2025-01-15
更新
本シリーズは、板金に関する知識がゼロでも、読み進めていくことで、板金加工の理解が身につくことを目標にしています。
対象とする読者は、知識ゼロのあなたです。
板金製品の完成には、材料、図面、加工(機械)の3つが欠かせません。 シリーズ第2回目の今回は、板金加工で使用される材料について解説します。
第1回で確認したように、板金加工は、金属の板材を加工するところから始まります。
・では、板材はどのように作られるのでしょうか。
・また、板材にはどのような種類・特徴があるのでしょうか。
この二点に焦点を絞り、以下、順を追って見ていきたいと思います。
・製鉄
鉄は酸素と結びつき、安定した状態で鉄鉱石や砂鉄といった形で存在しています。そのため、鉄を取り出すためには、酸素を引き離すことが必要です。 この工程を「製鉄」といい、高さ100メートル以上もある高炉という設備を使います。炉の上から鉄鉱石と共に石炭を蒸し焼きにしたコークスを投入し、下から高圧の熱風を吹き込むことでコークスが燃えだします。この熱によって鉄鉱石を溶かします。
・銑鉄
この時に、鉄は結びついていた酸素を手放し、炉の底にたまります。 これを「銑鉄」と呼びます。 この銑鉄には炭素や不純物が多く含まれています。
・鋼
この銑鉄をドロドロに溶けた状態のまま転炉という設備に移し、そこで酸素を吹きつけることで炭素量を適正量にコントロールし、不純物を除去します。このようにしてできた鉄を「鋼」(こう)といいます。
・製鋼
この鋼を溶けたまま連続鋳造設備に流し込み、さらに不純物を除去しつつ冷却していくことで、大きな塊にします。 このように不純物を取り除き、溶けた鉄を鋼片にする工程を「製鋼」といいます。
引用元:中部鋼鈑株式会社
製鉄工程と製鋼工程を通して鉄鉱石から鉄を取り出し、鋼にするところまで見ました。
この鋼の塊は厚みが25cm近くあるので、このままでは用途が限られてしまいます。そこで、この鋼の塊から板や棒といった形状をつくります。
これが圧延加工の工程になります。
一旦冷えた鋼片を再度1000℃以上に熱し、軟らかくしてから、圧延機という設備に送ります。
引用元:日本冶金工業株式会社
圧延機は、鋼片を上下のローラーに挟み込んで徐々に薄くしていきます。
厚い板はその板形状のままで取り出します。1.2mm~19mmの板厚ではコイル状に巻き取り、これをホットコイルと呼びます。
熱い状態で圧延加工するので、この工程を熱間圧延といい、できたものが熱延鋼板として出荷されます。
板材だけではなく棒材、線材、断面形状が特殊な形鋼など、さまざまな形状もつくられます。
板金加工に使われる板材には、さらに薄いものも求められます。
このような薄板は冷間圧延によってつくられます。
冷間圧延は、先の圧延鋼板を使って常温で圧延加工してつくられ、できたものは冷延鋼板と呼ばれます。冷間という言葉には、冷やすイメージがつきまといますが、常温でおこなう工程です。
冷間圧延では、1ミリの千分の一の極小レベルで厚みをコントロールするため、厚み精度に優れており、表面もなめらかできれいに仕上がります。あとで紹介するSPC材(冷間圧延鋼板)は、この工程でつくられた材料です。
常温で圧延することにより金属組織が乱れて硬くなるため、圧延後に焼きなましという熱処理をおこない、内部のひずみを除去して軟らかくしています。(熱処理に関しては、別の記事で解説します。)
また、さびを防ぐ亜鉛メッキ鋼板は、この冷延鋼板の表面にめっき処理をおこなったものです。
引用元:中部鋼鈑株式会社
黒皮材とみがき材
熱間圧延鋼板は黒皮材、冷間圧延鋼板はみがき材と慣習的に区分されています。 酸化鉄によって生ずる黒皮は、手でさわって凸凹を感じるほど大きなことがあります。 黒皮材は、寸法精度が必要なく見栄えも問わない建築材料などに使用されます。
他方で、製品や生産設備に使う場合には高い寸法精度やなめらかな表面が求められるので、黒皮を除去しなければなりません。
これに対して、みがき材であれば、表面がなめらかできれいなのでそのまま使用することができます。 黒皮材よりみがき材の方が価格は高いのですが、黒皮材をそのまま表面を加工するコストと比較すると、みがき材の方を使用する方がメリットがあるとされています。
板金加工で使用される板材の多くは鉄鋼材料から構成されています。
そこで、まず鉄鋼材料と非鉄鋼材料に分けて、全体を俯瞰してみたいと思います。
・鉄鋼材料には、軟鋼板、表面処理鋼板、ステンレス鋼板があります。
・鋼板とは、文字通り板状に加工された鋼のことをいいます。
・非鉄鋼材料には、アルミニウム板、銅板などあります。
