2024-09-17
更新
志民 直人
技術営業、カスタマーサクセス
切削加工歴29年の1級機械加工技能士(精密器具製作/フライス盤/数値制御フライス盤)。金型・部品加工経験を持ち、CAD・CAMや各種工作機械に精通。設計からカスタマーサービスまで幅広く対応。製造現場改善や治具設計も得意。趣味は日曜大工、ゲーム。
今回は幾何公差の基礎知識について解説します。
幾何公差とは、物体の形状・姿勢・位置関係などの誤差の許容値を表します。
設計図面で指示された形状などに加工しようとしても、完全に正しい状態(幾何学的に正しい直線・円・平面)に仕上げることはできません。そこで、どの程度まで歪みやズレを許容できるかを数値化したものとして幾何公差を用います。
精度を出せる切削加工の場合でも、公差を厳しくしすぎるとお見積り提出に至らない場合があります。
こちらの動画では、どのような場合に加工不可となるのか解説していますのでぜひご覧ください!
https://youtu.be/YEqxmnRlQXg
【3分でわかる】見積が出ない寸法公差、幾何公差 【切削】
幾何公差とは、とある物体の形状の幾何学的な精度を表す指標のことで、わかりやすく説明すると、設計で意図している形状・姿勢・位置関係などの歪みやズレの許容値を意味します。
似た単語として「寸法公差」がありますが、寸法公差は図面で記述されている寸法の許容誤差範囲を示しています。寸法公差だけ指示した場合、設計者の意図する正しい形状には指示しきれないため、幾何公差を用いる必要があります。
幾何公差には、大きく分けて「単独形体」と「関連形体」があります。これらをさらに細かく分類すると、「形状公差」「姿勢公差」「位置公差」「振れ公差」の4つに分かれます。
●単独形体:形状公差
●関連形体:姿勢公差・位置公差・振れ公差
単独形体とは、形状に対して、単独で指定できる幾何公差のことです。幾何公差の分類の「形状公差」が単独形体に該当します。
関連形体とは、何か基準となる相手との関係を示す必要がある幾何公差のことです。「姿勢公差・位置公差・振れ公差」の3種類が関連形体に該当します。
以上のことを踏まえ、それぞれの幾何公差の分類について、どのように図示するかの例と意味について解説します。
上図左は、形状公差の平面度を図示している例です。
面の幾何公差を指示するために、外形線に指示線を入れて、幾何公差の記入枠と結び付けます。幾何公差記入枠には、平面度を示す記号と許容差の数値を記入することで、幾何公差を指示します。
上図の例の場合、幾何学的平面から0.1mm以内の歪みで仕上げるように指示しています。
上図左は、姿勢公差の直角度を図示している例です。
上図左で記入されている「A」の記号は、「データム記号」と呼ばれるものです。データムとは、関連形体の幾何公差を決めるために設定された、理論的に正確な幾何学的基準のことで、「指定された幾何公差に基づいて加工や検査をする際は、この面または線を基準としてください」という意味を持ちます。
このことから、上図では、基準面である底面Aに対して、図示している垂直面が0.05mm以内のズレで仕上げることを指示しています。
上図左は、位置公差の同軸度を図示している例です。
上図左のように、軸線または中心平面に対して幾何公差を指示する場合は、寸法線と一直線上に向き合うようにして支持線を記入します。
上図では、径の大きい方の円筒部の軸心を基準とし、径の小さい方の円筒部の軸心のズレが0.05mm以内に収まるように指示しています。
上図左は、振れ公差の全振れを図示している例です。
振れとは、上図右のように、円筒を軸心まわりに回転させると、表面の微細な凹凸により、真円のものと比べてズレが生じることを指します。今回ご紹介している全振れの場合は、全周にわたり公差内に収めることを要求する意味を持ちます。
そのため上図では、データム軸直線を中心に回転させた、小さい方の円筒の振れが全周0.03mm以内であることを図示しています。
単独形体である形状公差は、以下の6つの特性があります。
●単独形体(形状公差):真直度、平面度、真円度、円筒度、線の輪郭度、面の輪郭度
関連形体である姿勢公差・位置公差・振れ公差は、それぞれで以下の特性があります。
●関連形体(姿勢公差):平行度、直角度、傾斜度、線の輪郭度、面の輪郭度
●関連形体(位置公差):位置度、同軸度、同芯度、対称度、線の輪郭度、面の輪郭度
●関連形体(振れ公差):円周振れ、全振れ
ここでは、幾何公差の各特性についての意味をご紹介します。
真直度
指定面や軸が、どれだけ変形しているかを表す幾何公差。
平面度
平面からどれだけ変形しているかを表す幾何公差。
真円度
真円からどれだけ変形しているかを表す幾何公差。
円筒度
円筒状のものが、どれだけ真っ直ぐかつ、丸いかを表す幾何公差。
線の輪郭度
母線形状がどれだけ変形しているかを表す幾何公差。
面の輪郭度
線の輪郭度のような二次元の線ではなく、表面形状からどれだけ変形しているかを表す幾何公差。
平行度
データム直線またはデータム平面に対して、どれだけ直線や平面が平行であるかを表す幾何公差。
直角度
データム直線またはデータム平面に対して、どれだけ直角から傾いているかを示す幾何公差。記述する数値は、角度ではなく、mm単位で表します。
傾斜度
データム直線またはデータム平面に対して、どれだけ指定角度(90°を除く)から傾いているかを表す幾何公差。直角度と同様に、角度ではなくmm単位で表します。
位置度
データムまたは他の形体に関連して定められた点、直線、平面に対して、どれだけ位置ズレしているかの幾何公差。
同心度
データム円の中心に対して、他の円の中心位置がどれだけズレているかを表す幾何公差。
同軸度
データム軸直線と同一直線上にあるべき軸線が、どれだけ正確な位置からズレているかを表す幾何公差。
対称度
データム軸直線またはデータム中心平面に対して、互いに対称であるべき形体がどれだけ正確な位置からズレているかを表す幾何公差。
円周振れ
データム軸直線を軸とする回転体を回転させたとき、指定した任意の箇所がどれだけズレているかを表す幾何公差。
全振れ
データム軸直線を軸とする回転体を回転させたとき、その表面がどれだけ振れているかを表す幾何公差。
ここまで幾何公差の特性の意味について解説しました。幾何公差の記号については、以下の表をご参考ください。
<単独形体 幾何公差の表>
※JIS B 0021:1998 製品の幾何特性仕様(GPS)-幾何公差表示方式-形状,姿勢,位置及び振れの公差表示方式を参考に作成
形状公差は、単独形体の幾何公差のため、データム指示は不要です。ただし「線の輪郭度」と「面の輪郭度」については、関連形体の姿勢公差と位置公差の用途で用いる場合があります。その際はデータム指示が必要です。
<関連形体 幾何公差の表>
※JIS B 0021:1998 製品の幾何特性仕様(GPS)-幾何公差表示方式-形状,姿勢,位置及び振れの公差表示方式を参考に作成
姿勢公差・位置公差・振れ公差は、関連形体の幾何公差のため、基本的にデータム指示が必要です。ただし、位置度においては、条件によってデータムを不要とする場合もあります。
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この記事を監修する専門家
取締役 大川嘉雄 氏
創業50年、板金加工・機械加工等の金属加工を手掛ける有限会社大川板金で取締役を務める。10年以上の金属加工でのキャリアを活かし、コンサルタントとしてMitsuriのアドバイザーを兼務。町工場の3K(きつい、汚い、危険)イメージを変え、カッコいい人達で溢れる職場を目指している。
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