亜鉛メッキ鋼板について専門家が解説!特徴や用途についてご紹介!

2023-11-10

亜鉛メッキ鋼板は、メッキされていないただの鋼板、または塗装のみされた鋼板と比べて防錆性と耐食性に優れています。このことから屋内や屋外問わず使用され、さまざまな用途で用いられています。

しかし、鋼板を亜鉛メッキしたことで、錆や腐食になぜ強くなるのか?また、どのような用途で使用されているのか分からない人も多いのではないでしょうか。

この記事では、「亜鉛メッキ鋼板とは何か」についての説明や、鋼板の錆と腐食をどのように防いでいるのかだけでなく、亜鉛メッキ鋼板の用途や種類についても紹介します。

 

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噛み砕いて解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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亜鉛メッキ鋼板とは

亜鉛メッキ鋼板とは、その名前の通り鋼板を亜鉛でメッキ仕上げしたもののことを言います。

鋼板はそのまま使用するとすぐに錆てしまうので防錆処理をおこなう必要があります。そこで鋼板に亜鉛メッキ処理を施すことにより、長期間錆と腐食から防ぐことができるのです。

亜鉛メッキされた鋼板は耐食性・防錆効果が備わるだけでなく、外観が良くなる効果も期待できます。

亜鉛メッキ鋼板は製造方法によって「溶融亜鉛メッキ鋼板」、「電気亜鉛メッキ鋼板」と大きく2つに分類されます。

亜鉛メッキ鋼板の特徴

亜鉛メッキすることで付与される防錆性と耐食性を生む理由は以下の2点の特徴が挙げられます。

亜鉛の不動態皮膜による保護

引用元:札幌ガルバー株式会社

鋼板にメッキした亜鉛の表面は空気中の酸素や水分に反応することで酸化亜鉛に変化します。酸化亜鉛が薄い膜で表面全体に安定した状態で形成されることを「不動態」と呼び、この皮膜により鉄素地の錆・腐食を防ぐことが可能です。

犠牲防食による保護

引用元:日亜鋼業株式会社

通常、鉄が空気中に露出していると錆が発生します。しかし亜鉛メッキされた鋼板は、仮にキズがついて鉄が露出しても、亜鉛が鉄よりも先に溶けだすことで鉄の腐食を防いでくれます。これは鉄よりも亜鉛のほうがイオン化傾向が大きいことから起こる作用で、通称「犠牲防食」と呼ばれます。

犠牲防食の作用が働くことで亜鉛は徐々に溶解されます。このことにより、亜鉛の付着量が多ければ多いほどメッキ層が消失するまでの時間を要し、耐食性が高くなる傾向にあります。

亜鉛メッキ鋼板の長所・短所

ここでは亜鉛メッキ鋼板の長所と短所について解説します。

亜鉛メッキ鋼板の長所

  • 防錆性と耐食性に優れている。
  • 亜鉛との密着性に優れている。
  • 長期間にわたり耐食性と防錆力が持続する。

通常の鋼板や塗装品と比べて、亜鉛メッキ鋼板は耐食性と防錆力に優れています。これは前述したように亜鉛の不動態皮膜と犠牲防食による保護の効果によるものです。亜鉛メッキと鋼板との密着性も高いことから、防錆性と耐食性の効果は長期間持続します。特にメッキ層に比較的厚みのある溶融亜鉛メッキ鋼板は防錆効果が高く、ほとんどメンテナンスを必要としません。

亜鉛メッキ鋼板の短所

  • 溶融亜鉛メッキ鋼板の場合、スパングルと呼ばれる模様が出てくることがある。
  • 六価クロムを用いたクロメート処理品は使えないことがある。
溶融亜鉛メッキ鋼板 スパングル

「スパングル」とは、上図のような溶融亜鉛メッキした際に浮き出てくる幾何学模様のことを言います。スパングルは不純物と亜鉛が結晶化したことにより浮き出てくるものです。スパングルがある状態で塗装をすると、模様が浮き出てしまうので外観上好まれないケースもあるでしょう。耐食性には問題は無いものの、スパングルはできるだけ無い製品が好ましいとされます。

また、亜鉛メッキ鋼板をさらに防錆効果を高めるために化成処理することがありますが、六価クロムを使用したクロメート処理は有害とされるため、使用不可の場合が多いです。これはRoHS指令とよばれるヨーロッパで定められている法律に抵触することが理由となります。これを避けるためにはクロメートフリーの化成処理をする必要があります。

参考記事

RoHS指令については以下の記事にて詳しく紹介していますのでご参考ください。

参考記事:RoHS指令について詳細を解説!対象範囲についてもご紹介!

