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【ウエハー(ウェーハ)】種類・製造工程・サイズを徹底解説

2025-01-13

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この記事を監修した人

金属加工業界最大級のマッチングプラットフォーム「Mitsuri」を手掛ける企業。
「未来の製造業をつくる」をモットーに、製造業DXを推進している。

ウエハーは、CPUやメモリ、ICチップ、太陽電池などの材料です。

半導体製品に必要不可欠な材料であり、パソコンやスマートフォン、自動車、家電などに用いられています。さらに、様々なモノがインターネットに繋がるIoTの時代を迎える今、あらゆる電子機器に使用されるようになると言っても過言ではありません。

しかし、ウエハーそのものを日常生活の中で目にすることは少なく、名称しか知らないという方も居られるのではないでしょうか。

そこで、今回の記事では、この重要性を増しているウエハーについてご紹介するとともに、その種類や製造方法、サイズ、規格についても解説していきます。

半導体の基板!ウエハー (ウェーハ)とは?

ウエハーとは、半導体基板や半導体素子の材料となる、半導体の結晶が素材の円盤状の薄い板のことです。素材となる半導体には、シリコン(ケイ素)やゲルマニウム、ガリウムヒ素などがあります。その中でも、シリコンが最も多く用いられており、シリコンが素材のウエハーは、特に「シリコンウエハー」と呼ばれます。

ウエハーのサイズは、製品によって様々ですが、直径が50 mm~300 mm(2 inch〜12 inch)、厚みが0.2 mm~1.0 mm程度です。ただし、シリコンウエハーについては直径と厚みを定めた規格があり、詳しくは後述しますが、直径50 mmのウエハーは厚み0.28 mmなどと定められています。

半導体製品は、ウエハーに様々な加工を施すことで製造されます。例えば、半導体チップの回路パターンは、ウエハー上への成膜、露光や現像、エッチングなどの加工を繰り返し施すことで形成します。そして、一枚のウエハーには通常、下図のように多数の半導体チップが規則正しく並んだ状態で形成されていますので、これを境界に沿って切り出していけばダイと呼ばれる半導体チップの単体が得られます。

引用元:ニュース・トピックス「「半導体/微細加工」講演会・見学会(大学生・院生対象)の開催(2008/03/05)」一般社団法人 電子情報技術産業協会

ウエハーは、その平坦性や清浄度、結晶内の不純物濃度などによって、製品となったときの性能が大きく左右されます。そのため、ウエハーの製造には、高度な設備と技術が必要です。

ウエハー(ウェーハ)の種類と原料

ウエハーの原料としては、シリコンが代表的ですが、ガリウムヒ素などの化合物半導体やサファイアが用いられることがあります。ここでは、ウエハーの原料による違いや特徴について説明します。

シリコンウエハー

シリコンウエハーは、半導体材料の代名詞であるシリコン(ケイ素)が原料のウエハーです。そのシェアは、全半導体基板の90%を占めます。シリコンが最も多くウエハーに用いられているのは、以下のような利点があるからです。

・資源が豊富で、その資源量は酸素に次ぐ第2位。

・モース硬度が7と比較的高いために硬くて丈夫。

・高純度化を行い易い。

・大きな結晶を安価に作れる。

・加熱時に表面へ形成されるシリコン酸化膜の絶縁性能が高く欠陥も少ないため、高集積化を行い易い。

サファイアウエハー

サファイアウエハーは、宝石として知られている酸化アルミニウム(アルミナ)の結晶体が原料のウエハーです。不純物を人工的に低減して成長させた高純度な単結晶サファイアから製造されます。

単結晶サファイアは、シリコンに比べて、モース硬度が9と硬く機械的強度に優れる上、融点が2053℃と高く熱膨張率も低いことから、高温安定性が良好です。また、光学的・化学的・電気的にも優れた特性を持つため、サファイアウエハーは熱や高温に対する耐久性が求められるLED用基板に多く用いられています。そのほか、誘電特性にも優れることから、一部の高周波測定機やミリ波レーダーなどの基板にも使用されています。

なお、単結晶サファイアは絶縁体なので、半導体であるシリコンウエハーのように、サファイアウエハーそのものが半導体基板や半導体素子の材料となるわけではありません。サファイアウエハーの多くは、基板となる結晶上に新しく単結晶の薄膜を成長させる「エピタキシャル成長」のための基板として使用されています。例えば、赤色発光ダイオード(LED)は、サファイアウエハーの上に化合物半導体であるアルミニウムガリウムヒ素を結晶成長させることで作られます。

化合物半導体ウエハー

化合物半導体ウエハーは、ガリウムヒ素やガリウムリン 、窒化ガリウムなどの化合物半導体(複数の元素から成る半導体)が原料のウエハーです。

化合物半導体は、シリコンなどの単一半導体と比較して、以下のようなデメリットがあります。

・高価

・複数元素から構成されるために結晶を欠陥なく成長させることが難しい

・結晶の大型化が難しい

一方で、以下のようなメリットがあります。

・動作が高速

・耐熱性が高い

・低消費電力

・発光する

化合物半導体ウエハーは、これらの特性が活かせるLEDやレーザーダイオード(LD)、太陽電池、高周波デバイス、パワー半導体などといった特定の用途に主に用いられています。

