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【板金加工 図面】図面の基礎を徹底解説!書き方・読み方・必要性

この記事を監修した人

染谷 ひとみ

Mitsuri Media管理人

精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。

板金製品の完成には、材料・図面・加工(機械)の3つが欠かせません。今回は、板金加工で使用される図面をテーマに取り上げます。

板金加工における図面の必要性から書き方・読み方まで、図面の基礎を学びます。

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この動画では製品サイズについて触れています。ぜひ設計する際の参考にしてみてください!
3分ほどで視聴可能です!

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板金加工における図面の必要性

Mitsuriの図面例の画像

▲Mitsuriの見積用図面

図面の必要性

(1) 製品の条件を集約的かつ簡潔に整理するため
(2) 製品作りに関わる人をつなぐ意思疎通のため

(1) 製品の条件を集約的かつ簡潔に整理するため

製品は顧客のために作るものであり、顧客のニーズを満たさなければなりません。顧客のニーズには様々なものがあります。

・機能
・形状、大きさ
・個数
・品質(Q)
・価格(C)
・制作期間(D)

(※QCDは製造業において設計・生産時、特に重視されます。)

板金加工はあくまで顧客のニーズ(=条件)を満たす製品を作るためになされます。したがって、製品が持つべき条件を集約的かつ簡潔に整理する必要があり、そのために図面を作ります。製品の条件が複雑になる程、図面の必要性は増します。

(2) 製品作りに関わる人同士の意思疎通のため

製品作りにおいては、設計者と加工者が異なることが多々あります。設計者は図面を通して製品条件を加工者に伝え、 加工者は図面をもとに実際の製品を作り上げます。

大量生産の場合は、もっと多くの人間が製品作りに関わるため、より図面の重要性は増します。このように図面は、製品作りに関わる多くの人をつなぐ役割を担っています。

モノづくりの仕事の流れと図面の関係性

企画(構想):(複数の人が)頭の中で考える段階。
設計:設計用の図面、製作用の図面が作成される。
設計以後:図面を読む。

設計用の図面:部品図と組立図の完成を以って図面の役目は終了し、技術資料として保管されます。
製作用の図面:部品図と組立図が製作用図面として設計後の工程に流れ、適時参照されます。

①製作用の図面作成(部品図と組立図)

設計用の図面を元に、製作用の図面として部品図と組立図が作成されます。

部品図 形状、寸法、材質など
組立図 構成部品同士の位置関係、完成品の外形寸法

②検図作業

設計用図面、製作用図面が完成した各段階で第三者視点による確認作業(検図)がおこなわれます。

設計図の検図 モノの仕様が満足いくものか否か確認
部品図の検図
組立図の検図
寸法もれや記入ミスなど図面作成上の問題が無いかを確認、図面の完成度を高める

③現場での部品加工と組立、調整、検査

加工から納品(販売)までは、図面を読む作業に移ります。

加工段階では、部品図を読みながら部品加工をおこないます。部品が出来上がったら組立、調整段階です。

調整が完了したら、当初の仕様を満たしているか否か、部品図・組立図を見ながら再度検査をおこないます。この検査に合格してはじめて納品・販売段階に移ります。

④加工製品の販売・納品

販売の場面でも、図面は重要な役割を担います。営業社員は顧客から図面で注文や要求を受けることが多くあります。その際に、顧客のニーズの細部まで把握するためには図面を読む必要があります。

社内に持ち帰った後も、図面を基にして技術者と打ち合わせをします。また、図面を使って販売活動をおこなうことで、お客様に製品の理解を深めてもらうことができます。

図面が読めれば、その場で議論を深めたりコストカットの提案ができたり、顧客から信頼を得ることにつながります。営業社員が図面を読めることは大きな強みです。

⑤購買、生産管理

モノづくりを支える購買部門も、図面を読んだ上で材料や部品を発注します。仕入れ価格の交渉時にも、図面を見ながら双方で打ち合わせをおこなうことがあります。

また、生産管理部門でも、対象となるモノを図面で理解しておくことで、作業者や設備稼働状況等を考慮した立案が可能になります。

より具体的なイメージをつかむために参考になる動画がありましたのでご紹介させていただきます。ここまで確認してきたことを体系的に再確認することができます。

▼動画「プラモデルができるまで」

▼動画の概要

身近な製品がどのような技術を使ってつくられていくのかを追い、モノの成り立ちと科学技術の関わりを伝えます。今回のテーマは、「プラモデル」。…実際の設計図が手に入らないスケールモデルの場合、写真や雑誌等で資料を集め、コンピュータCADで行う。

