【板金加工】専門家が教える板金加工の「特徴・種類・材料」について!

2023-11-07

板金加工とは何か、という問いに答えることは決して簡単ではありません 。というのも、板金と呼ばれる業界や加工内容はとても広く、また関係する作業はそれぞれ独立し、複雑に絡み合っているからです。とはいえ、板金を無視することも簡単にはできません。なぜなら、私たちの生活は板金加工によってつくられた製品なしでは成り立たないからです。身の回りを見渡してみてください。スチールの机、ロッカー、書庫、キャビネット、パソコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、エアコン、テレビ・・・。これらの製品には、ほとんど板金が使われています。そんな日常の中にも溶け込んでいる、板金加工とはどのようなものなのでしょうか?板金加工の特徴や種類、または材料まで専門家が徹底解説致します!

板金加工とは?

板金加工は、一般に金属の板を切ったり、曲げたりすることで製品をつくる加工方法のことをいいます。ここでは、板金の加工方法にこだわり、以下の定義を採用してみたいと思います。板金加工とは 、 金属加工の一分野である塑性加工の一領域で、 主として板材を切断、 抜きおよび曲げなどにより、 さまざまな形状(部品・製品)を作り出す加工方法である。少し難しい定義ですが、一つずつ紐解いていきます。

金属加工とは

金属加工とは文字通り、金属を材料として加工する分野のことを指します。金属加工で使用する材料には、鉄鋼材料、アルミニウム系材料、銅系材料などがあります。これに対して、非金属加工で使用する材料には、プラスチック材料やセラミック材料などがあります。材料については、第2回の「板金加工、材料の基礎」で解説します。

塑性加工とは

塑性加工を理解するには、弾性変形と塑性変形という概念が欠かせません。・弾性変形とは材料に一定の力を加えると形が変形しますが、加えた力を取り去ると元に戻ることがあります。 これを弾性変形と言います。・塑性変形とはこれに対して、材料に一定以上の力を超えると力を取り去っても変形が残ります。このようにして起きた変形を塑性変形と言います。この塑性変形を利用した加工方法を塑性加工と呼びます。板金加工で行う、切断、抜き、曲げは、いずれも塑性加工に当たります。

金属加工-塑性加工-板金加工

板金加工と他の塑性加工との違い

板金加工以外の塑性加工に、圧延、転造、押し出し・引抜き、鍛造、プレスなどがあります。板金加工と他の塑性加工との違いはあいまいといわれますが、それぞれの加工の概略を見ておくことはとても有益です。以下、簡単に見てみましょう。①圧延加工回転するロールの間に材料を通すことで、ロールのすき間量まで薄くする加工方法です。圧延加工は平板だけではなく、さまざまな形状の成形も可能です。 この圧延加工によって、板金加工で使用される板材が成形されます。

圧延加工

引用元:モノタロウ

②転造加工丸い工作物を工具(ダイス)に強い力で押し付けながら回転させることで、工作物の表面をダイスの逆形状に成形する加工方法です。ねじや歯車はこの転造で加工されています。

転造加工

引用元:ユニオンツール株式会社

③押し出し・引き抜き加工押し出し加工とは、ほしい断面形状の穴のあいたダイスに材料を通すことで、長尺の製品をつくる加工です。レールやフレームなどはこの加工方法でつくられています。このダイスへの材料の通し方によって「押し出し加工」と「引き抜き加工」が区分されます。ⅰ. 押し出し加工 は、コンテナと呼ばれる筒状の容器に入れた材料に、力をかけてダイスから押し出すことで、ダイスにあいた穴形状の断面を持った形に成形する加工方法です。ⅱ. 引き抜き加工は、先の押し出し加工や圧延加工した材料を使用し、材料の先端を細めてダイスの穴に通してから、この先端をつかんで引っ張ることで、ダイスの穴形状に成形する加工方法です。

