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【黄銅とは?】特性や用途について専門家が詳しく解説!

2024-09-18

更新

この記事を監修した人

染谷 ひとみ

Mitsuri Media管理人

精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。

黄銅とは銅と亜鉛の合金です。

適度な粘りがあり、柔らかすぎない硬度がある黄銅は加工がしやすいため、古くから人々の生活で用いられてきました。

今回は、黄銅の発見から実用化の歴史と黄銅の特性、用途を解説していきます。

「黄銅っていつから使われているのだろう?」

「黄銅はどんな用途で使用されているのだろう?」

そういった疑問をお持ちでしたら、是非この記事を参考にしてみてください。

 

黄銅の発見から実用化の歴史

黄銅が初めて史書に登場するのは、紀元前20世紀頃、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの時代です。当時の資料文献から、ローマ帝国では貨幣や武具の素材に銅と亜鉛の合金が用いられていたことが明らかになっています。

当時の黄銅の製造は、カラミンという亜鉛鉱石を粉末にして銅と木炭をるつぼで加熱しながら混ぜ合わせるという手法が用いられています。

ローマ帝国では、紀元前20世紀頃から西暦180年頃まで黄銅製の貨幣が頻繁に使用されていましたが、次第に黄銅が使用されることは無くなっていきます。

12世紀になると、インドで綿を還元剤とした金属亜鉛の製錬がなされます。16世紀には金属亜鉛の製錬技術が中国に渡って、黄銅が作られるようになりました。

1743年に、イギリスでウィリアム・チャンピオンが中国から伝わった亜鉛の製錬技術から亜鉛の製法を確立し、ヨーロッパに初の亜鉛工場を建設します。これにより、ヨーロッパでは長く使用されていなかった亜鉛が再度使用されるようになり、産業革命を推し進めていくことになります。

また、同年スウェーデンでは炭酸亜鉛や硫化亜鉛から亜鉛を蒸留分離することに成功します。中国から伝わった製錬技術とは異なった新しい製法がヨーロッパで生まれたことになります。

以降のヨーロッパでは亜鉛の製法の研究が活発になり、1746年ドイツではコークスと酸化亜鉛を空気を断って加熱し、金属亜鉛を効率的に製造することに成功します。

1798年には、ドイツのヨハン・クリスチャン・ルーバーグによって耐火性容器に石炭と亜鉛鉱石を入れて加熱して亜鉛を蒸留製錬する水平レトルト製錬による亜鉛精錬工場が建設されました。この製法によって金属亜鉛を大量生産することが可能になったことが、後の黄銅の生産に大きな影響を与えます。

1832年、銅60/亜鉛40の真鍮が発明されます。1840年代になると安価な真鍮板が製造されるようになりました。耐食性の高い真鍮は、今まで銅製が主だった船舶用の部品などに使用されるようになりました。

その後も黄銅の生産は発展を続け、加工のしやすさ・耐食性の高さ・剛性の高さから、現在でも金管楽器や水回りの部品などのさまざまな用途に使用されています。

黄銅の特性

黄銅は、銅65%、亜鉛35%の合金を一般的なものとします。銅と亜鉛の割合によって物性が変化し、亜鉛の割合を増やすほど硬度が増していきます。しかし、硬度が増すと同時に脆さも増すため、亜鉛の割合が45%を超えると実用的ではなくなってしまう点には注意が必要です。

参考記事黄銅ではさまざまな加工が行われています。以下の記事では黄銅の加工について詳しく解説していますので、合わせてご覧になってください。⇒真鍮(銅) 加工】真鍮の加工方法を加工実績と共に徹底紹介!!

