染谷 ひとみ
Mitsuri Media管理人
精密板金加工工場のインサイドセールスとして加工と寸法の提案をしてきた経験を経て、製造業の知見と楽しさを提供している。 幼少期からモノの構造を理解するのが好き。JAPAN MENSA会員。
近年、製造業のトレンドは、DXです。
業界を問わず、一部でもDXに取り組んでいる企業は73.7%にのぼっていますが、従業員の人数が少ないほどDXに取り組んでいる割合は低くなっています。
参考・引用:DX 動向 2024 - IPA - 独立行政法人情報処理推進機構
また、製造業全体では、DXに取り組んでいる企業の割合は77.0%です。
このページでは、製造業に焦点を当てたDXについて解説していきます。
そもそもDXとは何か、DXを妨げる要因、DXをしない方がいい場合、製造業のDXは結局何をしたらいいのか、という順に深掘りしていきます。
まずは、デジタル化とDXの違いについて解説します。
よくある間違いが、「近年流行っているデジタル化がDX」「デジタル化ができていればDXもできている」という認識です。それぞれがどういうものか解説していきます。
デジタル化は、従来のアナログ作業やプロセスをデジタル技術を用いて改善・効率化することを指します。
例えば、紙の記録をデジタルデータに変換する、手動で行っていた機械操作を自動化する、といった具体的な業務改善が含まれます。デジタル化は既存の業務フローやビジネスモデルをそのまま維持しつつ、部分的な効率向上を図るもので、短期的な成果が期待できます。
DXは単なる業務のデジタル化を超え、企業全体のビジネスモデルや価値提供方法を根本的に再構築するプロセスを指します。
DXの目的は、デジタル技術を活用して新たな価値を創出し、市場競争力を強化することです。これには、新製品や新サービスの開発、顧客との関係性の再構築、サプライチェーンの最適化など、広範な組織変革が含まれます。
デジタル化は個々の業務をデジタル技術を用いて改善・効率化すること、DXは企業の業務全体をデジタル技術で新たな価値や競争力をつけることです。
DXによって、既存の業務プロセスが変わる場合も十分にあり得ます。
デジタル化の例として、具体的にFAXでやり取りしていた図面をPDFで送るようになったり、見積作成を電卓の計算ではなくExcelで計算するようになったことが挙げられます。
Excelで計算し、作成した見積書をPDFに印刷してメールで送る状態がデジタル化です。ExcelからPDFへの印刷、印刷したPDFをメールに添付し送信、この2つの操作で人の手を介しています。個々の業務でデジタル技術を利用していても、その合間の作業で人の手を介しているのがデジタル化の特徴です。
一方、DXはPDFの図面を受け取ってから見積の送信、発注の確認、発送通知までが、1つのシステムで完結することを指します。
例えば、PDFの図面はシステム内にアップロードするか、メールで届いたらメールと連携して自動的にシステムにアップロードされる仕組みになっている状態です。
そこから、同じシステム内で見積書を作成し、送信ボタンを押すとシステムが自動的に見積書を顧客へ送ります。
顧客は発注するか否かをシステムへ返答し、通知で発注の有無を確認するような状態です。業務の一連の流れがデジタル技術で解決されています。
顧客側は、システムを使って発注の有無の返事ができますので、数クリックで操作が済み、時短になります。返事のためにメールを書き起こしたり、わざわざ時間を伺って電話をかける必要もなくなるメリットがあります。このような手間の省略から付加価値が生まれます。
DXしたいと思っているがなかなかできていない企業も多いです。
DXを妨げる要因は大きく6つあります。
DXは既存の業務プロセスが変わる場合も十分にあり得ます。
従来のやり方に慣れ親しんでおり、新しいデジタル技術や方法論を受け入れることに抵抗のある従業員の声が大きい場合があります。全社員が変化を受け入れ、積極的に取り組むためのリーダーシップやコミュニケーションが必要です。
長年にわたって運用してきたレガシーシステムを持っていると、新しいシステムとの統合や連携が技術的に非常に複雑になります。互換性やセキュリティの問題が発生してしまう場合もあります。
システムの刷新や全体的な再設計の必要が出てきます。
