チタンは丈夫で加工のしやすい金属として、長い間各産業で大活躍している素材です。その使用用途はとても広く、いつも私たちが使っているような自動車や自動二輪車のエンジン部分にも使われています。
丈夫で加工しやすいという特性があるため、頑丈かつ精密さが求められる宇宙産業でも大活躍中です。
今でこそポピュラーな加工金属となったチタンですが、それ故にその種類や特性も様々で、特性を鑑みずに適当に発注してしまうと、依頼先に断られたりしてしまうこともしばしば。
そうならないよう、この記事ではチタン合金と種類や特徴について、詳しくご紹介していきます。
チタン合金とは、その名の通り、チタンを主成分とした合金のことです。チタンの持つ長所をさらに伸ばしたり、逆に短所を補うため、他の金属と混ぜ合わせて作成します。
混ぜ合わせる他の金属の例として、アルミニウム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、クローム、ニオブがあげられます。
チタンの特性には「軽い・強い・錆びにくい」という3大要素があります。チタン合金には後述する様々な型があり、その特徴も様々ですが、この3大要素は絶対です。
軽量という点に関して、比重(水を1とした時の物質の相対的重さのこと)の観点から比べてみましょう。
普通鋼が7.9、銅が8.9という重さなのに対し、チタンは4.5。アルミニウムの2.7には劣りますが、普通鋼や銅では加工しにくい形状でもチタンなら可能で、アルミニウムでは脆弱性が目立つという部分でもチタンなら対応できるというわけです。
次に強いという点。
チタンより重い普通鋼や銅よりも強度が高いです。その強度はアルミニウムの3倍、鉄の2倍と言われています。
錆びにくいという点について、特に耐塩性についてみていきましょう。
ステンレス鋼や普通鋼は海水など、塩分濃度が高い水に触れてしまうとすぐに錆びついてしまいます。
しかし、チタンはプラチナに匹敵する耐塩性を持ち、加工業で使用される他のどの主要金属素材よりも優れているのです。
チタンの3大特性軽い:比重4.5強い:アルミニウムの3倍、鉄の2倍錆びにくい:主要金属素材の中で耐塩性No.1
3大要素の他にも、優れた点があります。
その一つは「人体に対して無害」であるという特性も。人体に入れても溶けにくく、人工骨の作成にも使われています。
不燃性もチタンを語る上では離せません。
国土交通省から正式に不燃材料であると認定されており、火事にも非常に強い素材です。
さて、チタン合金についての基本的な特性を学習したところで、チタン合金の種類について紹介しましょう。
純粋なチタンの金属組織は常温上、六方最密充填構造と呼ばれる構造で成り立っています。この通常の相を「α相」と呼びます。図式で表すと、正六角柱の結晶構造です。
この結晶構造は885度という高温で変態。立方体の体心立方格子構造になります。これを「β相」と呼びます。この段階で他の元素をチタンと組み合わせ、合金にすることによって、常温でもチタン合金中にβ相が存在できるようになります。
α相単体だけか、β相単体か、α相とβ相が混在しているかで、①α型合金 ②β型合金 ③α+β型合金に分けられます。ただし、さらに細分化すると、「nearα型合金」や「nearβ型合金」に分けられますが、今回は3つの基本的な種類について紹介します。
アルミニウムを添加した際にできる合金で、室温強度の上昇がみられます。アルミニウムはチタンに添加した際、α相の領域を拡大させるという特性を持ちます。
高温に対する強度が大きく、クリープ特性にも優れているのに加え、逆に極低温化での破壊強度は他のどの型よりも強靭です。
低温下から高温下まで、安定した強度を持つ一方で、加工性が悪いということが欠点です。この加工性の悪さについても他のどの型よりも劣っています。
常温で100%のβ相を持つチタン合金ですが、チタン合金中最高強度で、尚且つ冷間での延性はα型よりも優れています。
高強度なのに関わらず、加工性に優れている点を鑑み、様々な用途での使用が可能です。
しかし、一方で熱処理によってβ相を作っているため、高温には弱く、その強度を維持することができません。ヤング率が低いことも欠点の一つです。
その名の通り、常温下でα相もβ相も併せ持っている合金です。バランスよくα型合金とβ型合金の特性を持っており、製造上における調整がしやすく、それ故に扱いやすいチタン合金です。