・軟鋼板としては、熱間圧延鋼板(SPHC)と冷間圧延鋼板(SPCC) が代表的なもので、一般に「鉄板」 と呼ばれています。
・鋼板(鉄板)は板厚によって、厚板(6mm以上)、中板(3mm以上6mm未満)、薄板(3mm未満)に分けることができます。
・ステンレス鋼板は、鋼にクロムを12%以上添加したもので耐食性に優れています。
・表面処理鋼板は、軟鋼材を母材として表面にめっきしたもの、あるいはめっきして更に塗装したものです。
・アルミニウムは、軽く、伝熱性、導電性に優れています。
・銅も、伝熱性、導電性に優れていますが、高価なため構造部品などに使われることはめったにありません。
板金材料には、あらかじめ必要な寸法に切断されたスケッチ材と、寸法が規格で決められた定尺材があります。実務では、定尺材をそのまま使い、切断、穴あけ加工を行うのが一般的です。
・軟鋼材の定尺材の寸法は、以下の3つが広く流通しています。 914×1829mm(3×6、サブロク)
1219×2438mm(4×8、シハチ)
1524×3048mm(5×10、ゴトー)
・ステンレス、アルミニウムの定尺材は以下のものが、広く流通しています。
さて、いよいよ材料の特性について見ていきます。
個別の材料について述べる前に、鉄鋼材料を考える上で基本となる2つの事柄について確認しておきたいと思います。
鉄もアルミニウムも純金属では軟らかすぎて用途が限られるため、他の成分を加えることで、実用に適した性質に変えていきます。
鉄に最も影響を与えるのが炭素(C)です。加える炭素の量により軟らかい鉄から硬い鉄までつくり分けることができます。鉄鋼材料は、このように成分をコントロールされてできあがっています。
また、鉄鋼材料はこの炭素量の大小によって分類されます。炭素量が0~0.02%が純鉄 、0.02~0.3%が軟鋼、0.3~2.1%が硬鋼、2.1~6.7%が鋳鉄です。純鉄は柔らかすぎて実務上の用途がないので、軟鋼から実用領域となります。
軟鋼と硬鋼を分ける0.3%は、焼き入れ効果の有無と溶接可否の目安になります。(この溶接の詳細については、別記事で解説します。)
(1)強さと硬さ:炭素量が増えるほど強く硬くなります。
(2)加工性:炭素量が増えるほど硬くなり、加工しにくくなります。
(3)焼き入れ効果:炭素量が少ないと、焼きは入らず、炭素量が増えるほど焼き入れの効果がでてきます。
(4)溶接性:0.3%以下は溶接が容易ですが、0.3%を超えると炭素の含有量が多いために溶接の熱で焼きが入り、焼き割れといった欠陥が生じやすいために溶接は避けます。
(5)溶融温度:炭素量が増えるほど溶ける温度は下がっていきます。
鉄に加える成分の代表格は 炭素(C)で、その他に補助的な役割としてシリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)が入っており、これらを5大元素といいます。
・炭素はなくてはならない存在で、強さと硬さの源泉です。
・シリコンはけい素とも呼ばれ、弾性変形の上限値である降伏点と破断限界を示す引張り強さを増します。
・マンガンは粘り強さを高め、焼きを入れやすくする元素です。
・ここまでの3元素は鉄の性質を向上する大切な成分ですが、残りのリンと硫黄は基本的に有害な成分です。
以上の5つが鉄鋼材料の基本となる元素です。
鋼は添加物の種類によって炭素鋼と合金鋼に分かれます。
5大元素のみで構成されたものを「炭素鋼」といいます
これに対して、5大元素にクロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの金属を加えたものを 「合金鋼」といいます。
合金鋼は高価な半面、優れた性質を持っています。
身近に使われている合金鋼としては、ステンレス鋼を挙げることができます。
(1)概要:
・SPC(Steel Plate Coldの略)材は、0.4~3.2mmの薄板で、最大でも3.2.mmです。
・冷蔵庫や洗濯機のボディなど家電製品などで、広く使用されています。 ・SPCは用途によって、SPCC(一般用)、SPCD(絞り用)、SPCE(深絞り用)などがあります。
・このSPCCに電気亜鉛メッキを施したものがSECCです。
(2)強さ: 軟らかい板材なので、大きな力が加わる箇所には使用しません。
(3)加工性: 加工性は良好です。平板のまま使うか、もしくは曲げ加工やプレス加工が中心です。 冷間圧延なのでとてもなめらかできれいな表面です。 表面は削らずにそのままの面を使います。
(1)概要:SS(Steel Structureの略称)材は汎用材として、金属加工で最もよく使用される圧延鋼板です。安価で市販性も高く、鋼板、棒材、形鋼とバリエーションも多く揃っています。
