荷低減を共に図っていきます。
引用元:https://jp.ricoh.com/
日立グループ各社では、地球環境を考慮した部品・製品の調達に関する基本的な考え方、サプラヤー様への要望事項を他社に先駆けて1998年度にグリーン調達ガイドラインをまとめ、早い段階から調達取引先とともにグリーン調達を推進しています。グリーン調達ガイドラインでは、サプライヤー様の環境保全活動に関する事項(環境経営体制の確立、認証規格の取得推奨等)や、日立グループ関係各社への納入品について環境負荷低減に関する事項(省資源や省エネ、リサイクル、製品含有化学物質の管理、関連情報の提供等)を遵守するよう要請しています。
地球温暖化や資源の枯渇、生態系の破壊など、様々な環境課題が深刻化している現在、企業の環境負荷低減への要求や要請・期待はどんどん高まっています。 日立グループは、環境経営で目指す姿を定めた環境ビジョンの下、製品のライフサイクルにおける環境負荷の低減を目指すグローバルなモノづくりを推進し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
グリーン調達活動の一環として、積極的に環境の保全活動に取り組んでいるサプライヤー様から、化学物質の適正使用や生態系の保全、省エネルギーや長寿命化、省資源、再生・分解・処理の容易性を考慮し、環境負荷の少ない製品・サービスを調達することを目的として今後も活動していきます。
引用元: http://www.hitachi.co.jp/
パナソニック株式会社は、1999年にグリーン調達基準書を発行して以降、その対象である当社の事業活動と密接な関係を持つ購入先様、物流のパートナー様をはじめとする様々なステークホルダーと協力し、自社だけでなく、CO2の削減、資源循環、生物多様性の保全、化学物質による影響低減といったグローバルな環境課題に対する取り組みを推進しています。また、より良いくらしと持続可能な地球環境の両立に向けて、2017年にパナソニック環境ビジョンを新たに策定しました。その目的は、クリーンなエネルギーでより良く快適にくらせる社会を目指すというものになります。
パナソニック環境ビジョンでは、「創」「蓄」「省」のエネルギーマネジメントに関する商品や技術、ソリューション開発を通じて、パナソニックグループが使うエネルギー削減と、クリーンエネルギーの創出と活用を進めていきます。
当社は今後も、このグリーン調達基準書に基づき環境に配慮した調達活動を推し進めることで、購入先様とともに地球環境保全に貢献していきたいと考えます。購入先様におかれましては、グリーン調達活動へのご理解とご協力をお願いします。
引用元:https://www.panasonic.com/jp/home.html
グリーン調達は、環境負荷の少ない商品・サービスや環境配慮等に取り組んでいる企業から優先的に調達を実施することを指します。サプライヤー側は、グリーン調達を意識することで信頼性向上や経営的リスクの削減といったメリットがあります。納入先企業としてはグリーン調達基準(環境配慮の取組方針等)を導入し、取引において適切に対応する必要があります。
今後も環境に配慮した社会システムづくりを実施していくことで、持続可能な社会を形成していく必要がありますので、グリーン調達を意識した調達活動を実施していくべきと考えます。
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