押し出し、引き抜き加工

引用元:東大阪市技術交流プラザ

④鍛造鍛造は「鍛え造る」と書くように、ハンマやプレス機で金属に大きな力を加えることで成形すると同時に、金属組織の密度を高める加工方法です。板金加工は、基本的に板厚を変化させませんが、鍛造は厚さを変化させるという点で違いがあります。⑤プレス板金加工と他の塑性加工との区別はあいまいである、といいました。学会や業界団体、企業や製品などによって、区分がさまざまなのが実情です。このような事態に陥っている理由の一つに、全く同じ製品であっても、異なる加工方法によって作ることが可能である、ということが挙げられます。とりわけ板金加工とプレス加工は重なるところが多く、はっきりと区別するのは困難です。ただ、本記事では両者の強み、弱みに着目して、区別して考えてみたいと思います。この点については、後述の 「板金加工の特徴」で考察します。

塑性加工

また、加工方法ではなく、製品の完成に焦点を当てて、板金加工と呼ぶ場合もあります。実際の製造現場では、塗装や溶接、組立まで行い、完成品を出荷することがあるためです。本連載では、塑性加工としての板金加工について解説することに止めます。以下の動画では溶接まで踏み込んでいますが、板金加工の全体像をつかむ上で、有益です。是非視聴してみて下さい。金属板でストーリーを組立てる~板金加工~

概要モノづくりの現場で磨きをかけるその道の熟練者を追うドキュメンタリーシリーズ。埼玉県所沢市にある竹下工業では主に事務機器・空調機器・医療機械・配電盤などの筐体ならびにその部品を製作しています。板金加工は、機械化の進んだ分野で、レーザーカットマシンによる金属の板材を切断加工、タレットパンチプレスによる穴あけ加工、ベンディングと呼ばれる曲げ加工を施し、必要な箇所を溶接するというように、今や自動化・管理されています。番組では、熟練技能者の技が求められる溶接工程の技の魅力を紹介します。出演者名・所属機関名および協力機関名>竹下 力(竹下工業㈱),竹下 祐司(竹下工業㈱),今井 繁(竹下工業㈱),玉井 今朝治(竹下工業㈱),西村 幸弘(竹下工業㈱),高塚 正也(㈱青二プロダクション),竹下工業㈱引用元:サイエンスチャンネル

板金加工の中身

ここまで、金属加工における板金加工の位置づけについて確認してきました。ここから先は、板金加工の具体的な中身を見ていきたいと思います。板金加工は、手加工板金と機械板金(工場板金、精密板金)の2つに分類することができます。

板金加工

手加工板金とは 手加工板金は、その名が示す通り、主に人間の手の力を使用する加工方法です。手加工板金には、自動車板金 、 打ち出し板金 、 建築板金があります。 これらの板金で使用する道具を見てみると、板金加工が従来、手加工で行われてきたことがよくわかります。

手加工板金

手加工板金で使用する道具

手加工板金の道具

引用元:Tech Note「試作車ボディの板金職人、13種類の道具をどう使い分けるのか?」

画像引用元の記事は、自動車板金についてかかれたものですが、とても内容の濃い記事です。一読をお勧めします。

機械板金とは

手加工板金に対して、機械を使用する板金加工方法を機械板金とよびます。機械板金は、機械を使用するためには一定以上の敷地、つまり工場が必要であることから工場板金 、また機械によって精密な加工を実現できることから精密板金とも呼ばれます。

機械板金による加工方法

では、機械板金によってどのような加工が実現できるのでしょうか。機械板金には、切断加工、打ち抜き加工、曲げ加工、成形加工、絞り加工、特殊加工などの加工方法があります。これらの加工方法については、別の記事で詳しく解説します。

機械板金

切断加工にはレーザーマシン、抜き加工にはパンチングプレス、曲げ加工にはベンディングマシン、というように加工方法毎に対応した機械があります。本記事では、主に機械板金を取り上げ、手加工板金は別の連載で取り上げることとします。

板金加工の特徴

先に述べたように、板金加工(機械板金)とプレス加工は重なるところが非常に多いため、はっきりと区別できないとされています。企業内でも板金加工とプレス加工を区別しないところが増えてきています。しかしながら、ここではあえて板金加工とプレス加工を区別し、その相違について考えてみたいと思います。というのも、両者の相違に着目することで、板金加工の特徴が明確になると考えるからです。以下、見ていきたいと思います。