強度・延性・靱性はそれぞれ良好で、耐熱性にも優れます。
「チタン合金は固い」というイメージがあるかもしれませんが、実は、それほど固い金属ではありません。チタンは、密度当たりの「強度」が高い金属なのです。
つまり、チタンは、引張強度を密度で割った値である比強度が高い金属であり、硬度の高い金属ではありません。「比強度」と「硬度」は違うものです。
しかし、ある硬度までは、強度と硬度の間に比例関係が成り立つため、強度の高いものほど硬度も高くなっています。硬度がおよそHB500(ブリネル硬さ)ほどを超えてくると比例関係が崩れ、硬度が高くなればなるほど強度は弱くなっていくのです。
金属材料の硬度の尺度は種類がいろいろあります。金属硬度は、主にHRC(ロックウェル硬さ)・HV(ビッカース硬さ)・HB(ブリネル硬さ)・HS(ショア硬さ)などで表されます。
今回は、比強度と比べるための硬度に、HV(ビッカース硬さ)の単位を例として使うことにします。尚、上述したブリネル硬さとビッカース硬さはほぼ同じ数値として見ることができるので、後述するチタン合金の硬度がHB500を超えない値であることも分かります。
ビッカース硬度とは、固さを表す尺度の一つで、HVという単位で表します。これは、試験材料にピラミッド型(四角錘)のダイヤモンドを押し込み、窪んでできた正方形の圧痕の面積を数値化したものです。
簡単に言うと、圧痕の正方形の面積が大きければ柔らかく、小さければ硬いということになります。
純チタンにはJIS1種・JIS2種・JIS3種・JIS4種などがあり、数字が大きくなるほど硬度が増し、チタンの純度は低くなります。
このような純チタンから主なチタン合金に加え、工業的に使用頻度の高い鉄鋼やステンレス・アルミ・マグネシウム合金の機械的性質の中でも、特筆すべきビッカース硬さと比強度について、一般社団法人日本チタン協会と株式会社西村金属のサイトから数値を転記し表を作成しました。
それぞれの金属とチタン合金との強度や硬度の違いを比較してみてください。
参考1:https://nsmr.jp/blog/kokoro/posts/38
参考2:http://www.titan-japan.com/technology/physical_properties.html
比強度を比較すると、α合金(Ti-5Al-1 Mo-1V)が180·/に対し、アルミニウム合金t1(A7075-T6)は193·/以下で、ほとんど大差がありません。しかし、硬度を表すビッカース硬さでは、α合金が310HVに対しアルミニウム合金は160HVしかなく、αチタン合金の方がアルミニウム合金の約2倍の硬度があることがわかります。これらのことがチタン合金が軽さと強度を兼ね備えた良い材料であることを示しているとも言えます。
前述の通り、チタン合金は軽くて丈夫で加工しやすいという基本的特性があるので、様々な製造場面で活躍してきました。
最もそれが顕著なのが航空産業です。
基本的に航空機は軽くて丈夫な素材が使われると航続距離や速度が向上します。チタン合金は航空機の発展と一緒に開発されてきたと言われるほどです。
軍用機であるF-15戦闘機では機体の25%、F-22戦闘機では40%がチタン合金製です。民間機では軍用機ほどチタン合金の使用拡大は進んでいませんが、それでもターボファンエンジンのファンや圧縮機で使われています。
無害で生体適合性があるということも先ほど紹介しましたが、整形外科用の材料にも利用されています。ただの金属を体に埋め込んでしまうと、有害物質になってしまい、非常に危険ですが、チタン合金の場合はその心配がありません。
また、耐塩性も強いため、最近では船舶の分野で利用拡大が進んでいます。 特に潜水艦分野では既に利用されています。耐塩性の高さに加え、深海の水圧にも負けない強靭度が注目されたのです。
深海潜水調査亭のしんかい6500や旧ソ連の軍用潜水艦はチタン合金に使用が見られます。
1950年代、軍用のため使われ始め、未だに超有能金属素材として使われ続けているチタン合金。その可能性はまだまだ無限大に広がりそうです。
また、地球上に埋蔵している量も多く、まだまだ第一線で活躍してくれることでしょう。
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