2025-01-15
更新
志民 直人
技術営業、カスタマーサクセス
切削加工歴29年の1級機械加工技能士(精密器具製作/フライス盤/数値制御フライス盤)。金型・部品加工経験を持ち、CAD・CAMや各種工作機械に精通。設計からカスタマーサービスまで幅広く対応。製造現場改善や治具設計も得意。趣味は日曜大工、ゲーム。
チョコ停は、コストダウンや効率良くものづくりを進める上で、顕在化しておきたいポイントです。小さなトラブルではあるものの、1日に何回も発生してしまうため、生産効率が大幅に低下している恐れがあります。トラブルを根本的に解決しないままにしておくと、製造設備の大きな故障を招き、ドカ停に発展することもあるでしょう。
チョコ停とは、製造設備にトラブルが発生するなどして、設備・製造が短時間の間停止することで、別名「空転ロス」とも呼ばれています。
チョコ停は、以下の設備効率を阻害する大きなロスである「7大ロス」と呼ばれるものの一種です。
チョコ停は製造設備が停止している状態のため、現場の作業者がいち早く気づき、復旧させる必要があります。
チョコ停の具体的な特徴については下記の通りです。
チョコ停の特徴
チョコ停は大きなトラブルとは異なり、現場の作業者による対応で済ませてしまうケースが多く、顕在化しにくいもの。また、1日の間に何度も発生してしまうのが特徴です。停止した状態が長く続くと、稼働率や生産性が大幅に低下し、製造コストの高騰にも繫がります。
チョコ停は、JIS規格の【JIS Z 8141:2001 生産管理用語】にも記述されており、その内容は下記の通りです。
設備が生産ラインなどの大規模なシステムの一部となっていて、システム全体を停止に至らしめるような重大又は決定的な故障を大故障(通称としてドカ停)、逆に設備の部分的な停止又は設備の作用対象の不具合による停止で、短時間に回復できる故障を小故障(通称としてチョコ停)という。
引用元:JIS Z 8141:2001 生産管理用語 設備管理 番号6108
チョコ停の名称は、チョコチョコ停止することの略称として使われていますが、似たような言葉に、ドカっと長い時間製造設備が停止する「ドカ停」も用語としてあります。チョコ停が重なるとドカ停に発展し、生産ラインに大きく悪影響を及ぼす場合もあります。
7大ロスである、段取り替えロス・治具交換ロス・立ち上げロスは、ある程度決まった時間で、予定として組み込まれているロスになります。故障ロス・速度低下ロス・不良品ロスは、停止時間が長かったり、タクトタイムを測定したりするものであるため、顕在化がしやすいものです。
一方で、チョコ停は突発的に発生するロスのため、復旧は現場の作業者が対応して済ませるケースがほとんどです。ロスした時間や内容などの、具体的な記録が残らないことも多い分、顕在化がしにくいとされています。
チョコ停は、作業者による対応で改善されるような細かいトラブルかつ、記録を残していないケースが多いため、顕在化がされにくいものです。しかし、チョコ停をそのままにしておくとドカ停に発展し、大きなトラブルとなりかねません。そのため、チョコ停の段階から対策しておくべきかどうかを検討する必要があります。
チョコ停を対策するには、まず始めにチョコ停を顕在化する必要があります。顕在化するための方法として、「ワークサンプリング」を行うのが有効です。
ワークサンプリングとは稼働分析の手法のひとつで、作業に対してどの程度の時間や工数がかかっているかをチェックすることを指します。
ここでのワークサンプリングは、設備の状態を「稼働」と「非稼働」に分け、非稼働を「段取り替え・チョコ停・設備トラブル」に分類し、チョコ停の時間を明確にします。明確にした時間から、チョコ停を含めた稼働率を計算します。
稼働率の計算式
稼働率(%)=稼働時間÷負荷時間
稼働時間:負荷時間-計画停止時間-停止ロス時間
負荷時間:1日または月間を通じて設備が稼動しうる時間
チョコ停を含めた稼働率の計算式
稼働率(%)=稼働時間÷(負荷時間+チョコ停時間)
以上の2つの式を用いて、チョコ停によりどれだけ稼働率が低下したかを算出します。
チョコ停を顕在化したあとは、原因調査を行います。
原因調査は設備のエラーなど、チョコ停が起こった場合に記録するためにワークシートを用います。ワークシートへの記入は、現場の作業者がチョコ停が起きた問題点の回数を記録するだけで、現場の負担にならないようにします。
そのためにも、あらかじめワークシートには、縦軸に発生件数・横軸にワークサンプリングで明らかになった発生原因を記述した表を作成しておくといいでしょう。
チョコ停の原因調査で記録したワークシートを元に、発生件数の割合を示した図であるパレート図を作成し、原因を抽出します。
パレート図は、発生したチョコ停の回数が多いものから順に並べることで、重大な原因がいずれなのかが分かり、効率の良い対策が立てやすくなります。以上のようなパレート図による解析は「パレート解析」と呼ばれており、問題に対する分析や対策を講じる場合に有効です。
パレート図の例は上表の通りです。アルファベットのA~Jは各チョコ停の種類、棒グラフは各チョコ停の発生件数、折れ線グラフは累積比率を表しています。
上図のように、発生件数の多いものから順番に並べることで、チョコ停の大きな問題が何なのかを明確にできます。
パレート解析後は、チョコ停1回あたりの損失金額を計算し、チョコ停を改善することでどれだけの効果が得られるかを確認します。チョコ停1回あたりの損失金額の計算式は以下の通りです。
●チョコ停1回あたりの損失金額
損失金額=チョコ停時間×時間あたりの生産個数×製品単価
上の式から改善効果を数値化し、チョコ停の対策を実施するかを検討しましょう。
今まで対策を講じていなかったチョコ停を改善することで、以下のようなメリットがあります。
●ドカ停に発展するリスクの低減
チョコ停は放置してしまうと、設備の劣化を招く要因となります。チョコ停を対策しておくことで設備が故障しにくくなり、大きく生産効率が低下するドカ停の防止にも繫がります。
●稼働率の向上
チョコ停は小さいトラブルとはいえ、1日に何度も発生するもののため、稼働率が低下します。チョコ停を改善することで、製造設備の停止時間が少なくなり、時間あたりの生産個数を増やすことができます。
●不良率の軽減
チョコ停の発生するタイミングなどによっては、製品の品質に悪影響を及ぼす場合もあるでしょう。チョコ停が改善されれば、不良品の数が減るほか、トラブルの対応にかかる手間も少なく済みます。
●安全性の向上
チョコ停の復旧作業を行う上で、製造設備の巻き込みや、刃物などによるケガなどのリスクも考えられます。チョコ停のように1日に発生する回数も多いと、その分ケガをしてしまう可能性も高くなるでしょう。チョコ停改善は、安全第一で作業をするのにも有効となります。
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