プレス加工との違い

一般的に、板金加工とプレス加工の相違は、金型に集約することができます。板金加工が汎用金型(標準金型)を使用するのに対して、プレス加工は専用金型を使用します。日本金型協会では、以下のように金型を定義しています。

金型とは、材料の塑性または流動性の性質を利用して、材料を成形加工して得るための、主として金属材料を用いてつくった型を総称します。例えば、自動車のボディーは金属板をプレス金型によって成形加工することによって出来上がります。また、電話機など樹脂製品はプラスチック材料を金型に射出成形すること出来上がります。このように、金属、プラスチック、ゴム、ガラス等の素材を、それぞれ目的とする製品の成型加工用に使用されるものが金型で、金型の品質如何が製品の良否を 決定づけるものなのです。したがって、金型は製品の産みの親などといわれています。引用元:一般社団法人日本金型工業会

プレス加工の強みと弱み

プレス加工は、製品および工程ごとに専用の金型を作り、これを使用する点に特徴があります。これにより複雑で高精度の製品を早く、安く加工することができるのです。しかしながら、専用の金型を作るため、多量生産に向いており、生産数が少ないとそれに要した費用を償却するのが困難です。また、製品の形状および寸法などは金型で決まってしまうため、加工者の技量に左右されにくいという特徴があります。

板金加工の強みと弱み

板金加工は、上記プレス加工と逆の特徴を持っています。汎用金型および工具を使用することが多いため、特定の製品にかかる費用が安く、少量生産に適しています。しかし、生産性はプレス加工に比べ大幅に低くなるため、大量生産には向いていません。また、汎用金型を使用して工夫しながら加工するので、加工者の技量が重要な要素になってきます。金型という観点から見た、板金加工とプレス加工の差異は、以下のように示すことができます。

板金加工とプレス加工

板材は一体どのように作られているの?

1. 鉄を生みだす製鉄と製鋼

・製鉄鉄は酸素と結びつき、安定した状態で鉄鉱石や砂鉄といった形で存在しています。そのため、鉄を取り出すためには、酸素を引き離すことが必要です。 この工程を「製鉄」といい、高さ100メートル以上もある高炉という設備を使います。炉の上から鉄鉱石と共に石炭を蒸し焼きにしたコークスを投入し、下から高圧の熱風を吹き込むことでコークスが燃えだします。この熱によって鉄鉱石を溶かします。・銑鉄この時に、鉄は結びついていた酸素を手放し、炉の底にたまります。 これを「銑鉄」と呼びます。 この銑鉄には炭素や不純物が多く含まれています。・鋼この銑鉄をドロドロに溶けた状態のまま転炉という設備に移し、そこで酸素を吹きつけることで炭素量を適正量にコントロールし、不純物を除去します。このようにしてできた鉄を「鋼」(こう)といいます。・製鋼この鋼を溶けたまま連続鋳造設備に流し込み、さらに不純物を除去しつつ冷却していくことで、大きな塊にします。 このように不純物を取り除き、溶けた鉄を鋼片にする工程を「製鋼」といいます。

製鉄と製鋼

引用元:中部鋼鈑株式会社

2. 圧延機で鋼材をつくる(熱間圧延)

製鉄工程と製鋼工程を通して鉄鉱石から鉄を取り出し、鋼にするところまで見ました。この鋼の塊は厚みが25cm近くあるので、このままでは用途が限られてしまいます。そこで、この鋼の塊から板や棒といった形状をつくります。これが圧延加工の工程になります。一旦冷えた鋼片を再度1000℃以上に熱し、軟らかくしてから、圧延機という設備に送ります。

圧延機

 引用元:日本冶金工業株式会社

圧延機は、鋼片を上下のローラーに挟み込んで徐々に薄くしていきます。厚い板はその板形状のままで取り出します。1.2mm~19mmの板厚ではコイル状に巻き取り、これをホットコイルと呼びます。熱い状態で圧延加工するので、この工程を熱間圧延といい、できたものが熱延鋼板として出荷されます。板材だけではなく棒材、線材、断面形状が特殊な形鋼など、さまざまな形状もつくられます。

3. さらに圧延して薄板をつくる(冷間圧延)