DXは企業全体の業務プロセスに変動が起こるので、DXを成功させるためには、経営層の理解と強力な支持が不可欠です。しかし、DXの概念やその重要性を理解していない経営者がいる場合、プロジェクトが十分に進まなかったり、中途半端な状態で終わってしまうリスクがあります。経営層がDXの価値を認識し、戦略的にリードすることが重要です。
DXは多くの場合、初期投資が高額になることがあります。なぜなら、大抵は企業ごとに合わせたシステムを構築しているからです。新しい技術の導入だけでなく、既存システムの改修、従業員の教育なども含まれます。
費用を抑えつつDXに臨む場合には、汎用的なDXシステムの導入や補助金の活用を検討してみましょう。
DXには高度なデジタル技術やデータ分析能力が求められますが、これらのスキルを持った人材が不足している企業も多いです。既存の従業員に対しての再教育や、新たに人材を確保する必要が出てきます。
多くの企業が人材を求めており、競争が激しい状況です。
確保が難しい場合は、雇用だけを考えるのではなく、外注することも検討してみましょう。
DXでは、デジタルデータの活用が重要な役割を果たしますが、このデータの管理とセキュリティも課題となります。データの漏洩やサイバー攻撃のリスクが高まるため、セキュリティ対策が十分に取られていないと、企業の信用を失う可能性があります。
私たちは製造業のDXをお手伝いする立場ですが、当社の利益だけでなく、ユーザーの皆様に価値を感じてもらえることに重きを置いています。
だからこそ、DXをしない方がいい場合についても解説します。DXすることで、ほとんどの企業にとってメリットがありますが、DXがかえって顧客や社員の不満につながる場合もあるからです。
既存の業務プロセスやビジネスモデルが十分に最適化され、効果的に機能している場合、無理に今すぐDXを進める必要はありません。
ただし、今後DXされた企業が増えるにつれて、価値提供や競争力に差がつくことが考えられます。
経済産業省が発表した「2025年の崖」の問題に対応できなくなる可能性もあります。
伝統的な方法で顧客へ価値が提供されている場合は、デジタル化によって顧客満足度が下がってしまう可能性があります。慎重に検討しましょう。
例えば、現物支給で複雑な部品の案件は、対面で仕様の打ち合わせをした方が製品の仕上がりや満足度に直結します。
デジタルで機械的に対応してしまうと、満足度が下がる恐れがあります。
ただし、対応した記録はデジタルデータとして残しておくと、次回以降似たような案件があった際に蓄積されたデータとして役立ちます。
デジタル化は具体的なイメージを持ちやすいのに対し、DXは漠然としてイメージがつきにくいのが現状です。
なぜなら、各企業によってDXの内容が変わるからです。各企業に合わせた業務全体のシステムを構築しようとすると莫大な資金が必要になります。その中身は企業戦略に関わるため、なかなか細部までは世の中に情報が出回っていないのが現状です。
オーダーメイドのシステムとなると、1つの部署のシステムを構築するのに数百万円~数千万円の投資が必要になります。企業内全体のシステム構築となると、数億円にのぼる開発費が必要になることも少なくありません。
しかし、DXは決して莫大な資金投資が必要というわけではありません。
大きい資金を投資できない企業にDXはなかなか手が出ないものと思われがちですが、そのようなことはありません。
複数の企業に向けて開発された汎用的なシステムを導入すれば、少ない費用でDXを行えます。
そのような汎用的なシステムは、業界全体が親しみやすい機能とデザインで構築されているので、どなたでも利用できます。
また、DXにあたって必要な業務プロセスの変革は、システムに合わせることで次世代でも通用するフローを組むことができます。
DXにあたって、オーダーメイドのシステムを構築するか、汎用的なシステムに合わせて業務プロセスを再構築するかによってやることが変わります。
企業によって、取り組む順番を変更した方がいい場合もあります。
具体的な手法や改善方法を多数紹介しております。生産管理、現場改善のカテゴリの記事をご参考ください。
参考:生産管理の記事一覧
参考:現場改善の記事一覧
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