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ファブレス経営とは?メリット・デメリット・事例を解説

この記事を監修した人

金属加工業界最大級のマッチングプラットフォーム「Mitsuri」を手掛ける企業。
「未来の製造業をつくる」をモットーに、製造業DXを推進している。

センサ・測定機器メーカーであるキーエンスなど、収益性の高い企業が取り入れていることで注目されているファブレス経営。しかしファブレス経営を取り入れたからといって、必ずしも収益性が高くなるわけではありません。

今回は、そもそも「ファブレス経営ってなに?」という方や、「ファブレス経営を自社に取り入れたい」という方に向けて、ファブレス経営の基礎知識やメリット・デメリットを解説します。検討中の方は、ぜひ参考にしてください。


ファブレス経営とは?

ファブレス経営とは、工場などの生産施設・設備を自社では持たず、生産を外部企業に委託する経営を指します。

それによりリソースを企画・開発・デザイン・マーケティングなど「高付加価値分野」に特化させることができるので、資本力のあまりない企業でも高いブランド力を発揮できることが特徴です。

もともとシリコンバレーで生まれた経営手法で、半導体関連のベンチャー企業が採用していたことからも、ベンチャー企業などに向いたビジネスモデルと言えるでしょう。


ファブレス経営のメリット

ファブレス経営のメリットは、主に次の4つです。

初期投資が不要

ファブレス経営は自社で生産体制を持たないため、初期の設備投資などが基本的に不要です。新規に市場参入する際のハードルが低く、事業が軌道に乗らず撤退することになったとしても、そのコストを抑えることができます。

生産にかかわる経営コストを削減できる

生産設備や人材を持つ必要がないため、本来であれば継続的に発生する償却費や人件費といった生産に関わる経営コストもかかりません。量産体制に入る際や事業縮小などにおいても、発注の量で調整が可能なので非常にフレキシブルに対応できます。

特に委託受注による製造・生産に長けた「ファウンドリメーカー」は、ファブレス経営との相性に優れています。

経営資源を自社の強みに集中できる

生産体制の構築や維持に経営資源がかからない分、デザイン性・企画力・開発力・研究費など、自社が持っている強み、あるいはこれから育てていきたいブランド力などにリソースを注力することができます。

市場の変化に柔軟に対応できる

生産体制を外部に持つことで資金が固定化しないため、商品を市場に投入するぎりぎりまで企画開発することができ、流通量なども鑑みつつより柔軟に市場のユーザーニーズに対応することが可能です。


ファブレス経営のデメリット

ファブレス経営には魅力的なメリットが多いですが、もちろんリスクもゼロではありません。主なデメリットは以下の4つです。

自社生産に比べて外注コストがかかる

生産に関わる経営コストが抑えられる一方で、当然生産を外部委託することによって外注コストが発生します。これは生産量が増えれば増えるほどかさむことになるため、商品の開発・研究にリソースを割く必要があまりないような場合や、大量生産が前提となるような場合には、自社で生産体制を持つことを検討したほうが良いかもしれません。

安定した品質管理がしづらい

外部に製造を委託するため、どうしても品質が委託先によってばらつきがちになります。自社から管理者を送るなどして一定の品質を保つことは可能ですが、その場合にはある程度管理コストがかかってしまいます。

製造ノウハウの蓄積ができない

外部で生産する以上、生産者や職人を社内で育成することは難しくなります。さらに、製造・生産の現場で見つかった改善点や消費者からの声などを、研究開発に活かすこともできません。

情報漏えいのリスク

製造ノウハウや自社商品の強みに関する、情報の漏えいリスクがあります。防止策としては、適切な契約を結ぶといったのほか、そもそも企画開発を行わないファウンドリメーカーを契約先として選ぶなどが考えられます。


ファブレス経営の事例

次に、実際にファブレス経営を取り入れている事例をご紹介します。業界の異なる各企業が、どういった部分を外部委託し、どういった部分に注力しているのか、ぜひ参考にしてください。

キーエンス

日本一の平均年収額を誇る、センサ・測定機器メーカーのキーエンス。「付加価値の創造」を企業の存在意義として、高い収益を生み出している企業です。

センサの組み立てや加工を外部委託し、検出部分や回路の設計・研究といった高付加価値部分に注力することで、新商品の約7割が「世界初」「業界初」という商品開発力の高さを実現しています。

その開発力の高さを支えているのは、自社営業マンによる「直接販売」です。販路拡大のために代理店などを挟むことをせず、自社の営業が直接現場に赴いて営業活動を行うことで、現場で聞いた声をそのまま企画・開発に生かしています。それが、顧客が必要としている商品の開発と研究費の削減にも繋がり、高い収益性を実現しているのです。

アップル

世界的企業として有名なアップルでは、自社では製品の企画・設計・販売に注力し、製造は中国・台湾企業に委託するというファブレス経営を行っています。

アップルの魅力といえば、やはり高いデザイン性と企画力ですが、それらを支えているのがまさにファブレス経営です。新商品の市場投入前には、発売直前まで設計変更を行い、ユーザーニーズを見極めてから量産体制に移ります。

需要の変化にタイムリーに応えるアップルの高いブランド力は、ファブレス経営だからこそ実現できていると言ってよいでしょう。

伊藤園

緑茶飲料最大手の伊藤園も、ファブレス経営を取り入れている企業のひとつです。緑茶飲料の原料となる茶葉の茶畑拡大事業や栽培者育成事業に注力したり、仕上げ加工は自社で行う一方で、その後の製造は外部に委託しています。

その際、「品質に問題があればすぐに取引を停止する」といった厳格な姿勢を示すことで、ブランド力を損なわない品質管理を徹底しています。

任天堂

任天堂のような玩具・ゲームメーカーも、ファブレス経営がマッチしやすい業界のひとつです。同製品を作り続ける状況では自社生産したほうがコストを抑えられますが、ゲーム機が切り替わればゲームソフトの生産体制も丸々入れ替わる現状で、自社で生産体制を持つメリットはあまりありません。

「ニンテンドーDS」「Wii」「Switch」など、次々に新商品を発表し続けられるのも、ファブレス経営によって、経営資源を企画・開発に集中投入しているからこそでしょう。


まとめ

高付加価値部分にリソースを集中して、強みを活かしやすいことが魅力のファブレス経営ですが、取り入れる際には、その商品開発がそもそもファブレス経営にマッチしているのか否かの判断がまず重要です。

そのうえで、自社の強みを十分に生かしつつ、デメリットを抑えられるような外部委託企業・生産工場の選定をしていきましょう。

ご紹介した事例の他にも、ファブレス経営を取り入れている企業・業界は多くあります。デザイン・性能などで独自ブランドの創出を目指すなら、取り入れてみる価値はあるのではないでしょうか。

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