ウエハー (ウェーハ)の製造工程・製造方法

ウエハーの製造工程は、種類によって大きな違いがあるわけではありません。ここでは、最も代表的なシリコンウエハーの製造工程について説明します。

シリコンインゴットの作成

引用元:デジタルミュージアム「シリコンからウェハまで」東京大学総合研究博物館データベース

多結晶シリコンから上図のような単結晶シリコンのインゴットを作成する工程です。

ウエハーの素材となる多結晶シリコンは、珪石を精錬した純度98%程度の金属ケイ素をイレブンナイン(99.999999999%)と呼ばれる純度まで高純度化したものです。ウエハーメーカーは、この高純度多結晶シリコンを多結晶シリコンメーカーから調達して単結晶シリコンインゴットを作成します。

単結晶シリコンインゴットの製造には、以下で説明する「CZ法(チョクラルスキー法)」が主に採用されています。

●CZ法の概略

1.砕いた多結晶シリコンを石英ルツボに詰め、そのルツボを炉で1420℃程度まで加熱して、多結晶シリコンを溶解させます。このとき、製造するウエハーが、P型半導体の材料であるならホウ酸(B)、N型半導体の材料であるならリン(P)やアンチモン(Sb)を微量ルツボに加えます。

2.溶解したシリコンの液面にワイヤーで吊るされた種結晶を浸け、回転させながらゆっくりと引き上げると、液面からわずかに冷やされたシリコンが種結晶の原子配列を引き継いで成長していきます。このときの溶解シリコンの温度や引き上げ速度によって、シリコンインゴットの直径が変化します。

3.インゴットが所定の長さになったら、速やかに引き上げます。すると、種結晶と同じ原子配列の単結晶シリコンインゴットが得られます。

CZ法のほか、静磁場を掛けて炉内の溶解シリコンの対流を抑制することでシリコンインゴットに取り込まれる酸素量を減少させる「MCZ法(Magnetic CZ法)」、多結晶シリコンインゴットを部分的かつ徐々に溶融して単結晶化を行うことで不純物を分離しながら単結晶シリコンインゴットを得る「FZ法(フローティングゾーン法)」などがあります。

スライシング

スライシングは、棒状に作成したシリコンインゴットをスライスマシン(単数切断)やワイヤーソー(複数切断)などによって円盤状のウエハーに切り出す工程です。この工程で、ウエハーの結晶方位や厚さが決まりますが、この時点では、切断面は粗く厚さにもバラつきがあります。

ベベリング

ベベリングは、スライシング工程で作成したウエハーの外縁部をダイヤモンドホイール(回転させて用いるダイヤモンド砥石)によって、所定の直径・形状となるように研削する工程です。この工程では、ウエハー外縁部の「加工歪層」が除去されるほか、シリコンインゴットに対して角度を付けて切り出したウエハーについても正円に整えられます。なお、加工歪層とは、加工によってウエハー表面に発生する非晶質層や多結晶質層、モザイク構造層などに伴って生じる転位や積層欠陥のことです。

また、ウエハーの結晶方位を示すためのオリエンテーション・フラット(オリフラ)(下図左図)やノッチ(下図右図)もこの工程で付けられます。

研磨(ラッピング)

ラッピングは、ウエハー両面の平行を維持しながら、所定の厚さになるように表面を粗く研磨する工程です。この工程で、スライシング工程で生じたウエハー表面の加工歪層が削り取られるとともに、厚みのバラつきやキズ、歪みなどが修正されます。

エッチング

エッチングは、薬品洗浄などの化学的方法によって、前工程までにウエハー表面へ付着した金属不純物や研磨剤、ゴミなどを洗い流すとともに、ラッピング工程では取り切れなかった微細な加工歪層を除去する工程です。この工程で、ウエハー表面は滑らかになります。

熱処理(アニーリング)

アニーリングは、ウエハーを不活性ガス中で低温熱処理することによって、「酸化ドナー」を消滅させたり、結晶欠陥を低減させたりして抵抗値の安定化を図る工程です。なお、酸化ドナーとは、シリコンインゴットの作成時に取り込まれた酸素が集合したものです。半導体内で電子を放出するドナーとなって、制御下にある電子の通過を阻害して抵抗値を上昇させます。

ポリッシング

ポリッシングは、「化学的機械的研磨(CMP)装置」を用いて磨き上げることで、ウエハー表面を平坦性の高い鏡面に仕上げる工程です。CMP装置は、砥粒による機械的な除去作用と研磨液による化学的な溶去作用を同時に実行する研磨装置です。研磨液には、粒径100 nm以下のコロイド状シリカ粒子を高濃度で含むコロイダルシリカ液と呼ばれる水溶媒コロイド溶液が用いられます。

