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FMEA(故障モード影響解析)とは?評価法や実際の流れを解説

この記事を監修した人

金属加工業界最大級のマッチングプラットフォーム「Mitsuri」を手掛ける企業。
「未来の製造業をつくる」をモットーに、製造業DXを推進している。

製造業界で広く使われている「FMEA」「故障モード影響度解析」とも呼ばれ、リスクを洗い出し、排除するための管理方法の一つです。未然にリスクを防ぐことで品質を保ち、より安全に作業できることが目的とされています。

今回はFMEAの基本から評価方法、実際の流れを紹介します。

FMEA(故障モード影響解析)とは?

FMEAは「Failure Mode and Effects Analysis」の略で、「故障モード影響解析」という意味があります。

1940年代にアメリカ軍で導入されたのがきっかけと言われています。1960年代には宇宙開発分野で応用され、アポロ計画にもFMEAが導入されました。1970年代には自動車会社のフォード社が導入したのを皮切りに、日本でも製品作りの前にFMEAを検討するきっかけとなりました。

FMEAについて

FMEAは製品や製品完成までの製造過程で起こり得るリスクを設計の段階で評価し、リスクを取り除く方法を指します。事前に問題点を洗い出し、対策をすることで未然に被害を防ぐことが可能です。

FMEAは設計段階では設計FMEA、作業段階は作業FMEAと呼ばれ、いろんな業務に適用されます。製造業界で広く呼ばれている「工程FMEA」は、FMEAの中でも製造工程管理に付随するものです。これは製造工程で起こり得る可能性がある不具合などを浮き彫りにすることで、トラブルを未然に防止します。

FMEAの目的

正常に製造工程内での作業や設備が働いていれば、製品のクオリティを維持することは難しくはありません。しかし、何らかの異常が発生した場合、品質維持が難しくなります。

例えば、新しく導入した機械の異常を予測するのは困難ですが、経年劣化が原因の不具合はあらかじめ想定できます。

つまり、品質管理を常に徹底するためには、異常事態に対する対策が欠かせません。このようなさまざまなトラブルや起こり得る不具合を未然に防ぐのがFMEAなのです。

故障モードについて

FMEAを行う中で欠かせないワードが「故障モード」です。故障モードとは、劣化・断線・摩耗といった製品の故障状態の形式分類を指します。実際にFMEAを導入するときに、プロセスごとに設備・方法・人・環境・部品の変化点を列挙し、その変化で起こる可能性がある不具合を検討していきます。

例えば、製作ライン上である工程を担当する人が変わってしまう場合、技術不足が原因で不具合が起こる得るケースは、その懸念点を故障モードとしています。

(引用元:高崎ものづくり技術研究所

FTAとの違い

FTAはFMEAとよく間違われがちなので区別しておきましょう。FTAは「Fault Tree Analysis」の略で、「フォルトツリー解析」と呼ばれるものです。これは安全上、発生が望ましくない事象(トップ事象)を洗い出し、その原因を連鎖的に挙げていく解析手法です。

FTAはトップ事象からの手法であるのに比べて、FMEAは故障モードによる懸念要素からのボトムアップ手法であるところに大きな違いがあります。

(引用元:ものづくり.com

FMEAの評価方法

FMEAはものづくりを安全に行うだけでなく、品質維持にとっても大変重要であることがわかりました。

FMEAを実際に行う前には評価方法をあらかじめ定めておかなければいけません。以下ではFMEAの評価方法で一般的に使われている方法を紹介します。

危険優先度指数(RPN)の相対評価法

FMEAの評価方法は、危険優先度指数(RPN)が一般的に使われています。危険優先度指数は、S、O、Dの3つの指標の評価点を全部掛け合わせた指標です。

相対評価法とは、点数が高いものから優先的に対策をすることを指します。

影響度(S)

故障モードが発生した際に、工程・製品・顧客にどのような影響を与えるか、起こり得る被害の大きさを指します。例えば、人命に影響がある場合は10、影響が全くないケースは1と被害の大きさによってその数は増えていきます。

頻度(O)

故障モードの起こりやすさを指し、故障モードの起こりにくい対策がされているかを評価します。故障モードが発生することが常に起こっている場合は10、事実上起こり得ないケースは1です。

検知度(D)

設計期間中および工程で生産中に故障モードを検知できるかどうかの指標です。

例えば、ボルトの締め忘れの故障モードを検討した場合、各工程でボルトをチェックすることになっていない、さらに試験中に折れてしまってもわからないというときに、検出可能性が全くないことになります。その場合、点数は10点です。

