2023-11-06
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放電と聞いて一番に何を思い浮かべますか?雷や静電気など、普段生活していてもいくつか思いつくものはありますよね。
放電とは、普段電気を通さない気体に電子が放出され、電流が流れる現象のことです。そして、放電のメカニズムを応用することで金属を彫ったり切ったり、穴を開けたりする技術のことを放電加工と呼んでいます。
さまざまな機械が稼働している金属加工の現場において、放電加工にはどんな特徴があるのでしょうか。
今回は、放電加工(EDM)のメカニズムやメリットについて、詳しく紹介していきます。
引用元:富士エンジ(YouTube)
放電加工とは、加工したい金属と加工機の隙間に放電することで、6000℃以上の熱を起こし、金属を溶かしながら加工していく技術のことです。EDM(Electrical Discharge Machining)とも呼ばれています。金属の表面を1μm単位で加工できる精度に加え、ダイヤモンドに近い硬さを持つとされる超硬合金の加工もできる技術です。
金属加工の現場において、部品を製造するのに必要な金型には主に超硬合金が使われます。何故なら、大きな圧力をかけて高温の鉄を流し込み、形を生成していくため、鉄と同等だったり、柔らかい素材だったりすると、型枠が変形してしまうからです。ただ、超硬合金は非常に硬く、加工が困難な素材でもあります。そのため、切削加工機のドリルではうまく加工することができないという難点があります。
そこで登場するのが放電加工。1μmという高い精度で超硬合金を正確に削ることができるため、金型の製造を中心に広く用いられる加工技術になっています。
雷や静電気は、空気中に放電されますが、放電加工の場合、工作物を液体に沈めて加工します。そのため、放電は液中で起こります。
まず、工作物を絶縁性を有する加工液に漬けます。その後、工作物に電流を流し、電極を近づけていきます。すると、1mm程度の距離まで近付いた所で工作物と電極の間にある加工液に絶縁破壊が起こり、放電が発生します。
放電は一定時間で収まりますが、同じ動作を繰り返せば、また放電が発生します。これを継続的に繰り返すことで、製品を加工していく技術を放電加工と呼びます。
放電加工のメリットは下記の通りです。
放電加工最大のメリットは、硬い素材を加工できること。
超硬合金のように硬い素材でも関係なく加工できるため、高硬度の素材加工に適しています。さらに、精度が高いことや工作物に触れずに加工ができる点も大きなメリットと言えます。
工作物に触れないということは、斜面で滑ったり段差で引っかかったりすることもありません。そのため、斜めの素材であろうが、球体であろうが関係なく、高い精度での加工が可能になります。
放電加工のデメリットは下記の通りです。
放電加工のデメリットはスピードがおそいこと。少しずつ金属を溶かしながら加工していくため、ペースが遅く、大量生産には向きません。さらに、素材と電極の間に電気を流し、放電を促しているため、素材が電気を通さない場合、放電加工ができません。
放電加工には、電極として銅や真鍮、タングステンなどでできたワイヤーを使用します。放電が起きれば当然、素材だけでなく電極側も消耗するので、電極の交換頻度はかなり高くなり、コストがかさみます。
放電加工の電極とは、放電を起こす部分のこと。切削加工機で言うところの「ドリル」の役割を果たす部分です。
電極は放電を繰り返すと消耗していくため、常に新しい状態にしておく必要があります。材質によっても効果が変わるので、それぞれの特徴について下記でご説明します。
放電加工では、電極として用いている素材も消耗します。消耗した電極をそのまま使い続けると工作物の加工が予定していた形状にならない可能性があるため、電極は常に新品の状態で放電を続けなければなりません。そのため、放電加工機では、電極として用いられる素材は古いものを巻き取り、常に新しい状態で放電を続ける仕組みになっています。
放電加工の電極には、銅やグラファイト、タンクステンなど、さまざまな素材が使用されています。電極は用途に合わせて交換することができ、それぞれに違った特徴を持っています。
●銅
銅は最もコストが安いため、一般的に多く用いられている素材です。
電気抵抗が少なく、熱伝導率が高いことが特徴。ただし、耐熱性が低い弱点があります。
●グラファイト
グラファイトは熱に強いのが特徴。素材が熱によって変形することがなく、扱いやすい素材と言えます。グラファイトには多くの種類が存在するため、用途に合わせてチョイスが可能です。
●タングステン
タングステンは、熱伝導率の良い銅と合わせて使用されます。消耗率の高い超硬合金の加工で最も消耗を抑えられるため、超硬合金の加工に多く使用されています。
材質は加工する素材によって相性が変化します。素材によっては無消耗加工も可能なので、それぞれの特徴やメリットを把握して活用すればコストを抑えながら高精度の加工が可能になります。
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