亜鉛メッキ鋼板の用途

亜鉛メッキ鋼板は耐食性があり、長期間メンテナンスを必要としないことから自動車分野、電気分野、建築土木分野など幅広く使用されています。ただし亜鉛メッキ鋼板は用途によって、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板などを使い分ける必要があるでしょう。

溶融亜鉛メッキ鋼板は、膜厚が電気亜鉛メッキよりも厚いことから耐食性が高く、屋外の使用に適しています。

電気亜鉛メッキ鋼板は、溶融亜鉛メッキよりも加工性が良く、均一にメッキされて見た目も良いことから、屋内での使用、もしくは部品などに使われることが多いです。

また、亜鉛メッキ鋼板の加工性、溶接性、塗装性を向上させたい場合は鉄と亜鉛を合金化したものも用いられます。これらの詳細は後述の【亜鉛メッキ鋼板の種類について】で解説します。

亜鉛メッキ鋼板の定尺・サイズ

表記 読み方 鋼板のサイズ
3x6 サブロク 914×1829 mm
4x8 シハチ 1219×2438 mm
5x10 ゴトウ 1524×3048 mm

上図は定尺の寸法と読み方の表になります。

亜鉛メッキ鋼板には「定尺」と呼ばれる決まったサイズの材料が流通しています。定尺材はそれぞれ呼び方があり、914mm×1829mmの板材は3×6(サブロク)といったような名称があります。これは1尺が303.03mmにあたることから、サブロクは3尺×6尺ほどの寸法であることを表します。

定尺の寸法ではない、特定のサイズの鋼板が欲しい場合は、定尺材から廃棄する量が少なくて済む材料を選び、そこからカットして購入することになります。

定尺材は3×6(サブロク)、4×8(シハチ)あたりは流通量が多く、取り扱いのあるメーカーは多いでしょう。その他のサイズについてはメーカーによって取り扱いのないところもあるので注意してください。

亜鉛メッキ鋼板の種類について

亜鉛メッキ鋼板には冒頭で「溶融亜鉛メッキ鋼板」と「電気亜鉛メッキ鋼板」の2種類に大別しましたが、そこからさらに鉄と亜鉛を合金化したメッキ鋼板もあります

溶融亜鉛メッキ鋼板

溶融亜鉛メッキは別名「ドブづけメッキ」や「てんぷらメッキ」と呼ばれており、高温で溶解した亜鉛メッキ槽の中に鋼板を浸すことでコーティングします。
膜厚はおよそ28~100μmと厚めなことから耐食性に優れています。

電気亜鉛メッキ鋼板

電気亜鉛メッキは防錆処理したい鉄製品を亜鉛が含まれる溶液に浸し、電気を通すことにより亜鉛被膜を形成します。溶融亜鉛メッキと比較すると膜厚は2~25μmと薄いですが均一にメッキすることができ、寸法の精度や外観の良さが求められる部材に適しています。

電気亜鉛メッキはそのまま使用すると、まだ錆が発生しやすいため、メッキ後にクロメート処理を施すケースが多いです。クロメート処理した電気亜鉛メッキ品は、さらに耐食性と防錆効果が向上します。

しかし昨今では、六価クロムが含まれるクロメート処理は有害であるとされていることから、三価クロムを利用した処理に代用されることも多くなっています。

参考記事

電気亜鉛メッキについては以下の記事で詳しく解説していますので参照ください。

参考記事:電気亜鉛めっきとは【3分でわかる】専門家がわかりやすく解説します!

合金化溶融亜鉛メッキ鋼板

通常の溶融亜鉛メッキ鋼板は、プレス加工などをおこなうとメッキした亜鉛が金型に付着しやすいことが問題としてありました。亜鉛が金型に付着することで摩擦抵抗が大きくなり、加工がしづらくなるデメリットがあります。

その問題を解決するために「合金化溶融亜鉛メッキ鋼板」が用いられます。合金化溶融亜鉛メッキ鋼板は、冷間圧延鋼板を溶融亜鉛メッキ処理をしたあとに熱処理をすることで鉄と亜鉛を合金化させて製造します。

合金化溶融亜鉛メッキ鋼板を使用することで加工性、溶接性、塗装性が向上します。

メリットが豊富な合金化溶融亜鉛メッキ鋼板ですが、製造のためにはノウハウが求められ、熱を加えることの調整が難しいとされています。

電気合金亜鉛メッキ鋼板

電気合金亜鉛メッキ鋼板は、電気亜鉛メッキをする際にFe2+イオンとZn2+イオンを含む酸性メッキ槽を用いることで製造されます。

電気メッキ法による合金化は、合金化した溶融亜鉛メッキ鋼板と同様に、加工性、溶接性、塗装性が向上します。特に溶接性については「パウダリング」と呼ばれる、皮膜のはく離を起こすケースが少ないことが特徴です。また、合金化溶融亜鉛メッキと違い、熱処理をせずに製造できることから、板材の機械的性質が変わることもありません。

まとめ

亜鉛メッキ鋼板は亜鉛の不動態皮膜と犠牲防食の作用により、鉄を錆と腐食から守る効果が期待できます。耐食性が長期間持続することから、用途は自動車や電気製品、建築土木などと幅広く使用されています。

亜鉛メッキ鋼板は、主に溶融亜鉛メッキと電気亜鉛メッキされたものに分類されます。屋外で使用するのであれば溶融亜鉛メッキ、屋内なら電気亜鉛メッキを使用すると効果的です。加工性や溶接性などを向上させたい場合は亜鉛と鉄を合金化したものも使われています。

 

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