第1回 板金加工とは

ゼロからわかる!板金加工!

第1回 板金加工とは


Mitsuriのリリースに合わせ、「ゼロからわかる!板金加工!」シリーズを連載します。

板金加工とは何か、という問いに答えることは決して簡単ではありません 

というのも、板金と呼ばれる業界や加工内容はとても広く、また関係する作業はそれぞれ独立し、複雑に絡み合っているからです。

とはいえ、板金を無視することも簡単にはできません

なぜなら、私たちの生活は板金加工によってつくられた製品なしでは成り立たないからです。

身の回りを見渡してみてください

スチールの机、ロッカー、書庫、キャビネット、パソコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、エアコン、テレビ・・・。

これらの製品には、ほとんど板金が使われています。

外に出てみてください

コインロッカー、ATM、自動改札機、自動販売機、自動車・・・。

これらの製品の大部分も板金でできています。

さらに板金製品は、私たちの日常生活のみならず、航空宇宙などの先端産業もまた支えています。

本シリーズは、 板金に関する知識がゼロでも、読み進めていくことで、 板金加工の理解が身につくことを目標にしています。

対象とする読者は、知識ゼロのあなたです

シリーズ第1回目の今回は、 板金加工の基礎的な知識について解説します。

板金加工とは?

板金加工は、一般に金属の板を切ったり、曲げたりすることで製品をつくる加工方法のことをいいます。

ここでは、板金の加工方法にこだわり、以下の定義を採用してみたいと思います。

板金加工とは 、 金属加工の一分野である塑性加工の一領域で、 主として板材を切断、 抜きおよび曲げなどにより、 さまざまな形状(部品・製品)を作り出す加工方法である。 

少し難しい定義ですが、一つずつ紐解いていきます。 

金属加工とは

金属加工とは文字通り、金属を材料として加工する分野のことを指します。 

金属加工で使用する材料には、鉄鋼材料、アルミニウム系材料、銅系材料などがあります。これに対して、非金属加工で使用する材料には、プラスチック材料やセラミック材料などがあります。

材料については、第2回の「板金加工、材料の基礎」で解説します。

塑性加工とは

塑性加工を理解するには、弾性変形塑性変形という概念が欠かせません。 

・弾性変形とは

材料に一定の力を加えると形が変形しますが、加えた力を取り去ると元に戻ることがあります。 これを弾性変形と言います。 

・塑性変形とは

これに対して、材料に一定以上の力を超えると力を取り去っても変形が残ります。このようにして起きた変形を塑性変形と言います。この塑性変形を利用した加工方法を塑性加工と呼びます。板金加工で行う、切断、抜き、曲げは、いずれも塑性加工に当たります。 

金属加工-塑性加工-板金加工

板金加工と他の塑性加工との違い

板金加工以外の塑性加工に、圧延、転造、押し出し・引抜き、鍛造、プレスなどがあります。

板金加工と他の塑性加工との違いはあいまいといわれますが、それぞれの加工の概略を見ておくことはとても有益です。以下、簡単に見てみましょう。


①圧延加工

 回転するロールの間に材料を通すことで、ロールのすき間量まで薄くする加工方法です。圧延加工は平板だけではなく、さまざまな形状の成形も可能です。 この圧延加工によって、板金加工で使用される板材が成形されます。

圧延加工

引用元:モノタロウ

②転造加工

丸い工作物を工具(ダイス)に強い力で押し付けながら回転させることで、工作物の表面をダイスの逆形状に成形する加工方法です。ねじや歯車はこの転造で加工されています。

転造加工

引用元:ユニオンツール株式会社

③押し出し・引き抜き加工 

押し出し加工とは、ほしい断面形状の穴のあいたダイスに材料を通すことで、長尺の製品をつくる加工です。レールやフレームなどはこの加工方法でつくられています。このダイスへの材料の通し方によって「押し出し加工」と「引き抜き加工」が区分されます。

ⅰ. 押し出し加工 は、コンテナと呼ばれる筒状の容器に入れた材料に、力をかけてダイスから押し出すことで、ダイスにあいた穴形状の断面を持った形に成形する加工方法です。

ⅱ. 引き抜き加工は、先の押し出し加工や圧延加工した材料を使用し、材料の先端を細めてダイスの穴に通してから、この先端をつかんで引っ張ることで、ダイスの穴形状に成形する加工方法です。

押し出し、引き抜き加工

引用元:東大阪市技術交流プラザ

④鍛造

鍛造は「鍛え造る」と書くように、ハンマやプレス機で金属に大きな力を加えることで成形すると同時に、金属組織の密度を高める加工方法です。板金加工は、基本的に板厚を変化させませんが、鍛造は厚さを変化させるという点で違いがあります。

⑤プレス

板金加工と他の塑性加工との区別はあいまいである、といいました。学会や業界団体、企業や製品などによって、区分がさまざまなのが実情です。

このような事態に陥っている理由の一つに、全く同じ製品であっても、異なる加工方法によって作ることが可能である、ということが挙げられます。

とりわけ板金加工とプレス加工は重なるところが多く、はっきりと区別するのは困難です。

ただ、本記事では両者の強み、弱みに着目して、区別して考えてみたいと思います。この点については、後述の 「板金加工の特徴」で考察します。

塑性加工

また、加工方法ではなく、製品の完成に焦点を当てて、板金加工と呼ぶ場合もあります。実際の製造現場では、塗装や溶接、組立まで行い、完成品を出荷することがあるためです。

本連載では、塑性加工としての板金加工について解説することに止めます。以下の動画では溶接まで踏み込んでいますが、板金加工の全体像をつかむ上で、有益です。是非視聴してみて下さい。 