ウェーハエッジ研磨

ウェーハエッジ研磨は、ダイヤモンド砥石による研削加工や研磨フィルムなどによる研磨加工によって、ウエハーの外縁部を整える工程です。ウエハーは、0.5 mm〜1.0 mm程度と極めて薄いため、ウエハーの外縁部には、欠けやひび割れが生じたり、ナイフエッジと呼ばれる破損しやすい鋭利な形状が形成されたりすることがあります。この工程では、このようなウエハーの破損を、外縁部の形状を整えたりエッジの面取りやR加工を行ったりすることで、事前に防止します。

洗浄・乾燥

洗浄・乾燥は、これまでの工程でウエハーに付着した汚れを洗浄し、乾燥させる工程です。

メーカーによりますが、洗浄工程では、過酸化水素と水酸化アンモニウムのアルカリ性混合水溶液で有機物汚染を除去し、塩酸と過酸化水素の酸性混合水溶液で付着した金属やイオン化した金属を除去します。

乾燥工程では、ゴミや汚れ、乾燥痕などを残さないよう、周囲の空気を温めて水分を蒸発させたり、空気や窒素ガスを吹き付けて水分を飛ばしたり、真空にして蒸発速度を高めたりするなど、多様な方法でウエハーの乾燥が行われます。

品質・特性検査

品質・特性検査は、完成したウエハーの厚さや平坦度、表面のゴミや汚れ、キズなどを目視検査や検査機器によって検査するとともに、結晶方位や抵抗率などといった特性も検査する工程です。検査はクリーンルーム内で行われ、0.1 μmレベルのゴミや欠陥などもチェックします。

ウエハー (ウェーハ)のサイズと規格

ウエハーの直径は、年々、大型化しています。また、多様なサイズのウエハーが開発されるようになったことから、シリコンウエハーに限っては寸法が規格化されています。ここでは、ウエハー大口径化の歴史とシリコンウエハーのサイズの規格について説明します。

ウエハー大口径化の歴史

シリコンウエハーは、大口径化が進んでいます。

それは、一枚のウエハーから取れるチップの数が多くなるほど、チップ1個当たりのコストが抑制できるからです。実際にチップの取れ数を比べてみると、4×4 mmのチップであれば、200 mm径ウエハーなら1860個のチップが取れますが、300 mm径ウエハーなら4260個と2.3倍ものチップが取れます。

しかし、大口径であるほど、ウエハーの生産やウエハーのチップへの加工が技術的に難しくなります。また、新たなサイズのウエハーを扱うとなると、設備投資も必要です。

このような大口径化に伴う障害はあるものの、1980年代には150 mm、1990年代には200 mm、2000年代には300 mmと大口径化が進行しています。

ウエハーの450mm化

さらに数年前には、450 mm径ウエハーを材料にした半導体製品の製造を模索する動きがあったものの、現在は沈静化しています。450 mm径ウエハーを提供しているウエハーメーカーはあるものの、450 mm用の半導体製造装置の開発が技術的に難しく、半導体製品の量産化ラインの設備投資コストも膨らむことから、450 mm径ウエハーは普及に至っていません。そのため、当面は、300 mm径ウエハーが主流品として継続していく見込みです。

ウエハーの規格

直径 inch 2 3 4 5 6 8 12
mm JEITA 50 ±0.5 76 ±0.5 100 ±0.2 125 ±0.2 150 ±0.2 200 ±0.5 300 ±0.2
SEMI 50.8 ±0.38 76.2 ±0.63 100 ±0.5 125 ±0.5 150 ±0.2 200 ±0.2 300 ±0.2
厚み μm JEITA 280 ±10 380 ±15 525 ±15 625 ±15 625 ±15 725 ±25 775 ±25
SEMI 279 ±25 381 ±25 520 ±20 625 ±20 675 ±20 725 ±20 775 ±20
オリフラ mm JEITA 17.5 ±2.5 22.0 ±2.5 32.5 ±2.5 42.5 ±2.5 47.5 ±2.5 57.5 ±2.5 60.0 ±2.5
SEMI 15.88 ±1.65 22.22 ±3.17 32.5 ±2.5 42.5 ±2.5 57.5 ±2.5 57.5 ±2.5 -
TTV μm JEITA 15 25 10 10 10 10 10
SEMI 12 25 10 10 10 10 10

参照元:「ウエハー規格表(JEITA vs SEMI)」キャノシス株式会社

シリコンウエハーの規格は、上表の通りです。なお、「オリフラ」はオリエンテーション・フラット、「TTV(Total Thickness Variation)」は厚みムラの最大値と最小値との差のことです。

上表には、JEITA規格とSEMI規格の両方が載せてありますが、JEITA規格は2016年に廃止されており、現在はJEITA規格がSEMI規格化するようになっています。ただし、現在でも、JEITA規格が使われることがありますので、併せて記載しています。

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