設計のポイントは、一部分を誇張し本物らしく見えるようにすること。実物のサイズをそのまま忠実に縮小すると、逆に曲がってみえたりすることが多い。

設計図をもとに作られた木型で実際の見た目と比べ、金型を製作する。金型は大量に生産されるプラモデルにとって最も重要な部品。…プラスチック材料を熱で溶かし、金型に流し込むと、プラモデル部品が出来上がる。

引用元:サイエンスチャンネル、株式会社ハセガワ

「プラモデルができるまで」では、設計をCADで行っています。

CADはcomputer-aided designの略称で、コンピュータによる設計支援ツールのことです。CADにはさまざまな種類があり、現在では3DCADなどもあります。CADについては別記事で詳しく解説します。

図面の書き方、備えるべき条件・ルール面

図面を描くにあたっては、共通のルールを守ります。描き手によって異なったルールで描いてしまっては、図面本来の役割を果たせません。図面は一定のルールに従って描かなければなりません。そのルールさえ知っていれば、誰もが同じように図面を読めます。

図面の書き方条件

①図面を見るだけで加工情報すべてが把握でき、狙い通りのモノが加工できること
②誰が見ても、まったく同じ理解ができること

図面の書き方条件① 図面を見るだけで加工情報すべてが把握でき、狙い通りのモノが加工できること

実際の加工現場において、図面の情報だけでは加工できず、設計者に逐一聞かなければならないとしたら、とても手間と時間がかかります。加工するのに必要なすべての加工情報が図面から把握できなければなりません。

図面の書き方条件② 誰が見ても、まったく同じ理解ができること

図面の読み手によって理解が異なるような書き方はいけません。例えば、加工者と検査者で理解が変わってしまうと、検査の合否の基準があいまいになってしまいます。

図面の条件を統一するJIS規格

上記条件①と②を満たすために参考になるのが、JIS規格(Japanese Industrial Standards)です。日本工業標準調査会が、工場標準化やJIS規格についてこのように記載しています。

▼工業標準化について

標準化(Standardization)とは、「自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化すること」ということ ができます。また、標準(=規格:Standards)は、標準化によって制定される「取決め」と定義できます。

標準には、強制的なものと任意のものがありますが、一般的には任意のものを「標準(=規格)」と呼んでいます。 工業標準化の意義は、具体的には、自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化してしまう「もの」や「事柄」について、経済・社会活動の利便性の確保(互換性の確保等)、生産の効率化(品種削減を通じての量産化等)、公正性を確保(消費者の利益の確保、取引の単純化等)、技術進歩の促進(新しい知識の創造や新技術の開発・普及の支援等)、安全や健康の保持、環境の保全等のそれぞれの観点から、技術文書として国レベルの「規格」を制定し、これを全国的に「統一」又は「単純化」することであると言えます。

引用元:日本工業標準調査会

▼JIS(Japanese Industrial Standards)について

JIS(日本工業規格)とは、我が国の工業標準化の促進を目的とする工業標準化法(昭和24年)に基づき制定される国家規格です。 …JISは、工業標準化法に基づく手続きを経て、制定又は改正されます。

また、法律に基づき、制定又は改正から5年以内に見直しが行われ、当該規格をそのまま存続(確認)、改正又は廃止がされます。

引用元:日本工業標準調査会

JIS規格の中で定められた図面のルール

これから学ぶ図面のルールは、前述の2つの条件を満たすJIS規格に基づいています。JIS規格に基づいたルールを使用すれば、図面を描くたび、読むたびごとに方法を考える必要がなくなります。

さらに、JIS規格に基づいていれば互換性を確保することもできます。

例えば「ねじ」は、JIS規格にしたがって製作されています。 ねじは全国どこで買っても、またどのメーカーが作ったものでも同じものが手に入ります。これは、ねじ製造メーカーがJIS規格に基づいて作っているからです。