板金加工に使われる板材には、さらに薄いものも求められます。このような薄板は冷間圧延によってつくられます。冷間圧延は、先の圧延鋼板を使って常温で圧延加工してつくられ、できたものは冷延鋼板と呼ばれます。冷間という言葉には、冷やすイメージがつきまといますが、常温でおこなう工程です。冷間圧延では、1ミリの千分の一の極小レベルで厚みをコントロールするため、厚み精度に優れており、表面もなめらかできれいに仕上がります。あとで紹介するSPC材(冷間圧延鋼板)は、この工程でつくられた材料です。常温で圧延することにより金属組織が乱れて硬くなるため、圧延後に焼きなましという熱処理をおこない、内部のひずみを除去して軟らかくしています。(熱処理に関しては、別の記事で解説します。)また、さびを防ぐ亜鉛メッキ鋼板は、この冷延鋼板の表面にめっき処理をおこなったものです。

鋼からめっき処理まで

引用元:中部鋼鈑株式会社

黒皮材とみがき材

熱間圧延鋼板は黒皮材、冷間圧延鋼板はみがき材と慣習的に区分されています。 酸化鉄によって生ずる黒皮は、手でさわって凸凹を感じるほど大きなことがあります。黒皮材は、寸法精度が必要なく見栄えも問わない建築材料などに使用されます。 他方で、製品や生産設備に使う場合には高い寸法精度やなめらかな表面が求められるので、黒皮を除去しなければなりません。これに対して、みがき材であれば、表面がなめらかできれいなのでそのまま使用することができます。 黒皮材よりみがき材の方が価格は高いのですが、黒皮材をそのまま表面を加工するコストと比較すると、みがき材の方を使用する方がメリットがあるとされています。

板材の種類を細かく分ける

1. 板材の種類

板金加工で使用される板材の多くは鉄鋼材料から構成されています。そこで、まず鉄鋼材料と非鉄鋼材料に分けて、全体を俯瞰してみたいと思います。

鉄鋼材料

・鉄鋼材料には、軟鋼板、表面処理鋼板、ステンレス鋼板があります。・鋼板とは、文字通り板状に加工された鋼のことをいいます。・非鉄鋼材料には、アルミニウム板、銅板などあります。・軟鋼板としては、熱間圧延鋼板(SPHC)と冷間圧延鋼板(SPCC) が代表的なもので、一般に「鉄板」 と呼ばれています。・鋼板(鉄板)は板厚によって、厚板(6mm以上)、中板(3mm以上6mm未満)、薄板(3mm未満)に分けることができます。・ステンレス鋼板は、鋼にクロムを12%以上添加したもので耐食性に優れています。・表面処理鋼板は、軟鋼材を母材として表面にめっきしたもの、あるいはめっきして更に塗装したものです。・アルミニウムは、軽く、伝熱性、導電性に優れています。・銅も、伝熱性、導電性に優れていますが、高価なため構造部品などに使われることはめったにありません。

2. 板材の寸法、形状

板金材料には、あらかじめ必要な寸法に切断されたスケッチ材と、寸法が規格で決められた定尺材があります。実務では、定尺材をそのまま使い、切断、穴あけ加工を行うのが一般的です。・軟鋼材の定尺材の寸法は、以下の3つが広く流通しています。 914×1829mm(3×6、サブロク)1219×2438mm(4×8、シハチ)1524×3048mm(5×10、ゴトー)・ステンレス、アルミニウムの定尺材は以下のものが、広く流通しています。

ステンレス、アルミニウムの定尺材

材料の特性

さて、いよいよ材料の特性について見ていきます。個別の材料について述べる前に、鉄鋼材料を考える上で基本となる2つの事柄について確認しておきたいと思います。

1. 炭素量で鉄の性質をコントロール

鉄もアルミニウムも純金属では軟らかすぎて用途が限られるため、他の成分を加えることで、実用に適した性質に変えていきます。鉄に最も影響を与えるのが炭素(C)です。加える炭素の量により軟らかい鉄から硬い鉄までつくり分けることができます。鉄鋼材料は、このように成分をコントロールされてできあがっています。また、鉄鋼材料はこの炭素量の大小によって分類されます。炭素量が0~0.02%が純鉄 、0.02~0.3%が軟鋼、0.3~2.1%が硬鋼、2.1~6.7%が鋳鉄です。純鉄は柔らかすぎて実務上の用途がないので、軟鋼から実用領域となります。軟鋼と硬鋼を分ける0.3%は、焼き入れ効果の有無と溶接可否の目安になります。(この溶接の詳細については、別記事で解説します。)