(2)強さ: 一般的に鋼材は、厚くなるほど降伏点が下がる傾向にあります。 これは、厚くなるほど圧延後に常温まで冷える時間が長くなり、そのことによる金属組織の変化が影響するためです。 しかし、一般環境下で使用する場合、この強さは相当の余裕度があるので、厚みによる降伏点の差異は、特に意識する必要はありません。
(3)加工性: とても加工しやすい材料です。 SS材は材料の表面が良好なので、できるだけ表面をそのまま使用します。 というのも、表面を加工すると内部応力が解放されて、そりが発生する恐れがあるからです。
内部応力とは
内部応力とは、外から材料に力を加えた際に、内部で反作用として生じる力のことです。外部の力に応じて発生する力という意味で、内部応力(単に応力とも)と呼びます。内部応力には2つの種類があります。材料を引き延ばそうとする力が働く場合の引張応力と、縮めようとする圧縮応力です。 内部応力は部材ごとに違うので、実際に削ってみなければわかりません。
炭素鋼の5大元素に加えて他の金属を添加したものが **合金鋼** です。 合金の元素には、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)などがあります。
(1)概要: 合金鋼の中で最も身近に使われているのがステンレス鋼です。ステンレスはStainless、すなわち「汚れが少ない、さびが少ない」を意味し、五大元素にクロムとニッケルを加えた合金です。
SUS(Steel Use Stainlessの略称)材の特徴は、何といってもさびに強い耐食性です。
クロムと酸素が結びついた緻密な酸化膜(不動態被膜)が、金属表面をしっかり覆うことによって可能になります。
以下、ステンレス鋼でよく使用されるSUS304とSUS303について、解説します。
①SUS304(18-8系ステンレス)
ステンレスの半分以上を占めるのが、このSUS304です。
抜群の耐食性を活かして、台所のシンクや、機械部品にも使用されるオールマイティな品種です。
耐熱性もあり、600℃まで使用でき、溶接も可能です。
磁性がないので磁石につかないのが特徴です。ただし、曲げ加工などによる加工硬化があると、その個所は磁性を帯びることもあります。
②SUS303(18-8系ステンレス)
先のSUS304は耐食性が優れていますが、硬くて粘っこいために加工性があまりよくありません。
そこで、有害成分とされているリンと硫黄を含ませることで加工性を向上させたものがこのSUS303です。
耐食性は若干劣るものの、加工性が良い点は機械部品に適しています。
SUS304と同じく非磁性です。
鉄が鉄鉱石から酸素を離して取り出されるように、アルミニウムも鉱物のボーキサイトから取り出されます。
鉄の場合に比べて、アルミニウムと酸素の結びつく力は、はるかに大きく、多くの電力を用いて電気分解をおこなう必要があります。
しかし、アルミニウムには優れた特徴があるため、いまや鉄につぐ生産量となっています。
以下の動画は、アルミニウムの特徴をよく説明してくれています。是非、視聴してみてください。
「電気の缶詰~アルミニウム~」
概要
奇妙な骨董屋の周期表を模した棚を前に、少女と怪しい店長のシュールなやりとりを通じて、単なる記号の羅列ではない周期表の正体を探っていきます。元素の性質、発見の歴史をじっくりと見つめると、あたかも物語の人間関係相関図のように整理された元素たちの関係が見えてくるのです。シリーズ第10回は、「電気の缶詰~アルミニウム~」と題し、アルミニウム精錬の歴史と現在の利用例、アルミニウムの特徴を紹介します。
出演者名・所属機関名および協力機関名
佐藤瀬奈(オスカープロモーション)、コハ・ラ・スマート(個人)、オスカープロモーション
引用元:サイエンスチャンネル
アルミニウムの特徴は、鉄と比較することでよく理解できます。以下、その特徴を列挙します。
(1)軽さ:
アルミニウムの一番の特徴はその軽さです。
鉄とその密度を比較すると約3分の1です。アルミニウムが工業製品として使われだしたのは、時代背景と関係しています。
20世紀に入り、航空機生産の需要が高まると、アルミニウムはこの航空機の軽量化を最大の目的に進められます。航空機の機体は、その総重量の約70%がアルミニウム合金でできているといわれています。
今では、地下鉄から新幹線、果ては人工衛星に至るまで広く使用されています。
(2)強さ:
アルミニウムは鉄に比べると弱くなります。
しかし、7000系(亜鉛とマグネシウムの合金)のA7075は、炭素鋼のSS400を超える引っ張り強さがあります。