✔ 図面の基本的な考え方は「簡潔さ」

図面は他の人たちに情報を伝える手段であり、「簡潔さ」が基本的な考え方になっています。ひとつの表示で理解できる場合には、ひとつの表示で済まさなければなりません。簡潔でシンプルな図面ほど良い図面であり、逆に同じ情報が何度も記載されている図面は良い図面とは言えません。

図面情報の読み方

図面は、以下の3点から構成されています。

・モノを構成する部品ごとの情報が描かれたもの

・各部品同士をどのような位置関係で組み立てるのか、また完成時の外形寸法の情報が描かれたもの

・必要な部品名がすべて網羅され、それぞれの必要個数が記載された一覧表(*1)

(*1)部品は「部品図により加工される加工部品」と「購入品」にわかれます。購入品は、部品図が必要ないかわりに品番とメーカー名が記載されます。

(1)部品の情報は1枚の部品図に集約

1つの部品は1枚の図面に書かれることが原則です。1枚の図面に複数の部品を描くことはしません。その理由は以下の3つです。

図面サイズが大きくなってしまい、取り扱いにくいから
図面にいくつもの部品が描かれていると、加工する際に見間違える恐れがあるから
図面の流用(*2)ができないから

(*2)図面の流用について

既に製作したことがある製品と類似したモノを制作するときに、すべての部品を新たに設計するのではなく、一部は従来と同じ部品を使う場合があります。部品が1枚ずつ書かれていれば、従来と同じ部品はすでに書かれた図面をそのまま使うことが可能です。これを図面の流用といいます。

もし、1枚に複数の部品が書かれていると、すべての部品を1から書かなければなりません。これはとても効率が悪いので、実務ではしばしば図面の流用がなされます。

(2)組立図は部品の位置関係を示す

組立図とは、部品図で描かれた部品や、部品リストで手配する購入品がどのような位置関係で組み立てられるのかを示したものです。

部品の固定に使用するねじの種類も、組立図に記載されます。 組立図には使用するすべての情報が示されますが、部品個々の細かい寸法までは書かれません。情報量が多くなると読みにくくなり「簡潔さ」を損なうからです。

(3)寸法数値の単位

長さ寸法の単位はミリメートル

図面に記載される情報の中で最も重要なものは寸法であり、寸法によってモノの大きさを知ることができます。図面の寸法の単位には「ミリメートル(mm)」を用います。

図面には寸法数値のみが書かれており、単位記号のmmは省略されることが多いです。

(4)角度寸法の単位

角度寸法の単位は度(°)

円の一周を360度とする測り方です。さらに細かい角度が必要なときは、「分(’0)」「秒(”)」が併用されます。

・1分:1度の1/60
・1秒:1分の1/60

長さ寸法と異なり、一般的に角度の単位記号は省略しません。

(5)種々の記号

図面の描き手が書きやすく、読み手が読みやすくするために、寸法補助記号を使用します。以下で示すものはよく使われる記号です。

▼寸法補助記号の一覧

記号(読み方) 内容
R(アール) 半径を示す
φ(ファイ、マル) 直径を示す
t(ティー) 板の厚さを示す
□(カク) 正方形の辺を示す
C(シー) 45°の面取りを示す

▼線種の一覧

名称 線の種類 内容
外形線 実線 見える部分の形状を示す
寸法線 細線(実線の半分) 寸法を記入する
寸法補助線 寸法を記入するために図形から引き出す
引出線 記述や記号を示すために引き出す
かくれ線 破線 見えない部分の形状を表す
中心線 一点鎖線 図形の中心を表す
破断線 不規則なジグザグ線 モノの一部を破った境界や一部を取り去った境界を表す
切断線 一点鎖線&方向が変わる箇所が太い線 断面図を書く場合に断面位置を表す

(6)第三角法(三面図)

モノの形は一般的に、第三角法(三面図)で表します。第三角法は、一つのモノの三つの面を図面に描き込む方法です。三つの面を書き込む理由は、図面の本質である「簡潔さ」にあります。図面はとにかく簡潔にします。簡潔であることによって、読み手の負担が減ります。

したがって、三面で伝えられればそれ以上の面を使用する意味はありません。また三面以上、例えば六面で書くと図面のサイズが大きくなってしまい、図面の取り扱いが不便です。

