2024-09-17
更新
志民 直人
技術営業、カスタマーサクセス
切削加工歴29年の1級機械加工技能士(精密器具製作/フライス盤/数値制御フライス盤)。金型・部品加工経験を持ち、CAD・CAMや各種工作機械に精通。設計からカスタマーサービスまで幅広く対応。製造現場改善や治具設計も得意。趣味は日曜大工、ゲーム。
金属加工の現場では、金属を削る、切断する、など、さまざまな加工が実施されます。そして、その際に「切削油」と呼ばれる油が使用されます。
切削機や加工機を使用する際、ドリルやフライスに放出されている切削油。「水ではダメなの?」「何のために放出されているの?」など、疑問に思われている方も少なくないはず。そこで、今回は切削油について詳しくご紹介します。
切削油とは、フライス盤や旋盤など、金属にさまざまな加工を施したい時、ドリルに対して放出される液体のことです。主に、切削時の摩擦を抑えたり、工作物の熱を奪い、熱を冷ましたりする効果を持っています。切削時に発生する切り屑を洗い流す効果もあり、加工時に起きる不具合や不良品の発生を軽減させる効果を担っています。
切削時に水ではなく油を利用するのは、より精度の高い製品を制作するため。一般的には「水溶性」と「不水溶性」の2種類に大別され、それぞれに異なるメリット・デメリットがあり、目的・用途に合わせて使用されています。
切削油を使用するメリットは下記の通りです。
切削油は主に「潤滑作用」「冷却効果」「品質向上」を目的に使用されます。使用することで切削された金属の品質が向上し、機械の動きもスムーズになります。結果的に「生産性が向上し、機械の寿命を引き延ばす」効果を持ち合わせています。
切削の理想はドライな状態での加工と言われています。なぜなら、潤滑油を使用するデメリットがあるからです。例えば、油によって金属に悪影響を及ぼすケースもあり、すべての金属に対して有用というわけではありません。素材によって変色や錆の原因となる可能性がある点もそのひとつです。さらに、切削油の飛散による作業効率の低下や環境的な問題などもあります。
水溶性切削油は一般的に水道水を使って10倍~80倍に希釈して使用します。濃すぎると金属に付着した油による影響が懸念され、逆に薄すぎると水による錆などの原因となるため、適量に薄めて使用する必要があります。
水溶性切削油は冷却性に優れている他、切削時の熱や火花から引火する危険性がなく、無人による作業の自動化が期待できます。
エマルションは10~30倍程度に希釈して使用され、水に溶かすと乳白色になります。水と油、界面活性剤から成り、水溶性切削油の中で最も潤滑性が高い切削油です。鉄やアルミ、銅など、切削加工全般に使用されています。
ソリューブルは10~50倍程度に希釈して使用され、水に溶かすと半透明、もしくは透明になります。エマルションに比べて洗浄性や冷却性が高く、潤滑性は劣ります。
ソリューションは30~80倍程度に希釈して使用され、水に溶かすと透明になります。浸透性と冷却性に優れている一方、潤滑性がなく、被切削物に対するダメージや肌荒れが起こりやすい油種となっています。
不水溶性切削は鉱油や脂肪油を主成分としています。水溶性に比べて冷却性は劣りますが、潤滑性や防錆性に優れており、切れ味の良さや、工具の寿命、加工面の品質向上が期待できます。また、使用する油によって粘度が異なりますが、一般的に低粘度のものほど浸透性に優れており、隙間に浸透し、潤滑や冷却に高い効果を発揮します。
油種は大きく分けて4種類に大別されますが、すべてに引火の危険性があり、消防法によるところの「危険物」に該当します。そのため管理・使用には法律に基づいた予防措置が必要になります。
油性形は鉱物と脂肪油を主成分とし、切削時に局部の焼き付きや切削性の向上を目的に使用される、極圧添加剤を含まないタイプです。非鉄金属の加工や鋳鉄の切削加工に多く用いられます。
N1種の成分に極圧添加剤を含み、銅板腐食が150℃で2未満のものが該当します。不水溶性切削油の中で最もスタンダードなタイプで、一般的な切削加工に幅広く用いられています。
N1種の成分に極圧添加剤として硫黄分を含み、銅板腐食が150℃で2以上のものが該当します。耐溶着効果が高く、仕上げ面を得られやすいため、難素材の加工に多く選ばれます。ただし、硫黄によって変色する金属もあるため使用には注意が必要です。
N1種の成分に極圧添加剤として必ず硫黄分を含み、銅板腐食が100℃で3以上のものが該当します。タップ加工やリーマ加工、ブローチ加工をはじめとする低速加工に多く用いられ、難素材の加工に適しています。
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