また、銅と亜鉛の割合を変えるだけではなく、鉄や錫などの素材を添加することによって切削しやすくしたり、耐食性を高めたりすることもできます。これによって黄銅は細かく分類されることになります。JISでは黄銅を銅合金として扱っているため、材料記号はCから始まる4桁記号で表します。

<黄銅の種類>

  • C2600:七三黄銅(銅70%、亜鉛30%)

イエローブラスとも呼ばれる黄銅。

  • C2801:六四黄銅(銅60%、亜鉛40%)

亜鉛の割合が高く、黄金色に近い黄色となります。

  • C3604:快削黄銅(銅57%~61%、鉛1.8%~3.7%、鉄0.05%以下、鉄+錫1%以下、残部が亜鉛)

被削性を高めるために鉛を添加しています。

  • C3117:鍛造用黄銅(銅57%~61%、鉛1%~2.5%、鉄+錫1%以下、残部が亜鉛)

熱間鍛造性と被削性が高い材料。

  • C4430:アドミラルティ黄銅(銅70%~73%、鉛0.05%以下、鉄0.05%以下、錫0.9%~1.2%、ヒ素0.02%~0.06%、残部が亜鉛)

耐食性、耐海水性に優れ、特に海水による腐食に強い。脱亜鉛腐食を防ぐためにヒ素を添加しています。

  • C4621:ネーバル黄銅(海軍黄銅)(銅61%~64%、鉛0.2%以下、鉄0.1%以下、錫0.7%~1.5%)

耐海水性を高めるために錫を添加しています。

  • C6782:高力黄銅(銅56%~65%、鉛0.5%以下、鉄0.1%~1%、アルミ0.2%~2%、マンガン0.5%~2.5%、残部が亜鉛)

六四黄銅をベースに鉄、アルミ、マンガンを添加し、高力の名の通り強度に優れています。耐食性や熱間鍛造性も高く、船舶用のプロペラ軸やポンプ軸に使用されています。

  • CAC201:黄銅鋳物1種(銅83%~88%、亜鉛11%~17%)

亜鉛を15%程度に制御した黄銅です。ろう付けしやすくフランジや電気部品などに使用されます。

共通して言えるのは、黄銅は剛性や耐食性、耐海水性を高めていても展延性や熱間鍛造性、切削加工性が失われず加工しやすいということです。そのため、複雑な形状や細かい装飾に加工することが可能で、さまざまな用途に黄銅は用いられています。

他にも、黄銅は導電性が高いといった特性があります。この特性を利用して蛍光灯の口金部の差し込みピンやコンセントなどに使用されています。

黄銅の用途

黄銅にはさまざまな特性があり、その特性を利用した製品が数多く存在します。黄銅がどのように使用されているのかを黄銅の特性ごとに見てみましょう。

黄銅は導電性が高いという特徴があります。そのため、コンセントなどの部品に使用されています。他にも端子コネクターや配線器具などにも使用されます。

ガスコンロのバーナーヘッドは黄銅の熱間鍛造性の高さを活かした製品です。黄銅は600度~800度に加熱することで複雑な形状のものを容易に製造することができます。

黄銅は金、銀、クローム、ニッケルなどのメッキ加工がしやすい素材です。そのため、台所やトイレなどの水回りの配管や継手に使用されています。メッキを施したり、ヒ素を添加したアドミラルティ黄銅を使用することによって脱亜鉛腐食への対策をしています。

黄銅は金管楽器にも使用されています。複雑な形状に加工しやすく耐食性があり、響きやすい特性のある黄銅は楽器の制作にうってつけの素材です。また、黄銅は比較的安価で入手できるため、銀やプラチナを使用して楽器を制作するよりも大幅に価格を抑えられる点も利点となっています。

まとめ

黄銅の歴史は古代ローマ帝国の通貨から始まり長く使用されてきました。亜鉛の製錬が難しかったため高価な素材とされてきましたが、製法が確立されてからは大量生産され比較的安価で気軽に手にすることのできる金属となりました。

黄銅は金のような美しさがあり、展延性、熱間鍛造性、導電性、耐食性が高く、金属として適度な硬度を持っていながら加工がしやすいという特性上、さまざまな部品や装飾に使用されていきます。現在では、個人で黄銅を入手することも容易になっており、この記事で黄銅の加工に興味を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。

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