鉄や鋼の違いは炭素量です。含まれる炭素量によって、硬さや強度、靭性など様々な特性が変化するので、特性に応じて使い分ける必要があります。
鉄と鋼の違いを分けるのは、含まれている炭素量(C)です。
鉄と鋼はどちらも鉄鉱石から作られ、鉄(Fe)と炭素(C)からできています。炭素量の多い方が、硬く強くなる傾向があります。極めて鉄(Fe)の純度の高い鉄は、脆く酸化(イオン化)しやすいので、工業製品には向きません。加工も難しく柔軟性に乏しいので、一般的に鉄がそのまま使われることはありません。
鋼は、鉄により強度を持たせるために、意図的に炭素量を増やした合金です。私達が普段の生活で触れている「鉄」は、「鋼」を指しています。鋼は鉄に比べ、強度と 靭性 ( じんせい ) と呼ばれる粘り強さが優れています。さらに加工もしやすいので、一般的に用いられている合金です。
純粋(100%)な鉄(Fe)は、実はほとんどの人は見たことがありません。純粋な鉄は、私達が知っている灰色のような色ではなく、白い光沢を持っています。しかし、純粋な鉄は酸化(イオン化)しやすい傾向があり、脆くその形を保つことが困難です。鉄鉱石もこの特徴を持っているため、赤さびのような赤茶けた色をしています。
反対に、イオン化(酸化)しにくい金・銀・プラチナといった金属は「貴金属」と呼びます。イオン化しにくい貴金属は、色が美しく加工し易いという特性を持っていますが、同時に他の金属と混ぜて化合物を作ることには向いていません。
鉄に触れた時、「鉄臭い」や「金属臭い」などと表現することがありますが、実際には鉄それ自体ににおいはありません。私達が「鉄臭い」と感じるにおいは、鉄と人間の汗や皮脂が反応し、鉄が酸化したことによって出たにおいです。
純粋(100%)な鉄は脆く酸化しやすいため、加工にも適しません。しかし、これが99.9999%となると、硬く強く、しなやかな伸びや引っ張りにも強いという性質を持つようになります。このような性質は「塑性(そせい)」または「可塑性(かそせい)」と呼ばれ、加工のし易い特性でもあります99.9999%になった鉄には、この高い可塑性があったため、世界中で金属加工に用いられるようになりました。
鋼は、鉄に0.02%~2%ほどの炭素を混ぜた合金です。私達が普段の生活で親しんでいる「鉄」は、鋼のことを指しています。また、鋼は「炭素鋼」と呼ばれることもあります。
炭素量が増えるほど、鋼は強く硬くなっていきます。しかし同時に、靭性と呼ばれる粘り強さやしなやかさが失われてしまいます。炭素量が増えすぎると、強く硬くはなりますが、強度の限界を超えると折れてしまいます。「靭性が高い」ということは、折れにくく粘り強いということになります。強靭で加工のし易い鋼ですが、高い硬さとしなやかさを同時に得ることはできません。目的に応じて、硬さと靭性のバランスを決めることが必要です。
炭素含有量が0.02%~0.30%以下の微量な鋼は、 軟鋼 ( なんこう ) や 低炭素鋼 ( ていたんそこう ) と呼ばれます。軟鋼や低炭素鋼は建築資材や水道管に用いられます。鋼はそれ自体が合金ですが、さらに合金元素を加えることで 合金鋼 ( ごうきんこう ) になります。合金鋼の中で、合金元素が5%以下のものは 低合金鋼 ( ていごうきんこう ) と呼ばれます。低合金鋼は、車の車体、鉄道のレール、橋に用いられる工学プレート・パイプ等、社会の様々な場面で使用されています。
「SS材」と「炭素鋼鋼材S-C系」は、鉄鋼材料(鋼材)の中で広く一般的に使われています。「SS材」と「炭素鋼鋼材S-C系」の違いは、JIS(日本工業)規格の規定の違いです。
例えばスポーツ競技において、「体重別」というように選手の体重によって階級を規定します。体重が同じなら、身長の違いは考慮されません。同じような考え方で鋼材についても「強度」で規定するか、「炭素含有量」で規定するかによって種類が分かれます。「強度」で規定されたSS材は、炭素含有量については考慮しません。しかし、炭素含有量が多ければ強度も増すので、自ずと「強度」が決まれば炭素含有量も分かります。