2. 炭素量による性質の各特長

(1)強さと硬さ:炭素量が増えるほど強く硬くなります。(2)加工性:炭素量が増えるほど硬くなり、加工しにくくなります。(3)焼き入れ効果:炭素量が少ないと、焼きは入らず、炭素量が増えるほど焼き入れの効果がでてきます。(4)溶接性:0.3%以下は溶接が容易ですが、0.3%を超えると炭素の含有量が多いために溶接の熱で焼きが入り、焼き割れといった欠陥が生じやすいために溶接は避けます。(5)溶融温度:炭素量が増えるほど溶ける温度は下がっていきます。

3. 主要な5大元素

鉄に加える成分の代表格は 炭素(C)で、その他に補助的な役割としてシリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)が入っており、これらを5大元素といいます。・炭素はなくてはならない存在で、強さと硬さの源泉です。・シリコンはけい素とも呼ばれ、弾性変形の上限値である降伏点と破断限界を示す引張り強さを増します。・マンガンは粘り強さを高め、焼きを入れやすくする元素です。・ここまでの3元素は鉄の性質を向上する大切な成分ですが、残りのリンと硫黄は基本的に有害な成分です。以上の5つが鉄鋼材料の基本となる元素です。

炭素鋼と合金鋼の区分け

鋼は添加物の種類によって炭素鋼と合金鋼に分かれます。5大元素のみで構成されたものを「炭素鋼」といいますこれに対して、5大元素にクロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの金属を加えたものを 「合金鋼」といいます。合金鋼は高価な半面、優れた性質を持っています。身近に使われている合金鋼としては、ステンレス鋼を挙げることができます。

1. SPC材(冷間圧延鋼板)

(1)概要:・SPC(Steel Plate Coldの略)材は、0.4~3.2mmの薄板で、最大でも3.2.mmです。・冷蔵庫や洗濯機のボディなど家電製品などで、広く使用されています。 ・SPCは用途によって、SPCC(一般用)、SPCD(絞り用)、SPCE(深絞り用)などがあります。・このSPCCに電気亜鉛メッキを施したものがSECCです。(2)強さ: 軟らかい板材なので、大きな力が加わる箇所には使用しません。(3)加工性: 加工性は良好です。平板のまま使うか、もしくは曲げ加工やプレス加工が中心です。 冷間圧延なのでとてもなめらかできれいな表面です。 表面は削らずにそのままの面を使います。

2. SS材(一般構造用圧延鋼材)

(1)概要:SS(Steel Structureの略称)材は汎用材として、金属加工で最もよく使用される圧延鋼板です。安価で市販性も高く、鋼板、棒材、形鋼とバリエーションも多く揃っています。(2)強さ: 一般的に鋼材は、厚くなるほど降伏点が下がる傾向にあります。 これは、厚くなるほど圧延後に常温まで冷える時間が長くなり、そのことによる金属組織の変化が影響するためです。 しかし、一般環境下で使用する場合、この強さは相当の余裕度があるので、厚みによる降伏点の差異は、特に意識する必要はありません。(3)加工性: とても加工しやすい材料です。 SS材は材料の表面が良好なので、できるだけ表面をそのまま使用します。 というのも、表面を加工すると内部応力が解放されて、そりが発生する恐れがあるからです。

内部応力とは

内部応力とは、外から材料に力を加えた際に、内部で反作用として生じる力のことです。外部の力に応じて発生する力という意味で、内部応力(単に応力とも)と呼びます。内部応力には2つの種類があります。材料を引き延ばそうとする力が働く場合の引張応力と、縮めようとする圧縮応力です。 内部応力は部材ごとに違うので、実際に削ってみなければわかりません。

