2025-01-15
更新
昨今、注目されている「DX」。一度は耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
今回は製造業におけるDX導入について解説していきます。これからDX導入を検討している、そもそもDXって何?という方は、ぜひ参考にしてみてください。
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、ITスキルやデータを使って生活のあらゆる面が良い方向に変わることを意味します。2004年スウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。
日本では、2018年12月経済産業省が公表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」で以下のように定義されました。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
(引用元:「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」)
ちなみに海外では、DX導入を進める際の優先事項に、新たな価値提供、顧客体験への対応が挙げられていることが多いです。
IT化・デジタル化は、ITツールを導入したり書類管理をデジタル化したりなどが目的とされています。
一方でDX化は、ITツールの導入やデジタル化は、あくまでサービス・ビジネスモデルの変革をするための手段に過ぎません。最終的な目標である競争上の優位を確立することがゴールとなります。
なぜDX化が注目されるようになったのでしょうか。それには日本や世界における様々な社会的背景が絡んでいました。
「2025年の壁」とは、2018年に経済産業省が発表したDXレポートで使われているワード。そこでは、2025年を境に企業の前に多くの問題が立ちはだかるだろうと予想されています。
近年のデジタル化の進化を見るとDX化は必要不可欠ですが、実際に国内でDXを推進しているのは一部の大手企業であるというのが現状です。
こうした現状に危機感を覚えた経済産業省は、2025年までに日本企業が既存のやり方を見直しデジタル化に取り組まなければ、2025年〜2030年にかけて年間最大12兆円もの経済的損失をする可能性があると訴えています。
(引用元:経済産業省)
スマートフォンの普及により、人々の消費行動が変化していることもDXが注目されている理由の一つです。ほんの少し前までは、音楽を聴くためにはCDやMDプレーヤーが必要でした。しかし現在は、サブスクリプションの普及によってスマホ一つでいろんな音楽が楽しめますよね。このように、ユーザーの行動がインターネットをベースに行われるようになり、たくさんのデータがクラウド上に蓄積、サービス設計や販売などに活用されています。
デジタル化が進む中で、スマートフォン中心のユーザーアクションに合わせたビジネスが生き残る可能性がすでに高くなっています。こうしたビジネスモデルの変革、構築もDX化が注目されている理由の一つといえるでしょう。
日本は少子高齢化が進み、働き手が減少傾向にあります。今まで人の手で行っていた作業が、働き手が減ったことで一人ひとりの労働量が増えています。しかし人材を採用するにも雇用コストがかかりますよね。これらの原因によって、今まで人で賄ってきた作業をPCやツールを使って自動化せざるを得なくなったのです。
社会的背景や人々の行動変化によって、DX化は日本企業の未来にとって欠かせない問題であることがわかりました。
では、製造業におけるDX導入の取り組みとは具体的に何なのでしょうか。
いきなりDXを導入しようとして、新しいビジネスモデルの構築やサービスの変革を明確化せずに推進してしまうと、費用対効果が思うように発揮できなかったというケースが少なくありません。なぜなら、製造現場の現状と集めたり分析したりしたデータが一致しないからです。そのため、まずは現場の現状を理解するためのデータをとり、それをもとにした対策を現場で働いている人の意見を聞きながら進めることが重要となります。
こうした取り組みはDX化の準備段階とも言えますが、現場に潜んでいる習慣やDX導入をすることで、改善できる点などが洗い出せるとても大切な作業となります。
①業務の効率化、自動化
毎日行っているような単純作業をPCやソフトなどを用いてデジタル化します。例えば、勤怠管理ツールや経費管理ツールなどの導入が挙げられます。
②データ分析からニーズを調査
市場のニーズとものづくりを一致させます。まず、ビッグデータの収集と分析を行い、市場の動向をチェックしながらものづくりを進めていきます。商品のクオリティはもちろん大切ですが、顧客が潜在的に必要としているものは一体何なのかを探る視点も同様に重要と言えるでしょう。
③顧客の要求は常に察知
上記で行う顧客のニーズ調査とそれに伴う変革は、常に継続して行うことが大切です。
さらに、商品を販売するだけでなく顧客満足度や意見を確認することで、次に求められるサービスがどう変化しているかを察知。さらなる変革に対応するためにデータも活用していきます。
これら3つの段階を行うことで、DXの成功に一歩近づけたといえるでしょう。
日本でDXに成功した企業は、わずか14%と言われています。諸外国の成功割合は30%程度とされているので、日本でのDX化の成功例はまだまだ少ないといえます。
また、DX成功の定義として、
・DXの目標達成度合いの回答スコアが高い
・プロジェクトが70%以上完了
の2つが条件とされています。
では、DX化を推進するための成功のポイントは一体どんなことなのでしょうか。実際にDX化をして成功した企業の情報をもとに、みていきましょう。
80%以上の企業は包括的な戦略を構築し、64%は大胆かつ攻めの戦略を追求していました。
