A2011は、快削性合金と呼ばれ、高強度を示す2000番台のアルミ合金の中でも、特に切削加工性に優れる材質です。強度、被切削性に優れる一方で、耐食性に劣るという欠点もあり、使用環境によっては対策が必要です。A2011は、さまざまな機械・工業用部品として利用されています。
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A2011の特徴(強度、溶接性、耐食性、被切削性)
A2011は、強度、被切削性に優れます。A2011は、銅(Cu)を含有するため、高い強度を示す一方で、耐食性は劣ります。また、A2011には鉛(Pb)とビスマス(Bi)が添加されているため、被切削性が良好です。ただし、A2011の溶融溶接性は低く、結合には主にリベット、ボルト接合、抵抗スポット溶接が用いられます。
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A2011の用途
A2011は、ボリュームシャフト、光学部品、ネジ部品などに用いられています。
A2011の化学成分
<A2011の成分、組成(単位:%)>
材料記号 | Si | Fe | Cu | Mn | Mg | Cr | Zn | V, Bi, Pb, Zr, Ni など | Ti | その他 | Al |
A2011 | 0.40 以下 | 0.7 以下 | 5.0 ~ 6.0 | ー | ー | ー | 0.30 以下 | Bi 0.20~0.6, Pb 0.20~0.6 | ー | 0.05以下 (計0.15以下) | 残部 |
引用元:JISH4040:アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線
A2011の化学成分を上表に示しました。
A2011では、Cu(銅)を添加することで、引張強さ・硬さなど機械的性質を高めています。ただし、銅には耐食性を低下させるという欠点もあります。
また、Pb(鉛)とBi(ビスマス)は切削加工性を向上させる目的で添加されています。
A2011の機械的性質
<A2011の機械的性質>
質別 | 引張性質 | ブリネル硬さ (HB W 10/500) | せん断強さ (N/mm2) | 疲れ強さ (N/mm2) | |||
引張強さ (N/mm2) | 耐力 (N/mm2) | 伸び(%) | |||||
1.6mm 厚 (L=50mm) | 12.5mm径 (L=5D) | ||||||
T3 | 380 | 295 | ー | 13 | 95 | 220 | 125 |
T8 | 405 | 310 | ー | 10 | 100 | 240 | 125 |
引用元:株式会社UACJ「アルミポケットブック第2版」p38
A2011の機械的性質は上表の通りです。
A2011の物理的性質
<A2011の物理的性質>
質別 | 密度 (20℃) (Mg/m3) | 溶解温度範囲(℃) | 導電率 (20℃) (IACS,%) | 熱伝導度 (20℃) (kW/m•℃) | 縦弾性係数 (kN/mm2) |
T3 | 2.82 | 541〜638 | 39 | 0.15 | 70.6 |
T8 | 45 | 0.17 |
引用元:株式会社UACJ「アルミポケットブック第2版」p50
A2011の物理的性質は上表の通りです。
A2011の使い方・選び方
前述した通り、A2011は鉛(Pb)を0.2~0.6%含みます。鉛は、環境負荷物質として規制されている場合もあるため、選定時には注意が必要です。ただし、近年では非鉛快削アルミ合金として、鉛の代わりにスズ(Sn)を添加した材質も開発されているため、場合によってはこのような材料を選定すると良いでしょう。