合金鋼

炭素鋼の5大元素に加えて他の金属を添加したものが **合金鋼** です。 合金の元素には、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)などがあります。

SUS材(ステンレス材)

(1)概要: 合金鋼の中で最も身近に使われているのがステンレス鋼です。ステンレスはStainless、すなわち「汚れが少ない、さびが少ない」を意味し、五大元素にクロムとニッケルを加えた合金です。SUS(Steel Use Stainlessの略称)材の特徴は、何といってもさびに強い耐食性です。クロムと酸素が結びついた緻密な酸化膜(不動態被膜)が、金属表面をしっかり覆うことによって可能になります。以下、ステンレス鋼でよく使用されるSUS304とSUS303について、解説します。

①SUS304(18-8系ステンレス)ステンレスの半分以上を占めるのが、このSUS304です。抜群の耐食性を活かして、台所のシンクや、機械部品にも使用されるオールマイティな品種です。耐熱性もあり、600℃まで使用でき、溶接も可能です。磁性がないので磁石につかないのが特徴です。ただし、曲げ加工などによる加工硬化があると、その個所は磁性を帯びることもあります。

②SUS303(18-8系ステンレス)先のSUS304は耐食性が優れていますが、硬くて粘っこいために加工性があまりよくありません。そこで、有害成分とされているリンと硫黄を含ませることで加工性を向上させたものがこのSUS303です。耐食性は若干劣るものの、加工性が良い点は機械部品に適しています。SUS304と同じく非磁性です。

非鉄鋼材料

1. アルミニウム

鉄が鉄鉱石から酸素を離して取り出されるように、アルミニウムも鉱物のボーキサイトから取り出されます。鉄の場合に比べて、アルミニウムと酸素の結びつく力は、はるかに大きく、多くの電力を用いて電気分解をおこなう必要があります。しかし、アルミニウムには優れた特徴があるため、いまや鉄につぐ生産量となっています。以下の動画は、アルミニウムの特徴をよく説明してくれています。是非、視聴してみてください。「電気の缶詰~アルミニウム~」

概要奇妙な骨董屋の周期表を模した棚を前に、少女と怪しい店長のシュールなやりとりを通じて、単なる記号の羅列ではない周期表の正体を探っていきます。元素の性質、発見の歴史をじっくりと見つめると、あたかも物語の人間関係相関図のように整理された元素たちの関係が見えてくるのです。シリーズ第10回は、「電気の缶詰~アルミニウム~」と題し、アルミニウム精錬の歴史と現在の利用例、アルミニウムの特徴を紹介します。出演者名・所属機関名および協力機関名佐藤瀬奈(オスカープロモーション)、コハ・ラ・スマート(個人)、オスカープロモーション引用元:サイエンスチャンネル

2. アルミニウムの特徴

アルミニウムの特徴は、鉄と比較することでよく理解できます。以下、その特徴を列挙します。

(1)軽さ:アルミニウムの一番の特徴はその軽さです。鉄とその密度を比較すると約3分の1です。アルミニウムが工業製品として使われだしたのは、時代背景と関係しています。20世紀に入り、航空機生産の需要が高まると、アルミニウムはこの航空機の軽量化を最大の目的に進められます。航空機の機体は、その総重量の約70%がアルミニウム合金でできているといわれています。今では、地下鉄から新幹線、果ては人工衛星に至るまで広く使用されています。

(2)強さ:アルミニウムは鉄に比べると弱くなります。しかし、7000系(亜鉛とマグネシウムの合金)のA7075は、炭素鋼のSS400を超える引っ張り強さがあります。剛性の指針である縦弾性係数は、どの品種も同じく鉄の3分の1なので、同じ力がかかると鉄の3倍の変形量が生じます。

(3)加工性:切削の抵抗が小さく熱伝導性も良いために、切削熱を拡散できます。それゆえ、加工性は非常に優れています。 高速加工や大きな切込みも可能です。

(4)耐食性:ステンレスと同じく大気中で自然に金属表面に酸化被膜を形成し、酸素と水分を遮断するので耐食性に優れます。さらには耐食性を向上させる必要があるときには、表面処理としてアルマイト処理をおこない、人工的に酸化被膜を形成します。