(引用元:ボストン コンサルティング グループ)
戦略で関連すると、90%の企業がデータ戦略の「なぜ」「何を」「どのように」を明確に理解しています。
(引用元:ボストン コンサルティング グループ)
また、80%以上の企業はKPIで成果を追跡していることがわかりました。
(引用元:ボストン コンサルティング グループ)
また、DXを成功する鍵は現場だけでなく、リーダーのコミットメント力も大切です。CEOや意思決定者は現場に任せきりにするのではなく、新しいテクノロジーの理解を深めたりレビューを積極的に行ったりと、率先してDX推進に取り組んでいます。
(引用元:ボストン コンサルティング グループ)
このように、成功のポイントは「包括的かつ大胆な戦略」「なぜなにどのようにしてを明確にしたデータ戦略」「KPIを回す」「リーダーの強力なコミットメント」が鍵です。
また、DXを導入する際に大切なのが「スモールスタート」を行うこと。
例えば、Excelの集計作業や定型文メールの送信といった、人が行っている単純作業をまずはPCで行ないます。しかし、人の判断が必要な作業や都度違う方法で行わなければならない業務に関しては、人が担わなければいけません。そのため、業務を人が行う作業とPCに任せる作業とに分ける必要があります。
このように、まずは小さなことからDX化を進めることで、失敗する確率はぐっと抑えられます。
日本企業でもDX化に向けて取り組んでいるところはありますが、一方で上手くいっていない企業が多いのも現状。では、失敗してしまう原因としてどんなことが考えられるのでしょうか。
「DXが注目されているからうちでもDX化しよう」と、DXをよく理解せず見切り発車で行ってしまうと、最終的に頓挫してしまうケースが少なくありません。
そもそもDXの目的は、事業や組織を変革して会社の利益を上げること。そのためにはまず、リーダー層が従業員に対して明確なビジョンを示さなければいけません。しかし、失敗した多くの企業ではリーダー層から部門に丸投げされ、DX自体を進めること自体が目的となってしまっているケースが多くみられます。そうならないためには、経営者を中心としたリーダー層がまずDXを熟知し、最終的なビジョンや戦略を明確にしておく必要があるでしょう。
見切り発車でDXを行うと、組織全体がDXに向けて団結できない問題が起こり得ます。そうなると、社内でDXを推進する従業員も何から始めるべきかわかりません。また、DXへの団結不足があると従業員のモチベーションも低下し、DXの理解度も下がりかねません。
DXを成功させるには、まず全従業員が団結してDX化の実現を目指すことが大切です。
上記で述べたIT化とDX化の区別をしっかり理解していないと、デジタルソリューションを導入して満足して終わってしまう事態が起こります。
IT化はあくまでDX化を行うための手段に過ぎないので、ゴール設定をしっかり見据えてDX化を進めていかなければいけません。
日本では少子高齢化が進み、労働人口の減少にあいまってエンジニアなどのデジタル人材を多く抱えている企業がそもそも少ないのが現状。そのため国内企業では慢性的なデジタル人材不足に陥っており、そうなるとDXを推進できる人材も少なくなります。引く手あまたのデジタル人材の雇用は難しく、採用コストもかなり高くなっているのが現状です。
また、人材が大手IT企業に集まってしまう傾向があるため、一般企業でDXを推進すること自体が難しくなっています。
DXへの理解不足、従業員の団結力の欠如、そしてデジタル人材の雇用難易度の高さがDXに失敗する可能性のある主な原因でした。
最後に、実際にDX導入を行っている企業例をいくつか紹介します。DX化へのイメージをつかんでみて下さい。
肌着やストッキングの製造を創業当初から行い、現在はエンジニアリングプラスチックス材や医療機器などの製造も行っているグンゼ。そんなグンゼが、NECが提供している薄型デバイスを活用した「導電性ニット」を開発しました。これは人々の健康を支援するための取り組みや生活に質工場をサポートする取り組みを検討するなかで生まれたもの。着るだけで生態情報が取得でき、その人の姿勢や消費カロリー、心拍数などの生態情報が計測できます。もちろん、肌着としての着心地や通気性も実現されています。
三菱電機メカトロニクスエンジニアリング株式会社は、製品にloTを活用した「リモートサービス」を導入しました。これはレーザ加工機の生産を最大限発揮しているかどうかを確認したいけど、どうすれば良いかわからないという顧客の悩みから生まれたサービス。
製造現場から離れた場所でもPCやスマートフォン、タブレットを使って加工機の稼働情報や加工予測などをリアルタイムでチェックできます。
また、コスト計算や稼働実績などをloTプラットフォームで収集・蓄積し一元管理。
加工機の生産の改善・ランニングコスト低減に貢献しています。
建設機械や鉱山機械を製作している小松製作所。2015年からスマートコンストラクション事業をスタートし、DXを進めてきました。スマートコンストラクションとは、新IoTデバイスと新アプリケーションにより、施工全工程をデジタルでつなぐ「横のデジタル化」を行い、実際の現場とデジタルの現場を同期させながら施工の最適化を行うこと。
将来的には1件の施工をデジタル化することで、複数の施工をリアルタイムに遠隔でつなぎ、最適にコントロールする「奥のデジタル化」の実現を目指しています。
(引用元:株式会社小松製作所)
DXとは、データとデジタル技術を活用しながら経営の変革をしていくことです。DXを成功させるには、まず従業員全員がDXへの理解を深めること、そして具体的な戦略を練ることがキーになります。
これからDX導入をしようと検討している製造業の方々は、ぜひ本記事を参考にDX化に取り組んでみてください。
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