2025-01-13
更新
FTAは潜在的にある品質・安全上の課題を洗い出し、その原因を突き止めて対策を行う解析方法です。
今回は製造業におけるFTAについてや、実際に行う流れなどについて解説していきます。
FTAは 「Fault Tree Analysis」の略で、フォルトツリー解析・故障の木解析とも呼ばれています。
1960年代にアメリカのグループが考案して以来、信頼性の解析に広く普及されてきました。
FTAは設定した頂上事象の発生の原因や潜在的に発生の可能性がある原因を洗い出し、頂上事象の発生条件または要因の識別、解析をする方法です。FTAでの頂上事象は一般的に、性能低下、システムの機能損失、安全性、他の重要な運用上での特性劣化などが挙げられます。
頂上事象とは予防したい事象を指します。クリスマスツリーを想像するとわかりやすいのですが、FTAの頂上事象はクリスマスツリーの先端、飾り付けの星のようなものです。これは階層の最上部に位置する事象となり、問題を分析するためのスタートポイントとなります。そして、クリスマスツリーの枝葉にある飾り付けの部分がその問題の発生条件や原因です。さらにツリーの枝葉の中でも特に目立つ飾り付けは、問題に対してどのような要因が発生確率を高めているのか、どう影響しているのかに関わる重要なポイントになる部分です。
製造業における防止策や原因分析の方法は、FTA以外にもFMEAやなぜなぜ分析など様々な種類がありますが、FTAを行う目的は何でしょうか。
JIS規格で記載されているFTAの目的は以下の通りです。
− 頂上事象を発生させる原因又は原因の組合せの明確化
− 特定のシステム信頼性尺度が,所定の要求事項を満たすか否かの決定
− システム信頼度の実現可能な改善策を明確化するために,どの潜在的な故障モード又は要因が,システムの故障発生確率(不信頼度)又はシステムが修理可能な場合はアンアベイラビリティに最も強く影響しているかの決定
− システムの信頼性を改善する様々な設計代替案の解析及び比較
− 他の解析[例えば,マルコフ及び故障モード・影響解析(FMEA:failure mode and effects analysis)(以下,FMEAという。)]で行った仮定が妥当であるという実証
− 安全問題を引き起こすことがある潜在的故障モードの明確化,対応する発生確率の評価及び低減策の可能性の評価
− 共通事象(例えば,図10のブリッジ回路FT図の中央の枝を参照)の識別
− 頂上事象の発生を最も高い可能性で引き起こす事象又は事象の組合せの探索
− 頂上事象の発生確率に対する基本事象の発生の影響の評価
− 事象の発生確率の計算
− 定常状態を仮定でき,かつ,実施する修理が互いに独立している(成功パス図/信頼性ブロック図に関する制約と同じ制約である)場合の,FT図によって表すシステム又はその構成品のアベイラビリティ及び故障率の計算
(引用元:kikakurui.com)
つまりFTAを使用する目的とは、頂上事象を発生させる原因や原因の組み合わせを明確化させることになります。
FMEAとは材料や部品などの故障モードをスタートとし、製品の想定外の事故、故障を洗い出すボトムアップの解析ツールです。
一方、FTAは製品の事故や故障をトップ事象におき、中間・基本事象を掘り下げて発生確率を予測、対策をするトップダウンの解析ツールです。
では、FTAとFMEAはそれぞれどのような場面に適しているのでしょうか。FTAは事故、故障が既知の流用度が高い製品の解析に最適です。製品の起こり得る事故や故障を想定した解析が可能となります。一方のFMEAは、比較的新規性が高い製品における未知の事故、故障といった、トップ事象の予測が困難な製品の解析に有効的です。
導入のしやすさでいうと、FTAの方が受け入れやすいと言われています。FTAは既知の故障や事故が発生した場合の解析のため、一般的に使われる設計プロセスになじみやすいからです。FMEAは材料・部品の故障モードをスタートとし、想定外の故障や事故を抽出しますが、そもそもこのような考え方自体が受け入れ難く、理解が進んでいないことが現状です。
参考:FMEA(故障モード影響解析)とは?評価法や実際の流れを解説
FTAの目的や他の解析方法との違いが分かったところで、実行の前に確認しておくべきポイントを紹介します。
FTAは変化する時に行うのがベストです。具体的には、新商品を作る、設計変更をする、仕向け先が変わるといったタイミングが効果的です。特に安全に絡む問題は命に関わる事故につながる可能性があるため、事前に対策を立てることが大切です。
また発生してしまった問題に対しての原因を突き止めるために、FTAを使用するケースもあります。
FTAのフォーマットは以下を参考にしながら作成していきましょう。Excelを使用すると作成しやすいです。
FTAの進め方は6つのステップがあります。
①FTAチームとリーダーを選ぶ
②トラブルの原因になりそうな項目をリストアップ
③洗い出した要因の調査
④一次判定を行う
⑤再現実験の施行、原因の特定
まずは何らかのトラブルが起こった場合に対処、問題解決をするためのチームを選定します。組織内の各チームから、その分野に対する豊富な知識と経験のある人を選びましょう。
同時にリーダーの選定も行います。リーダーがいれば意思決定の時間を割く手間が省けるからです。
上記フォーマットの分類2の欄を調査しつつ埋めていきます。少しでも原因と関係がありそうなものはとにかく列挙していきましょう。
人の箇所は現場に詳しい人に聞くなど、チーム内で各カテゴリで詳しい人別に調査を行うとスムーズに進められます。
ある一つの要因に対して証拠になるためのデータを集めましょう。データは数値や記録など、あくまで客観的かつ具体的な調査結果を必要とします。人による証言や想像はここでは起用しません。
ステップ③で集めた証拠によってトラブルの原因ではないという具体的な証拠が挙げられれば、フォーマットの判定欄に「○」と記載していきます。証拠が不十分であったり、トラブルの原因だった場合は「×」と記載しましょう。
ただし、会社によってこの「○」と「×」の意味が入れ替わって使われていることもあるので、齟齬がないように事前に確認しておいてください。
上記④の項目で「×」になったものに対して、実際に再現させた時に同じトラブルが起こるかどうかを検証します。実験によって同じ現象が起こらなければ、洗い出した原因ではない可能性があり、もう一度別の原因を調査する必要があります。
また、再現実験を行った結果、同じトラブルが再現できた場合は洗い出した原因で間違いありません。トラブルが起こらないように対策を練りましょう。
FTAとは製造業界で広く使用される問題解析の方法です。FTAを導入することで課題を整理することができ、原因や問題の所在を明確にすることが可能です。また、客観的なデータを集めれば問題を論理的に解決できるでしょう。
社内で問題の原因を突き止めたい・予防をしたいという方は、ぜひFTAを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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