おおよそのモノは、正面、側面、上面からの3方向から見た3つの図で理解できます。もちろん、もし一面だけで形状を表すことができるなら、その一面の表示の方がより簡潔で望ましいです。実際に、丸棒形状や板形状は正面図の一面のみで表される場合がよくあります。

また、線が複雑に重なり合って形状が分かりにくい場合は、アイソメトリック図が使用されることもあります。

アイソメ図

引用元:株式会社XrossVate

表題欄のルール

表題欄は図面の基本的な情報が載っており、読み手が最初に目を通す部分です。 図面の書き手(設計者)が読み手に情報を伝える際、モノの形を第三角法で表すのが一般的です。

寸法等の情報も図に書き加えます。さらに使用する材料や表面処理、熱処理などの技術情報、図面作成日、設計者名、承認者名、図面を管理するための図面番号などの情報も必要です。

こうした 一般的な情報は、図面の右下に設けた表題欄というスペースを使って表されます。表題欄で表す項目や欄の配置といった記載方法に関するJIS規格はありません。自由に設定(*3)することが認められています。

(*3)自由といっても、個人ごとにオリジナルでこの表題欄を作ると効率が悪く、図面も読みにくくなります。企業ごとに表題欄をルール化しているのが実情です。

金属加工図面の表題欄例

赤枠部分が図面の表題欄

公差と図面

公差は、図面と実物の関係を考える上で重要な考え方です。

設計者は指示した寸法数値に対して、機能を満たす上で許される最大のずれの範囲も同時に指示します。指定した寸法に対して、上限・下限ともにどこまでのずれが許されるのか指示します。

上限の値を最大許容寸法、下限の値を最小許容寸法と呼びます。

加工したあとの寸法は、この最小許容寸法から最大許容寸法までの間に入っていれば合格です。最大許容寸法と最小許容寸法との差を寸法公差(もしくは公差)と呼びます。

寸法には必ず公差が同時に指示されます。

公差とコスト

設計者が図面を描くときに、気を付けなければならないのは大きく分けて以下の2点です。

① 機能を満たすこと
② 部品のコストを下げること。

部品のコストとは、材料費 、加工者の労務費 、加工に使った加工機費用(設備償却費)、表面処理・熱処理費用などの合計に関係します。

この中でも特に、加工者の労務費と設備償却費は大きな割合を占めており、寸法公差はこれに大きく影響します。

▼公差とコストの関係

公差がゆるい場合 比較的安価な設備で早く加工できるため、コストは安くなる
公差が厳しい場合 高価な高精度設備を使い、時間をかけて加工するため、コストは高くなる

以上の理由から、設計者には指示する寸法ひとつずつに最も適した公差を指示することが求められます。

公差の分類と普通公差

公差の示し方には以下の3つがあります。

寸法公差 数値で表示する
はめあい公差 記号で表示する
幾何公差 面や線が対象となる

設計者はすべての寸法に公差に示さねばなりません。

しかしながら、現実にすべての寸法に公差を書き入れることは、設計者にとって大きな負担です。また、図面も複雑で見にくくなります。

そこで用いられるのが、普通公差(一般公差)です。普通公差とは個々の公差記入を省略して一括で指示する考え方です。ここにも図面の本質である 「簡潔さ」が表れています。

普通公差の設定

設計者が公差に関するルール(普通公差)を決める
設計者が「普通公差に基づいて読んでください」と図面内で宣言する
例外がある場合、図面内に個々の公差を示す

普通公差という考え方をとれば、すべての寸法に公差を書く必要がなくなります。その結果、設計作業が楽になり、また読み手にも優しい図面となります。

普通公差の決め方

普通公差はJIS規格で決められています。公差のレベルごとに「精級」「中級」「粗級」「極粗級」の4つの等級があり、設計者が適した等級を選択します。

普通公差は、図面内であればどこでも自由に記入してよいですが、上で述べた表題欄の側に書き入れるのが一般的です。

▼普通公差一覧(極粗級は除く)

精度目安 0.5-3.0 3.0-6.0 6.0-30 30-120
精級(f) ±0.05 ±0.05 ±0.1 ±0.15
中級(m) ±0.1 ±0.1 ±0.2 ±0.3
粗級(c) ±0.2 ±0.3 ±0.5 ±0.8

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