他方、「炭素含有量」で規定された炭素鋼鋼材S-C系は、「引っ張りや粘り強さの強度」ではなく、炭素含有量による「硬さ強さ」に焦点を当てて規定したものです。
SS(Steel Structure)材は、正式には一般構造用圧延鋼材(いっぱんこうぞうようあつえんこうざい)という鋼材の規格です。中でもSS400は、最も広く流通しています。「SS○○」の「○○」にあたる数字は、引っ張り強さ(N/mm2)の下限を示しています。SS400の場合なら、400~510N/mm2です。
Structure(構造)の頭文字をとったSS材は、構造用に用いられますが、汎用性の高さから様々な分野で使用されています。特にSS400は、比較的安価であることから、板材・棒材の形状で多く流通しているので、入手も容易です。炭素含有量は約0.15%~02%ほどで、軟鋼(低炭素鋼)にあたります。
SS材は成分規格がなく、溶接部材には不向きです。特に板厚が厚くなれば、より溶接性も悪くなるので、SM材などの溶接向きの鋼材を用いることになります。
炭素鋼鋼材S-C系は、正式には「機械構造用炭素鋼鋼材」で「SC材」と呼ばれることもあります。SC(Steel Carbon)材で最も一般的なのは、S45Cです。「S○○C」の「○○」にあたる数字は、炭素含有量を示しています。S45Cの場合は、0.45%前後の炭素(Carbon)を含んでいるという意味です。
「炭素含有量」で規定したSC材は、「硬さ強さ」に焦点を当てています。SS材の代表的存在のSS400とS45Cを比較すると、S45Cの方か硬度・強度が共に高いです。価格についてもS45Cの方がSS400に比べ高く、品質も高いので、重要部品や精密機械の部品に用いられています。
SC材は、炭素含有量といった成分が規定されており、加工性と溶接性が共に良いことも特徴です。熱処理を施し易いので、使用する側にとっては、SS材よりも自由度が高いメリットがあります。しかし、コストを考慮すると熱処理が必要でない場合は、わざわざSC材を使わずに、より安価な材料を選択することになります。
SS材と炭素鋼鋼材S-C系(SC材)は、それぞれ必要な場面で使い分けられています。
SS材は「Steel Structure」の頭文字であることから、主に「構造用」です。汎用性も高いため、ビルや橋といった土木建築だけでなく、自動車などの工業製品にも用いられています。
建築でも多く使われているSS材は「引張強さ」に規定された弾性の面では、優れた特性を持っています。ただし、SC材のように「硬度・強度」に規定されてはいないので、SS材は建築の主要な部材には使われません。
たとえば大黒柱のような主要な部材(大梁など)には、SS材よりも硬度・強度に優れた鋼材が用いられます。この場合、SS材は弾性が求められる主要部材の次に重要な二次部材に用いられています。
炭素鋼鋼材S-C系(SC材)は「機械構造用炭素鋼鋼材」であり、機械の部品や部材などに使われます。SC材は硬度・強度に優れているうえ、さらに熱処理で加工ができるメリットがあります。溶接や熱処理に向かないSS材に比べ、SC材は硬度・強度が求められ、さらに熱処理が必要な場面で選択されます。
ただし、SC材はSS材に比べて価格が高くなります。SC材を用いる場合、汎用性の高いSS材が苦手とする場面で使用すれば、コスト面で合理的です。
以上のように、硬度・強度が求められる重要部品や部材にはSC材、それ以外は汎用性とコストパフォーマンスに優れたSS材、と使い分けることができます。
含まれる炭素量が違います。鉄は0.02%未満、鋼は0.02~2%です。鉄に強度を持たせるために炭素量を増やした合金が「鋼」です。鋼は強度と靭性が優れます。
JIS規格の規定の仕方が違います。SS材は「強度」によって規定されたもの、SC材は「炭素含有量」によって規定されたものです。
SC材はSS材に比べて価格が高いです。硬度・強度が求められる重要部品や部材にはSC材、それ以外は汎用性とコストパフォーマンスに優れたSS材、と使い分けることが多いです。
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