(5)導電率:電気の流れやすさを示す導電率は銀、銅、金についで高い金属です。

(6)熱伝導率:熱伝導率は銀と銅についで高いです。

(7)耐熱温度:アルミニウムの融点は約660℃です。また強さは200℃を超えると急激に下がるので、200℃を最高使用温度に設定します。

(8)光沢と非磁性:光を良く反射するので外観が美しく、磁性をもたないことも大きな特徴です。

3. 銅と銅合金

銅は人類がはじめて手にした金属といわれています。鉄の溶融温度が約1500℃であるのに対して、銅は1000℃とかなり低いです。これが鉄よりも銅を早く手にした、といわれる理由です。日本でも約2000年前から農耕具や武器、貨幣、銅鐸などに使われました。現代では優れた伝導率や熱伝導性を活かして、情報通信や精密機器などの先端産業に使われています。

4. 銅の特徴

銅の特徴も、鉄と比較することでよく理解できます。大きな特徴は導電率と熱伝導率が抜群に良いことです。一方で高価なため、構造部品として使用することはありません。以下、その特徴を挙げてみます。(1)導電率:銅の最大の特徴はこの導電率の高さです。 銀につぐ性質のため、銅線として電気配線に使われています。(2)熱伝導率:熱の伝わりやすさは鉄鋼材料やアルミニウムよりも優れています。 そのため、鍋やフライパンなどの調理器具によく使用されています。 熱伝導率の高さから、熱が素早く均一に伝わるためです。(3)加工性:大昔から使われている理由のひとつが加工のしやすさです。 切削加工や圧延加工に適しています。 まためっきやはんだづけが容易な金属です。(4)耐熱温度:200℃を超えると軟化するため、通常200℃以下で使用します。例外的にベリウム鋼は耐熱性に優れており、600℃までは軟化しません。低温側の劣化はないので、問題なく使えます。(5)耐食性:耐食性に優れており、他の金属は苦手とする海水に対しても良好な耐食性をもっています。ただし硝酸や塩酸、硫酸にはおかされることには注意が必要です。(6)光沢:金以外で唯一黄色の光沢をもつ金属です。加工性がよく光沢があることから工芸品にも使われています。(7)非磁性:非磁性を活かした用途として、磁気厳禁の電気機器の背億定期や化学工業の防爆用工具として使われています。

5. 銅と合金銅の種類

生産量の割合を見ると純銅が50%、黄銅が約40%で合わせて90%を占めています。ここでは、純銅と黄銅についてのみ解説します。(1)純銅純度は99.90%以上で、酸素の含有量によって3種類に分かれます。酸素の多い方から順にタフピッチ銅(CC1100)、りん脱酸銅(C1201、C1220)、無酸素銅(C1020)があります。無酸素銅は酸素が極小で不純物も除去された高純度の銅です。これらの純銅は高い導電率や熱伝導率を活かした銅線や電子機器材料に使用されます。(2)黄銅(真鍮)黄銅は銅と亜鉛の合金で、真鍮(しんちゅう)と呼ばれています。合金の比率によって銅と70%と亜鉛30%の70/30黄銅(C2600)、同じく65%と35%の65/35黄銅(C2680)、60%と40%の60/40黄銅(C2801)があります。銅の比率が下がるにつれて、引張り強さと硬さは増えていきます。一方で、銅の比率が60%未満になるともろさが出てくるため、ラインナップは60%以上になっています。C2600とC2680は伸びが大きいので、冷間加工性が良好で深絞り加工にも使用されます。亜鉛の量が多いほど、銅の比率が少なくなるので、価格も安くなります。

6. その他の非鉄金属材料

チタンとチタン合金、マグネシウムとマグネシウム合金などがあります。 この記事では割愛します。

本記事では、板金加工に使用する材料を俯瞰しました。材料の知識なしに板金加工を行うことはできません。さらに別の記事でより具体的な内容に踏み込んでみたいと思います。次回は、板金加工に欠かせない図面について考えてみたいと思います。次の記事:【板金加工 図面】図面の基礎を徹底解説!書き方・読み方・必要性

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