工程FMEA実行の流れ

FMEAの評価方法を設定できたら、実際に行う流れを掴んでおきましょう。

ここでは製造で特に大切な工程FMEA実行の流れについて解説します。

①FMEAフォーマットの準備

まず作業を始める前にFMEAフォーマットを作りましょう。基本的には、以下のような項目をチェックできる表を用います。フォーマットの形式は決まっていないので、使いやすいように変更して構いません。

FMEAフォーマット

☑︎工程

☑︎作業名目

☑︎具体的作業

☑︎想定されるミス

☑︎故障モード

☑︎故障による影響

☑︎影響度

☑︎故障の発生原因

☑︎発生度

☑︎故障の検出方法

☑︎検出度

☑︎RPN(影響度×発生度×検出度)

この段階では作業を大きな括りに分類します。例えば、「作業名目」「工程」に、「パーツ組立A」「組立」と記載します。

②故障モードの決定

次に「故障モード」と「想定されるミス」の項目を埋めていきます。例えば、「対象部分の接触不良」は故障モード、「部品の取り付けが甘い」は想定されるミスとなります。

この工程で大切なポイントは、あくまで工程のミスの原因を洗い出すことです。「部品の結合がうまくいかない」といった不具合は設計FMEAの範囲内となるミスなので、ここではあくまで工程FMEA内の故障モードと混同しないように注意しましょう。

③故障モードの分析・評価

故障モードの分析と評価を行います。

故障による影響・影響度

故障モードが発生した際に起こり得る影響の規模を10段階で以下のように数値化します。

先述した「人命に関わるような致命的な影響」を10とし、そこから影響が全くないケースを1に設定します。

10 まったく機能しない
9 特定の条件下で機能しない
8 機能しないおそれがある
7 特定の条件下で機能が低下する
6 機能が低下するおそれがある
5 機能はするが、改善が不可欠
4 機能はするが、改善すべき
3 影響はないと見なせる
2 完全に無視できる程度の影響しかない
1 まったく影響がない

10まったく機能しない9特定の条件下で機能しない8機能しないおそれがある7特定の条件下で機能が低下する6機能が低下するおそれがある5機能はするが、改善が不可欠4機能はするが、改善すべき3影響はないと見なせる2完全に無視できる程度の影響しかない1まったく影響がない

故障の発生原因・発生度

発生度は故障が発生する頻度を指します。

10
毎回
9
1日1回
8
1週間に1回
7
2週間に1回
6
1か月に1回
5
6か月に1回
4
1年に1回
3
3年に1回
2
5年に1回
1
発生しない

発生しないさらに上記のFMEAフォーマット内「故障の発生原因」の項目には「ネジ1と2が似ている」といった、そのミスが起こる原因を記載してみると良いでしょう。

・検出度

検出度とは検出できる確率を指します。

10
検出不可
9
工程での検出率=10%
8
工程での検出率=20%
7
工程での検出率=30%
6
工程での検出率=50%
5
工程での検出率=70%
4
後の工程で検出率=100%
3
次の工程で検出率=100%
2
作業途中で検出可能
1
作業途中で検出率=100%

・RPN

上記の影響度・発生度・検出度で出した評価点を掛けていきます。そこで出た値がリスクの大きさを表す指標「RPN」となります。

RPN=影響度×発生度×検出度

例えば、影響度=8、発生度=4、検出度=5の場合、「8×4×5=160」でRPNは160になります。

④改善の実施

最後にこれまでの流れで出たRPNをもとに、対策するべき課題に優先度をつけて優先度が高いものから改善していきます。

この改善の目標はRPNの数値を低くさせることです。そのためには影響度・発生度・検出度を下げる取り組みがマストになりますが、影響度を下げることはできません。なぜならその工程で目的とする製品が同じであれば、それに問題が生じた影響は変化しないからです。例えば、作業改善をしてある部品の取り付けミス発生頻度を減らせたところで、取り付けミスをしたときに生じた影響は変わりません。そのため、ここでいう改善はあくまでも発生度・検出度の数値を低下させることが目的となります。

改善策を実際に行ったら、再度RPNを出して評価しましょう。RPNが100以下になるまで繰り返します。

FMEAまとめ

FMEAは作業を安全に行い、高い品質の製品を作る上でとても大切な方法です。

ぜひ、本記事で紹介したFMEA評価方法やフォーマットなどを参考にしながら、取り組んでみてください。

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