金属板でストーリーを組立てる~板金加工~ 

概要

モノづくりの現場で磨きをかけるその道の熟練者を追うドキュメンタリーシリーズ。埼玉県所沢市にある竹下工業では主に事務機器・空調機器・医療機械・配電盤などの筐体ならびにその部品を製作しています。板金加工は、機械化の進んだ分野で、レーザーカットマシンによる金属の板材を切断加工、タレットパンチプレスによる穴あけ加工、ベンディングと呼ばれる曲げ加工を施し、必要な箇所を溶接するというように、今や自動化・管理されています。番組では、熟練技能者の技が求められる溶接工程の技の魅力を紹介します。

 出演者名・所属機関名および協力機関名>

 竹下 力(竹下工業㈱),竹下 祐司(竹下工業㈱),今井 繁(竹下工業㈱),玉井 今朝治(竹下工業㈱),西村 幸弘(竹下工業㈱),高塚 正也(㈱青二プロダクション),竹下工業㈱

 引用元:サイエンスチャンネル

板金加工の中身

ここまで、金属加工における板金加工の位置づけについて確認してきました。ここから先は、板金加工の具体的な中身を見ていきたいと思います。

板金加工は、手加工板金機械板金(工場板金、精密板金)の2つに分類することができます。

板金加工

手加工板金とは 手加工板金は、その名が示す通り、主に人間の手の力を使用する加工方法です。

手加工板金には、自動車板金 打ち出し板金 建築板金があります。 これらの板金で使用する道具を見てみると、板金加工が従来、手加工で行われてきたことがよくわかります。

手加工板金

・手加工板金で使用する道具

手加工板金の道具

引用元:Tech Note「試作車ボディの板金職人、13種類の道具をどう使い分けるのか?」

画像引用元の記事は、自動車板金についてかかれたものですが、とても内容の濃い記事です。一読をお勧めします。

機械板金とは 

手加工板金に対して、機械を使用する板金加工方法を機械板金とよびます。

機械板金は、機械を使用するためには一定以上の敷地、つまり工場が必要であることから工場板金 、また機械によって精密な加工を実現できることから精密板金とも呼ばれます。

機械板金による加工方法

では、機械板金によってどのような加工が実現できるのでしょうか。

機械板金には、切断加工、打ち抜き加工、曲げ加工、成形加工、絞り加工、特殊加工などの加工方法があります。これらの加工方法については、別の記事で詳しく解説します。

機械板金

切断加工にはレーザーマシン、抜き加工にはパンチングプレス、曲げ加工にはベンディングマシン、というように加工方法毎に対応した機械があります。

レーザーマシン  

引用元:海内工業株式会社

・パンチングプレス  

引用元:タカチ電機工業

・ベンディングマシン  

引用元:赤原製作所 

以上、板金加工の具体的な中身について概観しました。

本連載では、主に機械板金を取り上げ、手加工板金は別の連載で取り上げることとします。

板金加工の特徴

先に述べたように、板金加工(機械板金)とプレス加工は重なるところが非常に多いため、はっきりと区別できないとされています。

企業内でも板金加工とプレス加工を区別しないところが増えてきています。しかしながら、ここではあえて板金加工とプレス加工を区別し、その相違について考えてみたいと思います。というのも、両者の相違に着目することで、板金加工の特徴が明確になると考えるからです。以下、見ていきたいと思います。

プレス加工との違い

 一般的に、板金加工とプレス加工の相違は、金型に集約することができます。

板金加工が汎用金型(標準金型)を使用するのに対して、プレス加工は専用金型を使用します。

日本金型協会では、以下のように金型を定義しています。

金型とは、材料の塑性または流動性の性質を利用して、材料を成形加工して得るための、主として金属材料を用いてつくった型を総称します。

例えば、自動車のボディーは金属板をプレス金型によって成形加工することによって出来上がります。

また、電話機など樹脂製品はプラスチック材料を金型に射出成形すること出来上がります。このように、金属、プラスチック、ゴム、ガラス等の素材を、それぞれ目的とする製品の成型加工用に使用されるものが金型で、金型の品質如何が製品の良否を 決定づけるものなのです。したがって、金型は製品の産みの親などといわれています。

引用元:一般社団法人日本金型工業会

 

引用元:一般社団法人日本金型工業会

プレス加工の強みと弱み

プレス加工は、製品および工程ごとに専用の金型を作り、これを使用する点に特徴があります。

これにより複雑で高精度の製品を早く、安く加工することができるのです。

しかしながら、専用の金型を作るため、多量生産に向いており、生産数が少ないとそれに要した費用を償却するのが困難です。

また、製品の形状および寸法などは金型で決まってしまうため、加工者の技量に左右されにくいという特徴があります。

板金加工の強みと弱み

板金加工は、上記プレス加工と逆の特徴を持っています。

汎用金型および工具を使用することが多いため、特定の製品にかかる費用が安く、少量生産に適しています。

しかし、生産性はプレス加工に比べ大幅に低くなるため、大量生産には向いていません。

また、汎用金型を使用して工夫しながら加工するので、加工者の技量が重要な要素になってきます。

金型という観点から見た、板金加工とプレス加工の差異は、以下のように示すことができます。 

板金加工とプレス加工

まとめ 

以上、板金加工の全体像を俯瞰(ふかん)してみました。

板金加工のイメージを、なんとなくでもつかめれたら十分です。

板金加工は、大きく分けて、材料、図面、加工(機械)の3つから構成されています。

 次回は、この中の材料について考えてみたいと思います。


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Mitsuri編集部

Mitsuri編集部

Mitsuriは、お客様に寄り添い、製造プロセスに関わる課題をトータルに解決する「お客様の最適な生産活動を達成するコーディネーター」です。

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