剛性の指針である縦弾性係数は、どの品種も同じく鉄の3分の1なので、同じ力がかかると鉄の3倍の変形量が生じます。
(3)加工性:
切削の抵抗が小さく熱伝導性も良いために、切削熱を拡散できます。それゆえ、加工性は非常に優れています。 高速加工や大きな切込みも可能です。
(4)耐食性:
ステンレスと同じく大気中で自然に金属表面に酸化被膜を形成し、酸素と水分を遮断するので耐食性に優れます。
さらには耐食性を向上させる必要があるときには、表面処理としてアルマイト処理をおこない、人工的に酸化被膜を形成します。
(5)導電率:
電気の流れやすさを示す導電率は銀、銅、金についで高い金属です。
(6)熱伝導率:
熱伝導率は銀と銅についで高いです。
(7)耐熱温度:
アルミニウムの融点は約660℃です。また強さは200℃を超えると急激に下がるので、200℃を最高使用温度に設定します。
(8)光沢と非磁性:
光を良く反射するので外観が美しく、磁性をもたないことも大きな特徴です。
銅は人類がはじめて手にした金属といわれています。
鉄の溶融温度が約1500℃であるのに対して、銅は1000℃とかなり低いです。これが鉄よりも銅を早く手にした、といわれる理由です。
日本でも約2000年前から農耕具や武器、貨幣、銅鐸などに使われました。
現代では優れた伝導率や熱伝導性を活かして、情報通信や精密機器などの先端産業に使われています。
銅の特徴も、鉄と比較することでよく理解できます。大きな特徴は導電率と熱伝導率が抜群に良いことです。一方で高価なため、構造部品として使用することはありません。以下、その特徴を挙げてみます。
(1)導電率:
銅の最大の特徴はこの導電率の高さです。 銀につぐ性質のため、銅線として電気配線に使われています。
(2)熱伝導率:
熱の伝わりやすさは鉄鋼材料やアルミニウムよりも優れています。 そのため、鍋やフライパンなどの調理器具によく使用されています。 熱伝導率の高さから、熱が素早く均一に伝わるためです。
(3)加工性:
大昔から使われている理由のひとつが加工のしやすさです。 切削加工や圧延加工に適しています。 まためっきやはんだづけが容易な金属です。
(4)耐熱温度:
200℃を超えると軟化するため、通常200℃以下で使用します。例外的にベリウム鋼は耐熱性に優れており、600℃までは軟化しません。低温側の劣化はないので、問題なく使えます。
(5)耐食性:
耐食性に優れており、他の金属は苦手とする海水に対しても良好な耐食性をもっています。ただし硝酸や塩酸、硫酸にはおかされることには注意が必要です。
(6)光沢:
金以外で唯一黄色の光沢をもつ金属です。加工性がよく光沢があることから工芸品にも使われています。
(7)非磁性:
非磁性を活かした用途として、磁気厳禁の電気機器の背億定期や化学工業の防爆用工具として使われています。
生産量の割合を見ると純銅が50%、黄銅が約40%で合わせて90%を占めています。ここでは、純銅と黄銅についてのみ解説します。
(1)純銅
純度は99.90%以上で、酸素の含有量によって3種類に分かれます。
酸素の多い方から順にタフピッチ銅(CC1100)、りん脱酸銅(C1201、C1220)、無酸素銅(C1020)があります。
無酸素銅は酸素が極小で不純物も除去された高純度の銅です。これらの純銅は高い導電率や熱伝導率を活かした銅線や電子機器材料に使用されます。
(2)黄銅(真鍮)
黄銅は銅と亜鉛の合金で、真鍮(しんちゅう)と呼ばれています。
合金の比率によって銅と70%と亜鉛30%の70/30黄銅(C2600)、同じく65%と35%の65/35黄銅(C2680)、60%と40%の60/40黄銅(C2801)があります。
銅の比率が下がるにつれて、引張り強さと硬さは増えていきます。一方で、銅の比率が60%未満になるともろさが出てくるため、ラインナップは60%以上になっています。
C2600とC2680は伸びが大きいので、冷間加工性が良好で深絞り加工にも使用されます。
亜鉛の量が多いほど、銅の比率が少なくなるので、価格も安くなります。
チタンとチタン合金、マグネシウムとマグネシウム合金などがあります。 この記事では割愛します。
本記事では、板金加工に使用する材料を俯瞰しました。
材料の知識なしに板金加工を行うことはできません。
さらに別の記事でより具体的な内容に踏み込んでみたいと思います。
次回は、板金加工に欠かせない図面について考えてみたいと思います。
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